
ショートショート「高校野球怪談」※毎週ショートショートnote8/16お題
ロウソクの火は揺らめく。
幽世の住民が、現世への恨み羨みに怒気を発するがごとく。
火を見つめていると、己と火の境界が曖昧になっていく錯覚に陥る。
火を囲むのは、坊主頭の高校生達。
遠征の夜の、一時の戯れとして始まった百物語。
それは、佳境へと入り、もはやリタイアなど許されない空気が支配していた。
「⋯⋯という女がいたんだ」
『ひぇ~、やべぇ!』
語り終えるとロウソクを消す。
身震いするほどに、背筋が凍りつく。
「⋯⋯女に気付いた時には、もう遅かったんだ」
「⋯⋯それで、最後には手を繋いできたのに⋯⋯」
それぞれがとっておきの話を披露しては、悲鳴を誘う。
そして、最後の一人となった。
俺は、固唾をのむ皆を前に口火を切る。
「その女とは幼馴染だった。甲子園に連れて行くと約束した。そりゃ頑張ったよ。そして、俺達は明日、甲子園に臨む。もちろん、告白した。そしたら⋯⋯『坊主は嫌だし、彼氏いるよ』って⋯⋯」
「ひぇ~、信じられねぇ」
「怖い⋯女性怖い⋯」
「俺らにはやっぱり、野球しか⋯」
ガタガタと震えながら、野球しか知らない俺達は、女性という未知の世界を今日も恐れている。