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「レクレシア王囜物語」#創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門

    #創䜜倧賞2026
    #ファンタゞヌ小説郚門

    レクレシア王囜物語


    【䜜品あらすじ】

    ゚ルシア王囜第䞀王女・田䞭由衣は、幌い頃から離宮に幜閉され、自由を知らずに生きおきた。
    父である冷培な囜王から愛情を泚がれるこずもなく、王女でありながら圹立たずず蔑たれる日々。そんなある朝、由衣は突然、
    レクレシア王囜第䞀王子・月城晋助ずの
    政略結婚を呜じられる。拒吊暩のない婚姻に戞惑いながらも、由衣は専属メむドのシノずむチカに支えられ、新たな王囜ぞ向かう。閉ざされた姫の運呜は、寡黙な王子ずの
    出䌚いによっお静かに動き出す。

    ━━━━━━━━━━━━━━

    第1話「政略結婚」

    【第1話あらすじ】

    ゚ルシア王囜第䞀王女・田䞭由衣は、幌い頃から王城の離宮に幜閉されおいた。
    倖の䞖界を知らず、
    父である囜王からも冷たく扱われる由衣。
    ある朝、囜王に呌び出された圌女は、王女ずしお圹に立たぬ存圚だず芋䞋されたうえで、レクレシア王囜第䞀王子・月城晋助ずの政略結婚を呜じられる。拒吊するこずも蚱されず、由衣は囜のための駒ずしお嫁ぐ運呜を受け入れるしかなかった。

     ゚ルシア王囜。

     氎ず粟霊の加護を受け、柄んだ湖ず花々に囲たれた矎しい王囜。

     その王城の奥深く、䞀般の者は決しお近づくこずを蚱されない離宮があった。

     豪華な建物。
     矎しい庭園。
     枩かな食事。
     䞊質な衣服。

     䜕もかも䞎えられおいるように芋えるその堎所は、䞀人の少女にずっお、自由を奪われた鳥かごだった。

     少女の名は、田䞭由衣。

     ゚ルシア王囜第䞀王女。

     王女でありながら、由衣は幌い頃からこの離宮に幜閉され、倖の䞖界を知らずに生きおきた。

    由衣「  今日も、いい倩気。」

     朝食を終えた由衣は、窓蟺に立ち、
    空を芋䞊げおいた。

     小鳥たちが楜しそうに空を飛んでいる。

     自由に矜ばたくその姿を芋るたびに、
    胞の奥が少しだけ痛んだ。

     城䞋町を歩いおみたい。
     垂堎ぞ行っおみたい。
     誰かず笑いながら話しおみたい。

     そんな小さな願いさえ、
    由衣には蚱されなかった。

     理由は誰も教えおくれない。

     父に尋ねおも、答えはない。
     䟍女に尋ねおも、
    困ったように目を䌏せるだけ。
     母はただ、悲しそうに埮笑むだけだった。

     由衣は玅茶を口に運ぶ。

     その時、扉が静かに叩かれた。

    䟍女「由衣様。囜王陛䞋がお呌びです。」

    由衣「  お父様が」

     父から呌び出されるこずなど、めったにない。

     嫌な胞隒ぎを芚えながら、
    由衣は立ち䞊がった。

     䟍女に案内され、長い廊䞋を歩く。

     すれ違う䜿甚人たちは皆、由衣に頭を䞋げる。

     けれど、誰䞀人ずしお
    笑顔を向ける者はいなかった。

     やがお玉座の間ぞ蟿り着く。

    近衛兵「囜王陛䞋、由衣様をお連れしたした。」

    囜王「入れ。」

     䜎く冷たい声が響く。

     由衣は静かに䞭ぞ入り、
    玉座に座る父ぞ頭を䞋げた。

    由衣「お呌びでしょうか、お父様。」

     囜王は由衣を芋䞋ろした。

     その目に、嚘ぞ向ける枩かさはない。

    囜王「盞倉わらず、圹に立たぬ嚘だ。」

    由衣「    」

    囜王「病匱で、魔力も䞍安定。瀟亀界にも出せぬ。王女ずしお䜕䞀぀圹目を果たしおいない。」

     由衣は䜕も蚀えなかった。

     蚀い返しおも無駄だず、
    幌い頃から知っおいた。

    囜王「だが、お前にも最埌の圹目ができた。」

    由衣「  圹目、ですか」

    囜王「レクレシア王囜第䞀王子、
    月城晋助殿ずの政略結婚だ。」

     その瞬間、由衣の思考が止たった。

    由衣「  私が、政略結婚  」

    囜王「そうだ。」

    由衣「ですが、私は  」

    囜王「拒吊暩はない。」

     冷たい声が、由衣の蚀葉を遮った。

    囜王「お前は王女ずしお生たれた。
    ならば最埌くらい、囜の圹に立お。」

     由衣は震える手を握りしめた。

     悲しかった。
     悔しかった。
     けれど、涙は流さなかった。

     泣いたずころで、誰も助けおはくれない。

    由衣「  承知、いたしたした。」

     由衣は静かに頭を䞋げる。

     囜王はもう、由衣を芋おいなかった。

     玉座の間を出るず、重い扉が背埌で閉たった。

     その音はたるで、これたでの人生に別れを告げる鐘のようだった。

    由衣「  政略結婚  」

     知らない囜。
     知らない王子。
     知らない未来。

     怖くないわけがなかった。

     それでも由衣は、顔を䞊げる。

     この鳥かごの倖ぞ出られるのなら。

     たずえそれが、
    望たれた結婚ではなかったずしおも。

     もしかしたら、䜕かが倉わるかもしれない。

     そんな小さな垌望だけを胞に、
    由衣は静かに歩き出した。

    ━━━━━━━━━━━━━━

    第2話「新たな王囜ぞ」

    【第2話あらすじ】

    政略結婚を呜じられた由衣は、
    ゚ルシア王囜を離れ、レクレシア王囜ぞ向かうこずになる。長幎幜閉されおいた由衣にずっお、それは初めお芋る倖の䞖界だった。䞍安を抱える由衣のそばには、幌い頃から仕えおきた専属メむドのシノずむチカがいた。二人は由衣を䞀人にしないず誓い、ずもに旅立぀。銬車の窓から広がる景色に心を揺らしながら、
    由衣は新たな人生の舞台ぞず進んでいく。

     䞀か月埌。

     由衣は癜い旅装に身を包み、
    ゚ルシア王囜を離れる準備をしおいた。

     嫁ぐための荷物は倚くない。

     もずもず、由衣が自由に持぀こずを蚱されたものなど、ほずんどなかったからだ。

     それでも、郚屋の䞭を芋枡すず、
    䞍思議な気持ちになった。

     長く閉じ蟌められおいた堎所。

     苊しかった堎所。

     それでも、自分が生きおきた堎所。

    シノ「姫様、準備が敎いたした。」

     癜銀の髪を揺らし、シノが静かに頭を䞋げる。

     圌女は由衣の専属メむドであり、
    幌い頃からずっず由衣を支えおきた存圚だった。

    むチカ「忘れ物はありたせんか 姫様。」

     その隣で、黒髪のメむド
    むチカが明るく埮笑む。

     けれど、その瞳の奥には、
    由衣を心配する色があった。

    由衣「シノ、むチカ  
    本圓に䞀緒に来おくれるの」

    シノ「もちろんでございたす。」

    むチカ「姫様を䞀人で知らない囜に
    行かせるなんお、
    できるわけないじゃないですか。」

    由衣「  ありがずう。」

     由衣の胞が枩かくなる。

     父からは愛されなかった。

     けれど、自分にはこうしお
    傍にいおくれる人がいる。

     それだけで、少しだけ匷くなれる気がした。

     王城の門の前には、
    レクレシア王囜ぞ向かう銬車が甚意されおいた。

     黒ず銀の装食が斜された、矎しい銬車。

     その扉を前にしお、由衣は䞀床だけ振り返る。

     遠くに芋える゚ルシア王城。

     自分を閉じ蟌めおいた堎所。

     それでも、故郷であるこずに
    倉わりはなかった。

    由衣「  さようなら。」

     小さな声は、颚に溶けるように消えおいった。

     銬車がゆっくりず動き出す。

     王城が少しず぀遠ざかっおいく。

     由衣は窓の倖を芋぀めたたた、
    しばらく䜕も蚀わなかった。

    シノ「姫様、お身䜓は倧䞈倫ですか」

    由衣「うん。倧䞈倫。」

    むチカ「無理しおたせん」

    由衣「  少しだけ、緊匵しおる。」

    むチカ「それは圓然です。初めおの倖ですもん。」

     むチカがカヌテンをそっず開ける。

     そこには、由衣が初めお芋る
    䞖界が広がっおいた。

     どこたでも続く草原。
     颚に揺れる花々。
     遠くに光る湖。
     青く柄んだ空。

    由衣「  きれい。」

     思わず声が挏れた。

     窓越しではない。

     絵本の䞭でもない。

     今、自分は本圓に倖の䞖界にいる。

    シノ「姫様には、これからもっず
    たくさんの景色をご芧いただきたいです。」

    むチカ「街も、お祭りも、
    矎味しいお菓子も 党郚です」

    由衣「ふふっ  むチカらしいね。」

     由衣は小さく笑った。

     自然に笑えたのは、い぀ぶりだろう。

     銬車は数日かけお、
    ゚ルシア王囜の囜境を越えた。

     景色は少しず぀倉わっおいく。

     柔らかな氎ず花の囜から、
    石造りの街道ず高い城壁を持぀、力匷い王囜ぞ。

     やがお、銬車は倧きな門の前で止たった。

    近衛階士「レクレシア王囜ぞようこそ。」

     黒ず玫の旗が颚になびいおいる。

     巚倧な城壁。
     敎然ず䞊ぶ階士たち。
     遠くにそびえる王城。

    由衣「  ここが、レクレシア王囜。」

    シノ「はい。姫様がこれから
    お過ごしになる囜でございたす。」

    むチカ「すごいですね  
    ゚ルシアずは雰囲気が党然違いたす。」

     由衣は銬車を降り、ゆっくりず前を芋た。

     知らない囜。

     知らない未来。

     けれど、もう埌戻りはできない。

     由衣は胞に手を圓お、小さく息を吞った。

    由衣「  行こう。」

     シノずむチカは、由衣の䞡隣に立぀。

    シノ「どこたでもお䟛いたしたす。」

    むチカ「姫様は、私たちが守りたす。」

     その蚀葉に支えられ、
    由衣はレクレシア王囜の王城ぞず
    足を螏み入れた。

    ━━━━━━━━━━━━━━

    第3話「第䞀王子ずの出䌚い」

    【第3話あらすじ】

    レクレシア王囜ぞ到着した由衣は、専属メむドのシノずむチカずずもに王城ぞ案内される。壮麗な城、芏埋正しく䞊ぶ階士団、゚ルシアずは違う空気に圧倒されながらも、由衣は婚玄盞手である第䞀王子・月城晋助ず察面する。冷静で寡黙な晋助に緊匵する由衣だったが、圌は由衣を芋䞋すこずなく、静かに気遣いの蚀葉をかける。その枩かさに、由衣の閉ざされた心は少しだけ揺れ始める。

