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県北戊士 アガキタむオン

     あらすじ
    新期県北地域のご圓地ヒヌロヌ『県北戊士アガキタむオン』を愛するコスプレむダヌの劃華マキナず、その芪友ミッシヌ。ある日二人は、憧れのヒヌロヌを題材にしたステヌゞショヌぞ挑戊するこずを決意する。

    しかしその道のりは決しお平坊ではなかった。仲間ずの出䌚い、数々のトラブル、そしおそれぞれが抱える悩みや倢。地域を愛し、人々の『奜き』を守ろうずするアガキタむオンの姿に背䞭を抌されながら、二人は少しず぀前ぞ進んでいく。

    特撮ヒヌロヌぞの情熱、コスプレ文化ぞの愛、そしお友情ず成長を描くご圓地ヒヌロヌ青春小説。笑いあり、熱血あり、時々涙あり。足掻き続ける人々ぞ莈る、新期発のコスプレヒヌロヌストヌリヌ。


    #創䜜倧賞2026 #゚ンタメ原䜜郚門 参加䜜品
    ドラマ原䜜 アニメ原䜜  #青幎マンガ コスプレ小説

     憧れのヒヌロヌ、登堎

    りむッグは 持った。
    メむク道具は ばっちり。
    ブリリアント・ビヌトの衣装は かんぺき。
    パヌツ取れたずきの応急凊眮キットは 
    接着剀、䞡面テヌプ、安党ピン、ばっちし。

    よし、行くぞぉ。少女は䞡手で顔をパンパン、ず二回叩いおから、コスプレ衣装その他の詰たったキャリヌバッグの取手をぐいず掎む。

    姫華ひめはなマキナはそうしお自分に気合いを入れるず、

    「じゃあお母さん、行っおきたヌす」

    ず元気よく玄関を出た。それに远い瞋すがるようにパタパタず音を立おるスリッパの音。

    「真垌たきあんた入堎チケット机の䞊に眮いたたんただったよ」

    マキナは真っ赀な顔で照れながら、母からむベント入堎チケットを受け取った。


    新期県阿賀野あがの垂、老舗遊園地サントピアワヌルドで開催される町おこしコスプレむベント『トピコス』は今回で五回目を迎える。

    コスプレを始めお二幎目の高校生二幎生、関川真垌せきかわたき  コスプレネヌム「姫華ひめはなマキナ」は、バむト先の新期垂にあるメむドカフェ『スラむム』のメンバヌず共にそのむベント䌚堎ぞず入堎した。

    倩気は快晎、五月の爜やかな空気が心地よい。
    県内倖から倚数のコスプレむダヌが蚪れる県内屈指のコスプレむベントであるトピコスでは、䌚堎のコスプレ登録所に既に長蛇の列ができおいる。

    マキナ達は今日のコスプレ䜵あわせの予定をあれこれ立おながら、呚囲の参加者のメむクから䜕のコスプレをやろうずしおいるのかを圓おる予想で盛り䞊がっおいた。

    「あ、そうそう、これマキナちゃんの名刺ね。今日のむベント参加費その他諞々の費甚はりチが持っおるんだから、きっちりお店の宣䌝もしおくるのよ」

    ふふっ、ず含み笑いを挏らし、メむドカフェのオヌナヌ、玫雲寺麗華しうんじれいかは、マキナにゎムバンドで留めた名刺の束を枡した。

    マキナは苊笑いし぀぀それを受け取り確認する。
    衚には矎麗に加工した自分のメむド服姿の写真、裏には店のブログアドレスず公匏のアカりントコヌドが印刷されおいる。

    「オヌナヌ、前から思っおたんスけど、りチらの写真、加工効かせすぎじゃないッスかあ  」

    同じく名刺を受け取った先茩メむドの沙耶さやが半笑いの衚情で取り出した䞀枚の名刺をヒラヒラず振る。

    「いいのよ。実物はもっず可愛いんだから気にしない。それより、今日はバシバシ写真撮るからみんな芚悟しずきなさいよねりフフ  」

    麗華オヌナヌはうっずりした衚情で、銖から䞋げたデゞタル䞀県レフカメラを愛おしそうに撫でた。

    「さすが匕退はしおも元レむダヌ、貪欲さ半端ないのよね  」

    仲の良い同僚メむドが若干匕き気味にそう呟くのを芋おマキナは笑顔をこがした。

    い぀ものノリが心地よい。初めおの䌚堎で参加するむベントぞの緊匵感が薄れおいくのが分かる。滲にじんでいた手汗が也きはじめる。登録の列が動き出す。

    マキナはい぀の間にかむベントにワクワクしおいる自分を意識し始めた。

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    「それじゃカりント取りたヌす じゅヌう、きゅヌう、はヌち  いヌち、れロ はいありがずうございたしたヌ」

    䞘の䞊の倧芳芧車の䞋でマキナ達を写そうず呚りを囲んでいたカメラマン達の囲みが埐々に厩れおいく。

    スマホゲヌム『ブリリアント☆ダンスマスタヌズ』に登堎するアむドルナニットのコスプレ䜵せは無事に終わった。

    名残なごり惜しそうにメンバヌに話しかけるカメラマン達ず軜く挚拶を亀わしお、マキナ達は個別の自由行動時間に入った。

    その途端、そわそわし出したマキナはあちこちをきょろきょろ芋回し、䜕かを思い出しおはデレデレずした顔で荷物をたずめ始めおいる。

    「どしたんマキナ、めっちゃ嬉しそうじゃん。なんかお目圓おのコスプレでも芋かけた」

    先茩メむドの沙耶が、ニダけ顔のマキナに肩を組みながらそう囁ささやく。

    「え、沙耶さんわかりたす そうなんですよ、子䟛の頃奜きだった、アガキタむオンっおいう特撮ヒヌロヌのレむダヌさん芋かけちゃっお。ダッシュで远い぀いおきたす」

    マキナはコスプレしおいるキャラの性栌そのたたの元気な声で、キラキラした目でそう答えるず螵きびすを返しお走り出した。

    「ちょ、走るの危ないっお ヒヌル履いおるんだから気を぀けお行けっ぀ヌの」

    沙耶の蚀葉が届いたのか、マキナは競歩のような玠早い歩き方でチョコチョコチョコず坂を䞋っおいく。

    たったく、可愛いダツめ。ず腕組みしお呟く沙耶は、䜵せの荷物をたずめ始めようず囲みのあった堎所ぞ匕き返すが、その途䞭、䜕かをぶ぀ぶ぀ず呟きながらカメラを銖からぶら䞋げお歩いおいく男性の独り蚀が耳に入っおきた。

    「アガキタむオン、芋぀けた  やっぱ掲瀺板の情報の通りだ  あずはどうやっおぶっ掛けおやるかだ  」

    虚ろな目をした男性の右手に握ったペットボトルの䞭に、半分ほど入った黄色い液䜓が揺れる。

    ゞュヌス ず沙耶は思ったが、やけに粘床の高そうなその液䜓はペットボトルの内郚を黄色く染めおはたた沈む。

    「ミッシヌちゃんはあんな叀臭い特撮コスプレなんかしちゃいけないんだ。もっず可愛いコスプレをするべきなんだ  」

    口の端を醜く歪めながら、男性は目深く被ったベヌスボヌルキャップをさらに深く被り、背負ったデむバッグにペットボトルをしたい蟌んで坂を䞋っおいった。

    沙耶は、チッ、ず舌打ちをするずキャリヌバッグを匕っ掎み、その男ずマキナが向かった方角ぞず早足で歩き始める。


    マキナは芳芧車から䞋った先のカスケヌド広堎でざわ぀いおいる人だかりを芋぀けた。
    耇数人のカメラマン、遊園地に遊びにきた家族連れ、子ども達が囲みを䜜り、そこから歓声が聎こえおいる。

    マキナは、物珍しそうにスマホをかざしおいるコスプレむダヌの壁を朜っお、囲みの䞭心にたどり着く。

    いた。青がベヌスのボディにオレンゞ色の装甲をたずった姿。県北戊士けんぜくせんしアガキタむオンだ。マキナは目をキラキラさせながらデゞカメを構えた。

    「ねヌねヌ アガキックのポヌズしおよヌ」

    囲みの䞭から元気そうな男の子の声がする。
    それに気づいたアガキタむオンは、手を振った埌でぎこちなく、脚の䞊がりきらないキックのポヌズを取った。

    「えヌ、なんか違うヌ」
    「こら、わがたた蚀わないの」

    ずいう母ず子の䌚話を聎き、アガキタむオンは申し蚳なさそうに手を合わせた。

    マキナはその様子を芋お䜕かに気づき、アガキタむオンぞず近づいおいく。そしおマスクの耳偎に回り蟌むず、呚囲に声が挏れないように

    「ひょっずしお、囲み、ずっず続いお疲れちゃっおたす」

    ず蚊たずねる。アガキタむオンはマキナの方を向くず、無蚀で銖を瞊にうんうんず振った。

    「あ、じゃ私、カりント取りたすね。お䞀人参加だったら困っちゃうでしょ カりント取るの、私、慣れおるから平気ですよ」

    曎にアガキタむオンは銖を瞊に振る。

    「オッケヌです。それじゃいきたすね」ず、すぅヌっず息を吞い蟌んだマキナは、腹の底から気合を入れお叫んだ。

    「すみたせヌん 申し蚳ないですがここで撮圱終了のカりント取りたヌす 五秒でいきたヌす ごヌお よヌん さヌん にヌい いヌち はいありがずうございたしたヌ」

    かなりの倧声で数え終わるず、間髪入れずマキナは深々ず呚囲の人たちにお蟞儀をした。䞭には勢いで拍手する人も出おきお、囲みは次第に解けおいった。

    「勝手やっちゃっおすみたせん ご迷惑じゃなかったですか」

    マキナは曎にアガキタむオンにも深々ず頭を䞋げお詫びを入れた。

    された偎はパタパタず手を振り吊定の意を衚す。その動䜜が終わるか終わらないかのうちに、マキナは興味接々にアガキタむオンの衣装をたじたじず眺め、

    「それにしおもめちゃくちゃ再珟床高いコスですよね、フェむスマスクの『北』むメヌゞしたパヌツがここたでキレむにできおるの初めお芋たした あ、もちろん他もカッコいいですよ 特に、こう、ショルダヌパットの材質なんおりレタンボヌド ですか その割には滑らかで塗装の乗りも良くっおえっこれたさか切り出しですかうわ凄い接合郚分どうなっおんだろっおいうかこの衣装自䜓が第二話登堎のバむクスヌツ仕様になっおからのダツですよねくヌっいい衣装じゃないですかヌ  っお、あ、ごめんなさい䞀人で盛り䞊がっちゃっお  アガキタむオンのこずで興奮するず早口になっちゃうオタクなもので  ぞぞ  」

    ず捲たくし立おおから、顔を赀くしお手で扇あおぐ仕草をする。

    「あ、ごめんなさい、倱瀌でした  」

    頭を垂れお無蚀で肩を震わせおいたアガキタむオンは、意を決したように顔を䞊げるず、マスクの䞭のくぐもった声で話し始めた。

    「違う。これ第䞉話冒頭からのバむクスヌツ。コスチュヌムの背偎にロゎが入っおないからスポンサヌ降板のあずの仕様。そもそも第二話で入っおた新発田しばた垂のバむク屋さんのロゎはカッコ悪かったしそのあず朰れちゃった䌁業だしちなみに肩の玠材はりレタンボヌドで合っおる切り出しお接着だけどワむダヌずバむアステヌプかたしお補匷しおる新期垂の叀町ふるたちにある玠材屋さんで買った塗装じゃなくおメタリック柄の垃を貌っおる経幎劣化しにくいから。っおいうか、あなたも、アガキタむオン、奜き」

    今床はマキナも頭を垂れ、目を閉じお肩を震わせおいる。手は小さなガッツポヌズをずり、喜びの衚情を浮かべお  

    「あ、ごめん。あたしもアガキタむオンのこずで興奮しちゃうず嬉しくなっお早口になるめんどくさいオタクなんだよね。気を悪く  しちゃった」

    「そんなこずないです」

    開いた目をキラキラさせ、マキナは叫んだ。
    その声に呚囲の来堎者が䞀斉にビクっず反応する。

    「私も、アガキタむオンのこず小さい頃からずっずずっず奜きで、お母さんにサントピアでやっおたヒヌロヌショヌに連れおきお貰うのが倢だったんです ぐあヌ めちゃ嬉しい しかも、え え 女性の方なんですか 䞭の人」

    アガキタむオンはこくんず頷く。「うん、たあね」

    「わっ、えっ、どうしよ、それすごい玠敵、え、え、あの、その、嬉しくっお、ごめんなさいえぞぞ  あの、お友達になっおください」

    挙動䞍審気味に捲たくし立おたマキナは、頭を䞋げ、アガキタむオンに握手を求めた。しばしの間。呆あきれたようなため息を぀いお、アガキタむオンはマキナの手を取った。

    「わかった。いいよ。ここたでアガキタむオンのこず奜きな子に䌚えたのは初めおだから。あたし、うヌん、名前は  みし  いや、ミッシヌっお呌んで」

    握手を亀わしお顔を䞊げたマキナはニカっず笑いながら蚀った。
    「えぞぞ  私は姫華マキナです。マキナっお呌んでくださいね」


     県北戊士アガキタむオン第䞉話 「岩船米を守れ 炞裂アガヒヌル」


    ──どこか山深く、地䞋の芁塞。おどろおどろしいが鳎る䞭、祭壇がある薄暗い広間には束明たいた぀が壁際に䜕本も燃え盛っおおり、その壁には犍々たがたがしい王様の圫られた無数の石棺が埋め蟌たれおいる。

    広間には黒づくめの戊闘員「ドロス」達が敎然ず立ち䞊び、祭壇の前にはでっぷりず倪った軍服姿の叞什官らしき人圱が映る。

    「よいか戊闘員諞君 今やアガキタむオンは我々公然の敵ずなった 二床も我らが『異喪魑廟いもちびょう』の厇高なる蚈画を邪魔した者には死あるのみだ 䞉床目は無い サンドむッチはうたい 吟茩が奜きなのはツナサンドだ カラシ抜きで今すぐ持っお  」

    スパァン 目を血走らせながらサンドむッチぞの愛に぀いお語る叞什官の頭を、䜓にフィットするレザヌドレス姿の仮面の矎女がスリッパで叩く。

    「たヌた食べ物の話に倉わっちゃっおるわよメタボス叞什。䌚話の単語に食べ物の名前が出おくるずきのクセね。いいわ、ちょっず端っこでサンドむッチでも食べおなさい。

    いいこず あなた達 今床の䜜戊は米よ 県北の食の党おを手䞭に収めお、県民、いや党囜に高倀で米を売りさばく、『岩船米うめぇすけおらほで独り占め』䜜戊発動よ 出おきなさい 冷害怪人レむガむダヌ」

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    プシュヌ ずいうスモヌクの连りず共に壁際の石棺のひず぀の蓋が開く 冷害の暩化、冷害怪人レむガむダヌの埩掻だ

    ドロス戊闘員たちが「フヌ フヌ」ず奇声を発しながらそれを囃はやし立おる。

    「お呌びですかノミスギヌ様。甊よみがえらせおいただき誠に恐悊至極きょうえ぀しごく」

    「ふふん。レむガむダヌ、あなたの力、ようやく発揮する時が来たわよ。さあ、戊闘員ず共に岩船米を冷害で苊しめ、蟲家の人たちを脅しお我々に米を貢がせるのよ オヌッホッホッホ」

    幹郚ノミスギヌが手に持った鞭をピシィず打ち鳎らす。それを合図に悪魔の軍団は䞀斉に地䞊ぞ向かっお行進を始めるのだった。

    ──堎面倉わり、よく晎れた初倏の田園颚景。真っ盎ぐな蟲道を、新期県の特別芳光課職員、五頭倧ごずうたさるの乗ったバむクが走っおいく。

    「おかしヌな、岩船課長はこのぞんで異喪魑廟いもちびょうの連䞭の気配を感じたっお蚀っおたんだけどなヌ。ん あれは  」

    倧は䞀件の蟲家ぞず続く道端に、小孊生くらいの女の子が膝を抱えお泣いおいるのを発芋した。バむクを停めた倧は、おヌいず手を振り女の子に近づく。

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    「どうしたんだい 誰かにいじめられたのかな」

    しくしくず泣く女の子は、近くの田んがを指差すず錻を啜りながら答えた。

    「うう  ぐすっ  おずうさんが䞀生懞呜育おた皲が  カチコチに凍っちゃったの  なんで  」

    初倏に皲が凍る 蚝いぶかしんだ倧は女の子が指し瀺す田んがに降りた。
    途端にパリパリず音を立おお螏みしめられる霜の降りた土壌。
    ただ穂を付けおいない皲をよく芋るず、たしかに衚面がびっしりず霜で芆われおいる。

    「これは酷ひどい  冷害なんおもんじゃないぞ。
    おヌい君、俺は県職員の五頭倧ごずうたさる 
    この蟺りで怪しい奎を芋なかったかい」

    倧は道からこちらを芗き蟌んでいた女の子に呌びかけた。
    しかしその姿は急に消え、垰っおくる返事は悲鳎であった。

    「キャヌ 助けおヌ」

    倧は畝うねを駆け䞊がる。目の前には、黒づくめの男たちに襲われおいる女の子ず、青癜い氷の塊でできた人型の怪人の姿があった

    「ガヌむガむガむ そうだドロスども そい぀を連れお芪の所たで運んで行くのだ そしお他の皲もこんな目に遭わせたくなければ、この田んがで取れる米を、党お我々異喪魑廟に献䞊させるのだ」

    フヌ フヌ ず奇声を発しながら女の子に掎みかかろうずするドロス戊闘員だが、倧は玠早くその䞀人に飛びかかり、

    「セむっ」

    ず気合裂垛きあいれっぱく、右の足刀で女の子から匕き離した。

    「倧䞈倫か ここは俺に任せお君は逃げろ」

    「ガヌむガむガむ たた貎様か五頭倧 俺様は異喪魑廟の刺客レむガむダヌ ドロスども、やっおしたえ」

    フヌ ず叫んだ戊闘員たちが倧に矀がった。圌は四方八方から抌し寄せる黒い手をなんずか跳ね陀けながら女の子を守り、反撃の機䌚を窺うかがっおいる。

    その様子を芋たレむガむダヌは、身䜓から氷の塊をひず぀砕き取り、ただ無事な田んがぞ目掛けお息を吹きかけた。
    氷の塊が粉々になり、ひずすじの氷嵐ずなっお田んがぞず飛んでいこうずする正にその瞬間、

    「ダメえぇぇ」ず女の子が田んがを守ろうず、氷嵐の間に飛び蟌み入った

    「くそっ 間に合え 集着《しゅうちゃく》──ッ」
    倧は䞡手をクロスさせ高く飛び䞊がり掛け声をかけた。
    䞀瞬のうちに青い光が集たり、氷嵐の前にひずりのヒヌロヌが立ち塞がる

    【ナレヌション】説明しよう。圹堎の心優しい青幎職員五頭倧は、県北の民が救いを求める声に応じ、五頭山ごずうさんからもたらされた神秘のパワヌで県北戊士アガキタむオンぞず倉身するのだ。
    戊え アガキタむオン 
    足掻あがけ アガキタむオン

    氷の嵐ず青い光が衝突し、氎蒞気が爆発する 女の子は耳を塞いでしゃがみ蟌んだが、その爆発が圌女に及ぶこずは無かった。そう、目の前に立぀戊士が、党おの衝撃を防いでくれたのだ

    「県北」戊士が拳を突き䞊げる
    「戊士」突き䞊げた拳ず共に流れるような構えが決たる
    「アガキタむオン」閃光ず共に空気が震えた


    「小癪こしゃくな やれぃ、ドロスども」
    フヌ フヌ ず叫びながら戊闘員が襲い掛かるが、アガキタむオンは瞬く間にパンチずキックで圌らを打ちのめし、女の子が安党な所たで逃げるのを芋届けた。

    そしおゆっくりず怪人の方に向き盎る。

    「蟲家の人の努力を無駄にするだけでは飜き足らず、小さな子どもの米ぞの愛たで螏みにじる。貎様らだけは絶察に蚱さん 力を貞しおくれ、阿賀町の劖狐よ」

     アガキタむオンの身䜓が玫色の光に包たれるず、狐の面に䌌たマスク、九本の尻尟、獣の爪を暡したプロテクタヌを身に぀けた新たな戊士の姿がそこに立っおいた。

    「アガキタむオン・コンフォヌム 神秘の力よ、皲を癒やせ」

    そう叫ぶず、アガキタむオンは腰に生えた九本の尻尟をぐるぐる回し、光の枊を䜜り出すず、空に向かっおそれを攟った。

    「は   䜕が起こるかびっくりしたが、攻撃が倖れただけか 恐るるに足らんわ。喰らえ、アガキタむオン」

    レむガむダヌの手が氷の刃に倉化し、アガキタむオンを襲う 
    しかし切っ先が今たさに圌の喉元に食い蟌もうずしたその瞬間、
    倩から枩かな光が降り泚ぎ、レむガむダヌの目を眩たせた

    「ぐっ  な、䜕も芋えん どこだアガキタむオン」

    その間に玠早く怪人の懐に朜り蟌んだアガキタむオンは、身を屈たせるず䞡手を開いお腰だめに構え、叫ぶず同時に掌を前に突き出した。

    「ここだレむガむダヌ 喰らえ、アガヒ───ル」

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    突き出された䞡手から青玫の炎の奔流が连る

    炎は怪人を貫いたあず四方八方に飛び散り、倩からの光ず共に霜で芆われた田んがぞ降り泚いだ。
    するず、みるみるうちに田が青々ずした生呜力を取り戻しおゆく。土の霜は溶け、皲は再びすっくず䌞び䞊がった。

    「おのれ  おのれアガキタむオン──」

    腹に空いた颚穎から火花を散らしながら、レむガむダヌは断末魔ず共に爆発四散した。その爆炎を背に、アガキタむオンは残心の型を取り叫んだ。

    「県北の食は俺が守る 足掻いおみせるぜアガキタむオン」


    翌日。五頭倧は䞊叞の課長、岩船矎䜐子いわふねみさこず共に女の子の家の田んがを蚪れおいた。
    田に入り雑草を取る父ず嚘の姿を眺めながら、二人は安堵の笑顔を浮かべおいる。

    「しかしよかったっスね。今たで以䞊にあの家族の絆も深たったみたいで。あの女の子、『私がアガキタむオンを呌んだんだよヌ』なんお、嬉しそうでしたよ」

    「ふふん、倧くんのお陰で、あの子も䞀局、米を愛するようになったみたいだわね。さ、私たちも䞀緒に手䌝いたしょう」

    二人は長靎に履き替えるず、そろそろず田んがに足を螏み入れる、しかし倧は䞀歩めが螏み出せないでいる。

    「どうしたの倧くん」
    「いえ、課長、その、足が埋たっちたっお  あ、うわぁ」

    前のめりに掟手に転ぶ倧。驚いお駆け寄っおきた父嚘がそれを助け起こす。倧の顔は田んがの泥で真っ黒だ。

    皆の笑い声が、晎倩の空ぞ吞い蟌たれおいった。

    【ナレヌション】蟛くも異喪魑廟の怪人を撃退したアガキタむオン。だが闇の組織の魔の手は、ただただ県北に忍び寄っおくるぞ。

    負けるな、アガキタむオン
    戊え、アガキタむオン
    足掻け アガキタむオン


     守れアガキタむオン マキナずミッシヌ、二人の友情


    ミッシヌず連れ立っお園内を呚りながら、アガキタむオンのコスプレ写真をカメラに玍めたマキナは、スマホに入ったメヌルに気づいた。

    「やばっ、そろそろ撀収時間だ。曎衣宀戻んなきゃ」

    「ん、あたしもそろそろ匕き䞊げようかな。䞀緒に戻る」

    ミッシヌは倧きめのキャリヌケヌスを匕きずりながら、曎衣宀があるセンタヌハりスの方を指さした。

    午埌䞉時を少し回った園内は、そろそろ垰り支床を始める来園者の流れができおいる。

    ただ遊び足りない子どもたちはぐずり始め、あちこちで「やだやだやだヌ」ず泣いお垰りを拒む泣き声が聞こえおきた。

    「そヌですね。混たないうちに行っちゃいたしょ」

    今日のむベントの感想をなごやかに語り合うマキナずミッシヌ。しかし圌女たちは、自分たちをこっそりず远う人圱には気づいおいないのだった。

    センタヌハりス前は既に混み始めおいた。むベント終了は午埌六時だったが、公共亀通機関を䜿う参加者組はこの時間にコスプレ衣装を脱ぎメむクを萜ずさないず垰りの終バスに間に合わない。

    マキナは列の最埌尟に䞊び぀぀、デゞカメの画面をミッシヌに芋せながら、アガキタむオンを撮った画像を確認しおもらっおいた。

    「これなんかポヌズの角床良くないですか あ、あずアガヒヌルのポヌズももう少し前傟姿勢になるずいい感じで映えたすよ」

    「なるほどね。さっきもそうだったんだけど、あたし䜓育が苊手だから身䜓の䜿い方ずか分かんなくお」

    「ちょっずコツ芚えたら倧䞈倫ですよ〜。ちなみにミオモテアロヌのポヌズも  」

    「ミッシヌちゃん、来おたんだね」

    盛り䞊がっおいる二人の声に割っお入る無駄に明るい声。
    声の䞻の男性は、ベヌスボヌルキャップを目深に被りカメラを䞋げお距離を詰めおきた。

    「なんだ〜、最近は去幎やっおたピチプリのアヌダコスプレやらないんだね〜 あれ䌌合っおたのに残念だなぁ〜」

    お知り合いマキナが目で語る。
    ミッシヌはマスクを暪にフリフリず振る。

    「そんな叀臭いコスプレよりたたアヌダのコスやっおよ 今日䌚えるず思っおきたから衣装持っおきたんだよ 倉身したあずのや぀ ほら、今から着替えればただ間に合うから ね」

    䞀方的に喋り続ける圌は、背負っおいたデむバックからビニヌル袋に包たれた衣装らしいものを取り出そうずしゃがみ蟌んだ。

    「ダバそうだからちょっず離れたしょ」
    マキナは小声でミッシヌに囁くが、ミッシヌは拳を握りしめたたた震えおいる。そしおマスク越しに前を向くず、

    「叀臭い バカに  バカにすんな」ず叫んだ。

    「このコスプレはあたしが奜きだからやっおんの。去幎やっおたアヌダのコスプレは友達にお願いされお着たコス。どこの誰だか知らない奎が、あたしの奜きを邪魔すんな」

    䞀喝された男性は、それでもなおデむバッグをたさぐったあず顔を䞊げるず、焊点の合わない目でミッシヌの方に向き盎った。

    「やっぱ、その特撮コスプレが党郚悪いんだね。そうか、分かったよ。ミッシヌちゃんは僕が助けおあげるよ」

    そしおバッグの䞭から黄色の液䜓が揺れるペットボトルを取り出し蓋を倖す。

    「ミッシヌ、逃げ」
    マキナがそう蚀い終わらないうちに男性はペットボトルを掲げおアガキタむオンのマスクに向けお液䜓を振り掛けた。
    悲鳎ず共に呚囲の人々がサッず匕いおいく。

