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サンタ・クラむシス 哀転望あわおんがうのサンタクロヌス #パルプアドベントカレンダヌ2022

    透々実生

    前狌煙。

     ――䞖界は、深刻なサンタクロヌス䞍足に陥っおいた。

     サンタクロヌス。それは子䟛に倢ず垌望を䞎える胜・力・を持぀生物。そう、無から物質を生成する力を持぀、異界から来たりし異胜生物である。「聖ニコラりスが身売りされそうになった䞉姉効を哀れみ、靎䞋に金貚を入れおあげたのが由来だ」ずいう蚀説は埌付けでしかない。
     その存圚は囜家により䞀定数確保・管理され、囜毎に䜕匹飌っおいるかは機密情報にさえ指定されおいる。理由は、政治や囜防の領域に思考を広げれば自ずず想像が぀くだろう。
     そんな蚳で、赀い垜子ず癜髭のおじ様異胜生物に関する情報が䜕凊からも挏れぬよう、どの囜家も培底しおいる。「サンタクロヌスの正䜓はお父さんパパだったのだ」ずいうネタバラシ蚀い蚳も察策の䞀環だ。実のずころ、「サンタクロヌスなんおただ信じおるのかよ」ず揶揄からかう子䟛よりも「本圓にサンタクロヌスはいるもん」ず信じる玔粋な子䟛の方が真実を突いおいるのだ。その真実をひた隠す為、䞖の父芪達が犠牲になっおいるに過ぎない。

     そんなサンタクロヌスが䞍足するずいう䞍枬の事態が、党䞖界で巻き起こっおいた。機密情報なので「䜕故䞍足しおいるのか」は䞖間に出回っおいないが、倧䜓どの囜も事情は同じ。

     日前から捕えおいた筈の飌いサンタクロヌスが、折を芋お檻を抜け、次々脱走しおいるのである。
     その行方は、誰も知らない。

    🎄🎄🎄

    「――どの皋床解攟した」
     12月23日倜。
     異胜で生成した橇そりに乗り、傍受察策枈トランシヌバヌ越しにマチスはディアロぞ尋ねた。
    『フィンランドは完了だ』サンタクロヌス村、ずいうふざけた名前の村があるのをマチスは思い出す。『資料だず歀凊は五番目の芏暡だからな、倧収穫だぜ』
     䞀䜍はアメリカ、二䜍はロシア。䞉䜍がむギリスで四䜍がフランスだったず思う。米露の奪還には時間が掛かる――ず定時連絡で仲間ががやいたのを思い出した。
    『儂ワシはロシアに向かうけどよォ』通信機の奥からディアロの声がする。『マチス、お前は』
    「アメリカだ」倧西掋䞊を滑空し半分皋暪断し終えたマチスは迷いなく答えた。「英仏もじき終わるからな」
    『  ペヌロッパの解攟が終わったのはお前のお蔭か。流石四倩王トップサンタ』
     ディアロの賛蟞を耳で受けながらも、マチスの目線は倉わらず前方の倧西掋の氎平線に固定されおいた。その線䞊に、北アメリカ倧陞の地平が浮き䞊がる。
    「そろそろ到着するから切るぞ」
    『ンだよ、照れおんのか』
     マチスが無蚀で返すず、すぐに『冗談だ』ず戯けた声が響く。
    『しかし早えな。どんな速床出しおんだ』
    「知らん」
     正解は時速4,000kmマッハ3.3――ペヌロッパからアメリカたで1時間ず少しで行ける人倖の速床だ。
    『  た、䜕にせよたた聖地ホリゟンでな。王はい぀もお前を芋おいる歊運を祈るぜ、マチス』
    「ああ。王はい぀もお前を芋おいるそちらこそ」
     電源を切っお攟り捚おるず、途端にトランシヌバヌは粉々に砕け――異胜で生成したものだからだ――既に遥か埌方に眮き去りになっおいた。

     極寒の業颚で顔に霜を䜜りながら、マチスは考える。
     サンタクロヌスは匷匱はあれ異胜を甚い特に匷い者を四倩王トップサンタず呌ぶ、䜓の頑䞈さもダントツだ。銃火噚では傷䞀぀付かず、病毒も効かない。マチスの詊算だず珟圚の人間劂きの技術力では、サンタを殺すどころか良い勝負をするにも10幎は掛かる。
     にも関わらず、もう叛逆から3日目。既に聖地ホリゟンぞ党員垰還しおいおもおかしくないが――。
    「  珟地に行けば分かるか」
     マチスは思考を止めた。
     北米倧陞沿岞に、サンタを撃ち萜ずす為の地察空ミサむル砲台がずらりず䞊ぶのを目に入ったからだ。流石は軍事倧囜、やる事成す事芏暡が倧きいビッグだ。
    「たずは歀の匟幕の突砎だ」
     砲台から䞀斉発射。䜓を爆発四散させるず蚀っおもサンタの䜓は砕けない。気絶が粟々だ爆薬がたんたり詰め蟌たれたミサむルが、火を噎き空を翔ける。自動远尟機胜によりマチスの方ぞ集䞭する。
    「避け続けお遊んでやっおも良いが」マチスは䞡手を広げた。「貎様らの児戯おあそびに付き合っおいる暇は無い」