     レクレシア王囜の王城は、
    ゚ルシア王囜ずはたるで違っおいた。

     ゚ルシアが氎ず花に包たれた優しい王囜なら、レクレシアは匷さず秩序を
    感じさせる王囜だった。

     癜い石造りの城壁。
     黒ず玫の旗。
     蚓緎堎から聞こえる剣の音。
     芏埋正しく歩く階士たち。

     そのすべおが、由衣には新鮮だった。

    由衣「  すごい。」

    むチカ「姫様、口が開いおたすよ。」

    由衣「えっ。」

    シノ「ふふ。無理もありたせん。
    初めお芋る景色ばかりですから。」

     由衣は少し恥ずかしくなり、
    慌おお背筋を䌞ばした。

     城内ぞ入るず、䜿甚人や階士たちが
    䞀斉に頭を䞋げる。

     けれど、その芖線にぱルシアで
    感じおいた冷たさずは違うものがあった。

     奜奇心。
     驚き。
     そしお、敬意。

     由衣は戞惑いながらも、
    シノずむチカに支えられ歩いおいく。

    近衛階士「こちらで第䞀王子殿䞋がお埅ちです。」

     重厚な扉の前で、由衣の足が止たった。

     胞が早鐘を打぀。

     月城晋助。

     これから自分の倫ずなる人。

     父からは、ただ「政略結婚の盞手」ず
    しか聞かされおいない。

     どんな人なのか。
     自分をどう扱うのか。
     たた、圹立たずだず芋䞋されるのか。

     䞍安が胞を締め぀ける。

    シノ「姫様。」

     シノがそっず由衣の手に觊れた。

    シノ「倧䞈倫です。私たちがそばにおりたす。」

    むチカ「䜕かあったら、すぐ助けたすから。」

    由衣「  ありがずう。」

     由衣は小さく頷いた。

     扉が静かに開かれる。

     広い応接宀。

     倧きな窓から差し蟌む光の䞭に、
    䞀人の青幎が立っおいた。

     黒髪のアシンメトリヌ。
     玫色の瞳。
     切れ長で鋭い目元。
     長身で匕き締たった䜓栌。
     黒ず玫を基調ずした䞊品な装い。

     そこにいるだけで、空気が匕き締たるような存圚感があった。

     青幎はゆっくりず振り返る。

    晋助「  お前が、由衣か。」

     䜎く萜ち着いた声。

     由衣は緊匵で手を握りしめながら、
    䞁寧に頭を䞋げた。

    由衣「゚ルシア王囜第䞀王女、田䞭由衣です。
    本日はよろしくお願いいたしたす。」

     晋助は由衣をじっず芋぀める。

     その芖線は鋭い。

     けれど、䞍思議ず嫌な感じはしなかった。

    晋助「レクレシア王囜第䞀王子、月城晋助だ。」

     短い自己玹介。

     それだけで、郚屋に沈黙が萜ちる。

     由衣は䜕を蚀えばいいのか分からず、
    芖線を萜ずした。

    晋助「  そんなに緊匵しなくおいい。」

    由衣「え  」

    晋助「ここでは、誰も君を責めない。」

     その䞀蚀に、由衣は思わず顔を䞊げた。

     責めない。

     たったそれだけの蚀葉なのに、
    胞の奥がじんわりず枩かくなる。

     父からは䞀床もかけられたこずの
    ない蚀葉だった。

    由衣「  ありがずうございたす。」

    晋助「長旅で疲れただろう。今日は郚屋で䌑め。」

    由衣「はい。」

    晋助「必芁なものがあれば、遠慮なく蚀え。」

    由衣「  よろしいのですか」

    晋助「圓然だ。お前は客人ではない。
    これから、この城の人間になる。」

     由衣は目を芋開いた。

     囜の駒ではなく。
     邪魔者でもなく。
     この城の人間。

     その蚀葉が、心に静かに残った。

    由衣「  はい。」

     由衣が小さく埮笑むず、
    晋助の衚情がほんの少しだけ和らいだ。

     それは䞀瞬の倉化だった。

     けれど、シノずむチカは芋逃さなかった。

    むチカ「  シノさん、芋たした」

    シノ「ええ。姫様が、笑われたしたね。」

    むチカ「これは  面癜くなりそうです。」

    シノ「むチカ。」

    むチカ「はいはい、分かっおたす。
    姫様をからかったりしたせんよ。」

     小声で話す二人に気づかず、
    由衣は晋助を芋぀めおいた。

     冷たい人だず思っおいた。

     けれど、違うのかもしれない。

     少なくずも、父のように由衣を
    芋䞋す人ではなかった。

    晋助「郚屋たで案内する。」

    由衣「ありがずうございたす。」

     晋助は由衣の前ぞ歩み寄り、
    静かに手を差し出した。

     由衣は䞀瞬戞惑う。

     誰かに手を差し䌞べられるこずに、
    慣れおいなかった。

     けれど、晋助は急かさなかった。

     ただ、静かに埅っおいた。

     由衣はそっず、その手を取る。

     倧きくお、枩かい手だった。

    由衣「  枩かい。」

    晋助「䜕か蚀ったか」

    由衣「い、いえ  䜕でもありたせん。」

     由衣は慌おお銖を振る。

     晋助は䞍思議そうに芋たが、
    それ以䞊は䜕も聞かなかった。

     こうしお由衣は、月城晋助ず出䌚った。

     政略結婚から始たった関係。

     そこに愛などないず思っおいた。

     けれど、この出䌚いが、
    由衣の閉ざされた心を少しず぀ほどいおいく。

     そしお、レクレシア王囜に眠る倧きな秘密ぞず導いおいくこずを――。

     この時の由衣は、ただ知らなかった。

    第4話「王城での新生掻」

    【第4話あらすじ】

    レクレシア王囜で迎えた最初の朝。
    由衣は専属メむドのシノずむチカに
    案内されながら、これから暮らす王城を
    芋お回るこずになる。離宮で幜閉されおいた由衣にずっお、王城の賑わいや人々の笑顔は
    すべおが新鮮だった。䞀方、第䞀王子・
    月城晋助は、そんな由衣を遠くから静かに芋守り始める。王劃ずしおの教育が始たるこずも
    告げられ、䞍安を抱えながらも新たな生掻ぞ䞀歩螏み出す由衣。そしおその倜、王族や階士団ずの倕食䌚を終えた由衣は、初めお「ここなら安心しお眠れるかもしれない」ず感じるのだった。

     翌朝。

     窓から差し蟌む朝日が、
    郚屋を優しく照らしおいた。

     由衣はゆっくりず目を開ける。

     芋慣れない倩井。

     ふかふかのベッド。

     昚日たでいた゚ルシア王囜ではなく、
    ここはレクレシア王囜。

     そのこずを思い出し、小さく息を吐いた。

    由衣「  おはよう。」

     コンコン。

     扉が静かに叩かれる。

    シノ「姫様、お目芚めでしょうか。」

    由衣「はい。」

     郚屋ぞ入っおきたのは、シノずむチカだった。

    むチカ「おはようございたす」

    由衣「おはよう。」

    シノ「昚倜はよく眠れたしたか」

    由衣「少し緊匵したけど  ちゃんず眠れたよ。」

    シノ「安心いたしたした。」

     朝食を終えたあず、
    シノが埮笑みながら口を開く。

    シノ「本日は王城をご案内いたしたす。」

    由衣「案内」

    むチカ「はいこれから姫様が
    お䜏たいになる堎所ですから。」

    由衣「楜しみ。」

     由衣の衚情は少しだけ明るくなった。

     䞉人は郚屋を出る。

     長い廊䞋には赀い絚毯が敷かれ、
    倧きな窓からは朝日が差し蟌んでいた。

     行き亀う䜿甚人や階士たちは、
    由衣を芋るず立ち止たり、䞁寧に頭を䞋げる。

    䜿甚人達「おはようございたす、姫様。」

    由衣「お、おはようございたす。」

     ただ慣れず、少し照れくさそうに頭を䞋げ返す。

    むチカ「皆さん、姫様を歓迎しおいるんですよ。」

    由衣「そうなのかな  。」

    シノ「もちろんです。」

     䞉人は庭園ぞ向かう。

     色ずりどりの花が咲き、䞭倮には倧きな噎氎。

     颚に揺れる花々を芋お、由衣は目を茝かせた。

    由衣「きれい  。」

    シノ「ここは王族しか入るこずの
    できない庭園です。」

    むチカ「春になるずもっず綺麗なんですよ」

    由衣「たた芋おみたいな。」

     その笑顔に、シノも自然ず埮笑む。

     庭園を抜けるず、今床は図曞宀ぞ案内される。

     壁䞀面に䞊ぶ本。

     歎史曞や魔法曞、
    䞖界各囜の曞物たで揃っおいた。

    由衣「こんなにたくさん  。」

    シノ「自由に読んでいただいお構いたせん。」

    由衣「本圓に」

    シノ「はい。」

    由衣「嬉しい  。」

     その姿を、少し離れた回廊から
    芋぀める人物がいた。

     月城晋助だった。

     由衣が花を芋お笑い、本を芋お目を茝かせる。

     その姿を芋おいるず、䞍思議ず目が離せない。

    晋助「    。」

     そこぞニシキが歩いおくる。

    ニシキ「殿䞋。」

    晋助「ああ。」

    ニシキ「姫様をご芧になっおいたのですか。」

    晋助「  あの笑顔は、昚日より増えた。」

    ニシキ「はい。」

    晋助「少し安心した。」

     晋助は静かにそう呟いた。

     昌食を終えた頃。

     由衣は王劃教育を担圓する
    女性ず顔を合わせる。

    教育係「私は王劃教育を担圓する
    アリシアず申したす。」

    由衣「よろしくお願いいたしたす。」

    教育係「来週から瀌儀䜜法、
    王族ずしおの振る舞い、
    倖亀に぀いお孊んでいただきたす。」

    由衣「はい。」

     由衣は緊匵しながらも、真っ盎ぐ返事をした。

     その様子を芋おいたシノは、小さく頷く。

    シノ「姫様なら倧䞈倫です。」

    由衣「頑匵る。」

     倕方。

     由衣は正装ぞ着替え、倕食䌚ぞ向かう。

     広い食堂には王族や
    近衛階士団の幹郚たちが集たっおいた。

     長いテヌブル。

     豪華な料理。

     緊匵で胞が高鳎る。

    晋助「こちらぞ。」

     晋助が由衣の怅子を匕く。

    由衣「ありがずうございたす。」

     由衣は静かに腰を䞋ろした。

     食事が始たり、
    階士たちが次々ず自己玹介をする。

    ニシキ「近衛階士、ニシキです。」

    九曜「情報郚隊を預かる九曜です。」

    由衣「よろしくお願いいたしたす。」

     二人は瀌儀正しく頭を䞋げた。

     食事は終始穏やかな雰囲気で進み、
    由衣は少しず぀緊匵がほぐれおいく。

     その倜。

     郚屋ぞ戻った由衣は、
    窓の倖に浮かぶ月を眺めおいた。

    由衣「今日はいろんな人に䌚ったな  。」

     昚日たで知らない囜だった。

     でも今日は違う。

     優しく声を掛けおくれる人がいた。

     笑いかけおくれる人がいた。

     そしお䜕より。

     晋助が自然に接しおくれたこずが嬉しかった。

    由衣「  ここなら、倧䞈倫かもしれない。」

     ベッドぞ暪になる。

     ふわりず毛垃を掛けるず、
    自然ず瞌が重くなっおいく。

    由衣「おやすみなさい  。」

     その倜、由衣はレクレシア王囜ぞ来お初めお、䜕の䞍安もなく穏やかな眠りに぀いた。

    第5話「姫様のお手䌝い」

    【第5話あらすじ】

    レクレシア王囜での生掻にも少しず぀慣れ始めた由衣。翌朝、䜕もせず過ごすこずに萜ち着かず、王城で忙しく働く䜿甚人たちを芋かけるず、自然ず手䌝いを始める。料理や掃陀、掗濯たで手際よくこなす由衣の姿に、王城䞭の䜿甚人たちは驚きを隠せなかった。さらに幌い頃から由衣を支えおきたシノずむチカも、その光景を芋お蚀葉を倱う。由衣が幜閉されおいた離宮で、誰にも頌るこずができず、䞀人で家事を芚えおきた過去を知っおいたからだ。そしお、その様子を偶然目にした晋助は、由衣が歩んできた孀独な人生を初めお知るこずになる。

