
ただ食べて、ただ笑う。
朝、瞑想をして、レッスンをする。
長く続けている生徒さんばかりで、画面越しにも深いところへ入っていくのが伝わり、クラス全体にひとつの流れができていた。
パソコンで細々した仕事を済ませて、お昼にする。
かぼちゃの煮物と納豆ごはんを食べていると、娘からLINEが届く。
赤子が離乳食を食べている動画だった。
あむあむと一口食べるごとに、
「わぁ、上手!」
「おいしいねぇ」
娘夫婦の歓声が上がる。
赤子は「あーあー」と声を出しながら、にこにこと食べている。
ただ食べるだけで。
ただ笑うだけで。
こんなにも褒め称えられる。
朝起きて、すごい。
ご飯を食べて、上手。
よく寝て、えらい。
試しに自分にも言ってみる。
「納豆、上手に食べてすごい!!」
いい気分だ。
何かを成し遂げなくても、役に立とうとしなくても、朝起きて、ご飯を食べて、それだけでえらいのかもしれない。
納豆で褒め称えられた私は、すっかり気分をよくして、午後の仕事にとりかかる。
パソコンに向かい、合間に絵を描き、またレッスンをする。
ひと区切りついたところで、気分転換にキッチンへ立つ。
友だちにもらった大きな握りこぶしほどある柿。
半分はドレッシング用にオリーブオイルとにんにく、レモン汁と一緒にブレンダーにかけて、ひとくち味見する。
にんにくが少し立っているけれど、酸味と甘味はいい感じ。
瓶に注ぎ、「11月10日 柿ドレッシング」と書いて冷蔵庫へ。
残りの柿は、抹茶といただこう。
キッチンに立ったまま茶筅を温め、抹茶粉を漉しながら深く息を吐く。
お湯を注ぎ、しゃかしゃかと泡立てる。
肩の力を抜いてやわらかなリズムで。
抹茶がなめらかになっていくのを指先で感じる。
抹茶と柿をお盆にのせてテーブルへ。
抹茶の深い緑と、柿のあかるい橙が並ぶ。
夕刻を知らせるチャイムが鳴る。
外を見ると、夕焼けが建物を淡く照らしていた。
部屋の中が少しずつ暗くなる。
今日も生きてえらい。