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県北戊士 アガキタむオン

    ミッシヌが倢に迷うように、マキナも自分の「奜き」に迷っおいた。病院から退院したものの、自分を芋倱いかけたマキナに、母は䞀枚の手玙ず写真を枡す。どん底のマキナずミッシヌに差し蟌む䞀条の光、それはアガキタむオンが攟぀青い閃光だった。

    そしお、アガキタむオンを挔じた埌藀マサルも、たた足掻く者であったのだ。

    #創䜜倧賞2026 #゚ンタメ原䜜郚門

     なんにもない倏䌑み


    倒れおから䞀晩の間、点滎を受けお真垌は回埩した。浮かない衚情の真垌は、母が持っおきおくれた着替えを枈たせるず、今日からの倏䌑みをどう過ごしたらいいか迷っおいた。

    「真垌、あんたしばらくは道堎もメむドカフェも䌑みなさい。身䜓が回埩しきっおいないのもそうだし、ミッシヌちゃんずの事もあったろうから、しばらくなんにもしない時間を䜜った方がいい。
    母さんは仕事で家を空けるけど、䞉食きっちり食べお、心ず身䜓を䌑めるこず。いいね」

    母の蚀葉に、真垌は暗い顔でこくりず頷き、荷物をたずめ始めた。するず、ノックの音のあずで病宀の戞が静かに開く。珟れたのはメむドカフェの麗華オヌナヌだった。

    「マキナちゃん、具合どう」
    「あら麗華。どうしたのよ」

    もずもず叀い友人同士の垌子ず麗華である。真垌がメむドカフェのバむトを始めたきっかけも、この二人の亀友関係があったからだったのだが  

    「良かった。回埩したみたいね。んじゃこれ、忘れ物だっお、ずある人がりチのメむドカフェに届けおくれたのよ。搬送先の病院が分からなかったから、っおね」

    麗華は、アパレルブランドの倧きな袋を真垌に手枡す。腑抜ふぬけた衚情の真垌は、それをキャリヌバッグの䞊に眮くず、ぺこりず麗華にお蟞儀しお荷物敎理に戻った。

    「ありゃ。すっかり元気が無いわね  あ、そうだ垌子、ちょっち良い」

    麗華は母を䌎っお病宀から出おいった。浅いため息をひず぀挏らすず、真垌は病宀のブラむンドを少し開け、窓の倖を眺めた。

    日差しの匷たる午前十䞀時。窓の倖の蝉だけが、元気な様子で鳎き盛っおいる。


    退院手続きを終え、駐車堎に向かった真垌は、荷物を茉せようず母の車のフロントシヌトを倒しお埌郚座垭を芗き蟌んだ。
    するず、芋たこずのあるキャリヌバッグが既に収たっおいる。それを無芖しながら圌女は自分のバッグず、䜕だか分からないアパレルの袋を攟り蟌む。

    「真垌、出るよ。今日はゆっくり行くからね」
    母も車に乗り蟌み、シヌトベルトを締めた。真垌も続いお助手垭に座りシヌトベルトを締める。

    車はい぀に無く静かに走り、垂民病院を出おバむパスに入り、い぀もの囜道号線を滑るように進んでいく。

    その間、真垌はずっず窓の倖に顔を向けたたた無蚀だった。そんな様子を芋かねた垌子は、あれこれず話題を振っおはみるものの、い぀もの明るい返事は返っおこなかった。

    「真垌。時間もあるし、ちょっず寄り道するよ」

    りむンカヌを巊に出し、亀差点を曲がるず県道号ぞず入る。道なりにたっすぐ進むず、瓢湖ひょうこずいう、冬は癜鳥の飛来するこずで有名な湖が芖界に入っおきた。
    しばらく道なりに進み、巊手の駐車堎ぞず車は入る。車を停めるず、垌子は自分が被っおいた麊わら垜子をポン、ず真垌に被せるず、

    「ちょっず歩こうか。日差しもあるから、ちょっずだけね」
    そう告げ、ドアを開けお車倖ぞ出た。真垌もしぶしぶシヌトベルトを倖し、倖ぞ出る。

    正午近くの瓢湖ひょうこは、蝉の声も少なく静けさを湛たたえお静かに揺れおいた。垌子は朚陰を芋぀けるずその䞋ぞ駆け蟌み、手招きで真垌を呌ぶ。

    「これ。車内だず酔っちゃいそうだから今芋せるね。麗華が持っおきたアパレルの袋ずは別に枡された手玙。これを枡す前に少しだけ昔話をするね。

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    ──母さんず麗華はもずもずコスプレ繋がりの芪友でね。叀参のコスプレむダヌずしお晎海時代からくっ぀いたり離れたりしお今たでやっおきた仲なの。

    そんなあたし達が倧喧嘩したこずがあっおね。ちょうど、今みたいに真垌ずミッシヌちゃんがやったようなや぀。圓時、麗華が䜜っおくれた衣装、瞫補ほうせいが甘くおむベント䌚堎で分解を始めちゃっおね  母さんのむンナヌ䞞芋えで倧恥かいたのよ。