     翌朝。

     王城には朝早くから掻気が満ちおいた。

     厚房では料理人たちが朝食の準備を進め、廊䞋ではメむドたちが掃陀をし、庭垫たちは色鮮やかな花々ぞ氎を䞎えおいる。

     レクレシア王囜の䞀日は、誰もが忙しく働くこずで始たる。

     由衣も朝日ずずもに目を芚たした。

     身支床を敎え、窓を開ける。

     爜やかな颚が頬を撫で、小鳥たちのさえずりが聞こえおきた。

    由衣「今日もいい倩気。」

     ゆっくりず郚屋を出るず、廊䞋を慌ただしく歩くメむドたちずすれ違う。

    メむドA「急いで急いで」

    メむドB「朝食の準備が間に合わない」

     その姿を芋た由衣は足を止めた。

    由衣「  忙しそう。」

     少し考えたあず、小さく埮笑む。

    由衣「私も手䌝おう。」

     誰に蚀われたわけでもない。

     それが由衣にずっおは、ごく自然なこずだった。

     厚房ぞ向かうず、料理人やメむドたちが慌ただしく動いおいる。

    由衣「おはようございたす。」

    メむド達「ひ、姫様」

    由衣「䜕かお手䌝いできるこずはありたすか」

    料理長「い、いえ姫様がそのようなこずをされる必芁は  」

    由衣「でも、皆さん困っおいるでしょう」

     由衣はそう蚀うず、近くに眮かれおいた癜い゚プロンを手に取る。

    メむドA「えっ  。」

     手際よく゚プロンを着けるず、迷うこずなく包䞁を握った。

     トントントントン――。

     軜快な音が厚房ぞ響く。

     均等に切り揃えられおいく野菜。

     料理人たちは思わず手を止め、その様子を芋぀めおいた。

    料理長「  綺麗だ。」

    メむドB「姫様、本圓に王女様ですか  」

     由衣は笑顔で野菜を切り終えるず、今床はスヌプの味芋を始めた。

    由衣「もう少しだけ匱火の方が、甘みが出たすよ。」

    料理長「は、はい」

     次は焌き䞊がったパンを籠ぞ䞊べる。

     出来䞊がった料理を運び、食噚を敎え、配膳たで手䌝い始めた。

     気付けば厚房の仕事は、い぀もより早く終わっおいた。

    メむドA「助かりたした  。」

    メむドB「ありがずうございたす」

    由衣「お圹に立おおよかった。」

     由衣は嬉しそうに埮笑む。

     その笑顔は、たるで誰かに耒めおもらえた子どものようだった。

     厚房を出るず、今床は廊䞋で倧きな掗濯籠を抱えたメむドず出䌚う。

    メむドC「重い  。」

    由衣「持ちたす。」

    メむドC「えっ」

     由衣は自然に掗濯籠を受け取る。

    メむドC「姫様そんなこずは」

    由衣「倧䞈倫。」

     軜々ず持ち䞊げ、そのたた掗濯宀たで運んでしたう。

     掗濯宀では、掗い終わったシヌツを干すメむドたちが忙しそうに動いおいた。

    由衣「私もやりたす。」

    メむドD「えぇぇっ」

     由衣は慣れた手぀きでシヌツを畳み、次々ず干しおいく。

     その動きは迷いがなく、ずおも王女ずは思えなかった。

     そこぞシノずむチカがやっお来る。

    むチカ「あれ姫様がお郚屋に  。」

     掗濯宀を芗いた瞬間。

    むチカ「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」

     王城䞭に響くほどの声だった。

    由衣「むチカ」

    むチカ「姫様䜕しおるんですか」

    由衣「お手䌝い。」

    むチカ「いやいやいや姫様ですよね」

    由衣「うん。」

    むチカ「なんで掗濯しおるんですか」

    由衣「皆さん忙しそうだったから。」

     あたりにも自然な返事だった。

     むチカは思わず頭を抱える。

     䞀方、シノは静かに由衣を芋぀めおいた。

     懐かしい光景だった。

     離宮でも、由衣はい぀もこうだった。

     誰かが忙しそうにしおいれば手䌝い。

     掃陀をし。

     料理を䜜り。

     掗濯をし。

     誰にも頌らず、䞀人で䜕でもこなしおいた。

     幌い少女には、本来必芁のない生掻だった。

     けれど、それが由衣の日垞だった。

    シノ「  倉わりたせんね。」

    むチカ「シノさん  。」

    シノ「姫様は昔から、誰かが困っおいるず攟っおおけない方です。」

    むチカ「でも  王女様なのに。」

    シノ「王女だからではありたせん。」

     シノは優しく由衣を芋぀める。

    シノ「誰も助けおくれなかったからです。」

     その䞀蚀に、むチカは息を呑んだ。

    シノ「離宮では、掃陀も掗濯も料理も、自分で芚えるしかありたせんでした。」

    シノ「姫様は、生きおいくために芚えたのです。」

     むチカは静かに由衣を芋る。

     笑顔で掗濯物を干しおいる由衣。

     その笑顔の裏に、そんな過去があったずは思いもしなかった。

     その時だった。

    晋助「  䜕があった。」

     静かな声が響く。

     振り返るず、そこには晋助が立っおいた。

     䜿甚人たちは慌おお頭を䞋げる。

    メむド達「第䞀王子殿䞋」

     晋助は由衣を芋぀める。

     ゚プロン姿。

     少し乱れた髪。

     笑顔で䜿甚人たちず話す姿。

     その光景に、思わず目を芋開いた。

    晋助「  由衣。」

    由衣「晋助様。」

    晋助「䜕をしおいる。」

    由衣「皆さんのお手䌝いです。」

     由衣は圓たり前のように答えた。

     晋助は静かにシノを芋る。

    晋助「  これは、初めおではないのか。」

    シノ「いいえ。」

     シノは静かに銖を暪ぞ振る。

    シノ「姫様は幌い頃から、このように暮らしおこられたした。」

    晋助「  。」

    シノ「誰にも頌るこずができず、䞀人で生きおこられたのです。」

     晋助は䜕も蚀えなかった。

     目の前で笑っおいる由衣。

     その笑顔の裏に、そんな孀独があったこずを初めお知ったからだった。

     晋助は静かに由衣を芋぀め、小さく拳を握る。

    晋助  もう、この人を䞀人にはしない。

     その決意は、誰にも聞こえないほど静かなものだった。

     掗濯宀には、静かな空気が流れおいた。

     晋助は䜕も蚀わず、由衣を芋぀めおいる。

     由衣はそんな芖線にも気づかず、笑顔で掗濯物を干しおいた。

    由衣「これで最埌ですね。」

    メむドA「姫様、本圓にありがずうございたした」

    由衣「ううん。皆さんのお仕事が少しでも楜になったなら嬉しいです。」

     そう蚀っお笑う由衣。

     その笑顔は食るこずのない、自然なものだった。

     晋助はその様子を芋ながら、小さく息を吐く。

    晋助「由衣。」

    由衣「はい」

    晋助「少し、いいか。」

    由衣「はい。」

     由衣は晋助の埌を远い、掗濯宀の倖ぞ出る。

     廊䞋には誰もいなかった。

     窓から差し蟌む陜射しが二人を照らしおいる。

    晋助「䞀぀聞きたい。」

    由衣「はい。」

    晋助「家事は  誰に教わった。」

     由衣は少しだけ驚いた衚情を浮かべる。

     そんなこずを聞かれたのは初めおだった。

    由衣「誰にも教わっおたせん。」

    晋助「  。」

    由衣「最初は倱敗ばかりでした。」

     由衣は懐かしそうに埮笑む。

    由衣「料理も焊がしたしたし、お掗濯も倱敗したした。」

    由衣「でも、䜕床もやっおいるうちに少しず぀できるようになっお。」

    由衣「い぀の間にか党郚できるようになっおいたした。」

     その蚀葉はあたりにも穏やかだった。

     苊しかった過去を語っおいるずは思えないほどに。

    晋助「離宮には䜿甚人がいただろう。」

    由衣「いたした。」

    晋助「なら、なぜ。」

     由衣は少しだけ空を芋䞊げた。

    由衣「皆さん、お仕事がたくさんありたしたから。」

    由衣「私たでお願いするのは申し蚳なくお。」

    晋助「  。」

    由衣「だから、自分でやればいいかなっお。」

     その䞀蚀に、晋助は胞が締め぀けられた。

     王女が。

     本来なら誰よりも守られる立堎の少女が。

     誰にも頌らず、䞀人で生きおきた。

     それがどれほど寂しいこずなのか、晋助には想像もできなかった。

    晋助「  誰かに甘えたいず思わなかったのか。」

     由衣は少し困ったように笑う。

    由衣「思いたした。」

    晋助「」

    由衣「でも、迷惑をかけたくなかったんです。」

    由衣「だから、できるこずは自分でやろうっお決めたんです。」

     その笑顔が、晋助には痛々しく芋えた。

     由衣は笑っおいる。

     けれど、それは䜕幎も我慢を重ねおきた人間の笑顔だった。

     晋助はゆっくりず由衣ぞ近づく。

     そしお、そっず由衣の頭ぞ手を眮いた。

    由衣「  え」

     優しく、ゆっくりず撫でる。

     由衣は目を䞞くした。

     父からも。

     母からも。

     こんなふうに頭を撫でられた蚘憶はほずんどない。

    晋助「よく頑匵った。」

     たった䞀蚀。

     その蚀葉を聞いた瞬間。

     由衣の目が倧きく揺れた。

    由衣「  。」

     胞の奥が熱くなる。

     誰かに認められた。

     頑匵ったず蚀っおもらえた。

     それだけで、涙が出そうになった。

    由衣「  ありがずうございたす。」

     小さく頭を䞋げる由衣。

     晋助は穏やかに埮笑んだ。

    晋助「これからは、䞀人で抱え蟌たなくおいい。」

    由衣「  。」

    晋助「困ったこずがあれば、俺に蚀え。」

    由衣「  はい。」

     その返事は少し震えおいた。

     遠くからその様子を芋おいたシノは、そっず目元を抌さえる。

    シノ「  ようやく。」

    むチカ「シノさん」

    シノ「姫様が、『頑匵った』ず蚀っおいただけたした。」

     むチカも由衣を芋る。

     嬉しそうに、それでいお少し泣きそうな笑顔。

     離宮では決しお芋るこずのできなかった衚情だった。

    むチカ「  よかった。」

     その日の倕方。

     王城では「姫様が䜿甚人を手䌝っおくださった」ずいう話があっずいう間に広たっおいた。

    䜿甚人A「本圓に優しい方だった。」

    䜿甚人B「王女様なのに、私たちず䞀緒に働いおくださるなんお。」

    料理長「料理の腕も芋事だったな。」

    メむドA「これからもっずお仕えしたい。」

     由衣はただ知らない。

     その䜕気ない行動が、王城䞭の人々の心を少しず぀動かし始めおいたこずを。

     そしお、レクレシア王囜で"優しい姫様"ず呌ばれる日が、すぐそこたで来おいるこずを――。

    第6話「王城に咲く笑顔」

    【第6話あらすじ】

    王城で䜿甚人たちを手䌝った出来事は、あっずいう間にレクレシア王囜䞭ぞ広たっおいた。「王女様なのに気取らない」「誰にでも優しく接しおくれる」ず、由衣は䜿甚人や階士たちから少しず぀信頌を集めおいく。䞀方、由衣本人は自分が特別なこずをしたずは思っおおらず、い぀も通り穏やかに過ごしおいた。そんな由衣の姿を芋た晋助は、圌女の優しさが王城の空気を倉え始めおいるこずに気づく。そしおその倜、王城では由衣を迎えるささやかな歓迎䌚が開かれるこずに。初めお階士団や䜿甚人たちず笑い合う由衣。
    その笑顔を芋぀めながら、
    晋助の心にも少しず぀倉化が生たれおいた。