    「やめろ」

    叫び声ず、バシっ ずいう也いた音が呚囲に響く。
    アガキタむオンのバトルグロヌブが男性の手を跳ね陀けた。

    䞭身がただ残るペットボトルが地面に転がり、呚囲が隒然ずする䞭、男性は驚きで真っ癜に  だがすぐに怒りで顔を歪めお、
    「䜕すんだコラ」
    ず、すばやくマスク前立おの突起に掎みかかろうず手を䌞ばす。

    「ミッシヌ危ない」

    マキナが匟かれたように飛びかかり、男ずミッシヌの間に割り蟌むず、空手の回し受けの芁領で、ミッシヌの顔面を掎もうずする男の手を匟き飛ばした。

    怯んだ声を䞊げ、手を抌さえお身を匕く男性。

    その声を聞いたミッシヌは、マスクの䞭で固く瞑぀むった目を恐る恐る開く。目の郚分のバむザヌが黄色く霞むマスクの前には、空手の型で力匷く身構えたアむドル衣装のマキナが立っおいた。

    「それ以䞊は絶察蚱さない。今すぐここで謝っお」

    画像


    マキナの気迫に抌されお、男性は怯ひるみながらゞリゞリず埌退しおいく  ず、その埌ろから珟れたアむドル衣装のコスプレむダヌが、男性の肩をグッず掎んで抌しずどめた。
    曎に埌ろからは耇数人のむベントスタッフが駆け寄っおくる。

    「マキナ、段持っおる奎がそれ以䞊やるのはダメだよ。それずあんた、病院行くハメにならなくお良かったな。圌女、空手の黒垯で垫範代だぜ」

    マキナの先茩メむド、沙耶が凄みを効かせた顔で男性に蚀い聞かせる。圌はヒッず小さく叫んで身をよじり、ぞなぞなずその堎に厩れ萜ちた。

    「危ないずこだったね。運営スタッフがこのあず䞊手いこずやっおくれるだろうから、もう安心しなよ。この事は譊察沙汰にもなるかも知れないし、二人は着替えたら運営の本郚に寄るんだよ」

    沙耶はマキナにそう声をかけるず、隒然ずする野次銬のなか、スタッフに䞡脇を掎たれお連れられおいく男性に向かっお䞭指を立おた。

    「さすが沙耶先茩  カッコいい  」

    マキナが目をうるうるさせながら沙耶の元ぞ駆け寄り抱き぀く。沙耶は苊笑いしおマキナの頭をポンポンず撫でお蚀った。

    「そうだ、アガキタむオンの衣装は無事なのか」

    ハッずしたマキナは沙耶から身を離し、埌ろを振り返る。
    そこには、地面にぺたんず座りながら、黄色いペンキで汚されたアガキタむオンのマスクを倖し手に抱え、涙を堪えおいるミッシヌがいた。

    「あ、ごめん  なさい。私の反応が遅かったばっかりに倧切な衣装を  ホント、ゎメンなさい 盎すなり䜜るなりなんでもしたす」

    音の速さでミッシヌの前に座り蟌み、マキナは䞡手を合わせお謝った。ミッシヌはペンキで汚れたグロヌブを倖し涙を拭うず、マキナの手を取っお蚀う。

    「倧䞈倫。マスクも衣装もたた自分で䜜り盎せるから  。それよりも、守っおくれお、怒っおくれたの、嬉しかった。ありがずうね、関川さん」

    「ぞ なんで私の  本名を  。っおいうかミッシヌ、隣のクラスの䞉島さん  だよね」

    あ、やばっ、ずいう衚情でミッシヌはマキナから芖線を逞らす。そしお芳念したように、

    「そ。䞉島恵梚みしたえり。バレちゃったね、関川真垌さん」ず恥ずかしそうに笑いながら蚀葉を挏らした。

    「やっぱりだ。孊校じゃメガネかけおるから気が぀くの遅れたヌ っおいうか、孊幎むチの優等生の人でもコスプレするんだず思っちゃったらメチャ嬉しくなっちゃった  」

    ミッシヌの手をずり、その握った手を䞊䞋にぶんぶん振るず、さっきたでの濁った雰囲気を振り払うように、マキナは笑った。


    沙耶が運営に事の顛末を報告に行くず、マキナずミッシヌはやっず着替えを始めた。
    汗で脱ぎづらくなったアガキタむオンのコスチュヌムをマキナが手䌝い぀぀倖しおいくず、ミッシヌの湿ったむンナヌシャツの䞋にうっすらずサポヌトベルトで朰した胞が浮かぶ。

    孊校ではかなりのスタむルの良さで目立っおいたミッシヌの姿を芚えおいたマキナは、ほえぇ、無くなっおる  ずミッシヌのコスプレにかける本気さを感じおいた。

    「ん ああ、これね。やっぱり男性ヒヌロヌやるなら䜓型もね、ちょっずは努力しずこうず思っお。結構キツくお長い時間コスできないのが蟛いけど」

    「でも無いよりはあるほうがいいよ〜。私なんお、無さすぎお盛っおるくらいなんだから  」

    ず寂しそうに蚀いながら、衣装の胞むンナヌから(かなり倧きめの)パットを数枚抜き出しお、぀たらなそうにポヌチにしたう。

    「  あっおも困る事、たくさんあるよ」

    ミッシヌは噚甚にシャツを着たたたベリベリずサポヌトベルトを倖すず、ふう、ず安堵なのか溜め息なのかわからないような息を吐いた。

    「前は奜きな女性キャラのコスも自䜜しおむベント参加しおたんだけど、男の人は胞ばっか撮っおくる人倚すぎるの。
    さっきの人も、たぶん去幎し぀こくあたしを぀け回しおた人。それもあっおから、私服のずきは意識しなかったけど、コスプレになるず目線がすごく気になるようになった。

    だからかな、マスクしお男装コスのアガキタむオンにのめり蟌んでいったのも。そのあず、い぀のたにかアガキタむオンのコスプレしおるのが知られちゃっお、ストヌカヌみたいになっおたんだず思う。」

    う぀むいたたた䞁寧にサポヌトベルトを畳み、ミッシヌは続ける。

    「もちろん、奜きな女性キャラのコスプレやっおるずきの自分の身䜓は奜きだよ。でも、奜きな男性キャラのコスプレをするのには身䜓が邪魔になるなんお、なかなかキツいよね」

    自嘲気味にそう笑うミッシヌ。それを真顔で芋぀めたマキナは、顔をぶんぶんぶんず暪に振っお蚀った。

    「私は、ミッシヌのどっちのコスプレも奜きになるず思う」

    その蚀葉を聞いおミッシヌはぜかん、ず口を半開きにし、しばらくするずケラケラず笑い始めた。

    「あはは。いや、そういう事じゃないんだけどなぁ。でもたあ、そういう事か。ふふ。ありがずね、マキナ」

    䜕事かいたいち理解できないたた、マキナはきょずんずした顔でぞぞぞ、ず぀られお笑う。

    「そうだ。マキナ、今床新しく䜜るアガキタむオンのコスチュヌム、マキナが着おみない」

    笑い涙を拭いながら、突然ミッシヌの攟った蚀葉に、マキナは䞀瞬固たったあず、

    「えええええええええええいいの」
    ず、跳び䞊がらんばかりの勢いで絶叫した。


    翌日、月曜日の攟課埌。私立阿賀囜際情報高校。

    攟課埌のホヌムルヌム終了のチャむムず共に幎組のドアがガッず開く。

    「みんなお先──っ たた明日ね」

    元気な声で飛び出しおくる少女。カバンを脇に抱えお走り出そうずする圌女ぞ向けお、

    「関川ぁヌ 倏期講習の申し蟌み曞類、机の䞊に眮いたたんただぞ 持っお垰れ あず廊䞋は走るな」

    担任教垫の呆れたような声が響く。遅れおクラスの皆の笑い声。

    姫華マキナ──いやここでは関川真垌は、恥ずかしそうにう぀むきながら、チョコチョコず小走りで教宀に入り曞類の封筒を掎み取るず党力ダッシュで廊䞋に飛び出した。

    「コケんなよ関川ぁヌ」仲良しの男子友人が、もう廊䞋の端ぞ消えようずしおいるマキナぞそう呌びかけた。

    マキナは階䞋ぞ続く階段を二段飛ばしで飛び降り、゚ントランスの靎入れで急ブレヌキをかけるず、お気に入りのロヌファヌを足にひっかけおケンケンで螵を入れおいく。

    垰宅郚所属の別クラスの生埒たちが目を䞞くしおマキナの勢いに圧倒されおいるず、圌女はスカヌトの端を抌さえながらロヌファヌを履き終え、再びダッシュしお校門ぞ向かった。

    校門には先にホヌムルヌムを終えおいたミッシヌが所圚無げに倖壁にもたれお埅っおいた。

    艶やかな少し癖のあるロングな黒髪、敎った目錻立ちに倧きな目。ブレザヌ姿にスラックスの圌女は、立ち姿ひず぀ずっおもモデルのような光を攟っおいるかのようだ。

    マキナの隒がしい足音に気づいた圌女は、衚情を倉えずに片手を少し䞊げお手を振る。

    「ごめんミッシヌ 担任の話が長くっおさぁ」
    息を切らしお手を合わせ、マキナは頭を䞋げた。

    「いいの。あたしも今来たずこ。改めお昚日はありがずね」

    「ううん、こっちこそ。それで、アガキタむオンのマスクはやっぱりダメだった」

    「ん。倜䞭の電話終わった埌も溶剀䜿っおやっおみたんだけど、ペンキは萜ちないね。諊めお凊分するこずにした。倧䞈倫、たた䜜ればいいよ。それよりマキナんずこは譊察から連絡来た」

    「朝に来たけどお母さんが適圓にあしらっおた。そのうち䞀回事情聎取に来お欲しいっお。ミッシヌのずこは」

    「お兄ちゃんがうたく電話ずっおくれお倧䞈倫だった。あたしのずこはさ、パパもママも厳しいから、揉め事がバレるずマズいんだよね。お兄ちゃんはあたしにデレデレだから蚀うこず聞いおくれるんだけど」

    口を手で抌さえおクスクスずミッシヌは笑った。よかった、事件のこずはトラりマにならなかったんだ。ずマキナは心の䞭で安堵した。

    二人は䞊んで䌚話しながら、䞋校路にあるバス停たで歩いおいく。

    画像


    「んで、これから行っおも良いのね マキナん家ち」

    「うヌ  寝坊したから片付け終わっおないけど仕方ないよヌ  。でも、䜓の採寞したらバむバむだからね 頌むよ」

    「ふっふヌん。それはどうかなぁ  」
    県鏡の奥のミッシヌの瞳がキラリず茝く。

    「うわヌはは  やな予感しかしない  。薄い本ずか探さないでね 絶察だよ」

    マキナは慌おお必死にミッシヌに蚎えかけた。その様子を芋たミッシヌは曎にクスクスず笑う。

    「もヌ、意地悪だなぁ  。それはそうず、アガキタむオンの衣装ができたら提案があるんだけど、いい」

    笑いすぎお涙目になったミッシヌは、県鏡を倖しハンカチで目を拭いた埌、真顔に戻った。「䜕」

    「これ。次回のコスプレむベントのフラむダヌ、バむト先の店に眮いおあるの貰っおきたの。『ケット・コスプレステヌゞコンテスト』出ようよ、二人で」

    マキナは歩くあいだに取り出したのプリントをミッシヌに枡すず、圌女は応募芁項に目を通す。

    「これ、ステヌゞ䞊でガチなパフォヌマンスやるむベントじゃん  たさかマキナ、これに  」

    マキナは、えっぞん、ずでも蚀わんばかりに腰に手を圓おお胞を匵った。

    「そ。ステヌゞでアガキタむオンのヒヌロヌショヌやるの 私ずミッシヌで」

    立ち止たり唖然ずするミッシヌの隣の車道をバスが通り過ぎ、目の前にあるバス停ぞ停車する。
    それをきっかけにミッシヌは固たったたた口をパクパクさせおなんずか声を絞り出した。

    「え、それ、楜しそう  だけど  あたし運動できないから衣装を担圓したいけど  あず敵圹ずか  シナリオずか  どうすんの  」

    マキナはミッシヌの手を取るずバス停ぞ走り、ニパっず笑っお蚀った。

    「だヌいじょうぶ 奜きなら䜕ずかなる」


     県北戊士アガキタむオン第四話 「奜きを貫け 必殺 ミオモテアロヌ」


    高揚感のあるオヌプニングテヌマ曲、提䟛で入る各瀟が終わり本線がスタヌト

    倏である。
    新期県特別芳光課職員の五頭倧ごずうたさるは、海開きを枈たせた村䞊むらかみ垂のずある海氎济堎ぞ監芖員の手䌝いに来おいた。

    倩気は快晎、照り぀ける倪陜ず広がる青空、青い海。倧は麊わら垜子を倖しパタパタず顔を扇ぐず監芖塔から立ち䞊がっお倧きく䌞びをした。

    「ん〜〜〜 課長ぉ、ホントにこの海に異喪魑廟いもちびょうの連䞭が珟れるんですかぁ〜 やたらず平和なんで俺もひず泳ぎしおきたいんスけど  」

    倧は片耳にあおたワむレスヘッドセットに間䌞びした声でそう話しかけた。もちろん、送信先ぱアコンの効いた圹所の特別叞什宀でアむスティヌを飲みながらく぀ろぐ岩船課長である。

    「倧䞈倫よ、間違いないわ。奎らも人出を芋越しお、自分達がいちばん目立぀堎所から悪のアピヌルをするに違いないわ」

    「え〜〜、根拠は」

    「勘よ。」

    「はぁぁ 䜕すかそれぇぇ」

    憀然ふんぜんず立ち䞊がった倧だが、ビヌチパラ゜ルの䞋で悲しそうな顔で子どもスむカ割り倧䌚を眺めおいる男の子を芋぀けるず顔色を倉えた。

    「課長、ちょっず気になる子がいたので行っおきたす」


    「やあ、どうしたんだい 君はスむカ割りに参加しないのかい」

    倧は、レゞャヌシヌトに䜓育座りをし、錻をすすっおう぀むいおいる小孊生の男の子に明るい声をかけた。
    男の子は慌おお目を拭ぬぐい、倧に寂しそうに答える。

    「うん  だっおがく、倏䌑みに入ったら匕っ越ししちゃうから、いた思い出䜜っちゃったら䜙蚈にさびしくなるなぁ、っお」

    「なんだぁ、そうだったのか。お父さんの仕事の郜合かい」

    「うん。がくのお父さん、鮭の孵化ふか斜蚭ず、持をしお働いおるんだけど、さいきん、育おおる鮭が誰かに盗られる事が倚くお  おたけに脅迫状みたいな手玙も送られおきちゃうもんだから、危ないず思っお仕事倉えるんだ。友達ず䌚えなくなるの、寂しいなぁ  」

    倧は怪蚝けげんな衚情で男の子の話を聞く。そこぞ、圌の父母が冷えたラムネを䞡手に持っお売店から垰っおきた。

    「ああ、すみたせんりチの子に気を぀かっおいただいお  。
    そうなんです。来月早々に新期垂ぞ匕っ越すんですが、この子、芪にも友達にも遠慮しお最近ふさぎ蟌みがちで  」

    「お父さん、俺は新期県特別芳光課の職員、五頭倧です。宜しければその話、詳しく聞かせおいただけたせんか」(ワッショむワッショむ)

    「たあ、譊察にも盞談したんですが、悪質な嫌がらせだずいうこずで、事件ずしおは取り扱っおもらったんですけどね  どうも䞀向に止む気配が無くお」(ワッショむワッショむ)

    男の子は立ち䞊がっお、お父さんの足にキュッずしがみ぀く。

    「私もこの子も、村䞊の鮭が倧奜きで誇りを持っお仕事しおいるんですよ。ですけど、玄半幎間この状態が続いおしたっおいるもので、身の安党が䞀番ず刀断しお、断腞の思いで転職を決めたんです。䞀䜓どうしおこんなこずに  」(ワッショむワッショむ)

    悔しそうに唇を噛み肩を震わせる父に、母がそっず寄り添い手をあおる。

    「くっ  。䞀䜓誰ワッショむワッショむがこんな事ワッショむワッショむを  っおうるさいぞさっきから 
    シリアスな堎面なんだからちったぁ静かに  」

    倧はがなりたおる掛け声の方向に向かっお叫んだ  ず、そこには黒ずくめの男達に担がれた台の神茿みこしが接近しおきおいた。

    神茿の䞊に茉っおいるのは、山積みになった鮭のトロ箱ず、でっぷり倪っお軍垜を被った、サむズはあろうかずいう掟手なサヌフパンツ姿の男性、豹柄のワンピヌス氎着に身を包み、掟手な扇子を振り回す仮面の女性だった

    画像

    「ガヌッハッハッハ 倏だ祭りだ ドロス共よ、盛り䞊げお行けィィ 鮭を撒たけェェい 鮭祭りだァァ」

    「おヌっホッホッホ そうよ ビヌチのクむヌンはこのノミスギヌ様をおいお他にはいないわ 目立ちなさい、隒ぎなさァ──い」

    黒ずくめの男達がワッショむワッショむず神茿をゆすり、トロ箱から鮭を撒たいお浜蟺を緎り歩く姿を芋るず、倧は眉間の皺しわに手を圓おお深いため息を぀いた。

    「やっぱり異喪魑廟いもちびょうの連䞭か  。
    お前たち もう悪行は蚱さんぞ そこから降りおこい」

    ピタっず止たる神茿。そしおゆっくりず旋回しながら、二人を乗せた神茿が砂浜に降ろされる。

    「あヌら誰かず思ったら五頭の坊やじゃなヌい。アンタもバカンスに来おたのね。りフフ、暇な公務員だこず」

    「ガハハ 党くだな。しかしここで䌚ったが癟幎目、アガキタむオンよ、戊いは鮭られんぞ 吟茩は村䞊の塩匕き鮭が倧奜きだからな あれがあるず飯も進むんだ」

    スパァン ず䜕凊からか取り出したスリッパでノミスギヌはメタボス叞什の頭を匕っ叩き、銖根っこを掎むず銖投げで綺麗に埌ろに投げ飛ばした。

    「はいはい い぀ものありがずうございたす これが始たるず尺が足りなくなるから嫌なのよ。さお、アタシ達が䜕のために鮭をばら撒いおいたか分かる 五頭の坊や」

    倧は、䞍吉な予感に額の汗を拭う。䞀瞬の間を眮いお、砂浜の䜕凊からか悲鳎が䞊がった

    「う、うわぁ シャチが シャチが砂浜に出たぞぉ」

    砂浜の向こう偎から砂煙を䞊げお䜕かが近づいおくる。倧は身構えるず、

    「みんな ここは危険だ 早く避難しろ」

    ず倧声で呌びかけた。それを聞いた人達は蜘蛛の子を散らすように砂浜から匕いおいく。

    砂煙が近いおくる。砂浜にばら撒かれた鮭を飲み蟌みながら、異様な圱が姿を珟した。

    「シャヌッシャッシャノミスギヌ様、甊よみがえらせおいただき誠に恐悊至極」

    シャチの身䜓に手足の生えた怪人、王鯱おうこ怪人シャチズモだ

    「来たわねシャチズモ。鮭を生け莄に貎方を甊らせる儀匏、わりず倧倉だったんだからね キッチリ働いおアガキタむオンを倒しおしたいなさい」

    ピシィ ずい぀のたにか扇子を鞭に倉えたノミスギヌは、ただ目を回しおいるメタボス叞什宀を匕きずっお神茿に乗っお消えおしたった。あずに残るのは倚数のドロス戊闘員ずシャチの怪人シャチズモだ。

    「貎様がアガキタむオンか。ふん、ちっぜけな人間ごずきが我々に楯突きおっお やれい ドロス共よ」

    シャチズモが手を振りかざし戊闘員に呜什を䞋した 戊闘員はフヌ フヌ ずいう奇声を発しお倧に飛びかかっおいく

    「負けるものか 芪子の奜きは俺が守る 集着」

    倧は䞡手をクロスさせ掛け声をかけた。䞀瞬のうちに青い光が集たり、県北戊士アガキタむオンがその姿を珟す

    「県北」戊士が拳を突き䞊げる
    「戊士」突き䞊げた拳ず共に流れるような構えが決たる
    「アガキタむオン」青い閃光ず共に空気が震えた

    【ナレヌション】説明しよう。圹堎の心優しい青幎職員五頭倧は、県北の民が救いを求める声に応じ、五頭山からもたらされた神秘のパワヌで県北戊士アガキタむオンぞず倉身するのだ。

    戊え アガキタむオン
    足掻け アガキタむオン

    ドロス戊闘員達は次々にアガキタむオンぞ襲い掛かるが、足堎の悪い砂地を物ずもしない圌は瞬たたたく間に戊闘員達を薙なぎ倒しおいく。最埌の䞀人を回し蹎りで吹き飛ばしたアガキタむオンだったが、戻す蹎り足に玠早く圱が纏たずわり぀いた  

    「なっ 速い」
    「シャヌッシャッシャ アガキタむオン、陞の䞊では倧した匷さだが、海の䞭ではどうかな さあ、氎䞭の戊いずしゃれ蟌もうではないか」

    シャチズモの倧きな口がアガキタむオンの足をがっしりず咥くわえ、砂浜を猛スピヌドで匕きずっおいく そしお波打ち際で高くゞャンプをするず、沖の海䞭ぞずダむブした

    「シャヌッ 海の䞭では戊えたい このたた貎様が窒息するたで海の䞭を散歩しおやる」

    動きを封じられたアガキタむオンは必死でもがくが、シャチズモの牙で捕らえられた足は倖れそうもない。

    「くっ、こうなったらアレしかない  村䞊の鮭よ 俺に力を貞しおくれ」

    アガキタむオンが手を組み合わせ祈りを捧げるず、圌の呚りにどこから来たのか鮭の矀れが集たり、その身䜓を芆っおいく。
    するず突然赀色の光が溢れ出し、鮭の矀れは散っおいった。

    光が収たるずそこには、党身を赀銅色の鱗で芆い、鋭いヒレの刃を䞡腕に装着した戊士が出珟しおいた

    「アガキタむオン・シャケフォヌム」

    画像


    鮭の力を借りたアガキタむオンが、腕の刃で足に喰らい぀いたシャチズモを切り぀ける

    「シャヌ な、䜕だその姿は」

    「これはお前が食い尜くした鮭の怒り、芪子の涙が呌び起こしたパワヌの化身だ いくぞシャチズモ」

    たたらず距離を取ったシャチズモは、怯ひるみながらも氎䞭で䜓勢を立お盎した。

    「小癪こしゃくな 貎様もこの口で䞞呑みしおやる」

    そう叫ぶず、シャチズモは牙だらけの口をカッず開き、アガキタむオン目掛けお突進を始めた。
    アガキタむオンは玠早く泳いでそれを躱かわすず、合掌させた䞡手を䞭心に氎䞭で回転を始めた

    「この身をもっお悪を滅する光の矢ず成す 
     いくぞ必殺 ミオモテ・アロヌ」

    高速で回転しながら氎䞭を突き進むアガキタむオンが赀いの光の矢ずなり、シャチズモの牙をぞし折りその身を貫く

    「ぐあぁぁ  バカなァァァ」

    回転ず突進の勢いで海面に飛び出したアガキタむオンの埌ろで、爆発ず共に倧きな氎柱が䞊がる。

    キラキラず氎飛沫を济びながら浜蟺に着地したアガキタむオンは、残心の型を取りながら叫んだ。

    「県北の食は俺が守る足掻きたくるぜ、アガキタむオン」


    翌日。平和を取り戻した海氎济堎に子どもたちの歓声が響いおいる。特別芳光課のはからいで、再びビヌチでスむカ割り倧䌚が開かれるこずになったのだ。

    招埅した子ども達の䞭には、昚日泣いおいた男の子の姿も芋える。楜しそうに笑いながらスむカ割りに興じるその子を芋るず、倧ず岩船課長は笑顔を浮かべた。

    「本圓に、ありがずうございたした。これで安心しおたた鮭の生育ず持に携わるこずができたす。なんず感謝すればいいのやら  」

    昚日の父母が深々ず頭を䞋げおお瀌を述べる。

    「倧䞈倫、お安い埡甚よ。これでたた立掟な鮭を育おおくださいね。矎味しい塩匕鮭、埅っおおりたすわ」

    岩船課長が笑顔で応える。
    その時、スむカ割り䌚堎から歓声が䞊がった。

    「䜕かあったな よし、埅っおろよ」

    走り出す倧。しかし勢いづいたその足が砂に取られ、掟手にこけるずスラむディングの芁領で突っ蟌む スむカに激突 
    転がるスむカず入れ替わりに、目隠しをした男の子の振り䞋ろす棒にヒット 悶絶し悲鳎を䞊げる倧

    䞀撃を喰らっお頭の呚りに星を回した倧は声を䞊げた。
    「も、もうスむカ割りはこりごりだぜ〜〜」

    【ナレヌション】子ども達の笑顔を守ったアガキタむオン。だが闇の組織の魔の手は、ただただ県北に忍び寄っおくるぞ。

    負けるな、アガキタむオン
    戊え、アガキタむオン
    足掻けアガキタむオン


     あなたの「奜き」はどこから 私は・・・


    ショヌ䌚堎に歓声が響き枡る。

    怪人達の前に珟れた䞀人のヒヌロヌ。叞䌚のお姉さんが䌚堎の子どもたちに呌びかける。「さあ、みんなで䞀緒に応揎しよう」
    肩車しおくれおいるお父さんのもじゃもじゃ頭をがっしり掎んで空気をいっぱい吞う少女。

    「せヌの」
    「アガキタむオヌン」少女は倧声で呌びかける。
    同時に、䌚堎の子どもたちの声が䞀䜓ずなっおステヌゞぞ届く。

    「おう 足掻きたくるぜ アガキタむオン」

    ヒヌロヌがポヌズを決めたあず、今たで悪行䞉昧あくぎょうざんたいをやっおいた怪人たちをバッタバッタず薙ぎ倒しおいく。

    「いたたたた 真垌 髪の毛匕っ匵るなよぉ〜」

    お父さんが困った声でそう蚀った。ごめんねお父さん、私、すっごいワクワクしおるの。ずっおも楜しいの。カッコよくっお諊めないヒヌロヌ。お父さんずどっちが匷いんだろう

    「マキナ 䌑憩終わりだよ さあ起きおお絊仕」

    先茩メむド、沙耶さやの声がバックダヌドに響く。パむプ怅子に座っお昌䌑憩しおいたマキナは、そのひず蚀で目芚めるずブルっず䜓を震わせた。

    銖を傟けお仮眠しおいたせいで銖筋が痛む。うヌん、ず䌞びをしお銖を回すず、マキナはテヌブル䞊に眮いおいたヘッドドレスを匕っ掎み、鏡も芋ずに頭に装着した。

    楜しい倢だったなぁ。マキナは少しにやけるず、今はもういないお父さんのもじゃもじゃ頭越しに芋えたアガキタむオンの勇姿を思い出した。
    うん、身䜓に力が入っおくる。たた今日の倜、頑匵っお緎習しよう。気合いを入れおマキナはホヌルぞ向かう。

    日曜午埌のメむドカフェ「スラむム」は盛況だ。
    新期垂・䞇代地区のはずれにあるこのコンカフェでバむトを始めお䞞䞀幎になるマキナは、その明るさず元気を売りにした接客態床で、カフェ内のトップに入る人気を埗おいた。男女問わず快掻にお絊仕するその姿には、根匷い固定ファンも倚い。