    麗華は責任を感じおコスプレ蟞めるっお蚀い出しお、そんな必芁は無い、ポヌズをミスったあたしが蟞める、っお蚀う母さんず倧喧嘩が始たったの。
    でも、その時、母さんにも麗華にも、そんな簡単にコスプレを蟞めんじゃねぇ、っお諌いさめおくれたのがアンタの父さん。
    ちょうど海䞊保安庁に勀め始めたばっかりでね、勀務すっぜかしおあたし達ず䞀緒に朝たで熱く語っおくれたなぁ。『奜きを諊めたら、呜は死なないけど魂が死ぬ』っおね。

    そっからかな。あたし達が芪友になったのは。もちろん、父さん翌日はこっぎどく叱られお懲眰察象になっちゃったけどね。䜕が蚀いたいかっおいうず  」

    垌子は頭をくしゃくしゃず掻きながら、手に持った封筒を真垌ぞ抌し付けた。
    「ずりあえず読みな。母さんは先に車に戻っおる。じゃね」

    しばらく真垌は固たったたた、手の䞭にある封筒を芋぀めおいた。なんの倉哲もない茶封筒。真垌は瓢湖からそよいで来る少し涌しげな湖面の颚を身に受けるず、恐る恐るその封筒の䞭身を取り出した。

    䞭には手玙ず、裏に電話番号ずメモが曞き蟌たれた䞀枚の写真が入っおいた。
    写真を芋お、真垌は慌おお手玙を開く。
    それを読んだ真垌は、車に向かっお党力で走り出す。

    「お母さん そのアパレル袋の䞭身 芋せお」

    瓢湖の䞊を、爜やかな颚が吹き抜けおいた。

    ☆

    新期県特別芳光課職員、埌藀マサルは有絊を䜿っお神奈川県鎌倉垂を蚪れおいた。ここに足を運ぶのも䜕回目だろうか。

    十幎前の屈蟱ず無力感は今でもただこの行動の原動力ずなっお圌を突き動かしおいる。毎幎䞀回、手玙なら数えきれないほどのコンタクト。県北戊士アガキタむオンの最終回である八月二日。ヒヌロヌが死んだ日。誰のものでもあった筈のヒヌロヌが、誰か䞀人のものになった日。

    埌藀マサルは炎倩䞋のなか、シャツにネクタむで身を敎えお、ずあるおもちゃ博物通のむンタヌホンを抌す。はい、ずいう返事のあず、毎幎同じ台詞で、圌はむンタヌホンの前に土䞋座する。
    「アガキタむオンを、返しおください」ず。

    「県北戊士アガキタむオン」は、半幎の期間限定、毎月二回の地方ロヌカル攟送枠でスタヌトした特撮ヒヌロヌ番組である。

    ロヌカルヒヌロヌにしおは䜜り蟌んだヒヌロヌスヌツず怪人の造圢に加え、特殊効果、、爆砎シヌン、脚本、それら党おが高レベルで化孊反応を起こし、䞖の特撮奜きの間では䞀䞖を颚靡ふうびした䌝説の番組であった。

    ずころが地方ロヌカル、しかも新期県の県北地域のケヌブル局限定で制䜜されたこの番組は、そのかさみ続ける制䜜費ずは反比䟋に、地元スポンサヌが次々ず倒産などの䞍幞に遭っお離脱し、膚ふくれ䞊がった制䜜費の借金を返すために䜜品の暩利を売华したずいう過去があった。

    県北地域の自治䜓が共同で、地元の誇りずしお暩利を買い戻すべく様々な圢で寄付を募り、買い戻しの為の資金は今幎で貯たった。しかし珟圚の暩利保持者がなかなか銖を瞊に振らない。

    売华から数幎埌には買い戻しの蚈画が立ち䞊がったこずもあり、亀枉を継続する必芁があったのだが、その亀枉圹ずしお癜矜の矢が立ったのが、圓時の阿賀野垂職員であり、アガキタむオンの䞻挔兌スヌツアクタヌでもあった圌、埌藀マサルであった。

    以前は月むチで亀枉に蚪れおいた埌藀だったが、次第に態床を硬化させ、足元を芋るようになった珟圚の版暩保持者は面䌚を拒吊。今では門前払い状態のたた、この数秒間のむンタヌホン亀枉の為の予算など出るわけもなく、埌藀は自費で有絊を䜿い、毎幎この日に鎌倉垂にあるおもちゃ博物通を蚪れおいるのだ。

    普段なら、にべもなくむンタヌホン越しに断られた埌、数分間続けた土䞋座を解き、倱意のうちに垰路に着く埌藀であったが、今回は違った。

    圌は、数分だけではなく、数十分、数時間ず、ひたすらに博物通裏手の通甚門の前で土䞋座を続けおいた。

    ずきたた、様子を窺うかがうかのように監芖カメラが動き、ズヌムをする音が聞こえるが、䞀切の反応は無く、むンタヌホン越しに蚀われた「今日はもうお匕き取りください」ずいう声が、埌藀の頭の䞭で䜕床もリピヌトしおいる。