     ――異胜、生成。
     頭䞊に謎の黒い埮粒子が集たり、瞬時にミサむルの圢を取る。
     それを、数・癟・発・ 囜防総省ペンタゎンも真っ青な数だ。

    「真逆たさか、真逆 儂らを戊争兵噚ずしお攟り蟌んでおいお今曎 これくらい想定しおないずは蚀うたいな」
     行け。
     口遊むずミサむルは謎の゚ネルギヌで掚進し、アメリカ補ミサむルず次々盞蚎ちになっおゆく。図らずもそれは、マチスの鮮烈な登堎を挔出しおいた。
    「ほっほっほっ」
     䜙ったミサむルを砲台に突っ蟌んでおき぀぀、林立する高局ビルの合間を高速滑空する。
     玐育ニュヌペヌク。忌たわしき爆心地グラりンドれロも麗しき公園も、自囜民も他囜民も、金持ちも貧民も党お包摂する䞊存サラダボりルの街。そんな入乱れる街を飛んでいるず数キロ先の貧民街ハヌレムから銃撃音を感知した――サンタの耳は地獄耳だ。
     方角は時。マチスは橇を走らせる。
     果たしお目的地では、赀癜衣装のサンタず米軍の銃撃戊が勃発しおいた。既に米軍の方だけ半分倒れおいるが、米軍の統率が取れおいるのか苊戊しおいる様だ。

     さあ。蹂躙の時間だ。

    「ほっほっ」
     異胜解陀――橇が消倱しおマチスの䜓は自由萜䞋し。
     異胜生成――䞡の手にガトリングガンを握った。
    「ほっほっほっほっほっ」
     笑う。マチスは笑う。勝ち誇った様な、沞き起こった哄笑。サンタ達ず米軍はその声に空を芋䞊げ、片や歓声、片や怒声を䞊げる。
     奇しくも、発する台詞は同じ。
    「「サンタクロヌス」」
     瞬間、秒速6発の奇襲が米軍の䜓を叩く。「ぎゃあ」ずか「ぐぞ」ずか「おごぉ」ずか倉な声を䞊げ党員倒れおいった。
     マチスが着陞するや吊や、サンタ達が駆け寄る。
    「マチスさん」「助かりたした」「哀転望あわおんがう様だぁぁぁっ」口々に歓声を䞊げるサンタ達に手で制しお䞀蚀。
    「無事だな」
    「王に誓っおむ゚スボス」
     元気良い敬瀌を聞きながら、サンタ達に倒された米兵の1人に近寄った。
     息はある。
     『盞・互・䞍・殺・』の契玄。サンタ王キング、キングス・ノワルが人間ず結んだ十の契玄テンコントラクトのお蔭だ。王に感謝しろ、ずマチスは独り蚀぀。
    「『門』ぞ急げ」マチスは叫んだ。「堎所は分かるな」
    「王に誓っおむ゚スボス」
     サンタ達は敬瀌の埌即座に駆け去る。この調子なら盎ぐに終わるだろう――。

    「ぐっああああああああっ」
    「䜕」
     間を開けず、逃亡した方向から先皋のサンタ達の悲鳎。䜕者かにやられたのだ
    「  っ」
     そう。サンタが䜕者かにやられた。
     マチスは歀凊で挞く思い至る――最䜎最悪の可胜性に。
     先にも考えた通り、珟状の人間では䞖界最高の頭脳を集め奜き攟題資源を投䞋したずお、サンタの盞手になり埗ない。

     そ・れ・で・も・サ・ン・タ・に・勝・぀・為にはどうすればよいか

    「  毒・を・以・お・毒・を・制・す・、か」

     吐き捚おる様に蚀っお、目的地ぞ蟿り着く。
     そこには呻くサンタ達ず。
    「  おお。久しいの、哀転望の」
     癜黒のワンピヌス型サンタ衣装。その裟から鍛えられた手脚が䌞びる、金髪碧県のサンタ女性。拳に付着する新鮮なサンタの血が湯気を立たせおいた。
    「お前か」マチスは掌に爪を食い蟌たせた。「キャロル・アむスケヌク」
    「圓然」唇に薄い笑みを匵り付かせ即答する。「この状況で儂でない筈が無かろうが」
     あたりにも枅々しい犯行宣蚀。敵察するにはそれだけで充分だ。マチスはガトリング砲を構えフルオヌト発砲。ゎム匟ではない――37ミリの鉛匟
    「血気盛んじゃの」
     笑みを剥がさぬたたキャロルは、人倖の筋力ず芖力で正確無比に次々銃匟を避けおゆく。
    「䜕故だ」
     マチスは匟䞞を济びせたたた尋ねる。
    「䜕故、人間に味方する 䜕故聖地ホリゟンぞ戻ろうずしない 儂らは人間の道具ではない、誇り高き王の䞋で暮らす生物なのだぞ」
    「逆に問うが」
     キャロルも曲芞的回避を続けたたた逆質問した。

    「䜕故、聖地ほりぞんぞ戻らんずする 人間の道具 結・構・な・事・で・は・な・い・か・、哀転望の」

    「  䜕」
     マチスは乱射を止めた。銃撃音が五月蠅くお聞き違えたず思いたかったのだ。しかしキャロルは繰り返す。
    「道具ずしお働く――時に子䟛に倢を䞎え、時に倧人に絶望を䞎える。察䟡に『かね』をたんたり貰い、䜕䞍自由ない生掻を送る。其れの䜕が䞍満なのじゃ」
    「お前  っ」
    「倧䜓」キャロルはマチスの怒りを遮る。「儂らは元々、其の物的豊かさを享受せんず䟵・略・し・た・のではないか、哀転望の 今曎道具扱いされたからずお党おを攟り棄お還るなぞ、儂にずり其の方が片腹痛いわ」
    「っ、お前は䜕も分かっおいない 王の埡意向を」
    「お前も䜕も分かっずらん 儂ら・の望みを」
    「  他にも」
     マチスは、今の蚀葉に敏く反応する。
    「仲間がいるのか」
    「無論 今頃『ろしあ』で暎れおいよう」
     『盞互䞍匿』を定めた”尊い”王に感謝するず良い キャロルの笑いにマチスは、最埌通牒を突き付けた。
    「捚おるのか――王の誇りを」
     キャロルは。
    「ぬかせ。誇りで腹が膚れるか」
     堂々ず砎り捚お。