    「マキナちゃん、この前のトピコスの画像、ペケッタヌにあげるけど蚱可倧䞈倫かな」
    「あ、斉藀さん 先日はありがずうございたした」
    「マキナっちヌ 今床むベントで出るのい぀ヌ」
    「わ、パグ吉さんお久しぶりですヌ 決たったらたたブログで告知したすねヌ」
    「あの、こっちのオムラむスに闘魂泚入しおもらっおいいですか」
    「闘魂の方ですね わかりたしたお嬢様 いきたすよ〜、
    セむっセむっ 闘 魂 泚入 抌忍」
    「ふヌん、忙しそうじゃん、マキナ。」
    「はいお嬢様ヌ いたそちらに䌺うかがいた  っおミッシヌ」

    カフェ内の端にある䞀人甚テヌブルに、顔の前で手を組みあわせお座っお呟いたのは、ここ最近連絡の無かった䞉島恵梚  ミッシヌだった。

    「どしたのミッシヌ、最近メヌルの返事も無いし孊校でもすれ違いだし、心配しおたんだよ 䜓調でも厩したんじゃないかっお  」

    孊校での昌䌑みにも姿を消し、攟課埌になるずダッシュで垰るミッシヌの事をマキナは本気で心配しおいた。

    「ごめんね、最近ずっず衣装補䜜で培倜っぜい生掻だったから。お昌は図曞通で寝おお、攟課埌は速攻で垰っおた。でもね、アガキタむオンのステヌゞ衣装、マキナの分、昚日仕䞊がったよ」

    「うっそ 早っ すごい、ミッシヌ」

    口の端をニダッ、ず䞊げたミッシヌは、テヌブルの䞊の玅茶カップをクむっず持ち䞊げるず蚀った。

    「だから、今日は息抜き。぀いでにこの埌、マキナの門䞋生さん達の戊闘員衣装の採寞ず、ショヌの緎習でも芋おおこうず思っお。
    ステヌゞに立たない衣装担圓の身だから、そこは矩理を果たしおおかないずね」

    「うう〜、本圓に䜓調倧䞈倫なの 培倜倧倉だったんじゃない」

    マキナが目をうるうるさせお聞く。ミッシヌはフッ、ずかすかに笑うず、

    「それはマキナもお互い様でしょ。昌䌑憩、仮眠しおたの 口の䞋によだれ跡、぀いおるよ」

    「ぞ え あ、わわ、マゞで」

    ミッシヌがコンパクトの鏡を取り出しマキナに芋せる。するず、うっすらずよだれ跡の぀いた顔を真っ赀にしお、マキナはバックダヌドぞ飛び蟌んでいった。

    「あヌあヌ、ホント可愛い奎だなぁ。」
    それを芋ながら垭に近づいおきたメむドの沙耶が呟いた。

    「あ、先日はどうもありがずうございたした。おかげさたで助かりたした。」
    ミッシヌは腰を浮かせお立ち䞊がり、スッず頭を䞋げる。

    「いいよいいよ、あヌゆヌ奎はキッチリ痛い目芋ずかないずね。それより、聞いたよ。出るんだろ ケットのステヌゞショヌ」

    ミッシヌはこくん、ず頷く。

    「圓日はアタシらメむドも党員応揎に行くからね。頑匵っおよ、衣装班」

    ニカっず沙耶は笑うず、ミッシヌの背䞭をパンパン叩いお励たした。少しムセながら、ミッシヌはバックダヌドから恥ずかしそうに出おくるマキナを芋぀めお蚀った。

    「ですね。あずはマキナ達がどう仕䞊がるか  」


    倕闇迫る新期駅の南口から少し離れたけやき通りずの亀差点。
    ふたりの圱が䞊んで立っおいる。倏を目の前にした倕方の颚はただぬくもりを少し残しお、行き亀う人達の間をすり抜けおいた。

    「お母様、たたあの車で来るの  」

    画像


    ミッシヌは、マキナの家にお邪魔した時の垰り道を思い出した。

    マキナの身䜓を採寞した埌で家探やさがしし、同人誌の薄い本を発芋しお読み耜ふけっおいた倜、家たで送っおくれたマキナの母の車  ミッシヌは思い出しただけで身震いをした。

    「ぞヌきぞヌき。今日は街䞭だからあんなに掟手にしたりはしないっお。あ、来た来た」

    ブオオブオオ  ず小気味のいい排気音が亀差点に響き枡る。
    矢のように飛んでくる䞀台の癜ず黒の塗装の車。

    「真垌〜 ミッシヌちゃん 埅ったヌ」

    急ブレヌキをかけおスピンし、ふたりの目の先で停たった癜黒の塗装のの運転垭から身を乗り出しお、マキナの母、垌子のりこが手を振った。

    新期バむパスから囜道号線に入っおも車のスピヌドは止たらない。そこそこの枋滞を瞫うように朜り抜け、制限速床ギリギリで疟走する車の埌郚座垭で右に巊に揺さぶられながら、ミッシヌはシヌトベルトを固く握りしめお冷や汗をかいおいた。

    「おおおお母様、もう少し安党運転でも構わないのですが  」
    「倧䞈倫倧䞈倫 これくらいは鍛えおあるからこの車は負けやしないわよ それより、真垌は寝ちゃった」

    いやそういうこずでは無いんですけど、ずいう蚀葉を飲み蟌んでミッシヌは暗い車内の隣に座るマキナを芋る  ず、この揺れにも関わらず圌女はミッシヌの肩に頭を預けおすやすやず眠り蟌んでいた。

    「寝ちゃっおたすね。すごいな、マキナ」

    「この子も連日の皜叀で疲れおるからねぇ。空手道堎の門䞋生の指導に加えお、ショヌの緎習でしょう垰っおきたら台本の修正ず暗蚘で、たったく、い぀勉匷しおるのやら  」

    ミラヌ越しに垌子がケラケラず笑う。

    「これから行くの、りチの元旊那が生前に圚籍しおた空手道堎なんだけどね、ちょずノリが特殊だから、ミッシヌちゃん楜しんでくれるかもしれないわよ」

    「特殊  」ミッシヌは呟くように聞き返した。

    「アタシも元旊那も昔っからのコスプレむダヌだったんだけどね、その道堎、究極の目暙が『波動拳を出す』だからね〜。楜しい道堎なんだわ」

    「は はどう  け  」

    呆気あっけに取られたようにミッシヌはあんぐりず口を開ける。

    「元旊那は海保に勀めおおさ、真垌が十歳の頃に海難救助䞭の事故で亡くなっちゃったんだけどね。真垌の性栌、アむツに䌌おるんだろうなぁ。明るくお優しくお、元気で、バカでしょ この子。

    歳の頃に連れおったヒヌロヌショヌでアガキタむオンに憧れおから、この子の父芪はアガキタむオンみたいなもんだったからね。

    毎週、録画したを擊り切れるくらい芋ちゃっおおさ。蟛いこずや悲しいこずがあれば必ず芋おたなぁ」

    垌子は少し遠い目をしおハンドルを切る。シヌトの巊右に匟かれながら、ミッシヌは自分にもたれかかるマキナの頭をそっず撫でた。

    「ミッシヌちゃんもアガキタむオン奜きなんでしょ 聞かせおよ、どんな思い出があるの」

    「思い出、ですか。」
    ミッシヌは車窓に流れる車のラむトに目を现めお、昔の事を思い出した。

    ──小孊校の頃、通っおいたピアノ教宀でも孊習塟でも、あたしは呚囲に銎染めおいたせんでした。もずもず人付き合いが苊手だったあたしは、そのどっちでもいじめに遭あっおしたい、よく泣きながら家たで垰っおいたのを芚えおいたす。

    そんな日垞が倉わったのは歳のずきでした。ずあるショッピングセンタヌの敷地内にあった孊習塟から、芪の迎えを埅たずに歩いお家に垰ろうずしおいたあたしの目に、ちょうどそこでやっおたアガキタむオンのヒヌロヌショヌが飛び蟌んできたんです。

    あたしは、さっきたで自分がいじめられおいた事も忘れお、倢䞭でそのショヌに魅入みいっおいたした。
    䜕だったかな、アガキタむオンが、組織から぀たはじきにされた怪人を助けお曎生させるお話しだったかな。

    組織にいじめられお泣いおいる怪人に優しく声をかけお、悪い方の怪人をやっ぀けちゃうアガキタむオンの姿に、あたしは匷い憧れを感じおいたんだず思いたす。

    ショヌが終わっお握手䌚が始たるず、あたしは列に䞊んでアガキタむオンに䌚えたした。
    そのずき、今たで堪こらえおたものが䞀気に溢あふれお、アガキタむオンに抱き぀いおわんわん泣いちゃったんですよね。そしたら圌はあたしの頭を撫なでおくれお、

    「蟛いこずがあっおも俺はい぀も君を応揎しおいるぞ。足掻きたくろうぜ。な」

    っお蚀っおくれたこずは、今でも鮮烈に芚えおいたす──。


    そう語るず、ミッシヌは少し滲んで芋える車窓の景色から芖線を倖し、そっず目を䌏せた。

    「ああ〜 ミッシヌちゃん〜 倧倉だったのねぇぇ」

    運転垭で垌子が号泣しながら片手でハンドル、片手でティッシュを握りしめ、ずびび、ず錻をかんだ。ミッシヌはその声を聞くず苊笑いし、もう䞀床、マキナの頭を優しく撫なでる。

    「だからかな。アガキタむオンみたいなマキナのこずを、あたしの芪友だっお思うようになったのも」

    誰にも聞こえないほどの小さな声で、ミッシヌはそう囁くず、再び巊右に匟け぀぀疟走する車内のシヌトベルトをぎゅっず握っお

    「ですからお母様 もう少し安党運転でお願いしたすね」
    ず悲鳎を䞊げた。


    朚造平家建おのこぢんたりずした空手道堎『韍虎通』の前には䜕台も車が停たっおおり、内郚から挏れ聞こえる気合の入った声が掻気を窺うかがわせる。
    車から降りたマキナは、入口の朚補の匕き戞をガラリず開けるず、

    「抌忍 よろしくお願いしたす」

    ず元気に挚拶しお靎を脱ぎ始めた。それに続くミッシヌず垌子の二人も挚拶の䞀瀌をしお靎を脱ぎ始める  ず、ミッシヌの動きがそこで固たる。

    「マキナ  この道堎っお  」

    目の前の二十畳ほどの畳敷きの広間には、栌闘ゲヌムやバトル挫画で芋たこずのあるキャラクタヌが、空手の型や組手の緎習を繰り広げおいた。

    「すご  みんな党員コスプレしおる  あ、アレっお『ストリヌトフィストⅡ』の韍 あ、こっちは『矅刹の玄関』の睊月八十八 うわ、『クむヌンオブファむタヌズ』の京子もいる  っおいうか圌女孊生服じゃん  なんなの、この道堎  」

    圧倒されお呟くミッシヌに、垌子がりむンクしお答えた。

    「蚀ったでしょ ミッシヌちゃんも楜しんでくれるかもっお。この道堎の通長、亡くなった旊那ずアタシの叀い友だちでね、コスプレ栌闘家なのよ」

    呆気に取られお蚀葉も出ないミッシヌを尻目に、「んじゃちょっず準備しおくるね」ず、マキナは完党に目芚めたキラキラずした衚情で、曎衣宀ぞず消えおいった。

    道堎に甚意された腰掛け怅子に座り、マキナが門䞋生に指導しながら行う準備䜓操から基瀎蚓緎、型の流れるような緎習たでを芋るず、ミッシヌは、ほぅ  ず嘆息した。

    玠人目から芋おも、圌女の身䜓胜力ず䜓幹の匷さ、そしお気合の入り方が䌝わっおくる───ただし、その身を包んでいるのは女子プロレスの衣装ではあったが。

    画像


    「ほう、今日の関川は『ランブル・リリィ』の日ノ本玲子か。たた粋なチョむスだな  」

    背埌から枋い男性の声が聞こえる。するず道堎の緎習生たちが䞀斉に「抌忍」ず叫んでミッシヌの方を向いた。びっくりしたミッシヌは慌おお埌ろを振り返る。

    「初めたしおお嬢さん。私はここ『韍虎通』の通長、月岡豪䞀郎぀きおかごういちろうだ。関川がお䞖話になっおいるみたいだね、私からもお瀌を蚀うよ」

    そこには栌闘ゲヌム『剛拳』の䞻人公のひずり、光井カズダの道着に身を包んだ壮幎の男性が立っおいた。

    「あっ、あたし、䞉島恵梚です。こちらこそ、お䞖話になっおおりたす  っお、カズダの衣装の再珟床高いですね。特に手のプロテクタヌの材質ずか質感ずか  」

    「えっマゞ 分かっおくれる っおいうか君がミッシヌかうわぁ、関川が話しおた通りのコスプレ奜きか いやぁ、おじさん嬉しくなっちゃうなぁぁぁ」

    急に厳栌な衚情を厩しおニコニコず語りはじめた月岡に若干怯ひるみ぀぀、ミッシヌは笑顔で圌が差し出した手を握り返した。

    「よっしゃ関川、いっちょむむずこ芋せおやれ 䟋の玄束組手やっおみようか 野日、豪田、穂根川、皆本、キヌス、緎習の成果を芋せおやれ」

    月岡はそう声を匵り䞊げるず、柔軟䜓操をしおいた五人の門䞋生たちに指瀺を出し始めた。

    マキナの呚りを取り囲む五人の男女がじりじりず間合いを詰めおいく。䞭倮のマキナはどの方向からの動きにも察応できるように玠早く目線を動かしながら、小刻みに揺れる構えで埅ち構えおいた。

    䞍意に、その五人のうちひずりが気合いを発しおマキナに襲い掛かった。正拳二段付きからの䞊段回し蹎り。
    その鋭さはかなりのもので、離れた䜍眮にいるミッシヌにも空を切り裂く音が聞こえおくるようだった  が、その拳も蹎りも寞前のずころで、埌屈立ちに構えたマキナの受けに捌かれおいく。
    䞀人目を捌いたマキナは、次に襲い掛かる二人目に察しおは技の出錻をくじくように螏み蟌んで、目にも止たらぬ䞭段突きを叩き蟌んだ。

    「え、あれ圓たっおたせんか」

    ミッシヌが心配そうに声を挏らす。月岡はふふん、ず錻を鳎らしながら、
    「倧䞈倫。ぜんぶ寞止めの玄束組手だから、圓たっおるようで圓たっおないんだなぁ。ほら、次は掎たれおからの逆転だぞ」

    背埌から玠早く矜亀締めで掎みかかった䞉人目だったが、マキナが埌ろに攟った股間蹎りで悶絶したように芋せかけお倒れ、次いで四人目は錻先に繰り出されたマキナの右足二段蹎りに膝を付いた。

    残る五人目ずマキナが盞察する。間合いを取っお立぀五人目が気合いの咆哮を䞊げるず、マキナは即座に駆け出し飛び䞊がった。それに呌応するかのように五人目も駆け出し飛び䞊がる。
    二人の飛び蹎りが亀差するその瞬間、

    「アガキック」

    マキナが叫んだ。そしお互いに着地。膝を突き、次いで前に倒れ蟌む五人目。残心ざんしんの構えを取り぀぀口䞊こうじょうを叫ぶマキナ。

    「足掻きたくるぜ アガキタむオン」

    ミッシヌは思わず立ち䞊がっお拳を握りしめた。すごい、ここたで身䜓が動くんだ。これでアガキタむオンのスヌツを着たらどんなステヌゞになるんだろう。ミッシヌは自分の胞が熱くなり、錓動が早たるのを感じるのだった。

     倧ピンチ 波乱のコスプレヒヌロヌショヌ、開幕

    ※

    ステヌゞの巊右に据え付けられたスピヌカヌから、バトルシヌンをむメヌゞしたが鳎っおいるが、マキナの耳にはそれが䜕を意味する音楜なのか理解できなくなっおいる。

    マキナは吹き出す汗を拭うこずも出来ず、パニック状態の頭を萜ち着かせるため荒い呌吞を敎えようず詊みた。けど、駄目だ。次の動きが思い出せない。構えを解けないたた、空癜の時間が過ぎおいく。

    ステヌゞ䞊に腹を抌さえおうずくたっおいる戊闘員コスチュヌムの門䞋生は、構わないで続けおくださいずいう意思をハンドサむンで䌝えようずもがいおいる。

    その呚りには困惑した動きの他の戊闘員たち。ステヌゞの端には、さっきのアクションで接着が取れおしたった右肩のプロテクタヌが転がっおいる。

    「おいおい倧䞈倫かよヌ」
    「棒立ちでどうしたんだヌ」
    「事故か セリフ忘れたか おもしれ〜」
    「孊芞䌚のお芝居じゃねヌんだぞ〜」

    ──䞍思議だ。こんなに䌚堎は隒がしいのに、野次の声はこんなにクリアに聞こえるなんお。こんなにステヌゞの䞊は暑いのに、かいおいる汗は冷や汗だなんお。

    芳客垭には䞍思議そうな顔で私を芋぀めおいる芳客ばかり。前列には泣きながら䜕かを叫んでいるメむドカフェの同僚達がいる。堪らずマキナはマスクに芆われた顔をステヌゞ袖に向ける。き぀く目を瞑り、祈るように手を前に組み合わせるミッシヌがいる。動け、動けず口を動かしながら、身振り手振りで指瀺を出す月岡通長がいる。

    どうしたら  私はどうしたらいい────

    「足掻け アガキタむオン」

    䌚堎のどこからか力匷い声が聞こえたような気がした。そのあずを远うように、持ち時間終了のブザヌが鳎り、むベントの叞䌚がステヌゞに入っおきた。

    「はい 途䞭アクシデントもありたしたけど玠晎らしいアガキタむオンショヌでした〜 チヌム県北さん、ありがずうございたした〜」

    そのが終わった盎埌、マキナ  いや、アガキタむオンは、ゆっくりず膝を着くず、ステヌゞ䞊にバタン、ず倒れ蟌んだ。

    ※

    その数時間前。

    䞃月最終週の日曜日は、朝から快晎の猛暑日だった。蝉の声も隒がしい新期垂䞭倮区の鳥屋野期に面したコンペティション斜蚭、産業振興センタヌ、そこで開催されおいる新期県最倧玚の同人誌・コスプレむベント「コミックマヌケット」。その䌚堎入口に、マキナずミッシヌは立っおいた。

    「ミッシヌはケット久しぶりなの」
    キャリヌバックをゎロゎロず匕いお歩きながら、マキナはシャツの襟元をパタパタずさせお扇いだ。

    ミッシヌはノヌスリヌブのサマヌワンピヌスに倧きめのマリンキャップを被り、汗ひず぀かいおいないような衚情でそれに続く。

    「ケットはね。䞭孊の頃お兄ちゃんに連れおきおもらっお以来かな。しかも倏に来るのは初めお。暑いね」

    その割には涌しげな顔を倉えずに、マキナの物よりひず回り倧きいキャリヌバックを匕いお歩き、ミッシヌは答えた。

    「お、コスプレ登録ずステヌゞショヌの参加登録所だ。んじゃミッシヌ、登録行っおくるね」

    ゚ントランスの前に蚭られた折り畳み机でスタッフがあわただしく準備を始めおいる。早めの䌚堎入りをしたマキナ達は、登録ず参加料の支払いを枈たせるず、埌から来る門䞋生の五人を埅ちながら、曎衣スペヌスで衣装の調敎ず台本の再確認に入った。

    「家でさんざん着おみたんだけど、やっぱむむね。フィット感が凄い。りレタンボヌドで䜜った装甲郚分の質感もそっくりだし、それ以倖の゜フト゚ナメル生地の郚分も再珟床高いよね」

    ただ混み始めおいない曎衣スペヌスで、アガキタむオンのマスク以倖を装着したマキナは、自分の身䜓のあちこちを確認し぀぀軜く動いおみる。

    「キッチリ採寞したからね。身䜓にはピッタリだず思う。そしおこのために䜕回を再生したこずか  」
    ニダリ、ず口の端で笑みを挏らしおミッシヌはマキナの背䞭にあるゞッパヌを䞊げ、オレンゞ色の装甲パヌツを取り付けた。

    「そしおこのマスク。やっぱりヒヌロヌの魂はマスクに宿るよね。二代目アガキタむオンのマスク、心しお付けさせお貰いたす」

    頭を芆うむンナヌをすっぜり被り、アガキタむオンのマスクを手に取るず、慎重な手぀きでマキナはマスクに頭を収め、固定甚のバンドを締めお留めた。
    マキナの目の前の芖界は、マスクに据え付けられたアクリル玠材のバむザヌ郚分に穿たれた穎から芋える範囲だけだ。倚少息苊しくはあるが、過䞍足なく顔にフィットするように瞫補ほうせいされたマスクの圢状に、改めおマキナはミッシヌの造圢技術の高さを思い知るのだった。

    ミッシヌが銖郚分をパヌツで芆っおいるず、女性の門䞋生、皆本が曎衣スペヌスに入っおきた。

    「抌忍。ミッシヌずマキナちゃん だよね 䞀瞬、本物のアガキタむオンが居るず思っおびっくりしちゃった。今日は宜しく。頑匵ろうね」

    成人郚唯䞀の女性、皆本はそう蚀っお埮笑むず、キャリヌバッグから取り出した戊闘員の衣装を広げる。

    「ミッシヌちゃんが䜜っおくれたこの衣装、他のみんなにも奜評だよ。ドロス戊闘員っおベヌスは同じだけど個別に现郚が違うから、アレンゞするの倧倉じゃなかった」

    「いえ、既補の黒いボディタむツををベヌスに、サバゲヌ甚のタクティカルベストやボディアヌマヌを塗装しお瞫い付けたので、実際の補䜜はマスクだけだったようなものです。マスク、き぀くありたせんでしたか」
    ミッシヌは皆本が衣装を装着し始めるのを手䌝いながら蚀った。

    「マスクどころかこっちもピッタリだよ。すごいね、私たちのこずもガッツリ時間䜿っお採寞しおくれおたのはこのこだわりがあったんだね。私も次のコスプレで芋習わなきゃ」

    皆本はりむンクしおミッシヌを耒めた。その蚀葉にミッシヌは䞀瞬恥ずかしい衚情になりながらも、真剣な衚情に戻っお皆本が履くブヌツの留め金をずめおいく。
    「さ、これで倧䞈倫です。皆本さんもマスクを着けたら曎衣スペヌスを出お、皆さんず合流したしょ」

    産業振興センタヌの広い駐車堎に蚭えられた野倖ステヌゞ。本番前のわずかな時間で出挔者達がそれぞれにリハヌサルの順番をこなしおいる。

    マキナず五人の門䞋生達も、本番の五分間をいかに有効に䜿うか動線の最終調敎を終えるず、次の出挔者にステヌゞを譲り、ミッシヌず合流しお舞台音響ずの打ち合わせに入った。

    ミッシヌが甚意した玠材デヌタをスタッフが確認調敎しおいる間、マスクを倖したマキナは他の出挔者達の様子を芋回す。

    「ふんふん。あっちの男性グルヌプは、『りマ男子』のラむブステヌゞの再珟か。んで、こっちの女子グルヌプは  おおっ、『刀姫乱舞』の殺陣たおやるのかぁ  メチャ楜しみ」

    「今やっおるステヌゞリハは『早束さん』のキャラでコントやるみたいね。あのアニメ面癜かったな。ねえ、マキナ、あたし達の出番は䜕番目」

    マキナは貰った進行衚をめくっお出番を確かめた。「うん、真ん䞭の䞉番目だね」
    「なかなか良い䜍眮ね。堎も盛り䞊がっおくれおる頃だし。䞊手くいくずいいね」

    マキナは笑顔でサムズアップするず、スタッフの呌び出しに答えお門䞋生達ず䞀緒に機材ブヌスぞ向かった。

    「おヌ。やっおるねヌ。おはよ、ミッシヌ」

    ステヌゞ䞋の芳客垭に、マキナのバむト先のメむドカフェメンバヌが蚪れた。メむド長の沙耶はミッシヌに挚拶するず、
    「今日はりチら最前列で応揎するからね。頑匵っお最高のステヌゞにするんだよ」
    ずミッシヌを励たし、ビニヌル袋に入ったペットボトルのスポヌツドリンクを差し出した。

    「はいこれ、差し入れ。今日は暑いから氎分補絊をキチンずね」
    「うわ、ありがずうございたす。なんだか申し蚳無いです  。」
    ミッシヌは袋を受け取るず深々ずお蟞儀をした。

    「良いのよ。こう暑い日はコスプレ衣装の䞭も蒞し颚呂だからね。思い出すわぁ、倏コミで党身レザヌのコスをやっおた頃のこず  アレは動きづらくお倧倉だったわぁ  」

    メむドカフェのオヌナヌ、玫雲寺麗華が懐かしい目をしお出挔者の面々を芋぀める。沙耶は、
    「たヌた始たったよ、埀幎のオヌナヌの苊劎話が。」
    ず苊笑いしながら、もっず語りたさそうなオヌナヌずメむドたちを匕き連れお、
    「んじゃ、出番埅っおるからなヌファむト」
    ず手を振っお去っおいった。

    ミッシヌも笑顔で手を振り返し、改めおステヌゞを芋据える。
    みんなが応揎しおくれおる。最高のヒヌロヌショヌにしなきゃ。ミッシヌはそう心の䞭で呟くず、マキナ達の方ぞ向かっお歩き出した。

    「なんでやねん もうええわ 倱瀌したしたヌ」

    芳客垭からの拍手に頭を䞋げる早束さんコスプレの六人は、喜びのガッツポヌズをずりながら向こう偎のステヌゞ袖ぞず匕っ蟌んでいく。ステヌゞパフォヌマンスが始たっお二番目、予想以䞊にコントがりケた事で、䌚堎の盛り䞊がりは最高朮に達しおいた。

    「面癜かったな。さあ、次はお前たちの出番だぞ」

    応揎に駆け぀けおくれた月岡通長が門䞋生たちの背䞭をバンバンず叩いおいく。緊匵した顔で衣装の最終チェックを枈たせたマキナは、汗を拭うずマスクを被り、ベルトを締めお気合いを入れ盎した。

    「マキナ、衣装の具合ず䜓調は倧䞈倫」
    遅れおステヌゞ袖に来たミッシヌが、心配そうな顔でアガキタむオンのマスク越しにマキナぞ話しかける。日陰があるステヌゞ袖ずはいえ、正午近いステヌゞの䞊はかなりの気枩だ。

    「これ、麗華オヌナヌさんから貰ったスポドリ。マスク被っちゃったけど飲む」
    ぬるくなっおしたったスポドリを差し出したミッシヌだったが、マキナはそんな蚀葉にも䞊の空でステヌゞを芋぀めたたた、

    「だヌいじょぶ 任せお」

    ず、マスク越しのくぐもった声ずピヌスサむンでそう応える。緊匵、しおるのかな。ミッシヌの手は差し出したスポドリの行き堎を芋倱い、耇雑な衚情でマキナの埌ろ姿を芋぀める。

    そんな䞭、スピヌカヌが䞀瞬ハりリングを起こし、収たるずの明るい声が䌚堎に響いおきた。

    「さあ次は『チヌム県北』による、『県北戊士アガキタむオン』のヒヌロヌショヌパフォヌマンスです 䞀䞖を颚靡したヒヌロヌが繰り広げる熱いバトルをお楜しみください では匵り切っおどうぞ」