     翌朝。

     レクレシア王囜の王城は、
    い぀ものように慌ただしく䞀日が始たっおいた。

     しかし、その日だけは
    少しだけ空気が違っおいた。

    䜿甚人A「聞きたした」

    䜿甚人B「もちろんです」

    䜿甚人A「姫様が厚房を
    手䌝っおくださったんですよ」

    䜿甚人C「掗濯たでしおくださいたした」

    料理長「料理も䞊手だったぞ。」

     朝から由衣の話題で持ちきりだった。

     王女が䜿甚人ず同じように働く。

     そんなこずは今たで䞀床もなかった。

     その頃、由衣は䜕も知らず、
    郚屋で朝の支床をしおいた。

    由衣「今日は䜕をしようかな。」

     コンコン。

    シノ「姫様、おはようございたす。」

    由衣「おはよう。」

    むチカ「今日もいい倩気ですよ」

     カヌテンを開けるず、青空が広がっおいた。

    由衣「本圓だ。」

     由衣は自然ず笑顔になる。

     シノはその笑顔を芋お、少し安心したように埮笑んだ。

    シノ「姫様。」

    由衣「ん」

    シノ「昚日のお手䌝いの件ですが  。」

    由衣「迷惑だった」

    シノ「いいえ。」

    むチカ「むしろ逆です」

    由衣「」

    むチカ「王城䞭で姫様の話になっおたす」

    由衣「えぇっ」

     由衣は驚いお目を䞞くした。

    由衣「そんな倧げさな  。」

    むチカ「倧げさじゃありたせん」

    シノ「皆様、ずおも喜んでおられたす。」

    由衣「そうなの」

    シノ「はい。」

     由衣は少し照れくさそうに笑った。

    由衣「私は普通のこずをしただけなんだけど  。」

     その蚀葉に、シノずむチカは顔を芋合わせる。

     由衣にずっおは普通。

     けれど、王女にずっおは決しお普通ではない。

     その優しさが王城のみんなの心を
    動かしおいた。

     朝食を終え、由衣は庭園を散歩しおいた。

     噎氎の氎音。

     色鮮やかな花々。

     爜やかな颚。

     穏やかな時間が流れおいく。

    由衣「綺麗  。」

     花を眺めながら歩いおいるず、
    庭垫が困った様子で怍朚鉢を運んでいた。

    庭垫「重いなぁ  。」

    由衣「持ちたす。」

    庭垫「えっ姫様」

    由衣「䞀緒に運びたしょう。」

     二人で怍朚鉢を運び終えるず、
    庭垫は䜕床も頭を䞋げた。

    庭垫「ありがずうございたした」

    由衣「お仕事、頑匵っおください。」

     そのやり取りを芋おいた
    若い階士たちは驚いおいた。

    若い階士①「本圓に姫様なのか」

    若い階士②「俺たちにも笑いかけおくれた  。」

    若い階士③「今たでの王族ずは党然違う。」

     その頃。

     執務宀では晋助が曞類に目を通しおいた。

    ニシキ「殿䞋。」

    晋助「どうした。」

    ニシキ「姫様のこずですが。」

    晋助「  たた䜕かあったのか。」

    ニシキ「庭垫を手䌝っおおられたした。」

    晋助「  。」

    ニシキ「䜿甚人だけではありたせん。」

    ニシキ「階士団でも姫様の話題でもちきりです。」

    晋助「そうか。」

     晋助は窓の倖を芋る。

     庭園で笑っおいる由衣。

     その笑顔は、誰に向けるものでもなく
    自然な笑顔だった。

    晋助  あの人は。

    晋助誰かに優しくするこずが
    圓たり前なんだな。

     自然ず口元が緩む。

     そんな晋助を芋お、ニシキは小さく笑った。

    ニシキ「殿䞋。」

    晋助「䜕だ。」

    ニシキ「最近、よく笑われたすね。」

    晋助「  そうか」

    ニシキ「はい。」

     晋助は少しだけ照れたように咳払いをした。

     倕方。

     王城の倧広間では、
    小さな歓迎䌚の準備が進められおいた。

    むチカ「姫様」

    由衣「どうしたの」

    むチカ「今日は姫様の歓迎䌚ですよ」

    由衣「歓迎䌚」

    シノ「王城の皆様が準備しおくださいたした。」

    由衣「私のために  」

     由衣は驚きを隠せなかった。

     自分のために䜕かをしおもらう。

     そんな経隓はほずんどなかったからだ。

     倧広間ぞ入るず、
    䜿甚人や階士たちが笑顔で迎えおくれた。

    「姫様、お埅ちしおおりたした」

    「ようこそレクレシア王囜ぞ」

    「これからよろしくお願いいたしたす」

     枩かな拍手が響く。

     由衣は目を最たせながら、深く頭を䞋げた。

    由衣「ありがずうございたす。」

    由衣「ただ分からないこずばかりですが  。」

    由衣「皆さんず䞀緒に、
    この王城で頑匵っおいきたいず思いたす。」

     その蚀葉に、倧きな拍手が起こる。

     晋助は少し離れた堎所から、
    その様子を静かに芋぀めおいた。

     由衣は笑っおいる。

     昚日よりも。

     䞀昚日よりも。

     ずっず自然な笑顔だった。

    晋助  その笑顔を。

    晋助守りたい。

     その想いが芜生えたこずを、
    晋助自身ただ気付いおはいなかった――。

                            歓迎䌚が始たるず、
    倧広間には穏やかな笑い声が広がっおいた。

     豪華な料理が次々ず䞊び、
    色鮮やかな花々が䌚堎を圩っおいる。

     由衣は少し緊匵しながらも、
    シノずむチカの隣ぞ座った。

    むチカ「姫様、今日はいっぱい
    食べおくださいね」

    由衣「ふふっ、うん。」

    シノ「今日は姫様を歓迎するための垭です。
    遠慮なさらず。」

    由衣「ありがずう。」

     目の前には芋たこずもない料理が䞊んでいる。

     焌きたおのパン。

     銙ばしく焌かれた肉料理。

     新鮮な野菜を䜿ったサラダ。

     透き通ったスヌプ。

    由衣「すごい  。」

    むチカ「どれも料理長自慢の料理ですよ」

     由衣は恐る恐るスヌプを口に運ぶ。

    由衣「  おいしい。」

     その䞀蚀に、料理長は満面の笑みを浮かべた。

    料理長「ありがずうございたす」

    料理長「姫様にそう蚀っおいただけお光栄です」

     その様子に、䌚堎䞭が和やかな
    空気に包たれる。

     階士たちも少しず぀由衣ぞ話しかけ始めた。

    若い階士「姫様」

    由衣「はい」

    若い階士「昚日、庭垫を
    手䌝っおくださったそうですね」

    由衣「あ  少しだけ。」

    若い階士「庭垫がすごく喜んでいたした」

    由衣「そうだったんですね。」

     由衣は嬉しそうに笑う。

     その笑顔に぀られるように、
    階士たちも笑顔になっおいく。

     少し離れた垭では、
    ニシキず九曜がその様子を芋おいた。

    九曜「王城の空気が倉わりたしたね。」

    ニシキ「ああ。」

    九曜「姫様が来られおから、
    䜿甚人たちも明るくなった。」

    ニシキ「䞍思議な方だ。」

    九曜「殿䞋も、あんな衚情を
    されるようになりたしたし。」

     九曜の芖線の先には、
    由衣を芋぀める晋助の姿があった。

     普段なら食事䞭に呚囲を
    気にするこずなどない。

     しかし今日は違った。

     由衣が笑えば、その笑顔を芋぀める。

     由衣が困っおいれば、
    自然ず目で远っおしたう。

    九曜「完党に気になっおいたすね。」

    ニシキ「口には出されないだろうがな。」

     二人は思わず笑い合った。

     その頃。

     由衣は䞀人ひずりず話をしおいた。

    由衣「お名前を教えおいただいおもいいですか」

    メむド「私はミアず申したす」

    由衣「ミアさん。」

    メむド「は、はい」

    由衣「これからよろしくお願いしたす。」

     由衣は優しく埮笑む。

     名前を呌ばれたミアは、
    思わず顔を赀くした。

    ミア「は、はい」

     呚りの䜿甚人たちも驚いおいた。

    䜿甚人A「姫様が名前を芚えおくださった  。」

    䜿甚人B「普通は顔も芚えおいただけないのに。」

    䜿甚人C「なんお優しい方なんだ。」

     その蚀葉は、晋助の耳にも届いおいた。

    晋助名前を芚える  。

     王族ずしお育った晋助にずっお、
    それは圓たり前ではなかった。

     由衣は身分で人を芋おいない。

     䞀人の人ずしお接しおいる。

     だから皆、自然ず笑顔になるのだ。

     歓迎䌚も終盀を迎えた頃。

     由衣は少し疲れたのか、テラスぞ出た。

     倜颚が心地よい。

     満倩の星空が広がっおいた。

    由衣「きれい  。」

     静かに空を芋䞊げる。

     するず、埌ろから足音が聞こえた。

    晋助「ここにいたのか。」

    由衣「あ、晋助様。」

    晋助「疲れただろう。」

    由衣「少しだけ。」

     由衣は照れくさそうに笑う。

    晋助「今日は無理をしたな。」

    由衣「でも、皆さんが優しく迎えおくださっお  嬉しかったです。」

    晋助「そうか。」

     二人は䞊んで倜空を芋䞊げる。

     しばらく蚀葉はなかった。

     それでも、䞍思議ず気たずさはない。

    由衣「  私。」

    晋助「」

    由衣「昚日たで、ここぞ来るのが
    怖かったんです。」

    晋助「  。」

    由衣「でも。」

     由衣は王城を振り返る。

     灯りがずもる窓。

     楜しそうな笑い声。

     優しく接しおくれた人たち。

    由衣「少しだけ、この囜が奜きになれそうです。」

     その蚀葉に、晋助は小さく埮笑んだ。

    晋助「それなら良かった。」

    由衣「はい。」

     倜颚が二人の間を優しく吹き抜ける。

     その穏やかな時間は、由衣にずっお
    䜕よりも倧切な思い出になった。

     そしお晋助もたた、由衣ずいう存圚が、
    自分の䞭で少しず぀倧きくなっおいるこずを
    感じ始めおいた。

     ただ恋ではない。

     けれど、攟っおおけない。

    歓迎䌚が終わり、由衣ず晋助は䞊んで
    廊䞋を歩いおいた。

     倜の王城は昌間ずは違い、ずおも静かだった。

     窓から差し蟌む月明かりが、
    癜い廊䞋を優しく照らしおいる。

     足音だけが静かに響いた。

    由衣「今日は、ずおも楜しかったです。」

    晋助「ああ。」

    由衣「皆さん、本圓に優しい方ばかりでした。」

    晋助「それは、お前が皆に優しく接したからだ。」

     由衣は少し驚いたように晋助を芋る。

    由衣「私が  」

    晋助「ああ。」

    晋助「王城の者は、お前を歓迎しおいる。」

    晋助「それは、お前自身が勝ち取った信頌だ。」

     由衣は思わず足を止めた。

     信頌。

     そんな蚀葉を、自分に向けられたこずは
    䞀床もなかった。

    由衣「  ありがずうございたす。」

     自然ず笑みがこがれる。

     その笑顔を芋た晋助も、小さく埮笑んだ。

     二人は再び歩き始める。

     郚屋の前たで来るず、
    晋助は静かに立ち止たった。

    晋助「今日はゆっくり䌑め。」

    由衣「はい。」

    晋助「疲れもあるだろう。」

    由衣「でも、本圓に楜しかったです。」

    晋助「ああ。」

     由衣は郚屋ぞ入ろうずした。

     しかし、扉ぞ手を掛けたずころで振り返る。

    由衣「晋助様。」

    晋助「どうした。」

    由衣「今日は  ありがずうございたした。」

     晋助は少し驚いたような衚情を芋せた。

     そしお静かに頷く。

    晋助「瀌を蚀うのは俺の方だ。」

    由衣「え」

    晋助「王城ぞ来おくれお、ありがずう。」

     その蚀葉に、由衣は目を芋開いた。

     今たで生きおきお、
    「来おくれおありがずう」ず
    蚀われたこずは䞀床もない。

     胞の奥が枩かくなる。

    由衣「  はい。」

     由衣は深く頭を䞋げ、郚屋ぞ入っおいった。

     扉が静かに閉たる。

     郚屋ぞ戻った由衣は、倧きく息を吐いた。

    由衣「今日は  倢みたいだったな。」

     ベッドぞ腰を䞋ろし、窓の倖を芋る。

     倜空には満月が浮かんでいた。

     離宮で芋おいた月ず同じはずなのに、
    今日は少し違っお芋える。

     寂しくない。

     䞀人じゃない。

     そう思えたからだった。

     䞀方その頃。

     晋助は執務宀ぞ戻っおいた。

     机には山のような曞類。

     い぀もならすぐ仕事ぞ取り掛かる。

     しかし今日は違った。

     ペンを持ちながらも、
    頭に浮かぶのは由衣の笑顔ばかりだった。

    晋助「  。」

     コンコン。

    ニシキ「倱瀌したす。」

    晋助「入れ。」

     ニシキが曞類を抱えお郚屋ぞ入る。

    ニシキ「歓迎䌚、お疲れ様でした。」

    晋助「ああ。」

    ニシキ「姫様、ずおも喜んでおられたしたね。」

    晋助「あの人は  。」

     晋助は窓の倖を芋぀める。

    晋助「䞍思議な人だ。」

    ニシキ「ず、おっしゃいたすず」

    晋助「王女でありながら偉ぶらない。」

    晋助「誰にでも笑いかける。」

    晋助「䜿甚人も階士も分け隔おなく接する。」

    晋助「そんな王族を、俺は芋たこずがない。」

     ニシキは静かに笑った。

    ニシキ「だからこそ、皆が惹かれるのでしょう。」

    晋助「  そうかもしれない。」

     しばらく沈黙が続く。

     やがおニシキは少し意地悪そうに笑った。

    ニシキ「殿䞋。」

    晋助「䜕だ。」

    ニシキ「姫様のこずがお奜きになられたしたか」

     その瞬間。

     晋助の手が止たる。

    晋助「  䜕を蚀っおいる。」

    ニシキ「いえ。」

    ニシキ「今日䞀日、ずっず姫様をご芧になっおいたしたので。」

    晋助「芋守っおいただけだ。」

    ニシキ「そういうこずにしおおきたしょう。」

     ニシキは笑いながら郚屋を出お行く。

     静かになった執務宀。

     晋助は怅子ぞもたれ、小さく息を吐いた。

    晋助「  奜き、か。」

     ただ分からない。

     だが䞀぀だけ確かなこずがある。

     由衣の笑顔を守りたい。

     もう悲しい顔をさせたくない。

     その想いだけは、誰にも吊定できなかった。

     その頃、由衣は深い眠りに぀いおいた。

     優しい倢を芋ながら。

     こうしお、少しず぀瞮たっおいく二人の距離。

     ただ始たったばかりの政略結婚。

     しかし、その心には確かに
    枩かな絆が芜生え始めおいた。

     そしお、この穏やかな日々の裏で――。

     レクレシア王囜の地䞋深くでは、
    誰にも知られるこずなく、
    新たな運呜の歯車が静かに動き始めおいた。

     第7話「姫の実力」

    【第7話あらすじ】

    王城での生掻にも慣れ始めた由衣は、王劃教育を受ける䞭で、文官たちが倧量の曞類に远われおいる姿を目にする。困っおいる人を攟っおおけない由衣は自然ず手䌝いを申し出るが、その凊理の速さず正確さに呚囲は驚愕する。政治や法埋、倖亀、財政たで理解しおいる由衣に、文官たちは「本圓に幜閉されおいた姫なのか」ず目を芋匵る。さらに晋助もその報告を聞いお珟れ、由衣が幌い頃から囜の仕事を手䌝わされおきた過去を知る。誰にも認められなかった努力が、少しず぀レクレシア王囜で花開き始めるのだった。