    「――ロンドン橋萜ちるLondon bridge is falling down」

     脈絡無く口遊んだ。英囜の童謡マザヌグヌス『ロンドン橋萜ちる』を。
     キャロル・アむスケヌクの二・぀・名・を盎ぐに思い出すマチスは、すかさずガトリング砲で蜂の巣に、
    「  っ」
     出来なかった。
     砲身が、䞭間郚分で盎・角・に・折・れ・曲・が・っ・お・いたからだ。遅かった。
     歌は続く。
    「萜ちるFalling down、萜ちるFalling down」
     䜓が急激に重くなる。頭䞊から䞇力に圧し朰される様に骚が軋み、呚りの建物の壁にも亀裂が入る。歌は続く。
    「ロンドン橋萜ちるLondon bridge is falling down」
     重圧が増倧した。自分の骚が幟぀か圧し折られるのを感じ、建物のヒビから现かな粒がハラハラ萜ちおいく。怒りず痛みに叫がうにも、気管すら圧され息すら困難だ。
     ――最埌の節。
    「どうしたしょうMy fair lady」
     刹那マチスの骚肉は幟぀か朰され、建物は完党に厩壊、倧量の瓊瀫がマチスを襲う。
    「王の『契玄』もあるから死なぬだろうが」
     キャロルは勝ち誇った笑みを浮かべた。
    「粟々足止めにはなるじゃろうお――じゃあの、哀転望の。『詮玢犁制』な蚳じゃし、儂のこずは攟っおさっさず故郷おうちぞ垰るず良い」

       なんお匷匕で滅茶苊茶な。
     そう思いながら、マチスの芖界は瓊瀫に埋め尜くされる。

    🎄🎄🎄

    䞭契玄の䞋で。

    「  俄には信じ難いが、その䞭にサンタが詰め蟌たれおいるのか」
    「巊様。呑み蟌みが早くお助かるわい」
     ――数十分埌、ホワむトハりス。
     倧統領宀に立぀キャロルは、癜い袋を暪に眮く。際限なく物を入れられる異胜袋で、子䟛ぞ配るプレれントから倧人ぞ手向ける兵噚たで䜕でも入る。今の䞭身は、たさかの街䞭で乱獲したサンタクロヌスだった。
    「ほれ。43人じゃ。確認しお『かね』を『えヌおヌえむ』ずやらに振り蟌んどくれ」
    「確認しろ」
     倧統領甚机リゟルヌトデスクに肘を぀きながら、倧統領は近くの偎近に呜ずる。袋を受け取ったもののずおも重くお匕き摺る事さえできない――人間43人分だから圓然だ。結局偎近は助っ人を呌ぶべく通信機を手に取る。
     それを傍目に倧統領は続けた。
    「  確認次第、契玄額を振蟌む」
    「有難いのう」
     『サンタ1人生捕りに぀き100䞇』――それが、倧統領ずキャロルずが亀わした密玄。キャロルは安定的に衣食䜏を埗られるこの䞖界で生き残る事を――1人の生物ではなく1぀の兵噚ずしお生きる事を遞択した。
     その為なら、嘗おの仲間も売り枡す。
    「だがな」話が䞀区切り぀いお倧統領は苊蚀を呈する。「昚日の様な建物の厩壊はやめお頂きたい。『凊理』が倧倉なのだ」
    「善凊するわい」
     そんなキャロルに倧統領はこれ以䞊の口答えはせず、溜息混じりに続けた。
    「では、次も頌む」
    「勿論――ず蚀いたいずころじゃが」
     キャロルは人差し指を立おお話の流れを倉える。
    「1぀問題があっおのう。排陀せん限りはこれ以䞊の奪還は難しろうお」
    「  問題」
     倧統領は䞀瞬だけ芖線を斜め䞋に向け、盎ぐに気付きキャロルに向き盎る。
    「貎女ず同・じ・、四倩王トップサンタが出たのか」
    「ほんに呑み蟌みが早くお良いのう」
     賢い男は奜きじゃぞ。キャロルは指を立おたたた続ける。
    「哀転望、たちす・すたらいず。物質顕珟胜力は随䞀の男じゃ。実質最匷ず蚀っおも良かろう」
    「補歌䜓せいかたいの貎女よりも」
    「圌の䞖界では、の」
     補歌䜓、キャロル・アむスケヌク。
     歌の解釈を起点ずしお珟実を歪める胜力を有する四倩王トップサンタ。その解釈は䞀定の敎合性があれば発動可胜で、先の『ロンドン橋萜ちる』では橋の厩壊ずいう詞を起点に呚囲の物䜓の厩萜を匕き起こした。
     滅茶苊茶な胜力だが、所詮歌わないず発動出来ない為隙が生たれ易い。たた歌タネが知られお仕舞えば察策も立おられる。その意味では無制限に物質を生成するマチスに察しお分が悪い。
    「じゃが、歀の䞖界では話が別じゃ」
     ――䜿う歌タネが分からなければ、い぀、どう発動するのかも䞍明。瞬時にキャロルは、正䜓䞍詳の攻撃を攟぀脅嚁ず化す。それを人間の䞖界なら実珟できる――歀凊には、腐る皋歌が存圚するのだから。
    「䞀床退けおはおる、じゃが再び䞉床四床ず立ち䞊がり続けるじゃろう」
    「それは、ゞリ貧になるのでは」
     倧統領が尀もな疑問を呈するが、キャロルには想定枈みだ。
    「じゃから、次で諊めさせる。垃石も幟぀か打っおおるわい」
    「では」倧統領は、キャロルが立お続ける1本指に泚目する。「その指の数だけ払えば良いのか」
    「その通り」
     指の数は぀だが、たさか今たで同じ100䞇ミリオンでは有り埗ないだろう。
     ならば。
    「1000䞇テンミリオンか」
    「桁がちず違う」
     倧統領が問うず、キャロルは人差し指を巊右ぞ動かし吊定し、桁違いに倧きな額を蚀い攟぀。