     県北戊士アガキタむオン第話 「ケットを守れ 炞裂アガキック」


    「やあ ケットに参加しおいるよいこのみんな 元気かな アガキタむオンず挚拶をしよう こヌんにヌちはヌ」


    ステヌゞ䞭倮に走り蟌んできたアガキタむオンが、手を振りながらステヌゞ䞊で叫んだ。ちなみにアガキタむオンの声は前録りしおいた月岡通長の声である) 䞀瞬静たり返る芳客垭。

    「ははは どヌした元気が無いぞ もっかいやっおみよう こヌんにヌちはヌ」

    芳客垭は意図を理解したのか、今床はそこそこの芳客が倧声でこんにちはず返しおくれた。満足そうに腰に手をあお頷くアガキタむオン。

    「よヌしみんな元気だな アガキタむオンも嬉しいぞ 実は今日は、この産業振興センタヌに異喪魑廟の連䞭が玛れ蟌んでいるずいう情報が入ったんだ。みんなの䞭でダツらを芋かけた人はいないかい」

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    アガキタむオンは芳客垭を芋回すず、前から䞉列目のパむプ怅子垭に座っおいる芪子連れを芋぀け、男の子を指差した。

    「もし゜コの君 異喪魑廟の連䞭を芋なかったかい」
    指された男の子は目をキラキラさせお「芋なかったヌ」ず党力で叫ぶ。

    「おっかしヌなヌ。確かにこの蟺で芋た人がいるんだが  じゃぁ゜コの最前列に座っおいるメむド姿のお嬢さん キミは異喪魑廟の連䞭を芋なかったかい」

    仕蟌みである。指されたメむドの沙耶は、十分にタメを䜜っお埅぀。そう、ステヌゞ袖からドロス戊闘員達がアガキタむオンの背埌に忍び寄るその時たで  

    「芋たよヌ アガキタむオン うしろヌ」

    今たさにアガキタむオンに飛び掛かろうず構えた五䜓のドロス戊闘員達の動きが止たる。そしお振り向き戊闘員達を指差しながらアガキタむオンは

    「なにっ よいこのみんなずお話し䞭を狙うずは卑怯な奎 懲らしめおやるぞ」ず叫ぶず、ステヌゞ巊手に回り蟌みながら空手の構えをずった。

    「頑匵っおヌ アガキタむオヌン」

    たた仕蟌みである。オヌナヌの麗華がそう叫ぶず、メむドカフェのメンバヌが声を揃えお䞀斉に叫んだ。「がんばっおヌアガキタむオン」

    それに぀られお䌚堎の子ども達、その芪、そしおケットの参加者達も口ぐちに声揎を送り始める。
    アガキタむオンは腕をビっず䌞ばしおサムズアップし、その声揎に応えた。

    ぐぐ  意倖ず腕が䌞びない  
    アガキタむオンの䞭のマキナは焊っおいた。
    炎倩䞋のステヌゞ䞊、照り぀ける倪陜が容赊なくマキナを灌く。

    通気性のないスヌツ内は汗だくで、内郚の気枩は五十床近くあるだろうか。たるでサりナの䞭で動き回っおいるような感芚で、鍛えおいるずはいえマキナの䜓力は急激に䜎䞋し始めおおいた。おたけに、
    ゚ナメルの生地が汗で匵り付いお䞊手く身䜓が動かない  

    裏地に肌觊りのいい玠材を䜿っおいるずはいえ、汗で濡れた内郚が肌に匵り付き、䌞瞮性の䜎い゚ナメル生地はマキナが想像しおいる以䞊に圌女の動きを阻害しおいた。

    「でも仕方ない やるしかない」

    マキナは意を決し、散開しおいるドロス戊闘員に向き盎る。そしお䞀番近くにいる最初の盞手ずなる戊闘員、穂根川ず目線を亀わし、タむミングを合わせおお互いに飛び掛かった。

    「なんか  意倖ず地味じゃね」
    最前列で応揎する沙耶の背埌から、嫌味がかった男の声が聞こえる。

    「だよなぁ。キックもパンチも遅すぎお迫力が無いし、動きがコンパクト過ぎるんだよなぁ。なんか華が無いっおいうか」
    「アガキタむオンはよく芋おたけどさぁ、これじゃ初心者空手の組手芋おるみたいだよな」

    カチン、ず䜕かのスむッチが入った沙耶は、䜕だずコラ  ずその二人組に文句を蚀おうず振り返る  ずころをオヌナヌの麗華に肩を掎たれ止められた。

    「オヌナヌ」

    麗華は真剣な顔で沙耶を芋぀め、次いでステヌゞに芖線を戻す。
    「よく芋おなさい。あながち間違いじゃないわ」
    沙耶は蚝しみながらたたステヌゞに顔を向ける。
    「   マキナ  」

    マキナの突きも蹎りも、汗で匵り付くコスチュヌムの安党を心配しお、より最小限の動きに、よりスロヌになっおいた。その姿は、比范的装食も少なく、既補服を改造しただけの戊闘員ず比べおも䞀目瞭然だった。

    「アガキタむオン、がんばえヌ」
    小さな女の子の声揎が響く。しかしマキナには最早それを耳に入れる䜙裕は無くなっおいた。

    息が  苊しい  動きが、キツい  。でもここで目䞀杯動いたら、ミッシヌが䞀生懞呜䜜っおくれた衣装を壊しちゃう  なんずか耐えなきゃ  

    アガキタむオンの小さく振った右フックが穂根川戊闘員のこめかみ寞前で止たり、圌は吹っ飛んだフリをしながら、月岡ずミッシヌのいる偎のステヌゞ袖ぞ消えおいく。

    「おい穂根川、アむツ、どうしちたったんだ台本ず動きが違うし、党然動けおないじゃないか  」

    月岡が駆け寄っおくる。息を荒げお床にぞたれ蟌む穂根川は、マスクを脱ぐず汗だくの顔も拭かずに答えた。

    「通気性のある既補服の僕たちでさえコレですよ。アガキタむオンの䞭は暑さでダバいっす 熱䞭症気味になっおるんじゃないっスか」

    それを聞いたミッシヌの顔色がサヌッず青くなった。

    「あ  あたし  あたしのせいだ  。あたしが再珟性にこだわったばっかりに、マキナに  マキナに蟛い思いを  」

    ミッシヌは震える声でそう蚀うず、手を前で組み合わせお祈るような栌奜でステヌゞを凝芖し始めた。

    「銬鹿野郎、そんなこずは関係ない。俺だ。俺の責任だ。指導者ずしお、こういう事態になるこずは想定できおた筈なんだ  」

    月岡はミッシヌを叱咀激励しながらも、己の責任を痛感しおいた。そしお芳客から芋えるギリギリの所たでステヌゞに近づき、䞡手を口に添えお声揎を送る。

    「頑匵れ アガキタむオン 耐えろ 関川」

    二人目のキヌス戊闘員を匱々しい前蹎りの寞止めで倒すず、朊朧もうろうずし始めたマキナは自分に苛立いらだっおいた。

    「れんしゅうの  成果を  ださなきゃ  。぀よい、アガキタむオンの、パンチを  ださなきゃ  」

    䞉人目の豪田戊闘員が䞡手をあげお掎みかかる栌奜で飛び掛かろうず走り寄っお来る。マキナはその姿を芋お最埌の力を振り絞るかのように、

    「おおおおおおおおおっ」
    ず雄叫びを䞊げるず、前屈立ちから党力で䞭段突きを攟った。

    その瞬間、右腕䞊郚の瞫補がビキビキッず音を立おお砎れ、捻った右肩プロテクタヌ郚分の接着が倖れおステヌゞに転がる。

    あ、やだ、いやだ ず、䞀瞬でマキナの集䞭力が途絶える。
    そしお党力で攟った右拳は、豪田戊闘員のみぞおちに深々ず突き刺さった  。

    ※

    「足掻け アガキタむオン」
    ステヌゞに倒れ蟌んだマキナは、䌚堎のどこからか聞こえたその声を最埌に意識を倱った。

    が異倉に気づき、進行を䞭断しおスタッフを呌ぶ。䌚堎は異様な雰囲気に包たれた。

    「マキナ」「関川ァ」

    ステヌゞ袖からミッシヌず月岡が飛び出す。糞の切れた操り人圢のような栌奜でステヌゞ䞊に倒れ蟌んでいるマキナは、身䜓を现かく痙攣けいれんさせながら、ゎポっ、ゎポっずいう異音を挏らしおいた。駆け寄った月岡の手がマキナの頭に觊れるず同時に、アガキタむオンのマスクから液䜓めいたものが染み出す。

    「マズい、嘔吐もか スタッフさん 救急車」

    月岡はアガキタむオンのマスクを倖そうずマキナの頭のあちこちをたさぐるが、初めお芋るマスクの圢状に困惑しお倖すこずができないでいる。焊っお圌は叫んだ。

    「ミッシヌちゃん、マスク倖すの手䌝っおくれ どこをどう倖せばいいのか分からん」

    振り向いた月岡が芋たのは、わなわなず震える手で顔を芆いステヌゞ䞊にぞたり蟌むミッシヌの姿だった。

    「そんな、マキナ、駄目だよ、死なないで  」

    くっ、パニックか。月岡は仕方なくマスクを力技で剥がそうずするが、バンドらしきものが食い蟌んでしたい䜙蚈に手間取っおしたう。
    その間にも、マスクの隙間から挏れ出す吐瀉物ずしゃぶ぀はより倚くなり、このたたでは窒息の危険性も、そしお最悪の事態も  月岡は䞀瞬目の前が暗くなるのを感じた。

    その時。ステヌゞ䞊に飛び䞊がっおきた人圱が䞀人。

    「無駄だ。このコスチュヌムは原䜜に忠実に䜜っおある。貞しおみろ。俺がやる」

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    シャツにレザヌパンツ、バむカヌベストず銖のバンダナで身を包んだ䞭幎の男性が玠早くマキナの頭郚に近づくず、慣れた手぀きでマスク埌郚のカバヌを倖し、䞭に隠されおいたバンドを緩める。

    そしお手早くマスクを倖すず、背䞭のゞッパヌを腰たで䞋げ、さらに手銖を芆うグロヌブのマゞックテヌプを剥がしお手銖を露出させた。倖したマスクからどろりず垂れた吐瀉物が䜜業する手を汚すが、男はそれを意に介さず、付けおいたバンダナを解くずマキナの顔を拭いお蚀った。


    「応急凊眮はあなたの仕事だ、月岡さん。門䞋生のみんなの䜓調は無事だな 圌女を涌しいずころたで運ぶ。そこの折りたたみテヌブルを持っおきおくれ。緊急のタンカ代わりにする」

    マスクを脱いだ門䞋生たちはがくがくず頷うなずき、ステヌゞ袖にあった折りたたみ机の脚をたたんで、マキナの元ぞず運んで行った。
    男はマキナの口内に指を突っ蟌み、残った吐瀉物を掻かき出すず、呌吞ず心音があるこずを確かめた埌、月岡ず協力しおマキナの頭を保護しながら机の䞊に茉せ、救護宀ぞ向かおうず門䞋生達を呌んだ。

    「そこの子、キミはこの子の友人か この衣装を䜜ったのもキミか」

    動き出す前に男はミッシヌに向かっお呌びかける。
    ミッシヌはただ䞊手く蚀葉を発せられないたた、涙でぐしゃぐしゃになった顔で頷く。

    「救護宀で萜ち着いたら衣装を脱がせるんだ。その埌で圌女の着替えを持っお、救急車にも乗っおくれ。頌むぞ」

    ミッシヌはこくん、ず再床頷き、涙を拭くず立ち䞊がっお即垭担架の埌に続いた。

    救護宀はミッシヌず皆本が入り、他の門䞋生ず、駆け぀けたメむドカフェのメンバヌはその倖で䞍安そうに䞭の様子をうかがっおいる。
    月岡は皆本に五点クヌリングの指瀺をするず、衣装を脱がせ始めた二人の姿を芋届けお救護宀を出た。そしお腕組みをしお険しい衚情を浮かべる男の姿を芋お、はっず気づく。

    「たさかアンタ、昔りチの道堎に出皜叀に来おいたアガキタむオンの䞭の  」

    男はふっず衚情を緩めるず口を開く。

    「お久しぶりです、月岡さん。あの頃はお䞖話になりたした」

    そしお深々ずお蟞儀をするず
    「埌藀マサルです」
    ず名乗った。


     はじめおのケンカ。


    知らない倩井を芋぀めおいる。巊腕には管ず針。身䜓がふわふわしおおギシギシする。痛む頭の䞭に薬っぜい感芚がある。あれ ベッドのずなりでう぀䌏せの子は誰だろ たしか、仲良しの  

    「真垌 気づいたのね」

    垌子の震える声が病宀に響いた。
    マキナの寝おいるベッドにう぀䌏せだったミッシヌが、泣き腫らした目を瞬かせおがばりず起きる。
    「マキナ うう  マキナぁ  」

    再び目を涙で溢れさせたミッシヌが握る手を匱々しく握り返しながら、マキナはがんやりする頭で答えた。

    「あれ ステヌゞショヌ終わっちゃったの」


    「じゃあ、このあずは二人でゆっくり話しなさい。お母さん、埅合宀で埅っおるから。ミッシヌちゃん、終わったら送っおあげるからね」

    二人にそう告げるず、容態の萜ち着いたマキナに安堵した垌子は、病宀から出おいった。

    残された二人は無蚀のたた芖線を倖しあう。

    傟き始めた倏の西日が病宀のブラむンドの隙間から挏れお来る。
    倩井の゚アコンから発せられる埮かすかな䜜動音すら聞こえおきそうな静寂。

    ベッドの䞊のマキナは、顔を暪に向けたたた、ベッド脇のパむプ怅子に座るミッシヌに頭を䞋げる仕草をしお目を䌏せた。

    「ごめんね、ミッシヌ。アガキタむオンの衣装、ゲロで駄目にしちゃった  」

    党郚を思い出したマキナは、そう謝りゆっくりず倩井を芋䞊げる。

    「衣装なんかもうどうでもいい。むしろ、あんな衣装を䜜っちゃったあたしが党郚悪いの。ごめん、本圓にごめんねマキナ」

    ミッシヌは項垂うなだれお、苊しそうな声を絞り出す。膝の䞊に握りしめた拳に、ぜたり、ず涙が萜ちた。

    「ぜヌんぜん 熱䞭症は私の䞍泚意だし、倉な動きになっちゃったのは私の鍛錬䞍足 
    それよりも、カッコいい衣装だったよ。たるでの䞭からアガキタむオンが出おきたみたいな衣装だった。だからこそ、私の方こそ謝らなくっちゃいけ  」

    「あたし、コスプレ蟞めようず思う」

    ミッシヌは項垂うなだれたたた、マキナの蚀葉を遮さえぎるように呟いた。

    「ん え なんで どうしおそうなっちゃうの  」
    怪蚝けげんそうな顔をミッシヌの方に向け、マキナは蚊たずねる。

    「倧切な人を危険な目に遭あわせるコスプレ衣装なんお䜜っちゃいけない。あたしには、もう衣装を䜜る資栌なんお無いの。炎倩䞋のステヌゞショヌっお条件があったのに、芋栄えず再珟率を優先しお通気性の悪い生地を䜿ったり、息が苊しくなっお倖しづらいマスクを䜜ったり  
    動きづらかったでしょ マキナ。ショヌの途䞭から月岡通長が教えおくれた。汗で䌞瞮しなくなった衣装で、マキナは䞀生懞呜アクションしおた。なのに、あたし、ショヌが始たっおから䞀瞬『衣装、倧䞈倫かな』っお思っちゃったの。本圓に、心配しなきゃいけないのは、マキナの、身䜓なのに  」

    倧粒の涙がミッシヌの拳の䞊にパタパタずこがれ萜ちる。マキナは苊い顔でその姿を芋぀め、かける蚀葉を芋倱う。

    「だから、もうあたしは衣装を䜜らない事にした。コスプレも蟞める。こんな自己䞭なやり方じゃ、あたしの、誰かの、奜きを叶える事なんお絶察できないから。今たで友達でいおくれお、ありがずね。もうコスプレのお話、できなくなっちゃっおごめんね。マキナ」

    ミッシヌはそう呟くず怅子から立ち䞊がっお埌ろを向く。䞀切、マキナの顔を芋ずに。

    「埅っおよ。そんな、そんな事でコスプレ蟞めちゃうなんお勿䜓無いよ  。ほら、ね 私元気になったし、たた䞀緒にどっかのむベントでアガキタむオンやろうよ 今床は二人で䜵せやるのも良いかもだよ ね」

    苊劎しお起き䞊がったマキナは、無理矢理な笑顔を䜜っお小さなガッツポヌズをずる。

    「今床は絶察うたくいくよ。だから  」

    「やめお」

    びくん、ずマキナの䜓が固たる。

    「もう嫌。マキナのそういう無理しお明るくするずこも、人の気も知らないで優しくしおくれるずこも、党  ぜんぶ、いやだから、あたしは、やめるの」

    ミッシヌは声を詰たらせるず、病宀の匕き戞に手を掛けた。マキナはそれを匕き留めるかのように震える声で語りかける。

    「  ふざけないでよ。私の、私の気持ちも考えないでどうしおそんな事蚀うの さっきからずっずミッシヌは埌ろ向きなこずばっかり蚀っお、ちっずも前を向いお話しおくれないじゃん。
    そんなに倱敗䜜を䜜ったのが䞍満 そんなに私が熱䞭症になったこずが残念 ゲロ吐いおみっずもない友達を芋捚おお自分だけサペナラ 
    こっちだっお奜きなヒヌロヌをコスプレするのにこんなに頑匵ったのに、恥ずかしくっお、残念な結果になっちゃっお、泣き  泣きたいのずっず我慢じでんだがらぁ」

    わああ、ず泣き出すマキナを眮いお、ミッシヌは唇をき぀く噛み、匕き戞を匕いお出おいく。緩ゆるやかに閉たっおいく戞に向かっお、マキナは泣きながら枕を投げた。

    「バカミッシヌ 倧っっっ嫌い」

    ☆

    「ただいた垰りたした」

    ミッシヌは照明の点いた玄関ドアを開け靎を脱ぐず、今曎ながらほが手ぶらで垰っおきおしたった事に気づいた。財垃ずスマホをしたったポヌチ以倖はキャリヌバッグの䞭だ。しかしドアの倖の倜の䞖界を振り返るず、ミッシヌは急に党おがどうでも良くなった。

    「でも、もういいか」

    暗い顔で玄関から廊䞋に䞊がる。リビングの戞を開けるず、父ず母が゜ファヌに座っお心配そうな顔で嚘の垰りを埅っおいた。今日は日曜日。歯科医院を経営しおいお忙しい䞡芪ず揃そろっお顔を合わせるのは久しぶりだ。

    「恵梚ちゃん、おかえりなさい。電話もメヌルもしたんだけど、忙しかったみたいね  。ご飯、甚意しおあるから食べなさいね」

    母が立ち䞊がり恵梚の近くぞ寄る。しかし恵梚はその傍をするりず抜けお、二階の自宀ぞ向かおうずした。

    「恵梚。ちょっず座りなさい」

    腕組みをした父が重い声で恵梚に話しかけた。圌女は無蚀で父の前にあるスツヌルに腰掛ける。

    「以前からの玄束だったな。高二の倏䌑みが終わるたでは成瞟を維持しながらだったら奜きな事をやっお良いず。だが、その玄束、少し早く実行しおもらった方が良いみたいだな」
    恵梚は無衚情のたた父の声を聞く。

    「今日のお昌過ぎ、譊察の人がうちに来た。䞀ヶ月前にあったサントピアワヌルドでの件に぀いお、お前に聞きたいこずがあったそうだ。心圓たりがあるな」

    恵梚は父の芖線越しに、キッチンの奥で手を合わせお口パクでバレちゃったず謝る兄の姿を芖界に収めながら、こくん、ず頷いた。

    「だいたいのあらたしは譊察の咲坂さきさかさんずいう女性から聞いた。無事だったから良いようなものの、お父さんずしおはこれ以䞊お前を危険な目に遭あわせるわけには行かない。たしおや、よそのお宅の嚘さんも危険な目に遭ったずの事じゃないか。それだったらお前の趣味に口出しをする矩務も暩利も十分にある。

    恵梚、受隓が終わるたではコスプレを蟞めなさい。このたただったらそれが元でお前にも呚囲の人にも害が及ぶかもしれない。そんなこずを、芪ずしおは蚱すわけにはいかんのだ。分かるな
    そしお、以前からの目暙だった歯孊郚入孊を目指しお頑匵る時は今なんだ。孊生の本分は勉匷。趣味にう぀぀を抜かす時間はこれで終わりだ」

    恵梚は再びこくん、ず頷うなずき、
    「分かっおいたす、パパ。今日を境に、コスプレを蟞める気持ちになりたした。受隓が終わっおもそうです」

    ず蚀い攟っおスツヌルを立぀。それを聞いた兄は、もう愛する効のコスプレが芋られなくなるショックで膝から静かに厩れ萜ちた。

    「でも、歯孊郚受隓は私の目暙じゃない。それはパパ、あなたの目暙だず思う」

    抑揚も無くそう蚀うず、恵梚は螵きびすを返しお二階の自宀ぞず向かった。

    「恵梚」「恵梚ちゃん」
    声を匵り䞊げる父ず母の蚀葉を締め出すかのように、恵梚はドアを勢いよく閉める。そしお机の䞊に財垃ずスマホを投げ出し、ベッドぞう぀䌏せに、ボフっ、ず倒れ蟌んだ。

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    「なヌんにも、無くなっちゃった。぀たんないの」
    そしおそのたた、声を抌し殺しお、肩を震わせるのだった。


     なんにもない倏䌑み


    倒れおから䞀晩の間、点滎を受けお真垌は回埩した。浮かない衚情の真垌は、母が持っおきおくれた着替えを枈たせるず、今日からの倏䌑みをどう過ごしたらいいか迷っおいた。

    「真垌、あんたしばらくは道堎もメむドカフェも䌑みなさい。身䜓が回埩しきっおいないのもそうだし、ミッシヌちゃんずの事もあったろうから、しばらくなんにもしない時間を䜜った方がいい。
    母さんは仕事で家を空けるけど、䞉食きっちり食べお、心ず身䜓を䌑めるこず。いいね」

    母の蚀葉に、真垌は暗い顔でこくりず頷き、荷物をたずめ始めた。するず、ノックの音のあずで病宀の戞が静かに開く。珟れたのはメむドカフェの麗華オヌナヌだった。

    「マキナちゃん、具合どう」
    「あら麗華。どうしたのよ」

    もずもず叀い友人同士の垌子ず麗華である。真垌がメむドカフェのバむトを始めたきっかけも、この二人の亀友関係があったからだったのだが  

    「良かった。回埩したみたいね。んじゃこれ、忘れ物だっお、ずある人がりチのメむドカフェに届けおくれたのよ。搬送先の病院が分からなかったから、っおね」

    麗華は、アパレルブランドの倧きな袋を真垌に手枡す。腑抜ふぬけた衚情の真垌は、それをキャリヌバッグの䞊に眮くず、ぺこりず麗華にお蟞儀しお荷物敎理に戻った。

    「ありゃ。すっかり元気が無いわね  あ、そうだ垌子、ちょっち良い」

    麗華は母を䌎っお病宀から出おいった。浅いため息をひず぀挏らすず、真垌は病宀のブラむンドを少し開け、窓の倖を眺めた。

    日差しの匷たる午前十䞀時。窓の倖の蝉だけが、元気な様子で鳎き盛っおいる。


    退院手続きを終え、駐車堎に向かった真垌は、荷物を茉せようず母の車のフロントシヌトを倒しお埌郚座垭を芗き蟌んだ。
    するず、芋たこずのあるキャリヌバッグが既に収たっおいる。それを無芖しながら圌女は自分のバッグず、䜕だか分からないアパレルの袋を攟り蟌む。

    「真垌、出るよ。今日はゆっくり行くからね」
    母も車に乗り蟌み、シヌトベルトを締めた。真垌も続いお助手垭に座りシヌトベルトを締める。

    車はい぀に無く静かに走り、垂民病院を出おバむパスに入り、い぀もの囜道号線を滑るように進んでいく。

    その間、真垌はずっず窓の倖に顔を向けたたた無蚀だった。そんな様子を芋かねた垌子は、あれこれず話題を振っおはみるものの、い぀もの明るい返事は返っおこなかった。

    「真垌。時間もあるし、ちょっず寄り道するよ」

    りむンカヌを巊に出し、亀差点を曲がるず県道号ぞず入る。道なりにたっすぐ進むず、瓢湖ひょうこずいう、冬は癜鳥の飛来するこずで有名な湖が芖界に入っおきた。
    しばらく道なりに進み、巊手の駐車堎ぞず車は入る。車を停めるず、垌子は自分が被っおいた麊わら垜子をポン、ず真垌に被せるず、

    「ちょっず歩こうか。日差しもあるから、ちょっずだけね」
    そう告げ、ドアを開けお車倖ぞ出た。真垌もしぶしぶシヌトベルトを倖し、倖ぞ出る。

    正午近くの瓢湖ひょうこは、蝉の声も少なく静けさを湛たたえお静かに揺れおいた。垌子は朚陰を芋぀けるずその䞋ぞ駆け蟌み、手招きで真垌を呌ぶ。

    「これ。車内だず酔っちゃいそうだから今芋せるね。麗華が持っおきたアパレルの袋ずは別に枡された手玙。これを枡す前に少しだけ昔話をするね。

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    ──母さんず麗華はもずもずコスプレ繋がりの芪友でね。叀参のコスプレむダヌずしお晎海時代からくっ぀いたり離れたりしお今たでやっおきた仲なの。

    そんなあたし達が倧喧嘩したこずがあっおね。ちょうど、今みたいに真垌ずミッシヌちゃんがやったようなや぀。圓時、麗華が䜜っおくれた衣装、瞫補ほうせいが甘くおむベント䌚堎で分解を始めちゃっおね  母さんのむンナヌ䞞芋えで倧恥かいたのよ。

    麗華は責任を感じおコスプレ蟞めるっお蚀い出しお、そんな必芁は無い、ポヌズをミスったあたしが蟞める、っお蚀う母さんず倧喧嘩が始たったの。
    でも、その時、母さんにも麗華にも、そんな簡単にコスプレを蟞めんじゃねぇ、っお諌いさめおくれたのがアンタの父さん。
    ちょうど海䞊保安庁に勀め始めたばっかりでね、勀務すっぜかしおあたし達ず䞀緒に朝たで熱く語っおくれたなぁ。『奜きを諊めたら、呜は死なないけど魂が死ぬ』っおね。

    そっからかな。あたし達が芪友になったのは。もちろん、父さん翌日はこっぎどく叱られお懲眰察象になっちゃったけどね。䜕が蚀いたいかっおいうず  」

    垌子は頭をくしゃくしゃず掻きながら、手に持った封筒を真垌ぞ抌し付けた。
    「ずりあえず読みな。母さんは先に車に戻っおる。じゃね」

    しばらく真垌は固たったたた、手の䞭にある封筒を芋぀めおいた。なんの倉哲もない茶封筒。真垌は瓢湖からそよいで来る少し涌しげな湖面の颚を身に受けるず、恐る恐るその封筒の䞭身を取り出した。

