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風を治すクスリ

    体から風が吹き出す奇病にかかった。
    最初の頃はそよ風程度だったので、友人達も「気持ちいいね」なんて言って笑っていたが、病気は日に日に重くなった。
    一か月もすると、私が教室に入った途端、窓ガラスがガタガタと大きな音を立て、机の上に置かれていたプリントが教室中に散乱するようになった。
    私は学校に行くのをやめ、1人で自分の部屋に閉じこもった。1人ぼっちは寂しいかと思ったが、実際に1人になってみると、これはこれで案外気楽だった。
    台風の目のようなものなのか、私の手が届く範囲だけは風の影響を受けないので、私は周りの目を気にせずに、自分の好きな服を着て、好きな本を読み、好きなモノを食べ、好きなように過ごした。

    その後も風はどんどん強くなり、今では常に、私の周りには暴風が吹き荒れている。このままでは家が壊れてしまうということで、私は地下シェルターに引っ越しをした。でも、このまま病気が進行したら、いずれはこのシェルターも吹き飛ばし、私の風のせいで世界が滅ぶことになるだろう。

    私はポケットから1錠の薬を取り出す。この薬を飲めば風は治まるはずだ。でも、その世界に私はいないのだ。

     
     
     
    3児を都内のインターナショナルスクールに通わすサラリーマン。 ショートショートを中心に、短い物語をたまに書いていこうと思います。 ・第16回「1ページの絵本」入選 ・第20回「坊っちゃん文学賞」佳作 ・プチコン5 ~遊園地~ 優秀賞 ・秋ピリカグランプリ2024 豆島圭賞

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