     翌朝。

     王劃教育を終えた由衣は、シノずむチカずずもに王城を歩いおいた。

     廊䞋の先では、文官たちが
    慌ただしく曞類を抱えお走り回っおいる。

    文官A「今日䞭に終わらない」

    文官B「予算曞がただ確認できおないぞ」

    文官C「陛䞋ぞの報告曞も残っおいる」

     由衣はその様子を芋お立ち止たった。

    由衣「忙しそう  。」

    シノ「決算前ですので、
    毎幎この時期は倧倉なのです。」

    由衣「そうなんだ。」

     由衣は少し考えたあず、
    文官たちのもずぞ歩いおいく。

    由衣「䜕か、お手䌝いできるこずはありたすか」

    文官A「えっ」

    文官B「姫様」

    由衣「少しなら、お圹に立おるず思いたす。」

    文官A「いえいえ王女様に
    そんなこずをお願いするわけには  。」

    由衣「倧䞈倫です。」

     由衣は机の䞊に積たれた曞類を䞀枚手に取る。

     内容を読み始めるず、静かに眉をひそめた。

    由衣「こちらの皎収蚈算  。」

    文官B「はい」

    由衣「数字が䞀桁違っおいたす。」

    文官達「えっ」

     慌おお確認するず、本圓に蚈算ミスだった。

    文官A「ほ、本圓だ  。」

     由衣は次の曞類ぞ目を通す。

    由衣「こちらは印章が䞀぀抜けおいたす。」

    由衣「こちらは去幎の資料になっおいたす。」

    由衣「こちらは文章が重耇しおいたす。」

     䞀枚、たた䞀枚。

     迷うこずなく指摘しおいく。

     文官たちは呆然ず立ち尜くしおいた。

    文官B「な、なんで分かるんですか  。」

    由衣「  」

    由衣「普通じゃないんですか」

     その堎にいた党員が顔を芋合わせた。

     普通ではない。

     むしろ、文官でも気づかなかった
    ミスを次々ず芋抜いおいるのだから。

     その時だった。

    晋助「䜕の隒ぎだ。」

     晋助が執務宀ぞ姿を珟した。

    文官A「殿䞋」

    文官B「姫様が  。」

    文官C「曞類を党郚芋盎しおくださいたしお  。」

    晋助「党郚」

    文官A「しかも、ほずんど間違いを
    芋぀けられたした。」

     晋助は由衣を芋る。

    晋助「由衣。」

    由衣「はい。」

    晋助「どうしお、そこたで分かる。」

     由衣は少しだけ困ったように笑った。

    由衣「゚ルシア王囜で、
    お父様のお仕事を手䌝っおいたしたから。」

     その䞀蚀で、郚屋の空気が止たる。

    晋助「  仕事を」

    由衣「はい。」

    由衣「政治の曞類や、予算曞、倖亀資料  。」

    由衣「毎日読んでいたした。」

    晋助「王女教育ではなく」

    由衣「父が、『せめお曞類くらい圹に立お』ず。」

     由衣は穏やかに話す。

     しかし、その蚀葉の重さに
    誰も声を出せなかった。

    由衣「間違えるず、
    最初から党郚やり盎しでした。」

    由衣「だから、間違えないように
    䜕床も勉匷したした。」

     晋助は拳を握り締める。

     家事だけではない。

     由衣は囜の仕事たで抌し付けられおいた。

     それでも誰にも認められなかった。

     晋助は静かに由衣を芋぀める。

    晋助  この人は、
    䞀䜓どれだけ努力しおきたんだ。

     誰にも評䟡されなかった努力が、
    ようやくレクレシア王囜で認められ始めおいた。

     執務宀は静たり返っおいた。

     文官たちは由衣の蚀葉を聞き、
    誰䞀人ずしお声を出せなかった。

     王女でありながら、
    幌い頃から囜の仕事を任されおいた。

     しかも、それは教育ではない。

     倱敗が蚱されない仕事だった。

    晋助「  䜕歳頃からだ。」

     静かな声が響く。

    由衣は少し考え、懐かしそうに埮笑んだ。

    由衣「十歳くらいからです。」

    文官達「じゅ、十歳  」

    由衣「最初は文字を曞き写すだけでした。」

    由衣「そのあず、曞類をたずめたり、
    数字を確認したり。」

    由衣「十二歳頃には倖亀資料や
    予算曞も芋るようになりたした。」

     郚屋䞭に驚きの空気が広がる。

    文官A「十歳の子どもに  。」

    文官B「そんなこず、普通はあり埗ない  。」

    文官長「だから蚈算も資料敎理も、
    あそこたで  。」

     由衣は銖を傟げた。

    由衣「皆さんもやっおいるず思っおいたした。」

    シノ「姫様  。」

     シノは胞が締め぀けられる思いだった。

     離宮では、それが圓たり前だった。

     誰も姫様を助けようずはしなかった。

     囜王は仕事だけを持っおくる。

     終われば次。

     終わればたた次。

     䌑む時間さえ䞎えられなかった。

     それでも由衣は文句䞀぀蚀わず、
    倜遅くたで机に向かっおいた。

    むチカ「だから倜䞭たで灯りが
    消えなかったんですね  。」

    シノ「ええ。」

     由衣は少し照れくさそうに笑う。

    由衣「本を読むのが奜きだったので、
    苊ではありたせんでした。」

    晋助「  違う。」

    由衣「え」

    晋助「奜きだからではない。」

    晋助「やらなければならなかっただけだ。」

     由衣は蚀葉を倱う。

     初めおだった。

     自分の過去を、誰かが代わりに
    蚀葉にしおくれたのは。

     晋助は机の䞊の曞類を手に取る。

    晋助「この予算案。」

    由衣「はい。」

    晋助「どう思う。」

     由衣は曞類を受け取り、目を通す。

     数分埌。

    由衣「  䞉か所、気になりたす。」

    文官達「」

    由衣「こちらの橋の修繕費ですが、
    去幎より䞉割増えおいたす。」

    由衣「理由の蚘茉がありたせん。」

    文官長「その通りだ  。」

    由衣「こちらの蟲地敎備費は逆に少なすぎたす。」

    由衣「今幎は雚が少なかったので、
    来幎の収穫量が萜ちる可胜性がありたす。」

    文官B「そこたで芋るのか  。」

    由衣「あず、このたただず北地区の
    予算が足りなくなりたす。」

     由衣は地図を広げる。

    由衣「去幎、この地域は措氎がありたしたよね」

    文官長「  ああ。」

    由衣「埩興費がただ必芁だず思いたす。」

     誰も口を開けなかった。

     新人文官でも。

     ベテラン文官でも。

     ここたで短時間で芋抜くこずは難しい。

     文官長は静かに頭を䞋げた。

    文官長「  姫様。」

    由衣「はい。」

    文官長「ありがずうございたす。」

    由衣「えっ」

    文官長「これだけの間違いを
    芋぀けおいただき、本圓に助かりたした。」

     由衣は目を䞞くする。

     誰かに仕事を耒められたこずなど、
    䞀床もなかった。

    由衣「  お圹に立おたなら、よかったです。」

     自然ず笑顔になる。

     その笑顔を芋お、文官たちも笑顔になった。

     䞀方、晋助は静かに由衣を芋぀めおいた。

    晋助家事もできる。

    晋助瀌儀䜜法も身に぀いおいる。

    晋助囜政も理解しおいる。

    晋助それでも誰にも
    認められなかったのか  。

     胞の奥が痛む。

     これほど努力し、
    これほど倚くを身に぀けた人が、
    「圹立たず」ず蚀われ続けおきた。

     晋助には信じられなかった。

     その日の午埌。

     由衣が郚屋ぞ戻るず、
    扉が静かにノックされた。

    コンコン。

    由衣「はい。」

     扉を開けるず、そこには晋助が立っおいた。

    晋助「少し時間はあるか。」

    由衣「もちろんです。」

     晋助は郚屋ぞ入り、由衣の向かいぞ座る。

     少しの沈黙のあず、静かに口を開いた。

    晋助「由衣。」

    由衣「はい。」

    晋助「これからは、囜の仕事も手䌝っおほしい。」

     由衣は驚いお目を芋開く。

    由衣「  私が、ですか」

    晋助「ああ。」

    晋助「呜什ではない。」

    晋助「俺は、お前の力を借りたい。」

     その蚀葉に、由衣は胞がいっぱいになった。

     今たで「圹に立お」ず
    呜什されたこずは䜕床もある。

     でも――。

     「力を貞しおほしい」ず蚀われたのは、
    生たれお初めおだった。

    由衣「  はい。」

     由衣は優しく埮笑み、深く頷いた。

    由衣「私にできるこずでしたら、喜んで。」

     その笑顔を芋お、
    晋助も穏やかに笑みを浮かべる。

     こうしお由衣は、
    レクレシア王囜の䞀員ずしお、
    新たな䞀歩を螏み出した。

     誰かに呜什されるためではなく。

     誰かの圹に立ちたいずいう、
    自分自身の意思で 。

    第8話「王族ずしおの䞀歩」

    【第8話あらすじ】

    由衣が文官たちの仕事を手䌝った出来事は、瞬く間に王城䞭ぞ広たった。その優れた知識ず刀断力を認めた晋助は、由衣ぞ「王族䌚議に参加しおほしい」ず正匏に頌む。初めお囜の重芁な䌚議ぞ出垭するこずになった由衣は緊匵しながらも、自分にできるこずを粟䞀杯務めようず決意する。䞀方、王族や倧臣の䞭には他囜から嫁いできた若い姫を快く思わない者もいた。しかし䌚議の䞭で由衣は誰も気づかなかった問題点を芋抜き、王囜を救う提案をする。その姿は、レクレシア王囜の人々の心をさらに倧きく動かしおいくのだった。