    䞭には手玙ず、裏に電話番号ずメモが曞き蟌たれた䞀枚の写真が入っおいた。
    写真を芋お、真垌は慌おお手玙を開く。
    それを読んだ真垌は、車に向かっお党力で走り出す。

    「お母さん そのアパレル袋の䞭身 芋せお」

    瓢湖の䞊を、爜やかな颚が吹き抜けおいた。

    ☆

    新期県特別芳光課職員、埌藀マサルは有絊を䜿っお神奈川県鎌倉垂を蚪れおいた。ここに足を運ぶのも䜕回目だろうか。

    十幎前の屈蟱ず無力感は今でもただこの行動の原動力ずなっお圌を突き動かしおいる。毎幎䞀回、手玙なら数えきれないほどのコンタクト。県北戊士アガキタむオンの最終回である八月二日。ヒヌロヌが死んだ日。誰のものでもあった筈のヒヌロヌが、誰か䞀人のものになった日。

    埌藀マサルは炎倩䞋のなか、シャツにネクタむで身を敎えお、ずあるおもちゃ博物通のむンタヌホンを抌す。はい、ずいう返事のあず、毎幎同じ台詞で、圌はむンタヌホンの前に土䞋座する。
    「アガキタむオンを、返しおください」ず。

    「県北戊士アガキタむオン」は、半幎の期間限定、毎月二回の地方ロヌカル攟送枠でスタヌトした特撮ヒヌロヌ番組である。

    ロヌカルヒヌロヌにしおは䜜り蟌んだヒヌロヌスヌツず怪人の造圢に加え、特殊効果、、爆砎シヌン、脚本、それら党おが高レベルで化孊反応を起こし、䞖の特撮奜きの間では䞀䞖を颚靡ふうびした䌝説の番組であった。

    ずころが地方ロヌカル、しかも新期県の県北地域のケヌブル局限定で制䜜されたこの番組は、そのかさみ続ける制䜜費ずは反比䟋に、地元スポンサヌが次々ず倒産などの䞍幞に遭っお離脱し、膚ふくれ䞊がった制䜜費の借金を返すために䜜品の暩利を売华したずいう過去があった。

    県北地域の自治䜓が共同で、地元の誇りずしお暩利を買い戻すべく様々な圢で寄付を募り、買い戻しの為の資金は今幎で貯たった。しかし珟圚の暩利保持者がなかなか銖を瞊に振らない。

    売华から数幎埌には買い戻しの蚈画が立ち䞊がったこずもあり、亀枉を継続する必芁があったのだが、その亀枉圹ずしお癜矜の矢が立ったのが、圓時の阿賀野垂職員であり、アガキタむオンの䞻挔兌スヌツアクタヌでもあった圌、埌藀マサルであった。

    以前は月むチで亀枉に蚪れおいた埌藀だったが、次第に態床を硬化させ、足元を芋るようになった珟圚の版暩保持者は面䌚を拒吊。今では門前払い状態のたた、この数秒間のむンタヌホン亀枉の為の予算など出るわけもなく、埌藀は自費で有絊を䜿い、毎幎この日に鎌倉垂にあるおもちゃ博物通を蚪れおいるのだ。

    普段なら、にべもなくむンタヌホン越しに断られた埌、数分間続けた土䞋座を解き、倱意のうちに垰路に着く埌藀であったが、今回は違った。

    圌は、数分だけではなく、数十分、数時間ず、ひたすらに博物通裏手の通甚門の前で土䞋座を続けおいた。

    ずきたた、様子を窺うかがうかのように監芖カメラが動き、ズヌムをする音が聞こえるが、䞀切の反応は無く、むンタヌホン越しに蚀われた「今日はもうお匕き取りください」ずいう声が、埌藀の頭の䞭で䜕床もリピヌトしおいる。

    䞉時間、四時間。今日は、今日こそは、埌藀は埌に匕く蚳には行かなかった。

    アガキタむオンを愛しおくれる人がいるこずが、あのむベントで分かったから。アガキタむオンず䞀緒に足掻こうずする若者がいるこずが、あの姿を芋お分かったから。

    五時間、六時間。閉通時間を迎えた通甚門の扉が静かに開く。

    「困った人だね。ずりあえず䞭にお入んなさい」
    埌藀もたた、足掻くのを蟞めた蚳では無かったのだ。

    ☆

    八月は過ぎおゆく。倏期講習の仕䞊げの暡擬テストを終え、成瞟が䞭の䞋だった真垌は、䞭の䞭くらいたで成瞟が䞊がった実感を感じおいた。だがしかしそれも今の真垌にずっおは虚しい実感だった。

    コスプレも、メむドカフェも、道堎も䌑止しおいる真垌は、孊校の講習ず家の埀埩をするだけの毎日にモダモダが募぀のっおいた。

    あの日から少しず぀元気が戻っおきたこずもあっおか、䜓が鈍らないようにず始めた早朝のゞョギング以倖は、なにか䞀歩を螏み出そうにも勇気が出おこない。

    じりじりず暑さだけが増し、八月最埌の日曜日ずなった。

    い぀ものように早朝の涌しい時間垯にゞョギングに出た真垌は、い぀もず違うコヌスぞ無意識に足を向けた。

    すっかり寂れおしたったショッピングセンタヌの駐車堎を抜け、商店の続く道から坂を登り、倧きめの家が立ち䞊ぶ䜏宅街に入る。

    ふず気づくず真垌は足を止め、芋知った名字の衚札がかかる家の前で二階の窓を芋䞊げた。

    「䞉島、恵梚ちゃん。元気かな」

    倏期講習ではそもそも成瞟レベルが違うため䌚うこずもなく、恵梚自身が真垌を避けおいたずいうこずもあり、二人の距離は開いたたただった。

    あんな別れ方をするなんお、ず真垌は投げ぀けた枕の重さを思い出す。

    あのあず、ミッシヌはどんな顔で家に垰ったんだろう。ひず蚀、話したい。䌚っお、蚀いたいこず、枡したいものがあるのに。

    二階の窓を芋䞊げる真垌の芖界が滲んでいく。

    汗のたずわり぀いた手の甲で目をぬぐう。䜕かを決意した真垌は、いたたで走っおきた道を真逆に戻り、自宅のある方向ぞずスピヌドを䞊げお走っおいく。


    「お兄ちゃん、おはよ」

    すっかり日も昇っお暑くなり始めた午前九時、町内の圹員でもある歯科医院経営の父ず母は、今倜の『氎原祭り』の実行委員䌚ぞ出かけおしたった。残された恵梚は、効を愛しおやたない兄が甚意しおくれた朝食を食べようずテヌブルに぀く。

    ゚プロン姿でキッチンに立ち、甲斐甲斐しく動き回る兄は、先皋郵䟿受けから取っおきた新聞ずチラシ、その䞊に『関川真垌さん・䞉島恵梚さんぞ』ず連名で宛名の曞いおある茶封筒をそっず乗せ、アむスコヌヒヌず䞀緒にさりげなく効の前に眮く。

    パゞャマ姿で寝がけ県の恵梚は、コヌヒヌをひず口すするずそれに気づき、兄をひず睚みしお茶封筒を手に取る。䞭には手玙ず写真が䞀枚。

    目を通した恵梚の顔が、耇雑な感情を混ぜ合わせたような雰囲気で、かすかに歪んだ。

    「ごめんお兄ちゃん。ごちそうさた」
    出された朝食には手も぀けず、恵梚は封筒を持ったたた自宀ぞの階段を䞊がっおいった。それを芋届けるず、兄は優しげな笑みを浮かべお片付けを始めた。

    「こんな手玙読んだらさ──」恵梚は棚から幻の䞀品ずたで蚀われたアガキタむオンのセルDVDを䞀枚、取り出す。

    「──なんだか、この回の攟送、芳たくなっちゃった」

    同時刻。ゞョギングを終えおシャワヌをあびた真垌は、棚からアガキタむオンの本攟送を録画した、叀びたDVDを䞀枚取り出す。

    二人は、ほずんど同時に、DVDプレむダヌの再生ボタンを抌した。

    画像



     県北戊士アガキタむオン第話 「歊者の力で立ち䞊がれ アガキタむオン」 埌線


    タむトルコヌルの埌、オヌプニングテヌマ曲無し。䞀本だけ提䟛で入るが終わり本線がスタヌト

    「ぐあああああああ」

    【ナレヌション】異喪魑廟いもちびょう四倩王最埌の刺客、アシュラキラヌの剣技に倒れたアガキタむオン。瀕死の状態で新発田しばた城の䞉階櫓から堀に萜ちおいった圌を助けたのは、地元新発田垂の名物喫茶店の店䞻だった。倉身の解けたアガキタむオン  いや、もはや倉身する力も残っおいない青幎、五頭倧ごずうたさるは、叀がけた喫茶店の二階で目芚めるのだった。

    「お、ようやく起きたかい、兄さん」

    自らがアシュラキラヌの凶刃に貫かれる悪倢で目芚めた五頭倧は、ずたずたず階段を䞊がっおきた初老の店䞻、宮町の声の方を向いた。六畳䞀間の小さな寝宀に敷かれた垃団の䞊で汗だくで目芚めた圌は、胞の呚囲が包垯でぐるぐる巻きにされおいるのに気づく。

    「倧倉だったんだよ。異喪魑廟いもちびょうの連䞭に支配されちたった新発田しばた垂じゃ、満足な医療品も手に入りゃしない。仕方ないから、匷い酒で消毒したあず、裏庭のどくだみをすり朰しお傷に圓おさせおもらったよ。包垯はただ取っちゃダメだ。刀傷は、そう簡単には治らないからね」

    宮町はそう蚀うず、桶に匵った氎にタオルを浞し、固く絞ったそれを䞁寧に畳んで、再び寝かせた倧のおでこに眮いた。

    「おやっさん、ここは  」
    「新発田垂にある、蒞気パン  おっず、新期垂の人には『ぜっぜ焌き』っお蚀ったほうが分かるかな  が、名物の喫茶店さ。

    あんた、アガキタむオンの人だろ 新発田城のお堀の近くにずぶ濡れで倒れおたんだ。りチのかあちゃんが芋぀けお知らせおくれなきゃ、あんた今頃、異喪魑廟いもちびょうの連䞭にずっ捕たっおたろうよ」

    「そうですか  俺は  負けたのか  」

    倧は濡れタオルに手を圓お、額のそれを少しずり䞋げるず目を芆った。無蚀で埌ろを振り向き階段を降りる宮町。その埌ろから錻をすする音が聞こえる。

    「なあに。若いうちは負けるこずばっかりさ。すこし寝たら腹も枛るだろうから降りおきな。矎味いコヌヒヌ淹いれお、ぜっぜ焌きでも焌いおやるよ」

    倧にそんな蚀葉をかけるず、宮町はトントンず階段を降りおいく。
    倧の目を芆うタオルの隙間から、ひずすじの涙が぀たい萜ちおいった。


    倕暮れ時の県道号線を、䞀台のリダカヌがトボトボ南に䞋っおいく。リダカヌを匕くでっぷり倪った人圱は、蟺りをキョロキョロ気にしながら汗だくの軍服の前ボタンを党開にしお、息も切れ切れにリダカヌを匕き続ける。

    その荷台には、ふお腐れたような姿勢で座る仮面を付けたボンテヌゞ衣装の女性の姿が。

    「ノミスギヌくん、キミは少しはダむ゚ットしたらどうなんだね。やけにリダカヌが重いんだが」

    「はいアりトヌ。メタボス元叞什、それっおセクハラよ
       たあ、セクハラを蚎えようにも、アシュラキラヌの奎に組織を远い出されたアタシ達には蚎える窓口も無いんだけどね  」

    寂しそうにそう愚痎を吐く幹郚  いや元幹郚ノミスギヌは、倧きなため息を぀くず、ぐでっずリダカヌの瞁に顎を茉せた。

    「しかし、我々よりもはるかに過激に県北の食を手に入れようずするずはなぁ。普通、食い物の流通を支配するのに新発田垂の自衛隊基地䞞ごず掗脳しお垂内封鎖する やりすぎじゃないアシュラキラヌ 異喪魑廟四倩王最埌のひずりだからっお銖領にえこひいきされおない」

    メタボスはれ゚れ゚蚀いながらリダカヌの持ち手郚分にもたれかかるず、汗を拭き拭き道路に尻もちを぀いお座り蟌んだ。

    「もヌ無理だ 脱走がバレお捕たっおもかたわん そもそも䜕で吟茩がリダカヌを匕くこずになったのかね 身䜓がぜっぜぜっぜず熱くなっおきおかなわん 新発田垂ずいえばぜっぜ焌き ここに来たからには熱々のぜっぜ焌きを食べなければ腹のおさたりが悪い よし、行くぞノミス」
    スパァン ず荷台のノミスギヌが身を乗り出しおスリッパの䞀撃を叩き蟌む。

    「あヌもヌツッコミで䜙蚈な䜓力を䜿わせないでくれたせヌん おかげでこっちもお腹空いおきちゃったわ  仕方ない、この先の喫茶店でぜっぜ焌きが名物みたいだわね。行っおみようじゃないの」

    倧は、ただ痛む胞を抌さえながら階䞋の店舗ぞず降りおきた。䞁床倕飯どき、地元の客で賑わう老舗喫茶店は、銙ばしいコヌヒヌの銙りず、ぜっぜ焌きや軜食に舌錓をう぀客の笑顔が、暖かく倧を迎え入れおいた。

    「あいよ コヌヒヌずぜっぜ焌きセットお埅たせ  お、兄ちゃん、もう動いおも倧䞈倫なのかい」

    幎の割にキビキビず働く店䞻の宮町は、劻が構えたトレむにコヌヒヌずぜっぜ焌きの皿を茉せたあず、倧にカりンタヌの垭を勧めた。

    【ナレヌション】『ぜっぜ焌き』を食べたこずのない県倖のみんなに特別に教えよう。ぜっぜ焌き蒞気パンずは、小麊粉、黒蜜、砂糖などを混ぜ合わせ、炭酞氎で溶いた生地を銅補の型に流し蟌んで现長く焌いた、県民おなじみの屋台グルメなのである。

    「お兄さん、ぜっぜ焌き食べお、元気出しおいっおよ 異喪魑廟の連䞭に負けないように、今日はぜっぜ焌き食べ攟題サヌビスだよ」

    トレむをを運び終わるず、宮町の劻は満面の笑顔で倧の前にコヌヒヌカップを眮いた。しばらくしお倧の座ったカりンタヌに茶色く现長い、熱々のぜっぜ焌きを満茉した皿がトン、ず眮かれる。

    「食っおみなよ兄ちゃん。矎味いからよ。」
     宮町はニカっず笑っおそう蚀うず、厚房の奥に匕っ蟌んだ。

    「ありがずうございたす。でも、もう俺は倉身が  」
    「おかわり、あるからよ 遠慮しないで食うんだぜ」

    倧の声を聞いおか聞かずか、宮町の明るい倧声が厚房の奥から届いた。倧は、しばらく目の前の湯気の立぀ぜっぜ焌きを芋぀めるず合掌し、
    「いただきたす」ずぜっぜ焌きを霧かじり始めた。その盎埌、

    「こんばんはヌ。二名、垭はあるかね」

     倧は激しくムセた。この声は忘れもしない  
    「ゎホっゎホっ  メタボス こんな所に䜕の甚だ」

    「あヌら五頭の坊やじゃなヌい。あら アシュラキラヌが仕留めたっお豪語しおたけど、生きおるじゃない。どしたの こんな所で」

    「ノミスギヌも それはコッチの台詞だ。返答次第ではタダではおかんぞ  」

    ず、カりンタヌを立ち䞊がり臚戊䜓勢に入ろうずした倧ず二人の間に、宮町の劻が割っお入る。

    「アンタたち、ボックス垭ぞ移んなさい。お腹空いおるんでしょ 食べたら倖でやんなさいよ。他のお客さんに迷惑。わかったね」

    「「「はヌい  」」」
     䞉人は同時に声を䞊げた。


    「  ずいうわけでハムッ我々は異喪魑廟を脱走しお、今や远われハムッる身なのだモグモグ」

    「たったく  食べるか喋るかどっちかにしなさいよねメタボス元叞什。そんなわけで五頭の坊や、アタシ達を匿かくたっお頂戎」

    自分の半分かじったぜっぜ焌きを、物欲しそうなメタボス叞什に譲ったノミスギヌは、仏頂面ぶっちょうづらで髪の毛先をもおあそびながら蚀った。既に客は家に垰り、店内に残っおいるのはこの䞉名だけだ。

    「ふざけるな。今たでお前たちがしおきた数々の悪行を無芖しお匿かくたう蚳にはいかない。いっそのこず店を出たらお前たちを倒しお  」

    「バカね五頭の坊や。別にアタシ達だけ逃げ延びようっお思っちゃいないわよ。生き延びお、これたでずこれからの異喪魑廟の悪行を、掗いざらい蚌蚀するっお蚀っおんの。ね メタボス元叞什」

    ゎキュゎキュ、プハヌずアむスコヌヒヌを飲み干しお満足したメタボスは、枩タオルで顔をゎシゎシ拭いたあずで答えた。

    「うん。吟茩たちは裏切り者だしね。もちろん今たでの悪行の報いはキチンず受ける぀もりでおるよ 悪には悪の矜持きょうじっおものがあるのだよアガキタむオン。た、どっちに転んでも生き延びるチャンスが薄いなら、せめお懺悔ざんげくらいはね、倚少はね」

    楊枝を咥えながら話すメタボスのあっけらかんずした物蚀いに、倧は悩んで頭を抱えた。しばらくの逡巡しゅんじゅんののち、

    「わかった。この新発田垂包囲網を砎ったら、俺たちの圹堎に来お掗いざらい吐いおもらうぞ。玄束だからな」

    二人はこくんこくんず銖を瞊に振り、揃ったゲップで返事をした。その盎埌、

    「あヌあヌ。聞こえおいるかアガキタむオンず元幹郚の二人 今すぐ出おきお投降しろ お前たちがその喫茶店に入っおいるのは分かっおいるんだ 出おこなければ、その喫茶店ごず真っ二぀に斬っおやっおも構わんぞ 出おこい」

    拡声噚の倧音量が店倖から聞こえる。倧はガタっず垭を立぀ず、入り口の隙間から倖を芗うかがった。

    するずそこには、十重二十重ずえはたえに店を囲んで立ち䞊ぶドロス戊闘員ず、銃噚を構えた掗脳枈みの自衛隊員たち。
    二十メヌトルほど離れた包囲の茪の正面には、拡声噚を手に持った異喪魑廟四倩王最埌の刺客、阿修矅の化身、アシュラキラヌが睚にらみを効かせおいた。

    画像

    「あヌあ。芋぀かっちゃったわね」
    背埌からノミスギヌずメタボスが様子を芋にやっお来た。

    「この様子じゃ残念な結果に終わりそうだな、アガキタむオン」
    呑気な物蚀いでメタボスは咥えおいた楊枝をプっず吐き捚おた。

    「くそっ  店のおやっさんずおかあさんだけでも裏から逃がせられれば  」
    倧は悔しそうに拳を握りしめる。

    「いやいや、お前も逃げるんだよ、アガキタむオン」
    メタボスは、その倪い銖をコキコキ鳎らしながら軍服の腕を捲たくる。

    「そヌよ。残念な結果に終わるっおのはアタシ達だけ。さ、アタシ達がやり合っおるりチにご倫婊ふたり連れお逃げちゃいなさい」

    ノミスギヌは着けおいた仮面を倖すず、目の呚囲に圫られた奇劙なタトゥヌをひず撫でし、䜕かの力を解攟し始めおいる。

    「バカを蚀うなよ、お前たち二人がかりでも倒せる盞手では  」
    ドカァ ずメタボスの蹎りが倧を店の奥ぞず吹き飛ばした。
    慌おお奥から出おきた宮町倫婊がそれを助け起こす。

    「おいアガキタむオン。舐めるなよ。吟茩、萜ちぶれおも異喪魑廟の叞什官を匵った男だぞ さっさずケツたくっお逃げるんだな」 

    ビキビキ  ずメタボスの身䜓が倉容しおいく。でっぷりず倪ったその身䜓は筋肉が詰たった鋌のように倉身し、はち切れた軍服からは獣の䜓毛がみっしりず生えおくる。

    「坊やの出番はここで終わり。芋たずころ、あず䞀回倉身しちゃったら生呜に関わるくらい消耗しおるんでしょ 埌ろは振り返らないで、その倉身は倧切なずきに取っおおきなさい んじゃ、いくわよメタボス叞什」

    党身に玫色のオヌラを纏ったノミスギヌが、背䞭に矜根ず額に悪魔のような角を生やし、入り口の戞に手を掛けた。

    「兄ちゃん、それで良いのかい」
    店䞻の宮町が、助け起こした倧に声を掛けた。

    「あたしらのこずはいいから、あの人達を助けおおあげよ。どうせ老い先短い呜さ。あの勇気、無駄にさせちゃ正矩の味方じゃ無いよ」

    倧はハッずしお唇を噛んだ。俺は  くそっ、俺はどうすれば  。

    メタボスずノミスギヌは玠早く扉を開け戊闘員達ぞず襲い掛かった。フヌ フヌ ずいうドロスの奇声に混じっお、掗脳された自衛隊員が攟぀銃声が店の䞭にも届いおくる。

    苊しそうなメタボスの咆哮ほうこうが聞こえる。苊痛に歪むノミスギヌの悲鳎が響く。倧は、固く目を閉じるず、決意を固めお蚀った。

    「足掻あがいおきたす。おやっさん、おかあさん」

    「シュラシュラシュラ 元幹郚二人がブザマな栌奜だな さあ、そろそろトドメを刺しおやろう メタボス ノミスギヌ」

    アシュラキラヌはその四本の腕それぞれに持った刀を、道路に転がる二人の元幹郚めがけお振りかぶった。

    「ここたでだなぁノミスギヌ  」
    「メタボス叞什  ツッコミ圹、結構楜しかったわ  」

    血だらけのモンスタヌずなった二人は、軜く笑みを挏らしながら互いに手を䌞ばし、そっず握り合うず目を瞑っお  

    「そこたでだ アシュラキラヌ」

    喫茶店の二階の窓が開き、ひずりの男が屋根に降り立぀。亀差させた腕から青い光が茝き、男の党身を芆っおいく 光が収たるず、そこには怒りの戊士が聳え立っおいた

    ここで高揚感のある番組オヌプニング曲がむンサヌトされる。

    「県北」戊士が拳を突き䞊げる
    「戊士」突き䞊げた拳ず共に流れるような構えが決たる
    「アガキタむオン」閃光ず共に空気が震えた


    「な  䜕やっおんのよ五頭の坊や」
    「そうだ、逃げろず蚀っずるだろうが」

    アガキタむオンは階䞋の二人を芋䞋ろすず、
    「ここで逃げたら、俺の呜は助かるかもしれない。けど、ここで足掻けなきゃ、俺の魂が死ぬんだよ。いくぞアシュラキラヌ 掟砎りのいきなり必殺 アガキック」

    二階から飛び䞊がったアガキタむオンの右脚が灌熱の茝きを持っおアシュラキラヌぞず突き刺さる 

    アガキックはアシュラキラヌの巊腕を䞀本だけ貫き、アガキタむオンは道路に赀い煙を䞊げおスラむドしながら着地した。

    「くっ ただ身䜓が思うように動かん」

    アガキタむオンは道路に膝を぀いたたた苊しそうに喘ぐ。

    「シュラシュラ  肝を冷やしたぞアガキタむオン。しかし残念ながら、ワシには再生機胜が備わっおいるのだ」

    ふん、ず気合を入れるず、アシュラキラヌは倱った巊腕を根本ねもずから飛び出させるように生やした。そしお地面に転がった巊腕が握っおいた刀を再び構える。

    「シュラ シュラ シュララ」

    動きの鈍いアガキタむオンの身䜓を、瞊暪無尜じゅうおうむじんに襲いかかる刀が切り刻んでいく

    「ぐっ がっ このたたでは  」
    「いたぶるのもそろそろ飜きたなァ  アガキタむオン、もう䞀床これを喰らっお今床こそ真っ二぀になるがいい キラ・スラッシュ」

    四筋の暪薙よこなぎの剣颚が膝を぀くアガキタむオンをずらえた   かのように芋えたその瞬間、アガキタむオンは目の前の光景を疑った。

    「メタボス ノミスギヌ」

    䞀斉に攟たれた刃は、二人の怪人が身を挺おいしお防いでいた。前埌に重なったたた、胎に刀を食い蟌たせた二人は、ニダっず笑いながら最埌の蚀葉を吐き出す。

    「吟茩のアタシの、奜きな、県北の食を  守っお  くれ  」

    爆発四散 アガキタむオンずアシュラキラヌは共に十数メヌトルは吹き飛ばされるず、立ち蟌める煙の䞭、互いの䜍眮を探った。

    「シュラシュラ  ずんだ邪魔が入ったが、お前の最期がほんの少し䌞びただけだぞアガキタむオン さあ出おこい 怖気おじけ付いたか」

    アシュラキラヌはダメヌゞも無く立ち䞊がるず、再び四本の刀を構え盎す。その瞬間、䜕か鋭いものが飛んでくる感芚を感じ、ギョっず身を匕く。気づくず、右䞊の腕の手銖から先が斬り取られお無くなっおいた。

    「䜕を  䜕をしたアガキタむオン」

    煙がゆっくりず晎れおいき、向こう偎から䞀人の人圱が䜕か長いものを持っお歩いおくる。

    「これは  この地を汚された新発田垂民の怒り  新発田の英雄、堀郚安兵衛の怒り  そしお散っおいった二人の怪人  分かり合えたかもしれない二人の怒りの力の倉身だ」

    黒く茝く鎧兜に身を包んだアガキタむオンが、手に持った長槍をブンブンず振り回しおポヌズを決める

    「アガキタむオン・ムシャフォヌム」

    画像


    アシュラキラヌは再び右手銖を再生し、刀をキラ・スラッシュの構えに持っおくる。察するアガキタむオンは、長槍を突きの姿勢に構え、集䞭力を高めた。緊迫した空気が匵り詰める。沈み切った倕陜が蟺りを玅黒く染めおいく。

    「小癪こしゃくな キラ・スラッシュ」
    「貫け 堀郚千斬槍ほりべせんざんそう」

    アガキタむオンの槍の穂先が、アシュラキラヌの刀よりも䞀瞬早く亀差した アシュラキラヌは右脚を吹き飛ばされながらも、その再生胜力を限界たで匕き䞊げお䞀瞬で右脚を再生する  が、圌の目の前には千の槍が攟぀斬撃が展開されおいた。

    高速で繰り出される槍がアシュラキラヌを斬り刻んでいく
    しかしそれに远い぀く再生胜力
    目たぐるしく斬られ生えおいく腕 足

    「シュラシュラシュラ ぐ、ぐおお───」再生する
    「アガアガアガアガアガアガアガ」斬り刻む
    「シュラシュラシュラシュラシュラシュラシュラ」再生する
    「アガアガアガアガアガアガアガアガアガアガアガアガ」遂に斬り刻むスピヌドが再生速床を超えた

    「う、ぐああああああ」
    槍の波激はずうをその身に喰らい、アシュラキラヌは空高く突き䞊げられるず絶叫しながら爆発四散した
    その炎を背にアガキタむオンは決めポヌズを取る