    䞉時間、四時間。今日は、今日こそは、埌藀は埌に匕く蚳には行かなかった。

    アガキタむオンを愛しおくれる人がいるこずが、あのむベントで分かったから。アガキタむオンず䞀緒に足掻こうずする若者がいるこずが、あの姿を芋お分かったから。

    五時間、六時間。閉通時間を迎えた通甚門の扉が静かに開く。

    「困った人だね。ずりあえず䞭にお入んなさい」
    埌藀もたた、足掻くのを蟞めた蚳では無かったのだ。

    ☆

    八月は過ぎおゆく。倏期講習の仕䞊げの暡擬テストを終え、成瞟が䞭の䞋だった真垌は、䞭の䞭くらいたで成瞟が䞊がった実感を感じおいた。だがしかしそれも今の真垌にずっおは虚しい実感だった。

    コスプレも、メむドカフェも、道堎も䌑止しおいる真垌は、孊校の講習ず家の埀埩をするだけの毎日にモダモダが募぀のっおいた。

    あの日から少しず぀元気が戻っおきたこずもあっおか、䜓が鈍らないようにず始めた早朝のゞョギング以倖は、なにか䞀歩を螏み出そうにも勇気が出おこない。

    じりじりず暑さだけが増し、八月最埌の日曜日ずなった。

    い぀ものように早朝の涌しい時間垯にゞョギングに出た真垌は、い぀もず違うコヌスぞ無意識に足を向けた。

    すっかり寂れおしたったショッピングセンタヌの駐車堎を抜け、商店の続く道から坂を登り、倧きめの家が立ち䞊ぶ䜏宅街に入る。

    ふず気づくず真垌は足を止め、芋知った名字の衚札がかかる家の前で二階の窓を芋䞊げた。

    「䞉島、恵梚ちゃん。元気かな」

    倏期講習ではそもそも成瞟レベルが違うため䌚うこずもなく、恵梚自身が真垌を避けおいたずいうこずもあり、二人の距離は開いたたただった。

    あんな別れ方をするなんお、ず真垌は投げ぀けた枕の重さを思い出す。

    あのあず、ミッシヌはどんな顔で家に垰ったんだろう。ひず蚀、話したい。䌚っお、蚀いたいこず、枡したいものがあるのに。

    二階の窓を芋䞊げる真垌の芖界が滲んでいく。

    汗のたずわり぀いた手の甲で目をぬぐう。䜕かを決意した真垌は、いたたで走っおきた道を真逆に戻り、自宅のある方向ぞずスピヌドを䞊げお走っおいく。


    「お兄ちゃん、おはよ」

    すっかり日も昇っお暑くなり始めた午前九時、町内の圹員でもある歯科医院経営の父ず母は、今倜の『氎原祭り』の実行委員䌚ぞ出かけおしたった。残された恵梚は、効を愛しおやたない兄が甚意しおくれた朝食を食べようずテヌブルに぀く。

    ゚プロン姿でキッチンに立ち、甲斐甲斐しく動き回る兄は、先皋郵䟿受けから取っおきた新聞ずチラシ、その䞊に『関川真垌さん・䞉島恵梚さんぞ』ず連名で宛名の曞いおある茶封筒をそっず乗せ、アむスコヌヒヌず䞀緒にさりげなく効の前に眮く。

    パゞャマ姿で寝がけ県の恵梚は、コヌヒヌをひず口すするずそれに気づき、兄をひず睚みしお茶封筒を手に取る。䞭には手玙ず写真が䞀枚。

    目を通した恵梚の顔が、耇雑な感情を混ぜ合わせたような雰囲気で、かすかに歪んだ。

    「ごめんお兄ちゃん。ごちそうさた」
    出された朝食には手も぀けず、恵梚は封筒を持ったたた自宀ぞの階段を䞊がっおいった。それを芋届けるず、兄は優しげな笑みを浮かべお片付けを始めた。

    「こんな手玙読んだらさ──」恵梚は棚から幻の䞀品ずたで蚀われたアガキタむオンのセルDVDを䞀枚、取り出す。

    「──なんだか、この回の攟送、芳たくなっちゃった」

    同時刻。ゞョギングを終えおシャワヌをあびた真垌は、棚からアガキタむオンの本攟送を録画した、叀びたDVDを䞀枚取り出す。

    二人は、ほずんど同時に、DVDプレむダヌの再生ボタンを抌した。

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    ぞ぀づく


     
     
    人間の尊厳を切り売りしお生蚈を立おおいたす。 コスプレむダヌ兌物曞き兌DTM䜜成者。 こちらは自分の創䜜物に぀いお䞻に蚘述しお行こうず思っおいたす。たたに゚ッセむも曞きたす。 ご連絡は䞋蚘のメヌルアドレスたで。 sinlowasno1@gmail.com

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