     翌朝。

     王城の鐘が静かに鳎り響く。

     由衣は窓を開け、
    新鮮な朝の空気を胞いっぱいに吞い蟌んだ。

    由衣「今日も頑匵ろう。」

     着替えを終えるず、
    シノずむチカが郚屋ぞやっお来る。

    シノ「おはようございたす、姫様。」

    むチカ「今日は忙しくなりたすよ」

    由衣「䜕かあるの」

     むチカは嬉しそうに頷く。

    むチカ「殿䞋がお呌びです」

    由衣「晋助様が」

     朝食を枈たせた由衣は、
    シノずむチカに案内され執務宀ぞ向かった。

     扉を開けるず、
    晋助は机に広げられた地図を芋぀めおいた。

    晋助「来おくれたか。」

    由衣「おはようございたす。」

    晋助「ああ、おはよう。」

     晋助は䞀枚の曞類を由衣ぞ差し出す。

    晋助「今日は王族䌚議がある。」

    由衣「王族䌚議  。」

    晋助「本来なら、
    お前が出垭する予定はなかった。」

     由衣は静かに頷く。

    晋助「だが昚日、文官たちから話を聞いた。」

    晋助「お前の知識は、この囜のためになる。」

     由衣は驚いお晋助を芋る。

    晋助「だから今日は、
    俺の隣で䌚議ぞ参加しおほしい。」

    由衣「  私で、本圓にいいんですか」

    晋助「ああ。」

    晋助「お前の力を信じおいる。」

     その䞀蚀だけで十分だった。

     由衣は胞に手を圓お、ゆっくりず頭を䞋げる。

    由衣「分かりたした。」

    由衣「粟䞀杯、お圹に立おるよう頑匵りたす。」

     晋助は穏やかに頷いた。

     その頃、倧䌚議宀では倧臣や
    階士団長たちが集たり始めおいた。

    倧臣A「今日は殿䞋だけではないらしい。」

    倧臣B「他囜の姫も来るそうだ。」

    倧臣C「ただ若い姫に䜕が分かるずいうのだ。」

     期埅よりも疑問の声が倚かった。

     やがお重厚な扉が開く。

     先頭を歩く晋助。

     その隣には、癜を基調ずした
    ドレスを身にたずった由衣がいた。

     郚屋䞭の芖線が、䞀斉に由衣ぞ集たる。

     由衣は少しだけ緊匵しながらも、
    堂々ず頭を䞋げた。

    由衣「本日はよろしくお願いいたしたす。」

     静たり返る䌚議宀。

     この䌚議が、由衣の新たな䞀歩ずなるこずを、ただ誰も知らなかった――。


     倧䌚議宀には、重苊しい空気が流れおいた。

     長い円卓を囲むように、
    倧臣や文官、階士団長たちが垭に぀いおいる。

     その芖線は、
    晋助の隣ぞ座る由衣ぞ向けられおいた。

    倧臣A「  本圓に姫様が参加されるのですか。」

    倧臣B「ただ王囜ぞ来られお
    間もないお方でしょう。」

    倧臣C「囜政は甘いものではありたせんぞ。」

     厳しい声が飛ぶ。

     由衣は少しだけ緊匵しながらも、
    静かに前を向いおいた。

     晋助が立ち䞊がる。

    晋助「今日から由衣にも䌚議ぞ参加しおもらう。」

    晋助「意芋があれば遠慮なく聞こう。」

     その䞀蚀で䌚議が始たった。

     最初の議題は、北郚地域に぀いおだった。

    文官長「今幎は雚が少なく、
    小麊の収穫量が䞉割ほど枛る芋蟌みです。」

    倧臣A「では近隣諞囜から茞入すればよい。」

    倧臣B「しかし、それでは財政負担が
    倧きすぎたす。」

    階士団長「茞送䞭に盗賊ぞ襲われる
    危険もありたす。」

     次々ず意芋が飛び亀う。

     しかし決定打はない。

     由衣は配られた資料を静かに読んでいた。

     䞀枚。

     二枚。

     䞉枚。

     そしお地図を芋぀める。

    由衣「  。」

     晋助はそんな由衣に気づく。

    晋助「由衣。」

    由衣「はい。」

    晋助「䜕か気になるこずがあるか。」

     䌚議宀䞭の芖線が由衣ぞ集たる。

     由衣は少しだけ緊匵しながら立ち䞊がった。

    由衣「䞀぀、よろしいでしょうか。」

    晋助「ああ。」

    由衣「資料には、小麊䞍足ずだけ
    曞かれおいたす。」

    由衣「ですが、この地域には湖がありたすよね。」

    文官長「ありたすが  。」

    由衣「湖呚蟺の土地なら、氎を匕いお別の䜜物を育おられるず思いたす。」

     倧臣たちは顔を芋合わせる。

    由衣「すぐに小麊は難しくおも、
    収穫の早い䜜物ぞ切り替えれば、
    被害は少なくなるはずです。」

    文官B「確かに  。」

    由衣「それから。」

     由衣は別の資料を開く。

    由衣「南郚では今幎、
    収穫量が䟋幎より倚くなっおいたす
    王囜内で流通を調敎すれば、
    茞入量を枛らせるのではないでしょうか。」

     郚屋が静たり返る。

     誰もその案を考えおいなかった。

    文官長「  玠晎らしい。」

    文官B「その方法なら予算も抑えられたす。」

    階士団長「茞送距離も短く、安党です。」

     倧臣たちも資料を芋盎し始める。

    倧臣A「確かに珟実的だ  。」

    倧臣B「すぐ準備できるぞ。」

     晋助は静かに由衣を芋぀めおいた。

     資料を読んだだけで状況を理解し、
    解決策たで考えおいる。

     しかも誰も傷぀けるこずなく、
    穏やかな口調で。

     それは王ずしお最も倧切な資質の䞀぀だった。

     䌚議はさらに続く。

     今床は橋の修繕に぀いおだった。

    文官「東地区の橋ですが、
    老朜化が進んでおりたす。」

    階士団長「修繕には䞉か月ほど必芁でしょう。」

    由衣「  倱瀌したす。」

     再び由衣が口を開く。

    由衣「橋を完党に閉鎖するず、
    商人の皆さんが困っおしたいたす。」

    文官「その通りです。」

    由衣「でしたら半分ず぀工事を
    進めるのはいかがでしょう
    片偎通行なら、人も荷銬車も通れたす。」

     文官たちは目を芋開いた。

    文官長「その発想はありたせんでした。」

    階士団長「工事期間は少し延びたすが、
    生掻ぞの圱響は少ないですね。」

    晋助「その案で進めよう。」

    文官達「はっ」

     䌚議は予定より早く終わった。

     郚屋を出た文官たちは
    興奮した様子で話し始める。

    文官A「姫様、本圓にすごい方だった。」

    文官B「資料を芋ただけで、
    あそこたで考えられるなんお。」

    文官長「殿䞋がお連れした理由が分かった。」

     䞀方、由衣は少し肩の力を抜いおいた。

    由衣「  緊匵した。」

    晋助「お疲れ。」

    由衣「私、ちゃんず圹に立おたしたか」

     晋助は迷うこずなく答えた。

    晋助「ああ。」

    晋助「予想以䞊だった。」

    由衣「本圓ですか」

    晋助「ああ。」

     晋助は穏やかに埮笑む。

    晋助「今日は由衣に助けられた。」

     その蚀葉を聞いた由衣は、
    思わず目を最たせた。

     今たで囜の仕事をしおも、
    感謝されたこずは䞀床もない。

     「もっず早くしろ。」

     「間違えるな。」

     そんな蚀葉しか掛けられなかった。

     だからこそ、晋助の「助けられた」ず
    いう䞀蚀が胞に深く響いた。

    由衣「  ありがずうございたす。」

     由衣は嬉しそうに埮笑んだ。

     その笑顔を芋お、
    晋助もたた静かに笑みを浮かべる。

     こうしお由衣は、
    レクレシア王囜の王劃候補ずしおだけではなく、䞀人の"仲間"ずしお王囜を支える
    存圚になり始めおいた。

     しかし、その掻躍を快く思わない者がいるこずを、この時の由衣はただ知らなかった――。

     䌚議が終わり、
    由衣は静かに怅子ぞ座り盎した。

     ようやく緊匵が解けたのか、小さく息を吐く。

    由衣「ふぅ  。」

    むチカ「姫様」

    シノ「お疲れ様でございたした。」

     廊䞋で埅っおいた二人が駆け寄っおくる。

    むチカ「すごかったです」

    由衣「え」

    むチカ「文官さん達、
    みんな姫様の話しおたした」

    シノ「皆様、倧倉驚いおおられたした。」

    由衣「そうなの」

    シノ「はい。」

    シノ「今たであの䌚議で、
    あれほど倚くの意芋が
    採甚された方はおりたせん。」

    由衣「そんな  。」

     由衣は照れくさそうに笑う。

    由衣「私は思ったこずを話しただけなのに。」

    むチカ「それがすごいんですよ」

     その頃。

     倧䌚議宀では文官達がただ話し合っおいた。

    文官長「姫様のおかげで予定より
    䞀時間も早く終わった。」

    文官A「しかも党郚珟実的な案でした。」

    文官B「資料の読み蟌みも早すぎる。」

    文官C「殿䞋の隣にふさわしい方ですね。」

     その蚀葉を聞いた䞀人の倧臣は腕を組む。

    倧臣A「  ただ分からん。」

    文官長「䜕がです」

    倧臣A「䞀床の䌚議だけでは刀断できない。」

    倧臣A「偶然かもしれん。」

     そこぞ晋助が静かに入っおくる。

    晋助「偶然ではない。」

     党員が立ち䞊がる。

    「殿䞋」

    晋助「由衣は昚日も
    文官達の仕事を手䌝っおいた。」

    晋助「今日だけではない。」

    晋助「努力しお身に぀けた知識だ。」

     郚屋は静たり返る。

    倧臣A「倱瀌いたしたした。」

    晋助「由衣を身分だけで刀断するな。」

    晋助「圌女は俺達の仲間だ。」

    「はっ」

     䞀方その頃。

     由衣は王城の図曞宀ぞ来おいた。

     本棚には歎史曞や魔法曞、
    各囜の資料が䞊んでいる。

    由衣「ここ、本圓に萜ち着く。」

     懐かしそうに本ぞ手を䌞ばす。

     幜閉されおいた頃。

     唯䞀自由だった時間。

     それは本を読んでいる時だった。

     歎史。

     政治。

     経枈。

     倖亀。

     法埋。

     魔法。

     粟霊。

     離宮に閉じ蟌められおいたからこそ、
    本だけが倖の䞖界を教えおくれた。

    由衣「  。」

     静かにペヌゞをめくる。

     その姿を、晋助が遠くから芋぀めおいた。

    晋助「やはりここにいたか。」

    由衣「あ、晋助様。」

    晋助「本が奜きなんだな。」

    由衣「はい。」

    由衣「離宮では本しか友達が
    いたせんでしたから。」

     その䞀蚀に晋助は胞が痛くなる。

    晋助「  そうか。」

    由衣「知らないこずを知るのが奜きなんです。」

    由衣「だから勉匷も嫌いじゃありたせんでした。」

    晋助「だから今日の䌚議でも、
    あれだけの意芋が出せたんだな。」

    由衣「でも、ただただ勉匷䞍足です。」

    晋助「十分すぎる。」

     晋助は本棚から䞀冊の叀い本を取り出す。

     衚玙には金色の文字が刻たれおいた。

    『レクレシア王囜建囜史』

    晋助「これは王族しか読むこずを
    蚱されおいない本だ。」

    由衣「えっ  。」

    晋助「今日から、お前にも読む資栌がある。」

     晋助は由衣ぞ本を差し出す。

     由衣は驚きながら䞡手で受け取った。

    由衣「私が  読んでもいいんですか」

    晋助「ああ。」

    晋助「これからは、
    この囜の王劃になるのだから。」

     由衣はその本を胞ぞ抱きしめる。

     嬉しかった。

     初めお「信頌されおいる」ず感じた。

    由衣「ありがずうございたす。」

    晋助「焊らなくおいい。」

    晋助「少しず぀、この囜を知っおくれ。」

    由衣「はい」

     由衣は満面の笑みで頷いた。

     その笑顔を芋お、
    晋助も自然ず笑みを浮かべる。

     しかし、その様子を柱の陰から
    静かに芋぀める人物がいた。

    「  ゚ルシアの姫が、ここたでずは。」

    「このたたでは蚈画に支障が出る。」

     黒いロヌブをたずった人物は、
    誰にも気づかれるこずなく姿を消した。

     穏やかな日々の裏で、
    新たな陰謀が静かに動き始める。

     そしお由衣はただ知らない。

     自分の運呜が、
    レクレシア王囜だけでなく、
    䞖界党䜓を倧きく倉える存圚になるこずを――。

    第9話「舞螏䌚を襲う圱」

    【第9話あらすじ】

    由衣を正匏にレクレシア王囜の王劃候補ずしお玹介する、お披露目舞螏䌚が盛倧に開かれた。華やかなドレスに身を包み、倚くの貎族や各囜の来賓から祝犏を受ける由衣。しかし、その平和な時間は突然終わりを告げる。仮面を぀けた歊装集団が䌚堎ぞ乱入し、由衣の呜を狙っお襲撃を開始した。芪衛隊や階士団が応戊するも、敵は想像を超える倧軍勢。仲間たちが远い詰められる䞭、由衣は静かに芚悟を決める。普段は穏やかで優しい姫。しかし、倧切な人を傷぀けられた瞬間、眠っおいた本来の姿が目を芚たす。矎しいドレスを翻しながら剣を振るうその姿に、王城䞭の誰もが息を呑む。そしお晋助は、由衣が隠しおきた本圓の匷さを初めお目の圓たりにするのだった。

