
一度取り込んだ金融事業を、ソニーはなぜ再び切り離すのか|有報の行間
本レポートで得られる企業分析の判断軸
① グループの経営目標が変わったときは、指標名や目標値に加え、どの事業を評価対象に含めるかを見る。
② 重点領域への投資は、設備投資と買収などの戦略投資を分け、一方の資金需要が他方の投資枠をどう変えるかを追う。
第1章|取り込んだ事業を、なぜ分けるのか
完全子会社化から数年後、ソニーは金融事業の分離方針を決めました。
ソニーのゲームで遊び、音楽や映像を楽しむとき、私たちは作品やサービスを選び、その背後にある事業の組み合わせまでは意識しません。なぜ、一度取り込んだ金融事業を分けようとしたのでしょうか。
完全子会社化は2020年。分離の検討が示されたのは2022年度で、2024年度有報には翌年の実行方針決議が記されています。わずか数年の間に、企業が引く境界は変わりました。この動きを金融事業だけの事情として読むと、ソニーが同じ時期に何を重視し始めたのかを見落とすかもしれません。
第2章|エンタメへの集中なのか
「選択と集中」という説明は、どこまで成り立つのでしょうか。
まず思い浮かぶのは、金融事業を分け、ゲーム・音楽・映画に経営資源を集中するという説明です。これらの事業は売上を伸ばしており、買収も行われました。「ソニーらしい事業」に軸足を移した、と見ることはできます。
しかし、ソニーにはイメージセンサーやエレクトロニクスもあります。金融事業についても、当初の分離構想は株式の一部保有と事業間連携の継続を前提としていました。単純な「金融からの撤退」で、この変化を説明できるのでしょうか。
金融事業の分離を、エンタメへの集中だけで説明できるでしょうか。本稿の仮説は、ソニーが重点投資先だけでなく、グループとして利益を測る範囲も定め直しているというものです。ここから投資、KPI、資金配分を時系列で照らし合わせ、その見立てがどこまで成り立つかを確かめます。