仕事が辛いのは、当たり前だったと気づいた夜
今日もスナックゆきで、一杯だけ頼んだ。
今日はバランタイン12年にした。
飲みやすい。
癖がない。
でも飲み続けると、
じわじわと温かくなる。
そういう酒だと思う。

仕事が終わって、家に帰った。
ソファに座る。
やっと自由な時間だ。
なのに
さっき上司に言われた一言が、
頭から離れない。
せっかく帰ってきたのに、
まだ会社にいる気がした。
ずっと、辛さを減らそうとしてきた。
考え方を変えようとした。
気の持ちようを変えようとした。
もっと仕事を好きになろうとした。
でも、減らなかった。
工夫するたびに、
うまくいかない自分が嫌になった。
楽しそうに働いている人を見て、
なぜ自分はできないのかと思った。
そのたびに、
また少し削られた。
帰り道、ずっと考えていた。
あの会議の発言は正しかったか。
あの返信は失礼じゃなかったか。
明日の準備は十分か。
家に着いても、
風呂に入っても、
布団に入っても。
私にも、そういう時期があった。
自由な時間を全部、
仕事のことに使っていた。
ある夜、気づいた。
仕事が辛いのは、
当たり前のことだったのかもしれない。
辛くない仕事なんて、
ほとんどない。
問題は、仕事が辛いことじゃなかった。
辛い時間の外に、
楽しい時間を作れていないことだった。
辛さを減らそうとするより、
楽しさを増やす方が、
ずっと簡単だったのかもしれない
全部を変えようとしなくていい、
と思う。
ただ一つ。
家に帰ったら、
仕事のことを考えるのをやめる。
好きなものを食べる。
好きな音楽をかける。
好きな人と話す。
それだけでいい。
辛さは減らなくていい。
その外に、温かい時間を作る。
たぶん、そっちの方が、
長く続けられる。
たぶん、だけど。

バランタイン12年をもう一口飲んだ。
飲みやすい。
癖がない。
でも飲み続けると、
じわじわと温かくなる。
辛さが消えるわけじゃない。
でも、温かい時間が増える。
そういう酒だと思う。
グラスが空いた。
今日はここまでにする。