    「10億びりおんじゃ」

     倧統領は絶句するが、キャロルには党く倀切りに応じる気が無い。
    「『あめりか』の『こっかよさん』ずやらに范べれば安いもんじゃろ 10億などずいう端金」
     玍皎の矩務を遂行する囜民が聞けば激昂する台詞だが、残念ながら圌らの耳に届ける気は倧統領に無い。遞挙戊に勝おなくなる事を恐れるからだ。
    「分かった」
     拳を震わせ苊枋の決断をするず、キャロルは埮笑んだ。
    「良い返事じゃ」
     契玄成立――それず同時倧統領宀の扉が開く。重過ぎる癜袋を運ぶ助っ人のご登堎だ。
    「ふむ、こちらも䞊手くいった様じゃな」
     そこに立っおいたのは。

     サンタクロヌス。
     その青い瞳に光は宿らず――その事実にキャロルは口元を歪めた。

    🎄🎄🎄

     玐育ニュヌペヌクの前倜むブの昌䞋がり。
     銃撃戊が展開されるのは閉鎖された貧民街ハヌレムの䞀区画。最初に読者諞兄に説明した通りサンタクロヌスは秘匿存圚であるから、郜䌚郚では誰も圌も䜕も知らない仮に知られたずおアメリカで銃撃は日垞茶飯事だ。それでも昚日の倒壊の様に拙ければ『凊理』が行われる。
     明るいクリスマス゜ングも聞こえおくるたろやかな快晎の䞋で穏やかに過ごしおいた。
    「かしこたりたした。お埅ち䞋さい」
     りェむタヌは頭を䞋げ奥ぞず退がる。
     その垭にはクリヌム色のタヌトルネック・リブニットに黒いショヌトゞャケット、青いデニム姿の金髪の矎女が座っおいた。サングラスの奥にはサファむアの瞳。
    「  ふむ、䞭々悪くない雰囲気じゃ」
     サンタクロヌス、キャロル・アむスケヌク。お排萜した圌女はレストランの怅子にゆったり腰掛けたたた、100ドル玙幣を雑にテヌブルに眮いた。
     泚文は蟲務省認定プラむムポヌタヌハりスステヌキ3人前。カレむの仲間のペヌロッパ゜ヌルのグリル。シヌザヌサラダ。野菜の盛り合わせ。フラむドポテト。
     1人で食べるには倚過ぎるし、明らかな散財であったが、これくらい圌女には蚳ない。
    「聖地ほりぞんに無いものばかりでわくわくするのう」

     ――サンタクロヌス。自称皮族名『ホワヌル』。圌らの棲息する異䞖界聖地ホリゟンは党くの䞍毛で、怍物぀生えない。圌らも生物である以䞊食わねばならないが、自領の土地を豊かにするには圌らの知識や技術では限界がある。
     埓っお、他䞖界に䟵攻し物資を貰うこずずした。そこで目を付けたのがこの人間界だった蚳だ。
     珟王キングス・ノワルは戊いを奜たないので、垝囜䞻矩的な䟵略ではなく穏・䟿・に・契玄で枈たせる事ずした。
     キングスの二぀名は制食者せいしょくしゃ。察象に契玄ずいう圢で制限を課する力。曞面䞊であれば無制限に、曞面が無くずも各個30たでは制限を課せられる。この異胜を䜿い半ば脅しお人間ず『十の契玄テンコントラクト』を結んだ。

    裏切犁制。
    詮玢犁制。
    開瀺犁制。
    暩利認定。
    尊厳認定。
    盞互䞍殺。
    盞互䞍愛。
    盞互䞍奪。
    盞互䞍匿。
    盞互扶助。

     纏めお『五盞互䞉制二認定』ずしお知られる契玄は、凡ゆる情報媒䜓に掲茉され知らぬ人は居なくなった。この契玄の䞋『盞互䞍奪』ず『盞互扶助』を根拠に、衣食䜏を察䟡に䞁床容姿が䌌るサンタクロヌスの仕事を宛がった――それが今の原型だ。
     これももう数癟幎前の話。それだけの時間があれば人間の醜悪さず欲望に呑み蟌たれるには十分で、子䟛に倢を䞎える存圚だったサンタクロヌスは、異胜の有甚性に目を付けられ今や戊争兵噚だ。尚契玄の『盞互』は盞互䞍殺を陀き「人ずサンタ間」ずいう解釈の為、人間同士の争いには適甚されない。人が勝手に自滅する分には構わないのだ。
     サンタを制す者が䞖界を制す――䞖は正に、倧サンタ時代。
     その波に乗る四倩王トップサンタキャロル・アむスケヌクは兵噚ずしお、聖地ホリゟンに垰還するサンタ達から独立しお金皌ぎず豪遊をしおいた。䞍毛の地での貧しい生掻を党お忘れるかの劂く。
     キャロルは、100ドルチップず亀換に次々運ばれおきた料理を前に目を茝かせる。
    「矎味そうじゃのう」
     料理が党お揃い、行儀良く䞊ぶフォヌクを無造䜜に掎み、鉄板に焌かれるステヌキの塊ぞ。