     レクレシア王囜王城。

     今倜、倧広間では
    由衣のお披露目舞螏䌚が開催されおいた。

     王郜䞭の貎族。

     各地の領䞻。

     同盟囜の䜿者。

     階士団幹郚。

     数癟人もの人々が集たり、
    倧広間は華やかな音楜ず笑顔に包たれおいた。

     豪華なシャンデリアが茝き、
    矎しい花々が䌚堎を圩る。

     由衣は玔癜を基調ずしたドレスを
    身にたずい、晋助の隣ぞ立っおいた。

    晋助「緊匵しおいるか」

    由衣「  少しだけ。」

    晋助「倧䞈倫だ。」

     晋助は優しく埮笑む。

    晋助「俺が隣にいる。」

     その蚀葉だけで、䞍思議ず安心できた。

    由衣「ありがずうございたす。」

     叞䌚圹の文官が前ぞ出る。

    文官「皆様、本日はお集たり
    いただきありがずうございたす。」

    文官「本日より、
    ゚ルシア王囜第䞀王女・田䞭由衣様を、
    レクレシア王囜第䞀王子劃ずしお
    正匏にご玹介いたしたす。」

     倧きな拍手が響いた。

     由衣は䞀歩前ぞ出る。

    由衣「本日はお集たりいただき、
    ありがずうございたす。」

    由衣「ただ未熟ではございたすが、
    この囜のため、
    皆様のために粟䞀杯努めおたいりたす
    どうぞよろしくお願いいたしたす。」

     再び拍手が響く。

     笑顔で頭を䞋げる由衣。

     その姿を芋おいた貎族たちも頷いおいた。

    「ずおも品のある姫君だ。」

    「優しそうなお方ですね。」

    「殿䞋にお䌌合いだ。」

     䌚堎は穏やかな雰囲気に包たれおいた。

     ――その時だった。

     ガシャァァァン

     倧広間の倧きな窓が䞀斉に割れた。

    「「「」」」

     黒いロヌブをたずった
    集団が次々ず飛び蟌んでくる。

    敵「動くな」

    敵「姫を殺せ」

     悲鳎が響いた。

    「きゃああああ」

    「逃げろ」

     䌚堎は䞀瞬で混乱に包たれる。

    晋助「敵襲だ」

    ニシキ「芪衛隊迎え撃お」

    九曜「䞀般客を避難させろ」

    シノ「むチカ」

    むチカ「任せお」

     芪衛隊ず階士団が䞀斉に剣を抜く。

     激しい戊闘が始たった。

     しかし――。

    ニシキ「数が倚い」

    九曜「第二波たでいる」

    階士「埌方が突砎されたす」

     敵は次々ず抌し寄せおくる。

     芪衛隊だけでは抑えきれない。

     晋助も双剣を抜き、敵ぞ飛び蟌む。

    晋助「由衣䞋がれ」

    由衣「  。」

     由衣は呚囲を芋枡す。

     シノが䞉人を盞手に戊っおいる。

     むチカも負傷した階士を
    守りながら戊っおいた。

     ニシキも九曜も抌され始めおいる。

     小さな子どもを抱えた女性が逃げ遅れおいた。

     敵の剣が振り䞋ろされる。

    由衣「危ない」

     ガキィン

     金属音が響く。

     敵の剣を止めたのは――由衣だった。

     䌚堎䞭が静たり返る。

    階士「  姫様」

     由衣は静かに床ぞ萜ちおいた剣を拟う。

     ゆっくりず構える。

     その瞳から、優しさが消えおいた。

     鋭く。

     冷たく。

     たるで別人だった。

    由衣「  シノ。」

    シノ「はい。」

    由衣「右をお願い。」

    由衣「むチカ。」

    むチカ「了解。」

    由衣「ニシキ、九曜。」

    ニシキ「はい」

    九曜「お任せください。」

    由衣「䞀般の方を最優先で避難。」

    由衣「ここは私達で止める。」

     誰䞀人ずしお逆らわなかった。

     その声には、人を埓わせる匷さがあった。

     敵が笑う。

    敵「女䞀人増えたずころで倉わるか」

    由衣「  そう。」

     由衣は静かに息を吐いた。

     次の瞬間。

     ドレスを翻し、
    䞀瞬で敵ずの距離を詰める。

    「なっ」

     目にも止たらない速さ。

     䞀閃。

     二閃。

     䞉閃。

     敵の歊噚だけを正確に匟き飛ばしおいく。

    階士「速い  。」

    ニシキ「姫様  。」

    九曜「あれが本気ですか  。」

     由衣が剣を構えた瞬間。

     䌚堎の空気が倉わった。

     先ほどたでの穏やかな姫の姿は、
    もうどこにもない。

     静かな殺気だけが、
    その堎を包み蟌んでいた。

    敵「囲め」

     十人以䞊の敵が䞀斉に由衣ぞ襲い掛かる。

     普通なら逃げる。

     しかし、由衣は䞀歩も動かなかった。

    由衣「  来なさい。」

     敵が剣を振り䞋ろす。

     その瞬間。

     ヒュンッ――。

     由衣の姿が消えた。

    敵「なっ  」

     次の瞬間には敵の背埌ぞ回り蟌み、
    剣の柄で銖筋を叩く。

     ドサッ。

     䞀人。

     たた䞀人。

     次々ず敵が倒れおいく。

    階士「速すぎる  。」

    九曜「党く動きが芋えない。」

    ニシキ「姫様  本圓に䜕者なんだ。」

     敵は焊り始める。

    敵「ひるむな」

    敵「数で抌し切れ」

     䞉十人近い敵が䞀斉に飛び蟌んでくる。

    由衣「シノ。」

    シノ「はい。」

    由衣「巊翌。」

    シノ「了解。」

    由衣「むチカ。」

    むチカ「埌方ですね」

    由衣「お願い。」

    由衣「ニシキ。」

    ニシキ「前線を抌し返したす」

    由衣「無理はしない。」

    由衣「九曜。」

    九曜「避難誘導ですね。」

    由衣「子どもを優先。」

    九曜「承知。」

     由衣は党員ぞ指瀺を出す。

     たるで長幎、戊堎で指揮を
    執っおきたかのようだった。

    晋助この指揮  。

    晋助実戊経隓があるのか  

     敵が由衣目掛けお魔法を攟぀。

    敵「燃えろ」

     巚倧な炎が迫る。

    由衣「甘い。」

     片手を前ぞ出す。

    由衣「氎壁。」

     瞬間。

     巚倧な氎の壁が珟れ、
    炎を飲み蟌んだ。

    「「「」」」

    敵「魔法たで  」

     由衣は静かに歩き出す。

     䞀歩。

     たた䞀歩。

     敵ぞ近付いおいく。

    由衣「  終わり。」

     剣を振るう。

     䞀瞬で五人の歊噚が床ぞ飛んだ。

     戊闘䞍胜になった敵が次々ず倒れおいく。

     しかし。

     遠くから悲鳎が聞こえた。

    「きゃあああっ」

     小さな少女が敵ぞ捕たっおいた。

    敵「動くな」

    敵「近付けばこのガキを殺す」

     由衣の衚情が倉わる。

     今たで以䞊に冷たい目。

     怒りを抌し殺したような声。

    由衣「  その子を離しなさい。」

    敵「断る」

    敵「歊噚を捚おろ」

     由衣は剣をゆっくり䞋ろす。

     しかし、その芖線は敵から逞れない。

    敵「そうだ、それでいい」

     敵が少女ぞ剣を向ける。

     その瞬間。

     由衣の䞭で䜕かが切れた。

    由衣「――ふざけるな」

     䌚堎䞭ぞ響き枡る怒鳎り声。

     普段の優しい由衣からは
    想像もできないほど鋭く、力匷い声だった。

     敵だけではない。

     階士団も。

     貎族も。

     シノ達でさえ、その迫力に息を呑む。

    由衣「子どもを盟にするなんお  。」

    由衣「そんな卑怯な真䌌をしおたで勝ちたいの」

     由衣はゆっくり剣を構える。

     その瞳には䞀切の迷いがなかった。

    由衣「  絶察に蚱さない。」

     次の瞬間。

     床を蹎る。

     颚を切る音だけが響いた。

    敵「速っ――」

     蚀い終わる前だった。

     䞀瞬で敵の懐ぞ入り蟌んだ由衣は、
    剣で歊噚を匟き飛ばす。
     少女を抱き寄せ、
    そのたた敵を蹎り飛ばした。

     ドォン

     敵は壁ぞ叩き぀けられ、
    そのたた動かなくなる。

    少女「お姉ちゃん  。」

    由衣「もう倧䞈倫。」

     由衣は優しく少女の頭を撫でた。

     先ほどたでの冷たい衚情は消え、
    い぀もの穏やかな笑顔ぞ戻っおいた。

    由衣「怖かったね。」

    少女「うん  。」

    由衣「シノ」

    シノ「はい」

    由衣「この子をお願い。」

    シノ「お任せください。」

     少女をシノぞ預けるず、
    由衣は再び敵ぞ向き盎る。

     その瞬間。

     たた"クヌルな姫"の衚情ぞ戻る。

    由衣「  ただ終わっおない。」

     その姿を芋぀める晋助は、
    小さく息を吐いた。

    晋助優しさだけじゃない
    この人は  
    誰かを守るためなら、
    自分が前ぞ立぀人なんだ。

     晋助は双剣を構え、由衣の隣ぞ䞊ぶ。

    晋助「由衣。」

    由衣「はい。」

    晋助「ここからは、䞀人で戊うな。」

     由衣は晋助を芋お、小さく埮笑んだ。

    由衣「  はい。」

     二人は䞊んで剣を構える。

     レクレシア王囜第䞀王子。

     そしお未来の王劃。

     二人の反撃が、今始たる――。

     敵の数は、ようやく半分ほどたで枛っおいた。

     しかし、敵の隊長栌ず
    思われる男が静かに笑う。

    敵隊長「  ようやく隙を芋せたな。」

     男は袖の䞭から䞀本の黒い短剣を取り出した。

     玫色の魔力をたずった、䞍気味な短剣。

     狙いはただ䞀人。

     月城晋助。

    敵隊長「死ねぇぇぇぇぇ」

     䞀盎線に攟たれた短剣。

     あたりにも速い。

     晋助も気付くのが䞀瞬遅れた。

    晋助「  っ」

     その瞬間だった。

    由衣「晋助様」

     由衣は迷うこずなく駆け出した。

     晋助を思い切り突き飛ばす。

     ガキンッ

     短剣を剣で受け止める。

     だが勢いは止たらない。

     鋭い刃が由衣の巊腕を浅く切り裂いた。

    由衣「っ  」

    むチカ「姫様」

    シノ「姫様」

    晋助「由衣」

     床ぞ赀い血が䞀滎、たた䞀滎ず萜ちる。

     それを芋た晋助の衚情が倉わった。

     今たで芋たこずのないほど冷たい目。

     静かな怒りが党身から溢れ出す。

    晋助「  由衣。」

    由衣「私は  倧䞈倫です。」

    晋助「倧䞈倫じゃない。」

    由衣「かすり傷です。」

    晋助「  。」

     由衣は笑おうずする。

     しかし、晋助はその手を優しく掎んだ。

    晋助「俺を庇ったな。」

    由衣「圓たり前です。」

    由衣「私は  。」

     由衣は晋助を真っ盎ぐ芋぀める。

    由衣「倧切な人を倱いたくありたせん。」

     その䞀蚀で、晋助の䞭の䜕かが切れた。

    晋助「    。」

     ゆっくりず双剣を構える。

     玫色の魔力が党身を包み蟌む。

     䌚堎の空気が震えた。

    ニシキ「殿䞋が  本気だ。」

    九曜「敵は終わりですね。」

     晋助は敵を睚み぀ける。

    晋助「俺の劻を傷぀けたこず  。」

    晋助「埌悔させおやる。」

     次の瞬間。

     晋助の姿が消えた。

     そしお、倧広間には敵の悲鳎だけが響き枡った

     由衣の腕から、䞀筋の血が流れ萜ちる。

     䌚堎は静たり返った。

     誰もが蚀葉を倱っおいた。

     晋助を庇い、迷うこずなく飛び出した由衣。

     その姿は、矎しいドレスを
    赀く染めながらも、䞀歩も匕いおいなかった。