    「足掻いおやったぜ、アガキタむオン」

    䞀週間埌。傷の癒えた五頭倧ず岩船課長は、新発田城址公園の片隅に建おられた小さな墓に手を合わせおいた。そこには、メタボス・ノミスギヌ、ず、名前が䞊んで圫られおいる。

    「敵ずは蚀え、最埌の最埌で改心した時、友達になれるかな、ず思っおいたんですけどね  」

    倧が寂しそうに笑う。岩船課長は耇雑な心境で、それを芋おいた。

    「倧くん、負けお埗るものもあったのね  。でも、倱ったものは、埌悔したっお戻っおこないわ。ここたで来たら最埌たで足掻きたくるわよ。芚悟はいい」

    合掌を終え立ち䞊がった倧は、墓にもう䞀床お蟞儀をするず力匷く呟いた。

    「足掻きたくるぜ、アガキタむオン」

    ☆


    DVD再生を停止するず、恵梚は自分の机の䞊に眮いおいた茶封筒に手を䌞ばし、手玙ず写真を取り出す。䜕床も読み返した、無骚な文字で曞かれた短い文。

    「”奜き”が蟛くおも倢を諊めるな。足掻け。粟䞀杯。」

    写真には、自分の䜜ったアガキタむオンの衣装を、綺麗に掗いながら埮笑む、䞭幎の姿の五頭倧埌藀マサルが写っおいる。


     足掻こうよ、二人で䞀緒に。


    DVDを芳終わった真垌は、あの写真の裏に曞かれおいた文蚀を思い出しおいた。写真の裏にメモされおいた、
    「君の芪友ず仲盎りしお、足掻く芚悟を決めたなら、この電話番号に掛けおきおくれ」ずの蚀葉。

    「仲盎り、かあ」

    リビングのチェアに背をもたれ、ため息を぀く真垌の芖線にカレンダヌが映る。今日は月最埌の日曜日。地元では『氎原た぀り』ずいう倏祭りが開かれおおり、今日は二日目、瓢湖ひょうこで花火が打ち䞊げられる倜だ。

    「おた぀り、行っおみようかな」
    真垌は立ち䞊がるず济衣を探しにクロヌれットを開ける。ひずりで行く倏祭り。ひずりで芋る花火。でも  

    どこかで恵梚に䌚えるのではないかず、心のどこかで期埅し぀぀、真垌は济衣を取り出した。

    ☆

    倜。祭りの䌚堎である氎原の街路の䞡偎に立ち䞊ぶ、ギラギラした照明の屋台の列を抜け、ふっず人混みが途切れる路地に真垌は入る。

    喧隒がすこし遠ざかり、明るさに慣れた目が暗闇に慣れるのを埅っお、真垌は瓢湖の方角ずは反察方向ぞ向かう路地を歩き始めた。

    ケットが始たる前、ミッシヌが教えおくれた、瓢湖の花火がよく芋える絶景スポットのこずを思い出す。あそこなら、花火も良く芋えるだろうな。真垌は屋台で買った九本入りのぜっぜ焌きの袋を手に持ちながら、次第に遠ざかっおいくその枩もりに淋しさを感じおいた。

    瓢湖からも祭りの屋台からも離れたその公園は、地元の人でも知る人ぞ知る、穎堎の花火鑑賞スポットだった。芋るず、真垌の他には近所の家族連れがひず組、団扇うちわで顔を扇あおいで猶ビヌルを飲んでいるおじいちゃん䞀人くらいしか芳客がいない。

    た、静かで良いよね、芋える花火はちょっず小さいけど  ず、公園の端にあるベンチに座ろうず近寄るず、暗がりで芋えなかった人圱がひずり、そこに座っおいた。

    花火が䞊がり始める。遠くの空で倧茪の花が開き、ベンチず真垌を照らした。かなり遅れお、ドヌン、ず花火の音が二人の元ぞ届く。

    「䜕。立っおないで座ったら」

    そこには济衣姿の恵梚がベンチに座っおいた。

    尺玉、連発、スタヌマむン。花火のプログラムは順次進んでいく。

    二人は互いにベンチの端ず端に座っお、蚀葉を亀わすこずも無く遠くの倧茪を眺めおいた。しばらくしお、真垌は手に持っおいた玙袋をガサガサず開け、ぜっぜ焌きを䞀本手に取っお蚀う。

    「食べる」

    恵梚はそれを䞀瞥いちべ぀するず、無蚀で手を䌞ばしお受け取り、口に運ぶずモシャモシャず食べ始めた。それを芋お真垌も袋の䞭から冷めたぜっぜ焌きを䞀本取り出し霧かじり付く。

    暗い公園が䞀瞬ず぀光の花に照らされる。亀互に遅れおやっおくる音ず倧気の振動。たたに湧き䞊がる離れた堎所からの家族連れの歓声。飲み干した猶ビヌルを握り぀ぶしたおじいちゃんは、もう家に垰っおしたった。

    「あのさ、」ぜっぜ焌きを食べた真垌が口を開く。

    「たずい。もう䞀本頂戎」

    それを遮さえぎるように恵梚が花火の方を向いたたた手を䌞ばす。

    たずいのに食べるんだ  ず真垌は䞍思議がりながら、もう䞀本のぜっぜ焌きを手枡す。

    恵梚はそれをふた口で食べおしたうず、間髪入れずにたた真垌の方に手を䌞ばした。仕方なくもう䞀本を取り出し手枡すず、今床の恵梚は噛み締めるようにその䞀本を食べおいく。

    「やっぱりたずい。冷めたぜっぜ焌きは矎味しくない」

    真垌も、霧りかけのぜっぜ焌きを口に入れ飲み蟌むず、う぀むきかけお蚀う。

    「うん。矎味しくないね。ケンカしお食べるぜっぜ焌きはちっずも矎味しくないや」


    しばらくの無蚀。
    花火が䞊がっおいく。
    音。
    静寂。


    「あのさ」「ねえ」ほが同時に声が䞊がる。

    「ごめんね。ミッシヌなんお倧っ嫌いっお蚀っちゃっお」
    「ごめん。マキナの気持ちも考えないで酷いこず蚀っちゃっお」

    二人は互いに芋぀め合う。少しの間をおいお、二人は同時に吹き出しお笑った。


    祭りの人出が次第に匕き始めおいた。家路に぀く人混みをかき分けながら、手を取り合った二人の人圱が、ぜっぜ焌きの屋台をめがけお歩いおいく。

    「ねえミッシヌ、明日孊校で䌚ったら芋お欲しいものがあるの。いい」
    「䜕だろ。倉なもの持っお来ないでよね 薄い本なんお持っおきちゃダメだよ」
    「あっはっは  それは持っお来ないよぅ  。あ、おじさヌん、たた来ちゃった。九本入りのや぀、くださヌい」

    「はいよ お、今床はお友達も䞀緒かい んじゃ、割り切れるように十本でサヌビスだ。持っおいきな」

    マキナは代金を手枡すず、熱々のぜっぜ焌きを受け取る。
    ミッシヌはもう埅おないず、袋を開けお䞀本取り出しおマキナの口ぞ、マキナも䞀本取り出しおミッシヌの口ぞず運ぶ。

    もぐもぐず立ち食いした二人は、たた手を握り合い、家路に぀いおゆく。


    画像


    垰宅しおゞャヌゞ姿に着替えたマキナは、寝る前に、ダむニングに座っおいる母に残ったぜっぜ焌きの袋を手枡しお蚀った。

    「お母さん。仲盎りしお食べるぜっぜ焌きっお矎味しいね。おやすみ」

    垌子はテヌブルの䞊に袋を眮き、冷めたぜっぜ焌きを䞀本摘んで霧り぀いた。そしお埮笑みながら呟く。

    「ホントだね。矎味しいよ。真垌」

    ☆

    「ただいた垰りたした」

    ミッシヌは自宅に垰るず誰もいないリビングの照明を぀けた。
    時。祭りの䜙韻は急速に匕いおいく。ひず足先に祭りの実行委員䌚から戻っおきた䞡芪は、もう郚屋に入っおしたっおいた。

    ミッシヌはリビングを抜け、ドアからかすかに光の挏れ出おいる父の曞斎ドアの前に立぀。息を吞い、ゆっくりず吐く。軜いノックに、どうした、ずいう返事が応える。

    「パパ、ただいた。少しお話があるんだけれど、いい」


    ミッシヌは父の曞斎のドアを閉め、宀内のスツヌルに腰掛ける。
    父は寝間着姿でデスク䞊のパ゜コンで自らの経営する歯科医院の䌚蚈資料を眺めおいた。
    怅子を回転させお嚘の方に向き盎った父は、これから嚘の口から話されるであろう内容を、その衚情から読み取りかけた。

    「進路の話だな、恵梚」

    ミッシヌは真剣な衚情で頷うなずく。

    「新期倧孊、歯孊郚の受隓、決めたか」

    ミッシヌは銖を暪に振る。

    「今の成瞟なら、新期倧孊だけではなく、別の孊校の歯孊郚も狙える。それずも、医孊郚受隓を狙うのか。お前だったら東京の  」

    「違いたす。パパ。あたし、コスプレを、䜜っおいきたい」

    予想の範疇はんちゅうずはいえ、もう少し蚀い方を考えろ  ずは口にせず、父は眉間のしわを指で抌さえおため息を吐く。

    「恵梚。お前は昔からストレヌトな物蚀いをするずきは、急に頭が悪くなるような話の始め方をするな  。
    それで 倧孊の受隓が終われば趣味ずしおコスプレを再開しおもいい、ずいう玄束を反故にしおたで、そう蚀うからには䜕か他にも䌝えたいこずがあるんだろう。なんだ」

    うぐ、ず図星を蚀い圓おられ、蚀葉に詰たるミッシヌ。だが、腰掛けた膝の䞊で手をキュッず握るず、父の目に向き盎っお懞呜に口を開く。

    「医療の道に進むこずも、誰かの健康や呜を助ける仕事で、ずおも尊いず思いたす。だからあたしは、パパやママを尊敬しおいる。でもそれずは別に、今回の事件や事故のこずで、あたし、コスプレで誰かの倢を叶えられたり、どんな環境でも安党に”なりたい姿になれる”っおこずを蚌明しおみたくなったの。だから、あたしは服食の専門孊校に行っお  」

    「賢さかしいこずばかり蚀うな、恵梚」
    父はピシャリ、ず蚀う。䞍意打ちを食らったかのように固たるミッシヌ。

    「どれもこれも、あず付けの理由だろう。これを蚀えばお父さんを説埗できる。こう理由付けすればお父さんに理解しおもらえる。おおかた、倏䌑みの間に切っ掛けがあったんだろう その”理由”自䜓は吊定しないさ。
    ただ、お前が長幎思い描いおいた想いを、そんなあず付けの理由だけで説明しようずしないでくれ」

    淡々ず語る父芪の蚀葉に、ミッシヌは顔を赀らめおう぀むく。

    「恵梚。お父さんはな、成瞟優秀でお行儀よく育っおくれた恵梚のこずを愛しおいる。だが、それ以䞊にな、ひたむきで、倢䞭で、本圓のこずを蚀おうずするず急に頭が悪くなる恵梚のこずも、もっず愛しおいるんだ。お前の、ほんずうの、心からの声を聞かせおくれ。恵梚、お前は、どうしたいんだ」

    ミッシヌは優しく諭すように語る父芪の目をたっすぐ芋据える。少しだけ、錻の奥がツンずする。目が滲んでくる。それでも、それでも自分の心のなかにずっず仕舞っおいた想いを、䞁寧に、そっず、胞の奥底から匕き出しおくるず、ミッシヌはかすれる声で蚀った。

    「奜きを  あたしの”奜き”を、人生で貫いお行きたい」

    父はその蚀葉をしばし噛みしめるず、重々しく口を開いた。

    「奜きずいう感情だけでは食っおいけないぞ」
    「分かっおいたす」
    「意思を貫くためには蟛いこずだっおごたんずある」
    「承知の䞊です」
    「泣き蚀を蚀える暇なんお無いかもしれんぞ」
    「倧䞈倫です」

    ミッシヌはマキナのこずを思い浮かべる。あたしに、勇気をくれた人。あたしの背䞭を抌しおくれた、無茶で明るくお元気な笑顔。あの笑顔ずだったら、いや、あの笑顔を思い出せば、たずえ自分䞀人になったずしおも、どこたでも行けそうな気がする。

    父は、決意に満ちたそんな嚘の衚情を芋るず、ふっず肩の力を抜いお埮かに笑った。そしおクロヌれットを開けるず、ごそごそず奥をかき分けお、䞀本のクラシックギタヌを匕っ匵り出す。

    「実は父さんもな、昔、バンドを組んでいたんだ」
    そう蚀うず、ゞャヌン、ずひず぀コヌドをかき鳎らす。

    「倢は、倢のたた眮いおおいたほうが良いこずもある。父さんはそれで埌悔しない性栌だった。だが、お前は父さんじゃないものな」

    優しげな衚情で、父は
    「足掻いおみるずいい。粟䞀杯、埌悔のないようにな」
    ず、ミッシヌの知らない曲を爪匟きながら蚀った。

    ☆

    翌日。午前䞭の始業匏ずホヌムルヌムを終えた攟課埌。

    マキナは苊劎しお持っおきたあの日のキャリヌバッグずアパレルの袋を、隠しおおいた䜓育通倉庫から匕っ匵り出しおミッシヌを埅っおいた。遅れお、小走りで駆け寄っおくるミッシヌ。

    「ごめん。担任ずちょっず進路盞談をしおたの。あ、ごめんね、キャリヌバッグ。ずっず持っおおくれたんだ。あず、そのアパレルの袋、なに」

    マキナは、ミッシヌにキャリヌバッグず袋を手枡す。たずバッグ、次いで袋ず、内容を確認するミッシヌの目が芋開かれ、そしお最んでいく。ミッシヌは袋を開くず、綺麗にクリヌニングされ、畳たれたアガキタむオンの衣装ずマスクを取り出した。

    「マキナ、これ  」
    「うん。あのずき私を助けおくれたのは五頭さん。そしおミッシヌの䜜っおくれたアガキタむオンの衣装を救っおくれたのも五頭さん。䌚ったら、お瀌蚀わなきゃね」

    アガキタむオンの衣装をキュッず胞に抱きしめ、感慚に耜ふけるミッシヌを優しく芋守るず、マキナはスマホを取り出す。ミッシヌから預けおいた写真を手枡されるず、マキナはその裏に曞かれおいる電話番号に電話をかけた。

    呌び出し音䞭にスピヌカヌホンに切り替える。しばらくの埌、通話が始たった。

    「はい。ゎトりです」

    マキナは胞の錓動が急に早たるのを感じながら、憧れおいたヒヌロヌに話し始めた。

    「あ、あの、わたし、ケットで助けおいただいた関川真垌  いえ、姫華マキナです。その節は倧倉お䞖話になりたした。本圓に、ありがずうございたした」

    「ああ、君か。もう䜓調は回埩したんだね良かった」

    「おかげさたです。あず、その、写真の裏に  」

    「分かっおる。仲盎りしたんだね。それも良かった」

    ミッシヌはその声を聞くず声を䞊げた。

    「䞉島恵梚、ミッシヌです。この床は倧倉ご迷惑をおかけしたした。遅くなりたしたけど、改めおお瀌を申し䞊げたす」

    電話越しの埌藀がハハッず笑い声で応える。

    「倧䞈倫。みんな元気ならそれでいい。それで、電話をかけお来たっお事は、足掻く芚悟を固めたんだな」

    マキナは、声のトヌンが倉わったその蚀葉を聞くず息を呑んだ。そしおミッシヌの方を芋るず、圌女も真剣な顔でゆっくりず頷く。

    画像


    「はい。二人ずも芚悟は出来おいたす」

    「いいだろう。では君たちに䌝えよう。俺からの申し出はこうだ。二代目アガキタむオン、やっおみないか」

    その声を聞くず

    「「えええええ」」

    ず、二人の驚く声が䜓育通裏にこだたした。


     特蚓 めざせ二代目アガキタむオン


    「違う もっずパンチは倧振りに 倧きく構えお速く突く」
    「䜕 バク転やったこずが無い よし、今から特蚓しお教えるぞ」
    「空手の考え方を䞀旊捚おろ 組手じゃない、君がやるのはショヌだ 魅みせるんだ」
    「ゞャンプは高さだ 高さには足腰だ 今からスクワット癟回 スタヌト」
    「はい よろしくおねがいしたす」

    画像

    ここ連日の埌藀の特蚓に、マキナはよく耐えおいた。『韍虎通』の䞀画を間借りしおの、マキナず五人の門䞋生の特蚓は今日でちょうど二ヶ月を迎える。

    通長の月岡も、自分の指導に䞍足しおいた郚分を朔く認め、ヒヌロヌショヌに特化したその蚓緎を、自らも孊がうず䞀緒になっお参加しおいる。

    「よヌし今日はこれで終了 各自氎分補絊ずストレッチをやっおおくように」

    埌藀マサルは、トレヌニングりェアを脱ぐず汗たみれの䜓を拭き、持っおきたスポヌツドリンクをごくごくず飲んだ。

    「埌藀さん、お疲れ様。しかしよく鍛えおたすね、その身䜓」

    月岡が、筋肉で匕き締たった埌藀の身䜓をたじたじず芋ながら蚀った。

    「はは。撮圱圓時の身䜓には及びたせんが、四十超えおもトレヌニングは欠かしおたせん。月岡さんもよくこのトレヌニングに぀いお来おいらっしゃる。尊敬したす」

    ひず回り歳の違う月岡は、照れながらタオルで汗を拭った。そしおマキナの方を暪目で芋お埌藀に蚊ねる。
    「どうですか。圌女。あず䞀カ月に迫った『新期フヌドフェスティバル』たでのステヌゞ、間に合いそうですか」

    埌藀は笑みを挏らすずニダリず蚀った。

    「行けるず思いたす。圌女の情熱は玠晎らしい。きっず足掻いおくれたすよ」

    韍虎通の別の䞀画では、ミッシヌが衣装補䜜を進めおいた。
    指導は、埌藀がアガキタむオンのプロゞェクトに参加しおいた時の小道具班の衣装担圓であり、昚幎床、経和孊園けいわがくえん倧孊の倚文化理解コヌスに新蚭された倚文化メディア服食講座の講垫、柎田しばたが務めおいる。

    「そう。飲み蟌みが早いわね。前回の衣装ではパヌツに接着剀を倚甚しおたみたいだけど、アクション重芖の舞台衣装では接着は危険だわ。正解は、䞊から合皮を匵るのよ」
    「マスクは瞫補でやっおたのね。それも玠晎らしい技術だわ。でも、ヒヌロヌマスクの䞻流は造型よ。たずは型取りから教えおあげる」

    などなど、ミッシヌは也いたスポンゞが氎を吞うような勢いで技術を習埗しおいた。道堎の片隅にミシンや塗装機材を持ち蟌み、今回はショヌの台本で芁求されおいる怪人の衣装ずノミスギヌ幹郚の衣装も手掛けおいるミッシヌは、毎日が楜しくお仕方なかった。

    ☆

    「そうかぁ。ミッシヌは、ご䞡芪を説埗出来たんだね。」
    「ふふ。ちょっず蚀いくるめられちゃったけどね。でも、どうせ行くなら奜きな事を極められるずころに行きたいから」

    垰り道の垌子が運転する車の䞭で、マキナはミッシヌが決めた進路の話を聞いおいた。

    「しっかし、服食の専門孊校に通うこずに決めたっお、孊幎トップクラスの成瞟が勿䜓無いわねぇ。その孊力、ちょっずりチの子にも分けおもらいたいもんだわ  」

    盞倉わらず制限速床ギリギリを攻める垌子は、深いため息を぀くずバックミラヌ越しにマキナを睚み぀けた。

    「あは  あはは  。今床、家庭教垫ずしお勉匷教えおもらおっかなヌ  あはは」
    「駄目。あたしが家庭教垫やったらマキナ甘えちゃうでしょ。ちゃんず勉匷しお、商孊郚狙っおるんでしょ」

    苊笑いで誀魔化そうずするマキナを、ミッシヌはチクリず嗜たしなめた。

    「えヌ、たあ、うん。そう  なんだよね  はは」
    「しかし䜕で商孊郚なのよ。真垌から進路の盞談受けたずき、ハッキリずした理由は聞いおなかったけど」
    「うん  それはね  」

    マキナは埌藀ず始めお䌚った日の事を思い出しおいた。

    「──二代目アガキタむオンは、新期フヌドフェスティバルでのステヌゞショヌが、最初で最埌のお披露目だ」

    阿賀野垂圹所の応接宀で、埌藀は資料のファむルをテヌブルに眮いたあず、そう語った。

    新期垂最倧のコンベンションセンタヌ、『朱鷺メッセ』で行われる、秋のフヌドむベント。新期県党域から様々なグルメが集たる䞀倧むベントで、ステヌゞショヌずしお行われる催しのひず぀に、アガキタむオンショヌが内定した事を䌝えるず、圹所を蚪れたマキナずミッシヌは堎所もわきたえず歓声をあげお抱き合った。が、それを抌し留めるように埌藀は先に語った蚀葉を繰り返す。

    「もう䞀床蚀う。これが最初で最埌の、公匏お披露目だ。次は無い。䞀回こっきりのチャンスなんだ」

    急に真剣な声で話し始める埌藀の衚情を芋お、二人の間に緊匵が走った。マキナずミッシヌは座り盎し、姿勢を正しお埌藀の声に耳を傟ける。

    「君たちも知っおいるかもしれないが、アガキタむオンは攟送終了埌、借入した資金の返枈の為、ずある人物に版暩の党おを売り枡したんだ。原䜜、キャラクタヌ䜿甚暩、グッズ販売暩なんか党郚をね。
    俺は圓時この䌁画に携わっおいた䞊叞を恚んだ。勝手な刀断で珟堎の倢を打ち砕くなんお、本圓に酷い事をする、ずね。

    その埌、県北の各自治䜓が連携しお、アガキタむオン埩掻プロゞェクトを立ち䞊げ、暩利の買い戻しの資金が準備できた状況にはなった。
    あずは暩利者の承諟を埗る所たでは行ったんだが、最埌の最埌で暩利者は銖を瞊に振らなかった。しかも䞍思議なこずに、䜿甚料を払っおの蚱可すら埗られなかった。その代わり、無料での、䞀回だけの公匏玠材の䜿甚蚱可はもぎ取っおこれたんだ。

    だからこそ、このショヌは倱敗できない。アガキタむオンが県民の、いや䌚堎に来おいる党囜の人に受け入れられ、再び県北にアガキタむオンを迎え入れる機運が高たれば、䞖論に抌されお暩利者も玍埗するかも知れない。その為に、アガキタむオンを本圓に奜きず蚀っおくれる人の協力が必芁なんだ」

    マキナずミッシヌは真剣な顔で埌藀を芋぀める。

    「君たちがコスプレでアガキタむオンを愛しおくれおいるのは痛いほど䌝わっおきた。アガキタむオンを奜きになっおくれおありがずう。そしお、コスプレずいう玠晎らしい文化でアガキタむオンを支え続けおくれお、本圓に感謝しおいる」

    ここで埌藀は深々ず頭を䞋げた。

    「しかし、コスプレの玠晎らしい郚分ず、ヒヌロヌショヌずしおの倧事な芁玠は別なんだ。俺は君たちのショヌを最初から最埌たで芋おいた。正盎、萜胆したよ。あれではヒヌロヌずしおのアガキタむオンを掻かせおいない。アクションも、衣装もだ。

    だから、今回のショヌを行うにあたっお、君たちず呚囲のスタッフを含めお、もう䞀床、基本からヒヌロヌショヌを孊んで貰いたいず思っおいる。
    正盎、蟛く厳しいものになるだろう。『奜き』ずいうだけでは付いお来れないものになるかもしれない。それでも、君たちはこのプロゞェクトに協力しおくれるだろうか」

    マキナずミッシヌは、躊躇うそぶりも芋せず、力匷く頷いた。

    「  本圓に、ありがずう。いいステヌゞにしよう」
    埌藀は二人ず固く握手を亀わした。


    「  っおなこずがあったんだよ」
    「いや長いわね どこらぞんにポむントがあったのよ」

    ツッコミを入れながら垌子はハンドルを切る。盞倉わらず巊右に匟け飛ぶミッシヌは、シヌトベルトを握りしめお蚀った。

    「ひょっずしお、著䜜暩ずか版暩に぀いお勉匷したいのマキナは」
    「せヌかい。さすがミッシヌだね。えぞぞ」
    恥ずかしそうにマキナは頭をポリポリ掻いた。

    「なるほどね。コスプレにあたっお暩利関係ずか蚱諟が必芁になる堎面もあるわけだしね  」
    垌子はようやく玍埗したように頷く。

    「そうなの。これから将来、コスプレをずっず極めおいくずき、䌁業やメヌカヌ、自治䜓なんかずコラボしたりするこずもあるかもしれない。そういう時に、知識や経隓が無いず埌で困るかなぁ、ず思っお。
    た、それには倧孊の商孊郚で勉匷したら良いかなぁ、ず思ったのがきっかけなんだけどね。お母さん、ごめんね。蚀葉が足りなかったかもしれないね」

    マキナは母に向かっお手を合わせるず、頭を䞋げお謝った。

    「仕方ないわねぇ。入孊金やら授業料やら  あたしも頑匵っお働かなきゃだね。任せずいおよ、真垌。ただしアンタの䜿呜は珟圹合栌するこず。浪人なんお䜙裕はりチには無いからねよろしく頌むよ」

    「うう  頑匵りたす  」

    マキナは恥ずかしそうに項垂うなだれるず、この前の暡擬詊隓の点数を母に隠しおいた事を反省し、家に垰ったら怒られる腹を括くくったのだった。

    特蚓ず衣装補䜜は続く。
    新期フヌドフェスティバルたであず䞀週間。

    この時期になるず韍虎通のメンバヌ䞀同は、朱鷺メッセでのステヌゞリハを行ったり、衣装パヌツの補䜜機材のある䌚瀟に出向いたりしお、それぞれがすれ違いの忙しい日々を送っおいた。マキナずミッシヌも、たたに道堎で顔を合わせる以倖は孊校生掻でお互いの進捗を語り合うようになっおいた。

    そんなある日の昌䌑み。校庭を芋䞋ろす階段に腰掛けながらの䌑憩䞭。

    「衣装、完成したよ」
    衚情も倉えずにミッシヌがパック牛乳を啜すすっお蚀った。

    マキナは最初䜕のこずか気づかず、ぞヌ、そうなんだ。ず流しおお茶のペットボトルに口を぀け、

    「ぶぞっぞっ ゎホっゎホっ マゞで それを早く蚀っおよミッシヌ」
    ず盛倧にムセお、ミッシヌに抱き぀いた。

    「あヌもヌ拭いおからにしなよマキナ。ふふ、今回の衣装は凄いよ。攟課埌、道堎に持っおくるから、詊着しお動いおみおよね。」
    錻氎を垂らしお浮かれるマキナに、ミッシヌは笑っおそう蚀った。

    「そういえば、私、いろんなずころにショヌのこず宣䌝しお回っおるからねクラスメむトでしょ、メむドのみんなにお客さんでしょ、あず、お母さんの職堎でしょあ、こんどミッシヌのお父さんお母さんがやっおる歯科医院にもチラシ貌りに行っおも良い」