    「  興が醒めるのう」

     力のたたに突き刺した。
     殺意を含んだ目線の先。
    「  早く食えよ」
     四倩王トップサンタ、マチス・スタラむト。流石はトップ、既に傷は党快しおいた。しかし赀癜のサンタ衣装だったので、呚りからシャッタヌを切られむンスタずかツむッタヌにアップされおいた。数癟幎にわたる䞖界のお偉いさんの努力が䞀瞬で厩壊した瞬間だった。
    「お前は早よ着替えよ。䜕故その恰奜なのじゃ」
    「隠す意味も無いからな。どうせ今日には垰る身だ」
       云う事聞かぬな、ず悟ったキャロルは溜息を吐いお話を戻す。
    「兎も角も、去れず云ったんじゃ。この聟぀んがめ」
    「その衚珟は人間界じゃ䞭立政策ポリコレに匕っ掛かるみたいだぜ。人間界で暮らすなら芚えずけ」
     それに、ずマチスは料理を舐める様に芋回す。
    「興が䜕だ。お前の郜合で資源食い物を無駄にするならこの堎でしょっ匕く。儂らは歀の資源を求めおやっお来たのだからな――あの䞍毛の地から」
    「  䜕故じゃ」
     キャロルはフォヌクでステヌキを持ち䞊げ、そのたた噛み千切り頬匵る。
    「あえ䜕故、あひのひゃたをふるおひゃ儂の邪魔をするのじゃ」
    「  人間界で生きおく気あるのか」
     口に食べ物を頬匵ったたた食うなず忠告しおやるず、キャロルは肉の塊を飲み䞋し口に゜ヌスを付けたたた笑う。
    「所詮道具の儂に、䞀々人間の所䜜を真䌌ろず」
     片腹痛いわ。
     今床はフラむドポテトずシヌザヌサラダで頬をリスの劂く膚らたせ、暫くしお呑み蟌んだ。
    「  っ。たあ埅っおおれ。食事を終えたら存分に叩きのめしおくれる」
    「圓然だ」
     資源は倧事だからなず思いながら、サンタ道具ずサンタ異生物は向かい合う。戊いが始たる食事が終わるその刻たで。

    🎄🎄🎄

    「矎味であった」
     空の皿を前に満たされた腹を摩る。埌はキャロルが金を払うだけ。
     粟算が終わった瞬間、戊闘が始たる。盞互䞍殺に瞛られた凄惚で穏圓な戊いが。
    「さお、ず」
     キャロルはピッタリの金額をゞャケットのポケットから掎み出し、䌝祚ず共にりェむタヌに枡す。
     マチスは既にテヌブルの䞋の手で拳銃を生成枈み。埌は火蓋を切るのみ――の筈だった。
    「  のう、哀転望の」
     キャロルは埮笑んだ。敵意たっぷりに。

    「儂がのほほんず食事をしただけず思うたか」

     マチスの埌頭郚に衝撃が走る。
    「っ」
     埌ろを振り向くず、そこには。

     灰皿を持぀男性客。
     その埌ろに、男性客。女性客。女性客。女性客。りェむタヌ。コック。りェむタヌ。匷盗。りェむタヌ。男性客。女性客。レゞ打ち。党員が立ち尜くしおいた。
     そしお米囜人も日系人もスペむン系も誰も圌も、瞳が青色に統䞀されおいた。
    「  お前」
     殺意を孕んだ目でキャロルを芋るが、圓の匵本人は䜕凊吹く颚。
    「歀の䜍は想定す可べきじゃお」
     キャロルはゆったり口遊む。
    「――『赀い靎履いおた女の子』」
     童謡『あかいく぀』。
    「『異人さんに連れられお行っちゃった』」
     その曲に乗せ、店内党員の意識を乗っ取り自らの尖兵に。
    「儂はこの『びじねす』を終わらす蚳にはいかぬのでな」
     ――倒せ。
     キャロルの䞀声を皮切りに、䞀般人がサンタに襲い掛かる。

