
休日の匂い
私は、母が窓を開けてくれた時、洗濯物の匂いやら、食べ物を思わせる匂い、太陽の匂いなのか、草花の匂いなのか、それがマーブルのように織り交ざって香る、とっても幸せな気持ちになる匂いを、主に休日の匂いとしている。
新品の衣料品の匂いがするような気がするし、子どものころ公園に遊びに行った時のような匂いがするような気もする。歩いて15分くらいのところにあるパン屋さんの焼きたてパンの匂いな気もする。とにかく、休日の匂いは、くるくるとその姿を変え、気まぐれで、そしてありったけの幸せが詰まっている。
休日の匂いと言ってなんだが、全くこの匂いがしない休日もある。それは大抵、私がテストだったりバイトだったりで余裕がない日。何かの準備に追われているとき。そして、繰り返される日々に果てしなさを感じて、虚しさを感じるとき。
そうそう、休日の匂いは休日に限らず漂っているのかもしれない。
この間、用があって出かけて、電車の中で「休日の匂い」を感じたことがある。席に座れて、スマホをしまって、揺られる感覚が心地よくて、ふと車窓から見える景色がとても綺麗だなと思ったときに。ものすごく晴れていて、電車に人もそれほどいなくて、水がキラキラしていた。
過去を振り返るたびに、余りの過ぎた年の長さや、自分が関わってきた出来事の量に、驚く。未来を見据えるたびに、だんだん視界が曇る霧の中にいるような気がして、掴みどころがないような不安に、襲われる。
けれど、ふと顔を上げれば、意外と時間はゆっくり流れている。そのことに気づきさえすれば、休日の匂い、もとい、幸せの匂いを感じられるのかもしれない。