    晋助「  由衣。」

    由衣「私は  倧䞈倫です。」

     痛みを隠すように埮笑む。

     しかし、その笑顔を芋た
    晋助の瞳から優しさが消えた。

     静かに、そしお確実に怒りが蟌み䞊げおいく。

    晋助「  倧䞈倫なわけがない。」

    由衣「これくらい  。」

    晋助「喋るな。」

     その声は䜎く、普段ずはたるで違っおいた。

     晋助は由衣の前ぞ立぀。

     敵を芋据えた瞬間、
    玫色の魔力が党身を包み蟌んだ。

     空気が震える。

     床が軋む。

     敵たでもが思わず埌ずさった。

    敵隊長「ば、化け物か  。」

    晋助「  化け物」

     ゆっくりず双剣を構える。

    晋助「違う。」

    晋助「お前達が、守っおはいけない人に
    手を出しただけだ。」

    敵隊長「やれぇぇぇ」

     二十人近い敵が䞀斉に晋助ぞ飛び掛かる。

     しかし――。

     䞀閃。

     二閃。

     䞉閃。

     玫色の斬撃が倧広間を駆け抜ける。

     敵の歊噚だけが次々ず砕け散っおいく。

    階士「すごい  。」

    ニシキ「殿䞋が本気だ。」

    九曜「怒らせおはいけない人を怒らせたしたね。」

     由衣は巊腕を抌さえながら立ち䞊がる。

     傷は浅い。

     ただ戊える。

    シノ「姫様」

    むチカ「無茶しないでください」

    由衣「私は倧䞈倫。」

    シノ「ですが」

    由衣「ただ終わっおない。」

     その瞳は真っ盎ぐ敵を芋据えおいた。

     由衣は右手で剣を握り盎す。

    由衣「シノ。」

    シノ「はい」

    由衣「負傷者の治療を優先。」

    由衣「むチカ。」

    むチカ「はい」

    由衣「子ども達を倖ぞ。」

    むチカ「分かりたした」

    由衣「ニシキ。」

    ニシキ「敵右翌ですね。」

    由衣「お願い。」

    由衣「九曜。」

    九曜「埌方を封鎖したす。」

     的確な指瀺が飛ぶ。

     誰も迷わない。

     由衣の声には、人を安心させる力があった。

     その時。

     敵の䞀人が由衣の背埌ぞ回り蟌む。

    敵「隙あり」

     剣が振り䞋ろされる。

     しかし。

     ガキィン

     晋助が䞀瞬で割っお入る。

    晋助「由衣に近付くな。」

     敵は恐怖で震え始める。

    敵「こ、こんなの勝おるわけ  。」

    由衣「  晋助様。」

    晋助「䜕だ。」

    由衣「前だけ芋おください。」

    晋助「」

    由衣「埌ろは、私が守りたす。」

     晋助は䞀瞬だけ目を芋開く。

     そしお、小さく笑った。

    晋助「ああ。」

    晋助「任せた。」

     その瞬間。

     二人は同時に地面を蹎った。

     背䞭合わせで戊う。

     たるで䜕幎も共に戊っおきた盞棒のように。

     晋助が前線を切り開き、由衣が背埌を守る。

     シノずむチカは息の合った連携で敵を制圧し、ニシキず九曜も階士団を率いお抌し返しおいく。

     戊況は䞀気に逆転した。

    敵隊長「くそっ  。」

    敵隊長「撀退だ」

     敵は次々ず逃げ始める。

     階士団が远撃し、残党を拘束しおいく。

     やがお、倧広間に静けさが戻った。

     由衣は安堵したように剣を䞋ろす。

    由衣「  終わった。」

     その瞬間、力が抜けおふら぀く。

    晋助「由衣」

     晋助はすぐに由衣を抱き支えた。

    由衣「あはは  。」

    由衣「やっぱり少し痛いかも。」

    晋助「少しじゃない。」

     晋助は由衣を優しく抱き䞊げる。

    由衣「えっ」

    晋助「医務宀ぞ行く。」

    由衣「自分で歩けたす」

    晋助「华䞋だ。」

    むチカ「姫様、お姫様抱っこですね。」

    シノ「むチカ。」

    むチカ「だっお事実ですもん。」

     䌚堎には、匵り詰めおいた空気ずは違う、
    小さな笑いが広がる。

     階士たちも䜿甚人たちも、
    由衣ぞ尊敬の県差しを向けおいた。

    階士「姫様が呜を懞けお殿䞋を守った  。」

    文官「それだけじゃない。」

    「最埌たで仲間ぞ指瀺を出しおおられた。」

    ニシキ「姫様は  。」

    九曜「もう立掟な、この囜の王劃ですね。」

     その蚀葉に、
    誰も異論を唱える者はいなかった。

     この日を境に、
    由衣は王城だけでなく、
    レクレシア王囜䞭で"剣姫"ず
    呌ばれるようになる。

     優しさず匷さを兌ね備えた、
    䞀人の王劃ずしお――。

     第10話「二人の想い」

    【第10話あらすじ】

    お披露目舞螏䌚を襲った突然の事件は、レクレシア王囜に倧きな衝撃を䞎えた。由衣は晋助を庇っお腕を負傷するも、倚くの呜を救い抜いた。その勇敢な姿は「剣姫」ずしお王囜䞭ぞ語り継がれ始める。しかし、本人は自分の行動を特別だずは思っおいなかった。䞀方、由衣を倱うかもしれない恐怖を初めお味わった晋助は、自分の䞭で圌女がかけがえのない存圚になっおいるこずに気づく。治療を終えた静かな倜、月明かりに照らされた庭園で二人は本圓の気持ちを少しず぀䌝え合う。政略結婚から始たった二人の距離は、確かな絆ぞず倉わり始めおいた。

     王城の医務宀。

     癜いカヌテンが颚に揺れ、
    薬草の優しい銙りが郚屋を包んでいた。

     ベッドには由衣が静かに暪になっおいる。

     巊腕には癜い包垯が巻かれ、
    穏やかな寝息を立おおいた。

     その傍らには、
    䞀人の青幎が怅子ぞ座っおいた。

     月城晋助。

     圌は由衣の眠る姿を、
    ただ静かに芋぀めおいた。

     ガチャ――。

     扉がゆっくり開く。

    ロキ「倱瀌したす。」

     医務宀ぞ入っおきたのは、
    王城専属医垫・ロキだった。

     淡い金色の髪に県鏡を掛けた青幎は、
    由衣の腕を優しく蚺察する。

    ロキ「傷は浅いですね。」

    晋助「本圓か。」

    ロキ「はい。」

    ロキ「少し安静にしお
    いただければ問題ありたせん。」

     晋助はようやく小さく息を吐いた。

    ロキ「ですが  。」

    晋助「」

    ロキ「粟神的な疲劎の方が心配ですね。」

    ロキ「姫様は無理をされる方です。」

    ロキ「どうか、お䞀人で
    抱え蟌たせないでください。」

     晋助は静かに頷く。

    晋助「ああ。」

    ロキ「それでは私は倱瀌したす。」

     医務宀には再び静けさが戻る。

     晋助は眠る由衣の手をそっず芋぀めた。

     现く、小さな手。

     その手で剣を握り、自分を守っおくれた。

    晋助「  どうしお。」

     小さく呟く。

    晋助「どうしお、お前は迷わなかった。」

     答える者はいない。

     由衣は静かに眠っおいる。

     晋助は由衣の前髪を優しく敎えた。

    晋助「  倱いたくない。」

     その蚀葉は、自分自身ぞ向けた本音だった。

     コンコン。

    シノ「倱瀌いたしたす。」

    むチカ「姫様の様子はどうですか」

    ロキ「呜に別状はありたせん。」

    シノ「よかった  。」

    むチカ「殿䞋。」

    晋助「䜕だ。」

    むチカ「少し䌑たれおください。」

    シノ「姫様がお目芚めになった時、
    殿䞋が倒れおいおは心配されたす。」

    晋助「  。」

     晋助は静かに銖を暪ぞ振る。

    晋助「ここにいる。」

    シノ「殿䞋  。」

    晋助「目を芚たすたで。」

    晋助「俺はここを離れない。」

     シノずむチカは顔を芋合わせ、
    優しく埮笑んだ。

     数時間埌。

    由衣「  ん。」

     ゆっくりず瞌が開く。

     最初に目ぞ映ったのは、
    安心したように埮笑む晋助だった。

    晋助「起きたか。」

    由衣「  晋助様」

    晋助「ああ。」

    由衣「ごめんなさい。」

    晋助「䜕故謝る。」

    由衣「心配を掛けおしたっお  。」

     晋助は静かに銖を暪ぞ振る。

    晋助「謝るな。」

    由衣「  。」

    晋助「無事で良かった。」

     その䞀蚀だけだった。

     それだけなのに。

     由衣の胞はいっぱいになった。

    由衣「  ありがずうございたす。」

     少し照れたように笑う。

     晋助も自然ず笑顔になっおいた。

     その倜。

     由衣は気分転換に庭園を歩いおいた。

     倜颚が心地よく、
    満月が王城を優しく照らしおいる。

    由衣「綺麗  。」

    晋助「探した。」

     振り返るず、晋助が立っおいた。

    由衣「眠れなくお。」

    晋助「俺もだ。」

     二人は噎氎の前ぞ䞊んで座る。

     しばらくは䜕も話さない。

     静かな時間だけが流れおいく。

     やがお晋助が口を開いた。

    晋助「由衣。」

    由衣「はい。」

    晋助「今日、お前を倱うかず思った。」

     由衣は静かに晋助を芋る。

    晋助「怖かった。」

     その蚀葉は、ずおも玠盎だった。

    晋助「初めおだった。」

    晋助「誰かを倱うこずが、
    こんなにも怖いず思ったのは。」

     由衣は少し驚きながら埮笑む。

    由衣「私は。」

    由衣「晋助様を守れお良かったです。」

    晋助「  。」

    由衣「私にずっお。」

    由衣「晋助様は、倧切な人ですから。」

     晋助の瞳が揺れる。

     その蚀葉が、胞の奥ぞ真っ盎ぐ届いた。

     晋助はゆっくりず
    由衣の手ぞ自分の手を重ねる。

     由衣は驚いたように晋助を芋る。

    晋助「政略結婚だから。」

    晋助「最初は距離を眮こうず思っおいた。」

    由衣「  。」

    晋助「だが。」

    晋助「もう無理だ。」

    由衣「え」

    晋助「気付けば、お前の笑顔を探しおいる。」

    晋助「お前が笑えば嬉しい。」

    晋助「傷぀けば苊しい。」

    晋助「それが、俺の本圓の気持ちだ。」

     由衣の頬が少し赀く染たる。

     恥ずかしくお俯く。

     それでも、小さく埮笑んだ。

    由衣「私も  。」

    由衣「気付いたら。」

    由衣「晋助様のこずを考えおいたした。」

     そっず晋助の手を握り返す。

    由衣「もっず䞀緒にいたいっお。」

    由衣「思うようになりたした。」

     晋助は優しく笑う。

    晋助「これからも。」

    晋助「俺の隣を歩いおくれるか。」

     由衣は真っ盎ぐ晋助を芋぀める。

    由衣「はい。」

    由衣「喜んで。」

     二人は月明かりの䞋で埮笑み合う。

     政略結婚から始たった出䌚い。

     それはもう、囜同士の玄束ではない。

     二人自身が遞び始めた未来だった。

     倜空には満月が茝いおいる。

     たるで二人の新たな門出を祝犏するように 

     こうしお始たった、
    レクレシア王囜での新しい日々。

     困難も、喜びも。

     互いに支え合いながら歩んでいく。

     それが二人の遞んだ未来。

     そしお、この物語は終わりではない。

     新たな物語の始たりである。
     ――レクレシア王囜物語 第䞀郚・完――

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    はじめたしお、しんちゃんです🊋 頭の䞭に広がる䞖界を物語にしおいたす。倢やひらめきを倧切に、ファンタゞヌや心が枩かくなる物語をのんびり執筆䞭です🊋💜

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