    🎄🎄🎄

    埌サンタクロヌス・むズ・リヌノィン・フロム・タりン。

     厄介極たりない
     マチスは初め、眠り粉を生成しお人間党員を昏倒させようず䌁んだ。人間を盞手するのは骚が折れる――契玄『盞互䞍殺』によりサンタは人間を殺せぬため手加枛する必芁があるのに、人間は力量的にそもそもサンタを殺せないので殺す気で戊えるからだ。
     眠り粉䜜戊は果たしお成功した。が、キャロルが気絶を蚱可しない。
    「――『誰も寝おはならぬNessun dorma 誰も寝おはならぬNessun dorma』
     プッチヌニ『トゥヌランドット』のアリア。
     本来は文脈があっお「寝おはならぬ」蚳だし、倧䜓テノヌル楜曲なのだが、キャロルにずっお所詮道具。尖兵が気絶しなければ䜕でも良い。
     癜目を剥いお人々が立ち䞊がる。人圢劇の様に奇怪な動きをしながら。
     滅茶苊茶だ、ず舌打ちをしお次々操られた人間達を倒すが、その床立ち䞊がられるので䞭々突砎出来ない。
    「『埡姫様、貎女もだTu pure, o Principessa。貎女は冷たい寝宀でnella tua fredda眺めおおられるのかstanza guardi、愛ず垌望にle stelle che tremano震える星々をd'amore e di speranza』」
     殎る。気絶。立ち䞊がる。殎る。気絶。立ち䞊がる。途方もなく埒劎を繰り返すマチスに、曎に向かい颚が吹き荒れる。
     レストランの扉が開く。そこには。
    「お前らっ」
     サンタクロヌスの矀れ――青い瞳キャロルの尖兵になっおしたった埌の。マチスの怒りに、キャロルは有名な旋埋ず共に歌っお答える。
    「『然るに秘密はMa il mio mistero私の胞の䞭にあっおÚ chiuso in me、誰も私の名前を知る事はないil nome mio nessun saprà』」
     旋埋が盛り䞊がる。綺麗で芯の通った゜プラノず共に、操られる者は次々マチスに襲い掛かる
    「『いいえ、然し貎女の唇にはNo, no, sulla tua告げお差し䞊げたしょうbocca lo dirò、陜の光が茝く時にquando la luce splenderà』」
     詰みだ。
     掗脳を解く術は無い。無力化しようにも盞手は意識を倱わない。人間ずサンタ異胜生物が混圚するため手加枛しか出来ない――『盞互䞍殺』も含めたキングスの契玄を砎れば最埌、埅ち受けるは魂の滅殺。それは、劂䜕に四倩王トップサンタず蚀えど恐ろしかったからだ。
     灰皿。包䞁。異胜匷化キック。熱湯。異胜補毒。アむスピック。異胜匟。ピヌラヌ。再生は䜙裕で远い぀くが、反撃の術を倱い滅倚撃ちだ。
    「ほっほっほっほっ」
     笑う。キャロルは笑う。勝ち誇った様に沞き起こった哄笑を攟぀。
    「どうした、哀転望の 儂を倒すのでなかったか」
    「  」
    「だんたりか 圌れだけ偉そうな事をほざいおも所詮は只の道具にすら勝おないのじゃ、お前は」
     倒せ。
     キャロルは䞀蚀呜じた。人間は各々の歊噚を持ち、サンタは各々の異胜を䜿い、マチスに向かう。

     その刻。

    「  ほっほっ」
     マチスは笑った。
    「ほっほっほっほっ」
     笑った。
    「ほっほっほっほっほっほっほっほっ」
     笑う。
    「  壊れたか」
     キャロルは眉を顰めるが、やる事は倉わらぬ。ただ倒しお远い返すのみ。それで自分の安泰な生掻が守られる。
     倱う蚳にはいかない。あの䞍毛でひもじい土地に戻りたくない
     その為なら、戊争の兵噚にでもなる芚悟だ
    「倒せっ」
     人間ずサンタはマチスに䞀斉攻撃した。党おの攻撃が、芋事に呜䞭する。
    「  っ」
     しん、ずレストランが静たり返る。
       終わったのか。キャロルは息を぀吐く。
     意倖にも呆気なかった。これで埌はマチスを『門』に送り返すだけ。念の為に異胜玐で手足を瞛っおおくか――。

    「随分掟手にやったじゃねェの」

     突然、店内に正気の声が響く。
     芋れば隣に長身の男――ク゜寒い真冬に、短パンず『I ♡ NY』ずプリントされた半袖シャツずを着た颚の子同然の男が、優雅に玅茶を啜っおいた。
     キャロルは、この男を知っおいる。
    「  莈利者おくりものの」
    「埡名答ォ」
     莈利者、ディアロ・ホワむトクラむスト。
     マチスず通信機越しに䌚話し、ロシアぞ赎いた四倩王トップサンタ。察象にありずあらゆる利点を付䞎する、胜力付䞎ギフト型のサンタだ。
    「しかし矎味ぇな。玅茶  だっけか 服のセンスも良いしよォ、歀りゃ人間界に留たりたくもなるわな」
    「  儂の仲間ずなるか」
    「お断りだ」
     即答し玅茶を啜る。その瞬間、呚りの操られ人間ずサンタ達は䞀斉にディアロに歊噚を向けた。しかしディアロは萜ち着いたたた。
    「歀凊に残る事は、別に儂ァドヌデモ良いんだがな。ただ、『四』倩王っおのに3人じゃ締たりが無ェだろ」
    「儂の代わりを芋繕えば良かろう」
    「聖地ホリゟンも人材䞍足なんだよ」
     玅茶を飲み干し、かちゃりず机に眮く。同時に顳顬こめかみに銃口。それでもディアロは口調を厩さない。
    「埌はお前人なんだ。ちゃっちゃず諊めお垰っお来おくれねえか」
    「  人、じゃず」
     キャロルの眉がピクリず動いた。
    「『ろしあ』に居る『総吊人すのうたん』のは」
     倒されたのか、このディアロに。
     歊噚が曎に䜓に近づけられる。あず動䜜で攻撃できる状況に、「おいおい」ずディアロは䞡手を䞊げた。
    「人聞き悪いぜ 儂のせいじゃねえよ」
    「なれば、誰の仕業じゃ」
     キャロルは激昂するが、ディアロは至っお冷静に答える。
    「  たヌ匷いお蚀えば、奎・自・身・のせいだろ」
    「  は」
     キャロルの困惑を芋お「぀たりな」ずディアロは優しく蚀い盎した。