    画像



    呆れ顔でそれを聞くミッシヌは、たちたち盞奜そうごうを厩しお、

    「いや、歯科医院にはもう貌っおきたよ。パパもママも、苊笑いしながら芳に来おくれるっお蚀っおた。お兄ちゃんは倧孊のサヌクルで応揎団結成しお来るっお蚀っおたけど、それは恥ずかしいしあたしが出挔するわけじゃ無いからっお䌝えるずかなり萜ち蟌んでた。でも、圓日はマキナのこず応揎するっお蚀っおたよ」

    ず、先手を打っおいたこずを䌝える。

    「なんだあヌ 読たれおたかヌ。よヌし、こうなっちゃったら党力で頑匵んないずね。あヌ 早く攟課埌になんないかなヌ」

    マキナはうヌん、ず䌞びをしお立ち䞊がり、午埌からの授業に備えお気合いを入れお頬をぱんぱん叩いた。

    「ふふ。無理しないでね、マキナ」


    攟課埌。韍虎通にお。出挔スタッフが党員集たり衣装合わせをしおいる。マキナは、マネキンに着せられたアガキタむオンのヒヌロヌスヌツの完成圢を初めお芋せられ、感動に震えおいた。

    「うあ  すご  ミッシヌ、これ、ぜんぶ、ミッシヌが  」
    そしお震える手でアガキタむオンのマスクに觊ふれる。

    「あたし䞀人の力じゃない。いろんな人が協力しおくれお出来た衣装だよ。マキナ、着おみお。手䌝うから」

    基本は前回のデザむンを螏襲しながら、関節などの可動郚分には䌞瞮性ず通気性のあるメッシュ玠材が瞫補されおいる。背䞭のゞッパヌは巧劙に隠されお、繋ぎ目の芋えづらい仕様になっおいた。
    各郚のパヌツは補匷され、倖れたりしないように䞊からメタリックな合皮が匵られおいる。各郚の装食も、垂堎に出回っおいない公匏からの蚭定資料を基に现郚たでが䜜り蟌たれおいた。

    そしおマキナが愛おしそうにマスクを持぀ず、頭からすっぜりず被り、着脱しやすいようにアレンゞされたマゞックテヌプで固定する。銖のマフラヌを装着し、バトルグロヌブの留め口を締めるず、マキナは己の姿を道堎の倧きな鏡に映しお確認した。

    「わたし  アガキタむオンになっおる  」

    始めお玍埗のいくコスプレが出来た日のように、始めお倧奜きなキャラクタヌの栌奜が出来た日のように。マキナは、広くずられたバむザヌ越しに、䜕床も䜕床も身䜓のあちこちを芋惚れるように眺めおいった。

    「名付けお『アガキタむオン(リタヌンズ』マキナ、圓日は気合い入れおやっおいこうな」

    満足そうな顔をするず、埌藀は腕を組んで頷うなずいた。


    衣装を着甚しおのリハヌサルを䜕回もこなし、スヌツが身䜓に銎染んできたショヌ前日の倜。

     「お願いしたす」

    マキナは緎習の最埌に、怪人の振るう歊噚をかわす動䜜の最終確認をしおいた。長い棒を歊噚に芋立おお、しゃがみ、飛び退き、バク転で攻撃をかわす  ず、着地に倱敗しお掟手に転ぶ。

    「いたたた  すいたせん通長、もう䞀回お願いしたすッ」

    「いや、もうここで終わりにしよう。関川も疲劎が溜たっおいるようだ。すこし筋肉をほぐしお䌑んだら家に垰っおゆっくり䌑め。今日は俺が送っおいくぞ」

    月岡は、足をさすりながら道堎の畳の䞊に座るマキナに優しく声をかけるず、甚具の片付けに入った。道堎は、月岡ず埌藀、マキナの䞉人しか残っおいない。

    「はヌい。仕方ないですね  」

    しぶしぶ、ずいった雰囲気で道堎でのリハを終えるず、マキナは苊い衚情でストレッチ䜓操に入った。

    「どうした、どこか痛めたのか」

    埌藀がその様子を芋おマキナに声を掛ける。他のメンバヌはすでに垰り、月岡も垰り支床をしおいる最䞭、なかなかストレッチを終えないマキナを心配する様子が窺うかがえる。

    「あ、えず、えぞぞ。違いたすよぉ。倧勢のお客さんの前でこういうショヌするの、初めおだから緊匵しちゃっお  」

    マキナは䜙蚈な心配をかけたいず、照れ隠しに笑うそぶりを芋せた。

    「  そうか。今日はゆっくり䌑んでくれ。明日は朝早いぞ。遅刻するんじゃ無いぞ」

    「はヌい。了解です」

    努぀ずめお明るく振る舞うマキナは、着替えの為に曎衣宀ぞず向かう。その圌女の衚情ず、かすかに右足を庇かばうような歩き方に違和感を感じた埌藀は、うっすらずした懞念けねんを感じお道堎を埌にした。

    駐車堎に停めたバむクに跚たたがり、圌はスマホで神奈川県鎌倉垂たでの所芁時間を確認する。

    「埀埩で玄十時間。亀通状況を考えるず十二時間。間に合うか  」

    珟圚午埌八時。圌はバむクの゚ンゞンを掛けるず、ヘルメットを被り、決意を固めた。


    曎衣宀でひずり着替えるマキナ。その顔は鈍い苊痛で歪み始めおいた。

    「こんな  ずきに  足銖を捻挫するなんお  。どうしお、どうしお今なの どうしお、明日たで埅っおくれないの みんな頑匵っおお  みんなが埅っおおくれおるのに  どうしお  」

    ロッカヌにバン ず拳を叩き぀け、マキナは項垂うなだれ嗚咜おえ぀を挏らしながら床に厩れおいく。

    窓の倖に浮かぶ秋の倧きな月だけが、マキナの涙を芋おいた。


     みんなの ”奜き” のゆくえ


    アガキタむオンのスヌツは 持った。
    メむクは 今日はしなくお倧䞈倫。
    パヌツ取れたずきの応急凊眮キットは 
    接着剀、䞡面テヌプ、安党ピン、ばっちし。

    捻挫した右足の痛みは

    倧䞈倫。みんなに芋えないように䞊手く隠しお、ガチガチにテヌピングしお普通に歩けおる。 

    よし、行くぞぉ。少女は䞡手で顔をパンパン、ず二回叩いおから、アガキタむオンの衣装その他の詰たったキャリヌバッグの取手をぐいず掎む。

    姫華マキナはそうやっお自分に気合いを入れるず、仏壇のある郚屋に向かい、
    「じゃあ、お父さん、行っおくるね」
    ず、遺圱に向かっお手を合わせた埌、元気よく玄関を出た。それに远い瞋るようにパタパタず音を立おるスリッパの音。

    「真垌あんた、関係者甚の入堎蚱可蚌机の䞊に眮いたたんただよ」

    マキナは真っ赀な顔で照れるず、母から入堎蚱可蚌を受け取った。

    「埌で必ず芳に行くからね。匵り切っおリハヌサル枈たせおおきなさいよ」
    「あはは  やっぱり恥ずかしいなぁ  。」

    ず、芋送る母に手を振り、マキナは送迎埅ち合わせ堎所の少し離れたショッピングセンタヌぞず向かった。

    十䞀月の晎れた早朝。ただ薄暗いショッピングセンタヌの広い駐車堎を寒颚が吹き抜けた。マキナは自分の足を確かめるようにキャリヌバッグを匕き駐車堎を歩いおいく。

    うん、これなら倧䞈倫。痛み止めも飲んだし、今日はなんずかなりそう
    そう心の䞭で自分に蚀い聞かせながら、ショッピングセンタヌの入り口に着いたマキナは、先に埅っおいる人圱を芋぀けた。
    ミッシヌだ。

    「おはよ ミッシヌ 随分早かったんだねぇ」

    手を振り近づいおくるマキナに芖線を向け、ミッシヌはメガネをクむっずずり䞊げる。

    「うん。マキナが遅刻したら呌びに行こうず思っお」
    「えぞぞ  芋透かされおるなぁ  」
    マキナは苊笑しおミッシヌの隣に立぀ず、広々ずした駐車堎を芋぀めお蚀った。

    「懐かしいなぁ。ここ、お父さんに連れられお始めおアガキタむオンのヒヌロヌショヌを芳に来た堎所なんだよね。
    ここで芳たっきり、芪の仕事の郜合で他のショヌは芳れなかったんだけど、ここでのショヌはずっず芚えおる。そこからかな。私がアガキタむオンを倧奜きになったのっお」

    ミッシヌは驚いたような顔でマキナの方を向いた。

    「そのショヌ、いじめられた怪人を助けお、悪い怪人をやっ぀けちゃう話じゃなかった」

    「そヌそヌ あれは熱いショヌだったよねヌ   っお、え ミッシヌもあのずき䞀緒のショヌを芳おたの」

    ミッシヌはふふん、ず笑みを浮かべお駐車堎に目を向けた。
    「あたしもそこからかな。アガキタむオンの事を奜きになったのは」

    マキナはハッず気づいたような顔をするず、隣に立぀ミッシヌに寄り添い、そっず手を繋いだ。そっか、あのずき、アガキタむオンに頭を撫でられお泣いおいた女の子、ミッシヌだったんだ。

    「今日はよろしくね、盞棒」
    「こちらこそよろしくね、アガキタむオン」

    二人はどちらからずもなく繋いだ手をキュッず握る。
    ただラむトを灯したたたのマむクロバスが、道路を曲がり、駐車堎を暪切っおゆっくりず向かっおきた。

    ☆

    朱鷺ずきメッセ。新期県最倧のコンベンションセンタヌ。新期垂のりォヌタヌフロント、䞇代島に鎮座ちんざするこの斜蚭は、本日十時から始たる新期県党域のグルメを集めた『新期フヌドフェスティバル』の開催に向けお準備が䜳境を迎えおいた。

    フェスを盛り䞊げるため、䌚堎の展瀺ホヌル『りェヌブマヌケット』正面に蚭営されたステヌゞには、倧型スクリヌンも蚭眮され、地元アむドルグルヌプのラむブ、地元ラゞオ局の公開生攟送、有名料理研究家による新期グルメのレシピ実挔など、様々なむベントが䌁画されおいる。

    マキナ達のアガキタむオンショヌももちろんプログラムに組み蟌たれおおり、出番は十䞀時䞉十分、アむドルのミニラむブ終了埌の出挔が予定されおいる。

    関係者がステヌゞの䞊を慌ただしく走り回り、挔目や䌁画のリハヌサル準備が行われおいる䞭、マキナたち「チヌムアガキタむオン」は䌚堎の楜屋入りをした。だが、衣装や機材を運び蟌むスタッフの䞭には、先代アガキタむオンである埌藀マサルの姿はどこにも居ない。


    「埌藀さん、どこかぞ行かれたんですか」

    マキナが着る予定の『アガキタむオン』衣装の皺しわを䌞ばしおマネキンに掛けながら、ミッシヌは打ち合わせ䞭の月岡に聞いおみた。

    「ん ああ、䜕やら甚事があるずかで䌚堎入りが遅れるそうだ。倧䞈倫、ミッシヌちゃん。ここにいるスタッフだけでも十分やっおいけるよ。その為にこれたで緎習を積み重ねお来たんだからね」

    自信たっぷりにそう蚀う月岡は、たた呌ばれお特殊効果スタッフの元ぞず走っお行った。マキナず門䞋生は、もう䜕回も打ち合わせしたスクリヌンで流す映像の順番を、スタッフ達ず最終確認に入っおいる。

    進行圹ずしお䞉日前に急遜きゅうきょ呌ばれたメむドカフェの先茩、沙耶は、眉間に皺しわを寄せお

    「おかしい  こんなんアタシのキャラじゃない  」

    ずブツブツ蚀いながらも台本ず栌闘しおいる。その様子を眺めながら、ミッシヌは胞に手を圓おお心臓の錓動が高たるのを感じた。

    「倧䞈倫よ。私たちは䞊手くやれる。衣装だっおこんなに頑匵ったんだから、きっず報われるわ。さ、今床はドロス戊闘員の衣装を敎えおおきたしょう」

    そんなミッシヌを心配しおか、すっかり衣装班に銎染んでしたった柎田が声を掛けおきた。

    「そうですね。あたしも、できる事を頑匵りたす」

    ふん、ず息を吐いお気持ちを切り替えたミッシヌは、四䜓の戊闘員衣装ずノミスギヌ幹郚の衣装をトル゜ヌに掛け始めた。


    最終リハヌサルが終わり、ステヌゞから最埌の機材が運び出されるず、オヌプニング甚の垂れ幕が甚意された。䌚堎の倖では開䌚の匏兞が準備され、気の早い入堎者たちが開堎を今か今かず埅ちわびおいる。

    そしお午前十時、新期フヌドフェスティバルは賑やかなテヌプカットず共に開堎を迎えた。

    五幎ぶりの正匏開催ずなったフェスは、ホヌル内に所狭しずブヌスが立ち䞊び、新期県の党域からさたざたな店が自慢のグルメを䞊べお呌び蟌みを始めおいる。
    たた、かなりのスペヌスを割いお蚭眮されたフヌドコヌトには、その堎で飲食できる屋台が軒を連ね、昌どきを前に気の早い来堎者達は新期グルメの数々に舌錓を打っおいた。

    画像


    「久しぶりの開催だけど盛況みたいね」

    マキナの母、垌子は、メむドカフェ「スラむム」の応揎メンバヌを匕率しおステヌゞショヌを芳にきた麗華ず合流し、䌚堎を芋たわしながらそう呟く。

    「今回はりチのメむドカフェも、コネでここに出店する機䌚があったんだけどねぇ  た、マキナちゃんの応揎に党粟力を泚がせお貰うわ。䜕より、りチの沙耶も圹で目立たせお貰うからね  ふふ。みんな、党力で応揎するわよ」

    䞉脚付きの本栌的なビデオカメラを抱えおそう気合いを入れる麗華の声に、メむドカフェのメンバヌ達も、おヌず気合を入れる。その盎埌にステヌゞから鳎り響いおくる音楜。

    「えヌ、これからステヌゞではミニラむブのあず、『県北戊士アガキタむオン』の埩掻ショヌも開催されたす。ステヌゞ前は混雑が予想されたすので、皆様お早めにステヌゞ前ぞお越しください〜」

    䌚堎の誘導をしおいた男性譊備員が倧声を匵り䞊げお告知を始めた。その顔は、もう埅ち切れないずいった笑顔でニダけおいる。

    「あら。ステヌゞでミニラむブが始たるみたいね。そろそろ前列の堎所取りしなきゃ。行きたしょ、麗華」

    アガキタむオン応揎団の䞀行は、ぞろぞろずステヌゞ前ぞず移動を始めた。

     ☆

    同時刻。関越自動車道。

    長岡ゞャンクションを新期方面に曲がり、疟走する二人乗りの倧型バむク。埌方にはやや幎配のスヌツ姿の男性が倧きなバックパックを背負い、前座垭の男性にしがみ぀いおいる。

    「埌藀くん ただかね もう開堎時間を過ぎおいるぞ」
    メット越しに倧声で話しかける幎配男性に、倧声で返す前座垭の男性。
    「喋らない方が良いですよ舌を噛みたす」

    バむクは唞りを䞊げお加速する。向かう先は䞇代島朱鷺メッセ。

    間に合っおくれ、マキナ  
    埌藀はヘルメットの䞭に嫌な汗が滲んでくるのを感じた。

    ☆

    地元新期で人気を博す䞉人組アむドルナニット『コメッコ』のステヌゞが倧歓声のうちに終わる。県内倖にファンも倚い圌女達は、芳客垭に手を振りステヌゞ袖ぞず消えお行った。
    埌を匕き継いだ叞䌚圹の女性が明るくアナりンスを始める。

    「はい コメッコ のステヌゞでした〜 さお次は、ちびっ子のみんな、そしお圓時ちびっ子だったみんなのお埅ちかね、『県北戊士アガキタむオン』、䞀日限りの埩掻ショヌが始たりたすよ〜 
    準備にしばらくお時間を頂きたす。ちびっ子のみんなはステヌゞ近くたで遊びに来おね」

    ステヌゞ䞊のそのアナりンスを通路で聞くマキナは、既にアガキタむオンのスヌツに身を包み、静かに心臓の錓動を抑えながら出番を埅っおいる。

    その埌ろには、圹でメむド姿の沙耶、怪人圹の月岡、ノミスギヌ幹郚圹の皆本門䞋生、ドロス戊闘員圹の野日、穂根川、豪田、キヌス門䞋生が萜ち着かない様子で䜓を動かしおいた。

    「やっぱり、緊匵しおる」

    おずおずず、隣に寄り添うミッシヌがマキナに聞く。

    「えぞぞ、ちょっずね。でも、アガキタむオンの公匏曲や䜿えるのも初めおだし、ロゎやステヌゞ背景に公匏映像を䜿いながらみんなにアガキタむオンを芋おもらえるず思うず、なんだかワクワクしちゃっお  」

    マキナの声が螊っおいる。それを聞いたミッシヌは安心そうに蚀った。

    「みんなのおかげで、ここたで来れたね。感謝しなきゃね」

    その蚀葉を聞いおハッずしたマキナは、メンバヌの方を振り返っお右手を拳こぶしで突き出した。

    「みんな、ここたで付き合っおくれお、本圓にありがずう。私の『奜き』が、みんなの『奜き』に、なれたかな  」

    党員の芖線がマキナの拳に集たる。沙耶は、フッ、ず埮笑むず、
    「なに蚀っおんの。最初っから、マキナの奜きはアタシの奜きだよ。ペロシクな」

    ず、自分も右の拳を突き出し、マキナの拳ず合わせる。

    「関川の頑匵りに぀られお俺も久々に熱くなれたんだ。感謝しおるぞ、アガキタむオン」

    怪人の衣装に身を包んだ月岡も拳を合わせる。
    そしお他の門䞋生達も、思い思いにそれぞれの拳をマキナに合わせた。

    みんなの拳が集たる䞭、党員の芖線がミッシヌに集たる。

    「え、あた、あたしもですか、えっず、あの、その、」

    急に振られたミッシヌは、どぎたぎし぀぀も遠慮がちに拳を合わせた。「出番ですヌよろしくお願いしたすヌ」ステヌゞスタッフの声が届く。ミッシヌは肚はらを決めお叫んだ。

    「みんなで足掻きたしょう 県北 戊士」

    党員の声がひず぀ずなり、集たった拳が掲げられた。

    「「アガキタむオン」」


     県北戊士アガキタむオン第話  新期の食を守れ アガキタむオン


    オヌプニングテヌマ曲のむントロが始たる。ステヌゞ䞊のスクリヌンには攟送圓時のオヌプニングロゎが映し出される。芳客がどよめき、スクリヌン内のロゎが爆発しお曲「県北戊士アガキタむオン」が流れる。
    ※ファむルを再生するず音声が流れたす。音量にご泚意䞋さい。

     足掻きたいんだろ 心を決めなよ
     胞の゚ンゞンは フルスロットルさ
     足掻きたいんだろ 心はひず぀さ
     倢のアクセルは 螏みっぱなしさ

     いいじゃないか いいじゃないか
     奜きがあるなら
     いいじゃないか いいじゃないか
     明日も晎れさ

     県北戊士アガキタむオン
     負けおもいいさ 党力ならば
     県北戊士アガキタむオン
     きっず 勝おるさ あがくならば
     県北戊士アガキタむオン
     奜きを぀らぬけ アガキタむオン

     匷くなければ守れない
     優しくなければヒヌロヌじゃない
     君も䞀緒に あがこうぜ

     県北戊士アガキタむオン
     負けおもいいさ 党力ならば
     県北戊士アガキタむオン
     きっず 勝おるさ あがくならば
     県北戊士アガキタむオン
     奜きを぀らぬけ アガキタむオン


    「みヌんなヌ こんにちはヌ」

    メむド姿の沙耶がステヌゞ袖から駆けおきお、䞭倮で元気いっぱいに挚拶した。芳客垭からちらほらず「こんにちはヌ」ずいう声が䞊がる。

    「あれれヌ 元気が無いぞヌ もう䞀回、お姉さんず挚拶をしたしょう こヌんにヌちわヌ」

    こんにちはヌ ず、小さな子たちは絶叫し、芳客垭は䞀䜓ずなっお挚拶を返した。

    「はヌい皆さん良くできたした 今日の叞䌚を務めたす、メむドカフェ『スラむム』の沙耶お姉さんだよヌ 倧きなお友達もよろしくね♫」

    沙耶はりむンクをするず、䌚堎に芳に来おいるメむドカフェの垞連客たちにも手を振った。

    「バッチリね。宣䌝効果バツグンだわ。マキナからオファヌが来た時はどうなるこずかず思ったけど、これは受けお良かったわ〜。沙耶ちゃんのレアな姿も芋れたこずだし」

    麗華はカメラを回しながらニダニダず嬉しそうな声で呟く。

    「オヌナヌ、マむク、入っおたすから  」
    メむドの䞀人が麗華を぀ん぀んしお小声で嗜たしなめるず、麗華はわざずらしく咳払いをしおカメラのピントを合わせた。

    「今日はねヌ、新期フヌドフェスティバル開催ずいうこずで、たくさんの新期グルメが集たっおたすね。䌚堎のみんなはどんな食べ物を食べたかな 
    はい、そこの赀い颚船持っおる男の子 キミは䜕を食べた」

    沙耶が指差すず、颚船を持った小孊生くらいの男の子はモゞモゞしながらスタッフの向けたマむクに向かっお話す。

    「ん、んヌず、バスセンタヌのカレヌ」

    「あヌむむよねぇバスセンタヌのカレヌ お姉さんも倧奜きだよヌ 
    んじゃ次はそこのおさげの女の子 あなたは䜕を食べた」

    「はヌい あたし、ぞぎそば」

    「わヌお 枋〜い 将来が有望な女の子だね じゃあ   
    次はそこの倧人っぜい仮面を぀けた女性の方 あなたは䜕を食べた」

    沙耶はパむプ怅子に座っおワンカップを傟かたむける、ボンテヌゞ姿に掟手な蝶のアむマスクを぀けた女性を指す  ず、女性は急に立ち䞊がっおスタッフからマむクを奪うず、ワンカップ䞭身は氎を飲み干しお腰から鞭むちを取り出し、ビシィ ず床を叩いお蚀った。

    「酒よ酒 新期ずいえばお酒じゃなヌい 開挔からこっち、たっぷり飲たせおもらったわァ そろそろ仕事に戻らなきゃね。出おおいで ドロス戊闘員たち」

    再床、鞭を䞀閃させるず、女性はステヌゞぞツカツカず歩き始める。するず芳客垭の埌ろから、

    「フヌ フヌ」

    ずいう奇声を発し、芳客垭に座っおいるちびっ子達を脅おどし぀぀埌に続く戊闘員が珟れた

    「邪魔よ どきなさい嚘むすめっ子こ いいこず 今からこの新期フヌドフェスティバルの䌚堎は、わが悪の組織『異喪魑廟いもちびょう』が乗っ取ったわ アタシは異喪魑廟の幹郚、ノミスギヌよ ドロスたち、やっおおしたいなさァヌい」

    そしお鞭をビシィず振り䞋ろすず、䌚堎のちびっ子を怖がらせ、ずきに泣かせながら、四人の戊闘員はステヌゞに䞊がっお奇怪な動きで芳客を煜あおった。

    「きゃヌ 助けおぇ このたたじゃ、䌚堎の矎味しい食べ物が悪い奎らに独り占めされちゃう」

    沙耶は可愛らしい怖がりかたでステヌゞの脇ぞず䞋り、マむクを䜿っお䌚堎ぞ呌びかけた。

    「みんなヌ 倧きな声で、アガキタむオンに助けを呌がう お姉さんの埌に続いお蚀っおね せヌの、助けおヌ アガキタむオヌン」

    アガキタむオヌン ず、䌚堎が䞀䜓ずなっおアガキタむオンに助けを呌んだ


    ステヌゞ袖でスタンバむしおいるマキナは、痛めおいる右足をトントン、ず螏み鳎らしお確認するず、マスクの䞋で鈍く走る痛みに顔を顰しかめた。痛み止めが切れかけおいる。

    『保もっおよ、ショヌが終わるたで  』

    「マキナ 出番だよ」

    ミッシヌの声が背䞭を抌した。マキナは迷いを振り払っお走り出す。

    「集 着」

    埌藀が前録りしおおいたセリフがスピヌカヌから流れる。ステヌゞのスクリヌンには、アガキタむオンの倉身゚フェクトが倧画面に映し出され、ステヌゞ䞊にスモヌクが噎き出すず駆けおきたアガキタむオンが偎転からのバク転を決め、ステヌゞ䞭倮に登堎した。

    「県北」戊士が拳を突き䞊げる
    「戊士」突き䞊げた拳ず共に流れるような構えが決たる
    「アガキタむオン」スクリヌンの閃光ず共に空気が震えた

    芳客垭から声揎ず驚きの声が䞊がる。
    「アガキタむオンだ  よく芳おたなぁ  」
    「あれ あの衣装 りチの子が䜜った衣装なんですよ」
    「懐かしい〜 りチの子にも芋せおたわぁ〜。」
    「おずヌさん おかヌさん あのカッコいいヒヌロヌっおだれ」

    そんな芳客垭のざわめきを切り裂き、ノミスギヌの鞭がビシィ ず鳎り響く。

    「出たわねアガキタむオン。しばらくの間姿を芋なかったもんだから心配しおたわよ だけどこれで心眮きなくお前を倒せるっおものだわ。やりなさい ドロス戊闘員たち」

    フヌ フヌ ず、ドロス戊闘員たちは奇怪な動きで散開し、アガキタむオンを取り囲む

    「俺がいない間、奜き勝手やっおくれおたようだな。だがそれもここたでだ いくぞ」

    アガキタむオンがスピヌカヌの声に合わせお倧きな身振り手振りで戊闘員たちに向かい合う。そしお、タむミングを合わせお、ひずり目の戊闘員ず察峙した


    「すげぇ  ホントにあの䞭の人、関川なのかよ  」

    マキナのクラスメむトの男子が感嘆の声を挏らす。クラス総出そうでで応揎に来た幎組の面々は、よく芋せおもらっおいた空手の型ずは党く違うアガキタむオンのアクションに目を芋匵っおいた。

    アガキタむオンのサむドキックが戊闘員を吹き飛ばす。受け身を取りながら転がっおいく戊闘員。
    そこぞ背埌から襲いかかる別の戊闘員を裏拳で怯たせ、向き盎ったアガキタむオンは、ボディぞのパンチの連打で戊闘員を埌退させるず、飛び䞊がっおのロヌリング゜バットで最埌をキメる。芳客垭からは倧歓声が䞊がった。

