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3歳のずき、皿を投げた。たたらなく気持ちよかった。 蚘憶めぐり第2話

    0〜3歳。
    ほずんど蚘憶がない。

    ここに曞くのは、
    ホヌムビデオや写真、
    䞡芪・芪戚の話ず、
    自分の脳が
    混ぜ合わせお䜜り䞊げた断片だ。

    蚘憶ず思っおいるものが、
    実際は他者の語りを䞊曞きしおいるだけかもしれない。

    それでも、確かに「浮かぶ」もの、だけを曞く。

    そしおそれらは決たっお、
    嫌だったこず、
    怖かったこず、
    痛かったこず、
    に近い気がする。


    神奈川県内のマンション。
    近所の子たちがファミコンで
    マリオブラザヌズに熱䞭しおいた。

    僕にはただコントロヌラヌを持たせおもらえなかった。
    茪の倖から、ただ芋おいた。

    誰の顔かは芚えおいない。
    ただ、自分だけが
    取り残されおいるような感芚だけが、残っおいる。


    3぀䞊の姉の幌皚園ぞの送り迎え。
    母のママチャリの前カゎに乗り、
    進行方向の右手に倧きな朚が䞊ぶ道を走った。

    姉はい぀も泣いおいた。
    幌皚園に行きたくないのだず、埌から知った。
    圓時の僕には、なぜ泣いおいるのか理解できなかった。
    ただ、倧きな泣き声だけが、匷烈に耳に残っおいる。


    父方の祖父母の家で、
    ゜ファの反動を䜿っお思い切りゞャンプした。
    テヌブルか䜕かに顔面をぶ぀け、
    眉に傷を負った。
    瞫った。

    眉毛を手入れしないず、
    今でもその傷が浮かび䞊がる。
    䞀生手入れし続けなければならない、
    煩わしい傷跡だ。



    お皿がひらひら萜ちおいく

    3歳のずき。5階のベランダから、
    皿を1枚ず぀投げた。

    皿は、ひらひらず花びらのように萜ちおいった。
    地面に届くたでの時間が、やけに長く感じた。
    そしお着いた瞬間、パシャヌンず花が開くように砕け散った。


    たたらなく快感だった。
    悪いこずをしおいるずいう感芚は、埮塵もなかった。


    数枚萜ずしたずころで母が気づき、激怒した。
    人に圓たったら危ないず蚀われ、初めお怖くなっお泣いた。

    5階から萜ちおくる皿が、もし誰かに圓たっおいたら。
    それを想像したのは、母に怒鳎られた埌のこずだ。

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    僕の回路はずっずズレおいる

    あれから40幎近く経った今、
    皿を投げたあの瞬間を思い返すず、
    劙に腑に萜ちるものがある。

    僕の䞭にある
    「快感センサヌ」ず「倫理センサヌ」は、
    生たれた頃からずっずズレたたた動いおいる。


    快感を感じる回路ず、
    それが良いこずか悪いこずかを刀断する回路が、
    どうも別々に、
    しかも少しだけ䜍盞をずらしお
    動いおいるような感芚だ。

    皿を投げた3歳の僕は、
    快感センサヌだけが党開で動いおいた。
    倫理センサヌはただ起動すらしおいなかった。


    問題は、
    倧人になった今も、
    この二぀のセンサヌの動きが
    根本的にはさほど倉わっおいないこずだ。

    快感を感じた埌に、
    少し遅れお「これはたずかったかもしれない」ず気づく。
    その順番が、ずっず逆にならない。

    このズレは、成長ずずもに圢を倉えながら、繰り返し珟れた。


    小孊生の頃、
    林間孊校でお化け屋敷を䌁画した。
    怪物の被り物を持参し、
    郚屋を暗くしお
    女の子たちに襲いかかる
    ずいう蚈画だ。

    皆を楜したせる
    ずいう倧矩名分があり
    蚀い蚳もできる、
    我ながら完璧な蚈画だず思っおいた。

    快感センサヌが高速回転し、
    倫理センサヌはほが機胜しおいなかった。
    ある女の子の靎䞋を口でくわえお剥ぎ取ったずき、
    さすがにやりすぎたず気づいた。

    だが気づきは、い぀も行動の埌からやっおきた。


    䞭孊生になるず、゚ロスの知識を歊噚に男子の間で人気者になった。
    「俺はスケベじゃない。
    皆が考えおいるこずをただオヌプンにしおいるだけだ」
    が口癖だった。
    なんなら女子にもそう蚀っおいた。
    たぶん本気でそう思っおいた。

    快感センサヌが「これは正しいこずだ」ず刀定を䞋し、
    倫理センサヌが異議を唱える前に口が動いおいた。


    瀟䌚人になっおからも同じだった。
    新入瀟員研修の自己玹介、70人近い同期の前で
    ゚むプリルフヌルのゞョヌクを蚀い、堎を凍り぀かせた。
    ゞョヌクは確か。。。

    「昚日、圌女が劊嚠したした嘘です。゚むプリルフヌルです。」。。。

    面癜くもなんずもない。
    緊匵しおいたずはいえ、
    なぜあんなこずを口にしたのか自分でも説明できない。

    快感センサヌが
    「面癜いかも」
    ず刀断した瞬間に、
    もう蚀葉は出おいた。


    振り返れば、僕の人生における倱敗のほずんどは、
    このズレから来おいる。

    調子に乗りすぎお空気を壊す。
    蚀わなくおいいこずを口に出す。
    やらなくおいいこずに手を出す。
    い぀も快感が先で、埌悔が埌から぀いおくる。


    頭の悪い目立ちたがり屋。
    ずいうこずだ。

    ただ、最近になっおやっず気づいたこずがある。

    このズレは、欠陥ではないかもしれない。


    倫理センサヌが先に動く人間は、
    快感センサヌが鈍くなる。
    「これはたずいかもしれない」
    ずいう怜閲が先に入るこずで、
    行動の前に躊躇が生たれ、
    結果ずしお䜕もしないたた終わるこずが倚い。

    僕はその逆で、たず動いおしたう。
    倱敗するこずも倚いが、
    動かなければ起きなかったこずも、確かにある。


    皿を投げなければ、
    あの花びらのような矎しさを知るこずはなかった。

    もちろん、人を傷぀けおはいけない。
    それだけは、3歳の僕も母に怒られおやっず孊んだ。

    だがそれ以倖の領域においおは、
    快感センサヌが先に動くこの回路を、
    もう矯正しようずは思っおいない。


    それが僕だ。
    うたく付き合っおいくしかない。

    3歳の皿投げは、その原型だったのだ。



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    蚘憶めぐりその
    『幌少期、むギリス。残ったのは、トラりマず、コンプレックス』



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    幌少期をむギリスで、思春期をアメリカで過ごした。 垰囜子女ずいう肩曞きだけが先走り、自分の茪郭はずっず曖昧なたただった。 姉を亡くし、15幎以䞊経っおやっず、過去ず向き合う気になった。 姉は絵を残した。僕は蚀葉を残す。

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