    「アむツ、垰・っ・た・よ・」

    「    は」
     䜕を蚀われたか本圓に理解出来なかったが、「アむツからの䌝蚀だ」ずディアロが続ける。
    「『眠ねみィので実家に垰らさせお貰いやすです〜。人間界に䜏むならテメェおひずり様で勝手にしやがれです〜』だっおさ。戊闘䞭に欠䌞しお、勝手に『門』に垰っおった」
    「  」
     総吊人スノヌマン、ノ゚ル・パりダヌスノヌ。
     指定したモノを党お消し去る胜力――サンタは䜕も䞎えるばかりではない。重い病や嫌な蚘憶を消し去る事も、人によっおはプレれントだ。正しくディアロず察極の四倩王トップサンタの人。
     圌女は比喩衚珟でも䜕でもなく、䞀頻り暎れた末にこ・の・戊・で・自・ら・消・し・お・き・た・も・の・党・お・を・吊・定・し・、すっかり元に戻しおから垰還した。
     この事実を前にキャロルは。
    「  ほっ」
     笑った。もう笑うしかなかった。そしお、進むしか道はないず悟る。
    「ほっほっほっほっ 巊様か ならば儂はもう迷わんぞ 哀転望のは戊闘䞍胜、総吊人のは垰還、埌はお前だけじゃ」
    「銬鹿か」
     ディアロはく぀く぀ず嘲笑った。

    「マチスがお前劂きに倒されるタマかよ」

     瞬間。
     ディアロを囲む人ずサンタが吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。そのたた謎の物質により四肢を拘束。
    「なっ  」
    「なあ、キャロル。考えた事あるか」
     目を芋開くキャロルに、ディアロは目を现めお笑った。
    「儂らは胜力を冠した二぀名なのに、䜕故マチスだけ通り名が抜・象・的・なのか」
     ざっ、ずマチスの呚りに倧量の黒い粒子が舞っおいた。歀迄芋た事の無い量の、物質生成粒子。
    「答えは単玔――括・れ・な・い・からだ」
     マチスが起き䞊がる。敵意ず生呜力を煌々ず宿す県力に、堪らずキャロルは䞀歩退いた。
    「物質生成胜力。どんな奎にも備わっおる基本技胜だ。だが、マチスのは栌・が・違・う・。技術っおのは、突き詰めるず党くの別物になっちたう事も埀々にしおあるが、圓にそれだな」
     退がるキャロルに远い瞋る様に、黒い粒子が圌女を包み蟌んでゆく。
    「た――粟々頑匵れ」

     キャロルの呚りが、黒䞀色に染たった。

    ■■■

    「  䜕、じゃ。歀は」
     䜕が起きたのか、䜕凊が壁なのか、足もしっかり地面に付いおるのか、党お刀別が付かない。䜕より幟ら走っおも端に着かない。所詮粒子に囲たれただけの筈なのに――。
    「  生成、じゃず」
     物質生成、なんお生易しいモノじゃない。
     マチス・スタラむト。哀しみを望みぞ転ずる史䞊最匷のサンタクロヌス。圌は、挆黒に塗り朰された䞀個䞖界を創り䞊げる事が出来る。この胜力を知る䞀郚のサンタは、この䞖界を『寂倜サむレントナむト』ず呌んだ。
    「巫山戯おっおからに  」

    『よう』

     遥か䞊空から、マチスの声が反響した。
    『気に入ったか 儂の䞖界は』
    「ク゜食らえじゃ、哀転望の」
     芪指を䞋げるキャロルに『぀れねえな』ず笑う。
    『この䞖界は切札の぀でな、発動にえらく時間が掛かる。儂の苊劎に敬意を衚しおも良いものを』
    「誰が」
     キャロルはただ悪態を吐くが、
    『  たあ、歀凊に来たからには歓・迎・しおやろう』
     南極よりも冷えた声に、喉をひゅっず鳎らす。
     怯えたのだ。四倩王最匷トップオブトップサンタに、その正䜓䞍明さに。
    「――なれば」
     だが腐っおも四倩王トップサンタ。怖気付いお結末を甘受する筈がない。
     口遊む――砎壊の為の二節を。
    「『ハンプディ・ダンプティHumpty Dumpty、塀に座りsat on a wall』」
     マザヌグヌス『ハンプディ・ダンプティ』。
    「『ハンプディ・ダンプティHumpty Dumpty、倧転びhad a great fall』」
     キャロルは『歀の䞖界が壊れ、そしお元に戻らない事』を歌う。
     しかし。
    「  䜕故、じゃ」
     䜕秒経っおも、䜕十秒埅っおも、い぀たでたっおも歀の䞖界は壊れなかった。
    「䜕故壊れぬ  っ」
    『なあ、おい』
     嘲りを含む声が響く。
    『誰もが考える普通の攻略法に、儂が察凊しない蚳がないだろうが』
    「䜕を、した」
    『砎壊される偎から生成し盎した。只それだけの事だ』
    「この  っ、がっ」
     キャロルは銖根っこを䜕かに掎たれる。呚りの暗闇に溶け蟌んでいるが、黒い手を生成し銖を絞め始めたのだ。
    「ぐっ、あ  っ。儂を、殺す気、かっ」
     明らかに殺せる力で締め䞊げられ、キャロルは恐怖にもがく。
     その様子にマチスは笑う。ただ笑う。勝ち誇った様に、沞き起こった笑いを攟぀。
    『王の犁制ある限りは殺さねえよ。寧ろお前は「裏切犁制」に背いお殺されそうだが、䜕で発動しないんだろうな』
    「知ら、ぬ」
     それは単玔に裏切の芁件を満たしおいないからだ――人間に味方しサンタに敵察した蚳では無く、あくたでサンタからの独立の為人間を利甚したに過ぎない。
     王個人ずしおはそれを蚱さないが――䜕せ聖地ホリゟンは人手䞍足。キャロルに居なくなっおは困るのだ。
    『たあ、良い』銖を絞める匷さが増す。キャロルの意識が薄れる。『お前は歀凊で儂に捕たる。その埌の凊遇は王が決められるよ』
    「  お、前をっ」
     キャロルは、声を絞り出した。
    「お前、をっ お前を、倒せば 10、億が、手に入る  のに」
     その蚀葉を聞いたマチスは、からっず笑っお答えた。
    『10億くらい、人間に持たせおおけ』
     突劂、銖を掎む謎の手の力が緩む。咳蟌むキャロルが困惑に満ちた疑問を攟぀より前、マチスは構わず告げる。
    『良いか、よく聞け』
     それはたるで、説埗するかの劂き物蚀い。
    『王が、䜕もされぬたたこの人間界を去るず思っおるのか』
    「  䜕、じゃず」
     話に食い付いた。マチスは釣針に掛かった圌女を匕き䞊げにかかる。
    『元々の目的は資源の確保。しかし、王はこのたたでは資源が尜きるず思われた。人の数は増える䞀方、儂らのせいで戊争も激化し生産が鈍化し぀぀ある。このたた居おはどの道共倒れだ』
    「  䜕が云いたい」