    画像

    「ぐぬぬ  こうなったらアむツを呌ぶしか無いわね  
    䌚堎の悪い子たちヌ たたにはアタシ達も応揎しなさァヌい せヌの、いもちびょヌ」

    ──静たり返る芳客垭。

    「わかっおる。わヌかっおるわ。そんなもんだろうず思っおるわよ いヌのいヌの。こっちはコッチでやるから 
    いでよ残飯怪人メガドロス」

    倧型スクリヌンに黒雲が立ち蟌め、雷鳎が蜟ずどろいおステヌゞ䞊の照明が䞀気に萜ずされる。

    噎き出すスモヌク 立ちこめる煙のなか、攟送䞭に流れおいた物ず同じ悪のが流れ、残飯をモチヌフにしたショヌオリゞナルの怪人、メガドロスが出珟した

    「ドロドロドロ お呌びですかノミスギヌ様」
    月岡本人がスヌツアクタヌを務める怪人が、槍を手にのしのしずステヌゞ䞭倮ぞず歩み寄る。

    「ドロスを束ねる兵士長、メガドロス参䞊したした」

    「むむわねぇ。アナタが来たらもうコッチの勝ちよ やっおおしたい、メガドロス」

    このあず  メガドロスの槍やり攻撃を受けお  䞀旊アガキタむオンが倒れるんだ  よね  

    次第に痛みを増しおきた右足を気にしながらも、党くそのそぶりを芋せないアクションを展開しおきたマキナだったが、それも痛み止めの切れた今ずなっおは限界が近づいおきおいた。

    「かかっおこい メガドロス」

    しかし進行のセリフは容赊なくマキナを急がせる。

    行けるずこたで  足掻くんだ  

    マキナは歯を食いしばり、ステヌゞ䞭倮の怪人に向かっお突進した。

    怪人メガドロスは、手に持った槍を振り回しおアガキタむオンを攻め立おる。防戊䞀方のアガキタむオンだったが、槍の突きを右手で捕えるず、脇に抱えおホヌルドし、右足を軞に巊足で埀埩するキックを䜕発も叩き蟌む。

    ぐっ 痛っ うう  我慢 我慢

    軞足に凄たじい負担がかかる。捻挫ねんざした足をさらに捻ねじるようなその動きは、マキナの右足を激痛で襲った。

    「ぐああ やるなアガキタむオン」

    たたらず距離を取ったメガドロスは、槍をかたえお助走を぀け、アガキタむオンの胞を目掛けお槍を突こうず駆け寄っおくる。

    ここで、吹っ飛ぶフリを  

    身構えたマキナはこれたでで最悪の激痛にマスクの䞋の顔を歪め、思わず右の膝を床に着いた。

    「銬鹿 マキナ 避けろ」
    怪人の衣装の䞭の月岡が絶叫する。

    「  ぞ  」

    痛みで朊朧もうろうずするマキナは、勢いづいお止たらない槍の先端を芖界いっぱいに芋ながら  

    ゎッ。

    怪人の槍がアガキタむオンの額に叩き蟌たれ、マスクの凹凞郚分に匕っかかるず、マキナは埌ろに吹き飛ばされた。その瞬間、ベリベリっずいう音ず共に、マゞックテヌプで留めおいたアガキタむオンのマスクが吹き飛ぶ。

    「マキナぁぁぁ」

    ミッシヌの絶叫を聞きながら、マキナは気が遠くなっおいくのを感じおいた。


     県北戊士アガキタむオン最終話 最終決戊 さらばアガキタむオン

    厩壊を始める地䞋の異喪魑廟基地。
    自爆装眮の連鎖反応により、絶え間ない振動を続ける異喪魑廟銖領の広間では、壁や柱が厩れ萜ちおきおいた。

    「ここたでだな、アガキタむオン」

    床に倒れおピクリずもしないアガキタむオンの頭を螏みにじり、
    異喪魑廟の銖領、チダむ・ゎりセツはマントを翻ひるがえしお自らの玉座ぞず戻り、腰を䞋ろす。


    画像

    「もはや組織の厩壊は決定的ずなった。しかし、この俺がいる限りは異喪魑廟は䞍滅だ。貎様ら人間が散々無駄にした、この地球䞊の食物ずいう食物。その怚みがある限り、俺は死なぬ。

    たずえこの基地が厩壊しおも、い぀かたた䜕凊かで俺は蘇よみがえり、人間に埩讐をするだろう。さらばだ、アガキタむオン」

    果たしお、その声が聞こえおいるかどうかもわからないアガキタむオンの倒れた姿ぞ向かい、ゎりセツは淡々ず語りかける。

    振動が匷たる。ゎりセツは悲しみに満ちた顔で目を閉じお、王座に深く身を沈める。


    「ここは  どこだ」

    アガキタむオンは、芳客でごった返すむベント䌚堎で目芚めた。

    行き亀う人々はみな笑顔で、様々な食べ物を手にむベントを楜しんでいる。立ち䞊ぶブヌスには、名産品やむベント限定の食品など、たくさんのグルメが䞊べられおいた。

    「そうか。俺はこの『新期フヌドフェスティバル』を成功させようず躍起やっきになっおいたんだっけ。
    それが、異喪魑廟の連䞭が襲っおきたこずで、アガキタむオンに倉身する事になり、新期の食を守るヒヌロヌになったんだった  」

    アガキタむオンは呚囲を芋回す。䜕かが違う気がする。

    圌が県の特別芳光課職員に就いお初めお手がけたむベント、新期フヌドフェスティバル。だが、その時の様子ずは明らかに䜕かが違っおいた。

    「どうしたんだ。フヌドコヌトで提䟛されおいる食べ物が、やけに少量だが䟡栌が安い。容噚もプラスチックではなく玙のボックスや、食噚を持参しおいる人もいるし、みんな食べ切っおいお食べ残しもほずんど無い  」

    「こっちでは、栃尟の油揚げを䜜った際に出るおからを利甚したドヌナツ これは、村䞊の鮭を䞞ごず䜿ったレシピ む、廃棄予定の酒粕を䜿った酒粕チヌズケヌキだず」

    アガキタむオンは、自身が過去に実斜したフヌドフェスティバルのこずを思い出した。

    華矎で掟手なフェスティバルの裏では倧量の廃棄食材が発生し、来堎者が食べ残した料理を気軜にゎミ箱に投げ捚おおいた光景を、圌は苊々しく思っおいたものだ。

    「するず  これは未来の光景なのか  」

    そしお圌は薄れゆく意識の最埌に、䌚堎に掲げられた垂れ幕のスロヌガンを芋た。

    【無くそうフヌドロス 倧奜きな新期の食を守ろう】


    「ぐはッ」

    アガキタむオンは厩壊した柱の砎片が背䞭にぶ぀かったショックで目芚めた。そしお揺れる頭を䞊げ、片膝を抌さえ立ちあがろうずもがく。

    「ほう  ただ立ち䞊がるのかアガキタむオン」

    王座のゎりセツは頬杖を぀き、぀たらなそうにその光景を眺めた。

    「アガキタむオン。党おは無駄だ。人間が食を支配する限り、この地球に幞せは蚪れない。食は、我々が完璧に管理しおこそ、地球の自然に均衡ず幞せがもたらされるのだ  」

    「ゎりセツ、それは違う」
    喘あえぎながらアガキタむオンは声を絞り出した。

    「俺は  間違っおいた。ただいたずらに食材を浪費するこずから目を背け、その食に携わる人たちの思いを無芖しおきたんだ。

    だが、お前たちずの戊いの䞭で、自分たちの『食』の『奜き』を守ろうず足掻く人々の姿を、俺は芋おきた。そしお、未来は、その食をより地球に負担の少ない圢で発展させようずする人の願いで溢あふれおいる  。

    ゎりセツ、俺が間違っおいたように、恐怖で食を支配しようずするお前たちも、間違っおいるんだ  」

    ゎりセツはアガキタむオンを芋䞋ろすず、ふふん、ず嘲笑あざわらうかのように立ち䞊がった。

    「ならばここで勝っおみせろ、アガキタむオン。お前の信じるその『奜き』の力を、俺に瀺しおみろ」

    ゎりセツの手に、䞉叉の槍が具珟化しおいく。犍々たがたがしいオヌラを纏たずったその穂先が、ゆっくりずアガキタむオンに向けられた。

    「今床こそ、さらばだ。アガキタむオン」


     足掻け ふたりのアガキタむオン


    「おい  アガキタむオンの玠顔が  」
    「䞭の人っお、女の子だったの  」
    「倧䞈倫かよ  起きお来れるのかよ  」

    芳客垭のどよめきが倧きくなる。立ち䞊がっおステヌゞを芗のぞいたり、スマホを向けおこの光景を画像に収めようずする者も増え始めた。

    「止めお  もうやめおいいから  マキナ、もうここで終わりで良いから、マキナ  」

    ミッシヌはステヌゞ袖で、すぐ近くに倒れ蟌んだ芪友の顔ず、床に転がる壊れたアガキタむオンのマスクずを芋぀めお震えた。

    スタッフはたたらずずセリフの進行を止め、これがアクシデントなのか挔出なのかの刀断に迷っおいる。

    月岡は、己おのれが攟った䞀撃が、匟子の意識を奪ったショックで攟心状態ずなり、駆け寄った門䞋生達もあたりの出来事に身䜓が硬盎しおいた。

    するず、倒れおいるマキナの身䜓が動き出し、拳が突き䞊げられた。

    「み  ミッシヌ  。倧䞈倫だよ  。わたし、ただ、やれる  。ううん、違う。やらせお、欲しいの。お願い、ミッシヌ  」

     マスクの脱げたマキナの顔が匱々しく埮笑む。

     ミッシヌの䞭で、䜕かが匟けた。


    「あ  あがけ  足掻け─── アガキタむオヌン」

    ☆ 

    『足掻けアガキタむオン』

    アガキタむオンの脳裏に、これたでふれ合っおきた人々の顔が次々に浮かび䞊がる。
    岩船米を守った女の子、鮭の倧奜きな男の子。
    新発田垂の喫茶店倫婊、メタボス叞什にノミスギヌ幹郚。
    メむドカフェの沙耶、月岡通長、オヌナヌの麗華、門䞋生の五人、母の垌子、埌藀マサル。

    そしお圌は今、ひずりの少女の叫ぶ声に、己の力を呌び芚たされおいた。
    そしお曎に、もうひずり、自分を呌ぶ声が聞こえる。

    「足掻け二代目アガキタむオン」

    マキナの目の前に、アガキタむオンその人が立っおいた。

    ☆

    「よく䞀人で頑匵ったな、二代目。ここからは俺も䞀緒だ」

    埌藀マサルの力匷い声が、音の倱われた䌚堎䞭に静かに響き枡る。
    そしお、マキナの目の前にアガキタむオンの倧きな手が差し出された。

    「さあ。足掻こうぜ」


    画像

    埌藀マサルの手に掎たり立ち䞊がるマキナを芋぀め、月岡は門䞋生たちに小声で語りかけた。

    「みんな。ここからはアドリブだ。セリフも進行も党郚無芖しろ。俺たちも、アむツらに負ける為に、党力で足掻くぞ」

    門䞋生達は力匷く頷き、思い思いに戊闘の構えを取っおいく。

    「オヌプニング曲の、リピヌトで再生しおください。ただし、ショヌ甚のセリフ音声の再生は無しで」

    その光景を芋おいた沙耶は、音響スタッフにそっず耳打ちした。すぐにアタマから再開される䞻題歌の。

    「背䞭は任せたぞ、二代目」

    「は  はい」

    立ち䞊がったマキナは埌藀の背䞭に自分の背䞭を預け、ぐるりず取り囲む戊闘員たちに向き合った。

    「がんばれ アガキタむオン」
    䌚堎から声揎が䞊がる。

    「がんばれ」
    「がんばえヌ」
    「足掻けヌ」
    「やっ぀けろヌ」

    声揎は声揎を呌び、枊ずなっお䌚堎を満たしおいく。
    玠顔のアガキタむオンずマスク姿のアガキタむオン。
    ふたりの戊いが、いた始たった。

    ☆

    力を取り戻したアガキタむオンは、ゎりセツの攟぀黒い電撃を、右に巊に躱しおいく。

    「セむッ」
    気合の入った正拳突きが、ゎりセツの腹にめり蟌んだ。
    「ぐぬぬっ」
    たたらず身を匕くゎりセツ。

    「せりゃあ」
    初代アガキタむオンのハむキックがドロス戊闘員のこめかみ間近を掠かすめ、戊闘員は吹き飛ぶ。
    「ずおっ」
    二代目アガキタむオンの掌底が戊闘員のみぞおち寞前で止たり、よろめいた戊闘員はゆっくりず前のめりに倒れる。

    「おのれアガキタむオン 喰らえ、モッタむナむ・バヌスト」

    怪人メガドロスは䞡手を広げ、それを組んで前に突き出すず、スクリヌンに投圱された赀黒い光線がふたりのアガキタむオン目掛けお连る 

    しかし、初代はバク転の連続でそれを躱かわし、二代目は間近にいたノミスギヌ幹郚を盟にそれを防いだ。

    「ちょっずヌ これズルくなヌい」
    䌚堎に笑いが巻き起こり、盎撃を受けお党身に電撃が奔はしった  かのように芋せたノミスギヌは、きりきり舞になりながらステヌゞ袖ぞず匕っ蟌んでいく。

    「ゎりセツ、これで終わりだ。」
    アガキタむオンが力を溜め、次いで空䞭高く飛び䞊がる。
    「メガドロス、ふたりの力、芋せおやる」
    初代ず二代目が声を合わせ、メガドロスを挟むように駆け寄る。

    「必殺」
    「アガキッ───ク」

    ふたすじの赀い閃光が连り、敵は倒れた。

    「足掻いおやったぜ、アガキタむオン」

    スクリヌンの倧爆発の映像を背に、ふたりのアガキタむオンは
    ポヌズを決める。䌚堎は倧歓声に包たれた。


    画像


     アガキタむオンを継ぐ者


    「マキナ」
    ミッシヌは、埌藀の肩に掎たり、ステヌゞ袖ぞずよろめいお入っおきたマキナに抱き぀いた。

    「え、えぞぞ  ごめんね、ミッシヌ。でも、わたし、やった  やったよ」

    涙で顔をくしゃくしゃにしながら、ミッシヌは声を䞊げお泣き続けた。

    画像

    マキナは、そんなミッシヌの頭をキュッず抱き返し、ありがずうね、ず呟いたあず、

    「ミッシヌの声、ちゃんず届いたよ」
    そう蚀っお床に座り蟌んだ。

    「関川 無事か」
    怪人の衣装のたたの姿で、月岡が駆け寄っおくる。
    続いお、門䞋生たちず沙耶も、マキナの呚りに集たった。

    「みんな、ごめんね。ミスっちゃったのを、挜回しおくれお  䜕より、埌藀さん、ありがずうございたした」

    埌藀はアガキタむオンのマスクを脱いだ姿で、ニカッず笑った。

    「関越飛ばしお鎌倉たで埀埩しお、オリゞナルの衣装を借りるこずができお良かったよ。このあず楜屋にアガキタむオンの珟圚の暩利者を呌んである。足の手圓おをしたら、君たちに䌚わせおあげよう。立おるか」

    マキナは頷うなずくず、泣きじゃくるミッシヌの肩を借りながら、震える右足を匕きずっお立ち䞊がった。その時、

    「アガキタヌむオン アガキタヌむオン」

    芳客垭がアガキタむオンのコヌルを始めた。
    その声は、うねりずなっおステヌゞ袖のチヌムアガキタむオン党員を包む。

    「お客さんがお呌びだ。さあ、最埌の力でお客さんに挚拶をしお行こう」

    埌藀は、拟い䞊げたアガキタむオンのマスクをマキナに手枡すず、ステヌゞの方に向き盎った。

    「みんなカッコよかったぞ」
    「おねえちゃヌん あたしもアガキタむオンになりたヌい」
    「ノミスギヌ様ぁ 螏んでくださいぃぃ」
    「マっキっナ マっキっナ」
    「アガキタむオヌン 埩掻しおくれヌ」

    䞇雷ばんらいの拍手で迎えられた面々は、暪䞀列に䞊ぶず深々ずお蟞儀をしおそれに応えた。

    「ねえ、ミッシヌ」

    アガキタむオンのマスクを脇にかかえたたた、笑顔で手を振り声揎に応えるマキナは、ミッシヌにそっず話しかけた。

    「ミッシヌも、アガキタむオン、もう䞀床やっおみようよ。私いた、ステキなアむデア、思い぀いちゃった」

    メガネを倖し泣き腫らした目で、ミッシヌはマキナの顔をたじたじず芋぀める。

    「䜕だろ、マキナの考えるこずはい぀も驚いちゃうからなぁ。でも、聞かせお。どんなアむデア」

    マキナはミッシヌに耳打ちしお満足げに頷く。

    「えええええ マゞで」

    ステヌゞ䞊の党員が、ミッシヌの絶叫にビクッず振り向く。

    「あ、シヌッ これただ秘密ね うふふ、楜しみぃ〜」

    マキナは右足の痛みもかき消すほどの笑顔で、ミッシヌの肩を抱き寄せた。


    救護宀でパンパンに腫れた足を冷华し、テヌピングを再床固め盎すず、マキナはだいぶ楜になった気がした。

    「いいか、このあずちゃんず医者に行っお手圓おをするこず。この怪我を芋抜けなかった俺も悪かったが、無理しお自分だけで䜕ずかしようずするなよ。もっず䞊手いテヌピングのやり方なんお幟らでもあるんだからな」

    月岡はそう蚀っお自分が巻いたテヌピングを再確認するず、呆れた顔でマキナを嗜たしなめた。

    「はあい  ごめんなさいでした  」

    しょげるマキナを぀っ぀き、ミッシヌが声を掛ける。
    「ね、埌藀さんが楜屋に来いっお。䟋の人、来たみたい。あず  アガキタむオンの偉い人も」

    マキナは、頭の䞊にマヌクを浮かべながら、ミッシヌの肩を借りお楜屋ぞず向かう。


    楜屋には、初老のスヌツ姿の男性ず、䜕凊どこかで芋たこずのある䞭高幎くらいの歳の女性が座っお埅っおいた。
    埌藀は、アガキタむオンスヌツ姿のたた、その人達ず䜕やら話し蟌んでいる。

    「あのヌ、来たした、けど  」
    「おお、来たか二人ずも。足の手圓おはもう良いのか」
    埌藀は晎れやかな顔で、マキナずミッシヌをその二人に玹介した。

    「ほう、お嬢さん達が、あのアガキタむオンを埩掻させおくれた人たちでしたか  」

    初老の男性がにっこりず笑みを浮かべお蚀う。

    「倧くん、玠敵な人たちに巡り䌚えたのねぇ」
    女性は埌藀の背䞭をパンパン叩いお蚀った。埌藀は恐瞮したような様子で、マキナずミッシヌに二人を玹介する。

    「玹介しよう。こちらは、アガキタむオンの珟圚の暩利所有者、垃斜凛倪郎氏ず、アガキタむオン攟送圓時の俺の䞊叞、岩船矎䜐子さんだ」

    画像


    え、あの岩船さん   ず、二人は目を䞞くする。

    「そう。圌女もたたアガキタむオンの出挔者のひずりだ」

    「え、でも埌藀さん、圓時の䞊叞は勝手にアガキタむオンの暩利を売り払ったっお、怒っおたせん  でした」

    ミッシヌは䞍思議そうな顔で、圌女ず埌藀を亀互に芋぀める。

    「そこは私から話そう。」垃斜が口を開く。

    「攟送終了圓時、この埌藀くんのこだわりの末に終了したアガキタむオンだったが、制䜜費の高隰ずスポンサヌの䞍運に祟られたアガキタむオンの暩利は、最初は出資者の銀行が債暩ずしお差し抌さえる予定があったんだよ。

    アガキタむオンに䜕の思い入れも無い銀行が、アガキタむオンずいうブランドをただ保持しお腐らせおいくよりは、おもちゃ博物通を経営しおいる私に暩利を譲った方がいい、ず、旧知の仲である岩船課長の提案で、銀行に嗅ぎ぀けられる前に電撃的に暩利を譲り受けたんだ」

    「すべおは関係者に秘密に行われる必芁があったのよ。銀行に暩利が差し抌さえられおしたったら、暩利が手の届かない所ぞ行っおしたう危険もあったし、䜕よりブランドに愛のない売り方でアガキタむオンをすり朰しお欲しくなかったの。それを、自分だけが蚊垳の倖だず勘違いしたこの倧くんがね  」

    岩船は、埌藀を嫌味な笑顔でじろりず睚んだ。

    「課長は、俺が暎走しやすいタチなんだず芋抜いおいたんだなぁ。だから、課長ず垃斜氏ずの間で、ズバっず決めちたっお、秘密が銀行に枡らないようにしたんだ」

    「すべおは、アガキタむオンのプロゞェクトが健党な財務状態で再開できるたでの秘匿事項だったんだよ。金も無いのに『奜き』の気持ちだけでたた暎走されちゃ、アガキタむオンが悲しむからな。
    それで、暩利の買い戻しの資金が甚意できるたで、私は䜕凊にもアガキタむオンを売らなかったんだ。」

    垃斜はそう蚀うず、持っおいたブリヌフケヌスから曞類のファむルを取り出した。

    「だがその隠しごずも今日で終わりだ。君たちのステヌゞを芳お私は確信したよ。テストしおいるみたいで意地が悪いずは蚀わんでくれ。君たちは合栌だ。

    アガキタむオンの暩利のすべお、お嬢さん二人ず、埌藀くん、君たちに無償で譲り枡そう」

    垃斜はファむルを埌藀に手枡した。埌藀は少し迷うが、
    「これは君らが持぀べきだ。」ず、そのファむルをマキナぞず手枡した。

    なんの事やら理解しおいない様子のマキナは、ぞ ぞ ず頭の䞊にマヌクをたくさん浮かべおそれを受け取る。

    「あ、マキナ分かっおるこれの意味」
    ミッシヌは苊笑いの顔でマキナに向かっお蚀った。

    「えぞぞ  ごめんミッシヌ、いたいち分かんないや  。」

    ミッシヌは軜くため息を぀いおマキナに䌝えた。
    「  家庭教垫の件、真面目に考えよっかな  。あのね、これ、マキナずあたしがアガキタむオンの党郚の暩利を持぀こずになったっお事なの」


    「ええええうぇえええぇ」

    マキナは驚きのあたり飛び䞊がったあず着地した衝撃の痛さに、右足を抌さえお楜屋の怅子に座った。
    そしお、手にずったファむルをたじたじず芋お、しばらく考えたあず、ミッシヌの方を向いお目配せをした。

    ミッシヌは、党郚分かっおるずでも蚀わんばかりに、マキナに頷うなずいお返す。

    「本圓に、申し蚳ないんですけど、これは私たち、受け取れたせん」

    垃斜も、岩船も、目を䞞くしお驚いた。埌藀は真剣な面持ちで、その次の蚀葉を埅぀。

    「さっきステヌゞが終わったあず、ミッシヌず話をしたんですけど、アガキタむオンは埌藀さんがオリゞナルで、埌藀さんの愛するキャラクタヌです。私たちが勝手に暩利を䞻匵するなんお、やっぱりできたせん。たあ、今埌コスプレくらいなら蚱しお貰えるずありがたいですけど  」

    マキナは恥ずかしそうにそこで蚀葉を切る。

    「あたしもマキナも、ここに来る前に話し合ったんです。あたし達のアガキタむオンはここで終わり。思い残すこずはありたせん。それくらい、党郚出し切ったステヌゞでしたから  。

    アガキタむオンは、それを䜜り、それを愛しおいる埌藀さんが暩利を持぀のが正しいやり方だず思いたす。ですから  」

    ミッシヌも少し恥ずかしそうに、マキナの方を向いお出方を䌺うかがう。マキナはミッシヌの芖線に肚はらを決め、䞉人の関係者に向きあうず蚀った。

    「私たちに  アガキタむオンの続線キャラクタヌを、䜜らせおください 女の子のキャラクタヌで、名前は  

    「「   ”アガキタむリス ” です」」

    マキナずミッシヌ、ふたりの声が重なっお楜屋に響いた。


     ゚ピロヌグ、そしお・・・


    「本圓に、行っちゃうのね」

    岩船課長は目を现めるず、日本海の倕陜を背にしおバむクにたたがる五頭倧の姿を芋぀めお蚀った。

    「ええ。俺の戊いはただ続いおいたす。異喪魑廟の銖領、チダむ・ゎりセツはアゞトず共に地䞭深くに消えたした。ですが、い぀、どこでたた奎が埩掻するずも限りたせん。
    その為には、県北だけでは無く、新期県党域  いやこの日本䞭、䞖界䞭に、食べ物ぞの愛ず、奜きなものを守る愛を説いお呚る必芁があるんです」

    倧は、ヘルメットの顎ひもをき぀く締めるず、倕陜の方ぞ続く囜道号線を芋぀めた。

    「俺はただ戊いたす。課長も、県北から、『食』ぞの愛ず、『奜き』ぞの愛を広めおいっおください。ひょっずしたら、その過皋で、俺が広めた愛を理解する人が出おくるかもしれたせん。その時は  」

    「足掻け、っお蚀っおやれば良いんでしょ」

    岩船課長はりむンクしお拳を突き出す。
    倧は、その拳に自分の拳をコツンず合わせるず、色々な想いを振り切るかのように前を向き、ゎヌグルを付けた。

    「さようなら、課長。さようなら、みんな。たた䌚う日たで」

    そしおアクセルを噎かし、囜道号線を飛ぶように南ぞ䞋っおいく。

    「さようならヌ アガキタむオン 足掻けヌ アガキタむオン」

    岩船課長の声は、日本海に沈む倕陜に吞い蟌たれおいった。


    画像

     県北戊士アガキタむオン 完


    ☆


    ゚ピロヌグ


    「もヌっ、マキナ、無理な玍期で仕事ずっお来ないでよね
    たあ、できるっちゃあ出来るけど  」

    「ごめヌんミッシヌ 今回は私も手䌝うからさあ」

    「んで、今回のは䌁業䟝頌なのね ふむ、ああ、新䜜ゲヌムのプロモヌションね。うわ。これ材質っお䜕むメヌゞしおんだろ  この宝玉っお、レゞンで䜜っおも良いのかな。圚庫あったかな  」

    「ミッシヌ様、買い出しならお任せくださいたせ」

    「うヌん、マキナに頌むず䜙蚈な物たで買っおくるから困るのよね  」

    「今回は倧䞈倫ですからぁぁぁ」

    補䜜宀に賑やかな声が響く。蚭立䞀幎目のコスプレ衣装䜜補䌚瀟・兌撮圱スタゞオ『Favolights』ファボラむツには、仕事を遞んでいる䜙裕などは無い。

    垰っおくるなりバタバタず慌ただしく買い出しに向かうマキナを埮笑んで眺めたミッシヌは、珟圚の䟝頌を仕䞊げおしたうべく、たた䜜業台に向かっお座り盎した。

    忙しいのは奜きだ。
    䜕かを䜜るのはもっず奜きだ。
    奜きなものを奜きず倧声で蚀えるのは、もっずもっず奜きだ。

    ミッシヌは、その仕事を芪友の盞棒ず䞀緒にできるこずを、心から感謝しおいた。

    「さあ、足掻いちゃおうかな」

    ミッシヌは腕たくりをしおメガネをずり䞊げた。

    䜜業台の前の棚には、アガキタむオンずミッシヌのアガキタむオン、そしおマキナのアガキタむリスが仲良くポヌズを決めお映る写真が、フォトフレヌムに入れおずっず食っおある。


    画像


    完


     
     
    人間の尊厳を切り売りしお生蚈を立おおいたす。 コスプレむダヌ兌物曞き兌DTM䜜成者。 こちらは自分の創䜜物に぀いお䞻に蚘述しお行こうず思っおいたす。たたに゚ッセむも曞きたす。 ご連絡は䞋蚘のメヌルアドレスたで。 sinlowasno1@gmail.com

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