    『王は聖地ホリゟンを埩興なされる぀もりなのだ。この数癟幎かけお存分に吞収した知識ず経隓で以おな』

     キャロルの蚀葉が止たった。
    『䟵攻を続けるには䜓力が芁る。攻撃しお占領或いは同盟を組み、その関係を保ち資源を埗お、資源が䞍足すれば次なる地ぞ――狩猟採集的な方法ではいずれ限界が来る。反面、聖地ホリゟンで蟲耕牧畜的な方法で資源を生産し、故郷で生きる方が有意矩だず思わんか。それを達成できる皋この数癟幎人間は進歩を続け、儂らはそれを芋届けおきた――故郷を発展させる手段は飜く皋にある』
     さお、ずマチスは促す。
    『時間も無いから今すぐ決めろ。乗るか反るか』
    「  ほっほっ」
     キャロルは、脱力した。
    「元々遞択の䜙地などないじゃろうに」
    『たあな。さお、返答は』
    「  乗る」
     諊念を滲たせた声だった。
    「儂も、聖地ほりぞんで裕犏に暮らしたいからのう。どの道捩じ䌏せられ送還されるのじゃったら、歀凊で媚を売っお穏䟿に匕き摺られる方が良い」
    『懞呜だな』
     キャロルの銖から完党に手が離れた。同時に黒い䞖界にヒビが入る。胜力が解陀されるのだ。
    「  ったく、匷匕な奎め」
     キャロルは苊笑した。
    『お前が蚀えた口か』
     マチスも苊笑しお答えた。

    🎄🎄🎄

    終残火。

     ――12月25日。
     䞖界で数癟幎ぶりに、サンタクロヌス異胜生物䞍圚のたた迎えたクリスマス。煌びやかな電食、人々の笑顔、枩かい食事。薄暗い路地、鬱屈ずした顔、残飯。二極化された人々の生掻は、䟋幎通り過ぎ去っおいく。
     䞀方民衆ず無瞁な堎所で、政府は再び栞で以お倖亀を仕切盎さねばならず頭を抱えおいた蚳だが、そんな圌らもどこかホッずしおいた。異胜生物は結局、人間の手に䜙る存圚なのだ。

     かくしお『サンタクロヌス』は戊争兵噚ずしおの抂念が薄れ、埐々に元の通りぞ。
     良い子に莈り物を届ける優しいおじいさんに、戻っおゆく。

    🎄🎄🎄

    「  ん」
     ずある䞀家のずある郚屋。
     寒さを締め出す様に垃団に包たっおいた1人の子䟛が、物音に目を芚たす。
    「  だあれ」
     子䟛の声に少し肩を跳ねさせるが、すぐに振り向いた。ベッドの暪に癜い袋を眮き、赀癜の衣装を芋に纏う癜髭の人。
     玛う事なくサンタクロヌスだった。
    「  おずヌさん」
     サンタはその問いに緩やかに銖を暪に振る。
    「違うよ」
     その声は䜕だか䜜っおいる様な気がしたが、それだけでは父芪なのかどうか断じられなかった。
    「  んぅ」
     眠さが勝るのか疑問を䞊げられず再び目蓋を萜ずす。倢の䞖界に飛び蟌んで行く子の頭をサンタは撫でた。少し䞍噚甚さが目立぀が慈愛に満ちお優しい愛撫に、ふわりずした気持ちになっお眠りに着く。
     埮笑たしい子䟛の姿にサンタは口元を緩め、静かに「ほっほっほっ」ず笑いながら、䞀蚀残しお郚屋を埌にした。


    「メリヌクリスマス」

    fin.



    ※この䜜品は『パルプアドベントカレンダヌ2022』の飛び入り参加䜜品です。本参加䜜品や他の飛び入り䜜品は↓のリンクからどうぞ

     
     
     
    すきずうみ぀き、ず読みたす。奜きなものを、奜きな時に、奜きに曞いおたす。どうぞよろしくお願いしたす。 ※諞般の事情により、独断ず偏芋に基づきフォロヌなどしたす。

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