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5月21日 小満の朝のスズメたち【#私の二十四節気】

    安部忍

     昨日の朝の出来事。

     一昨日まで、仙台市内は真夏のような青空が続いていた。
     それが一転、肌寒い朝。外は、雨模様だった。
     この日は、二十四節気の「小満」の始まりの日。
     今年から、私はnoteで「はし」さんが始められた二十四節気の投稿企画に参加させていただいている。この日も、note用に青空の写真を撮るつもりでいた。
     なのに、「小満」には似つかわしくない曇天。
     少し残念に思いながら、仕事に向かうための朝の支度を終えた。

     私と夫の職場は、自宅から真逆の方向にある。
     けれど、通勤にかかる時間がほぼ同じなため、毎朝同じ時間に家を出ている。
     この日は、夫が先に玄関のドアを開けた。
     と同時に、バサバサバサッと音を立てて茶色いものがドアの向こうを横切った。

     「え?3羽?」

     困惑したような、夫の声。
     見ると、アパートを囲む柵の上に、スズメが3羽止まっていた。

     「え?ウソ。なんで3羽?」

     夫婦で顔を見合わせた。

     私と夫がともに驚いたのには、理由があった。
     先日から、我が家の玄関横の雨どいの隙間に巣を作ったスズメが、子育て中だったのだ。
     雛鳥の姿は見えないものの、ピィッ、ピィッ、という微かな声を毎朝聴いていた。

     「巣立った?」と夫。
     「早すぎない?」と私。
     「でも、声、大きくなってたし。」と、夫。

     確かに、ここ数日、それは感じていた。
     親鳥にエサをねだっているのか、雨どいの中で鳴き続ける雛鳥の声は、数日前よりずいぶん大きくなっていた。
     しかし、小スズメにしては、目の前の3羽は揃いも揃って大きすぎる。

     「身体、デカくない?」
     「でかいね。」
     「子スズメじゃないね。」
     「なんで3羽?」

     困惑するニンゲン夫婦の会話をよそに、スズメたちは、パタパタっと近くの森に飛んで行った。


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    最後の1羽が飛ぶ直前、急いで撮った1枚
    雛鳥ならくちばしが黄色いはずなのだが、3羽とも真っ黒
    何より、どこをどう見ても巣立ち直後のサイズではない


     私と夫が暮らしているのは、古いアパートの角部屋である。

     石巻の義実家にも、部屋はある。頻繁に通っている。
     けれど、私も夫も定年まではまだ年数がある。通勤のこともあり、完全な同居はしないまま、今も夫婦二人、仙台市内での賃貸アパート暮らしを送っている。
     仙台は人口100万人を超える政令指定都市だが、私と夫が暮らしているエリアは、豊かな自然に囲まれた場所にある。
     こう書くと「さすが杜の都」と思われるかもしれないが、我が家の周囲にある緑は、ケヤキや銀杏の並木ではない。
     ちょっと歩くと、ほぼ森である。
     そのおかげで、春は窓のすぐ横でウグイスが鳴き声を競い合い、夏から秋にかけては、朝はカブトムシやクワガタやカミキリムシ、日が暮れるとカエルが玄関前に陣取っている。冬になれば、近くの沼で越冬する白鳥たちが、けたたましく鳴きながらアパート上空を横切ってゆく。
     もちろん、北海道での日々も、自然環境に恵まれていたと思う。特に最後の10年間ほどを過ごしたオホーツク海側の街では、夜に国道を走ればエゾシカやキタキツネに遭遇することは度々だったし、自宅近くの公園には、いつもエゾリスがいた。
     とはいえ、それらを目にするのは、さすがに毎日ではなかった。
     こちらでは、春のウグイス、夏の虫とカエル、冬の白鳥は、ほぼ毎日のこと。
     これまでの人生の中で、今が一番自然豊かな環境で暮らしている気がする。
     そして、今回のスズメである。


     「なんか、野生の王国になってきたな」

     駐車場に向かいながら、夫がそう言って笑った。
     つられて、私も笑った。
     雨を憂鬱に思う気持ちは、消えていた。
     

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    2026.5.21.朝
    仙台市内某所
    通勤途中、赤信号で車の中から撮った空
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    2026.5.21.夕方
    仙台市内某所
    昨日は一日中雨模様でした

     


     日本気象協会のサイト「tenki.jp」によれば、「小満(しょうまん)」は、二十四節気の立春から数えて8番目にあたる節気。
     「植物が茂り、万物が成長し始める時期」だという。


     一夜明けて、今朝。
     出勤時には、スズメの飛び立つ姿があった。
     夫の話によれば、明け方にはいつもと変わらない雛鳥の声が、雨どいから聞こえていたとのこと。
     昨日の3羽は謎のままだけれど、巣の中で雛鳥がすくすく育っているのは確からしい。

     少し、ほっとした。
     ・・・なるほど、「小満」だな、と思った。

     玄関前のフンの掃除は手間がかかるし、巣の中のダニなど、衛生面で気がかりなことも無くはない。
     けれど、しばらくはスズメたちの暮らしを、そっと見守ろうと思う。




     今回も、はしさんの投稿企画【私の二十四節気】に参加させていただきます。



     前回の「立夏」の記事を、はしさんがまとめてくださいました。
     はしさん、いつもありがとうございます!


     
     
     
    文学部国文学科出身の排水設備工事責任技術者。2級管工事施工管理技士。危険物取扱者(乙四)。第一種衛生管理者。北海道生まれ宮城在住。エッセイ、魚と晩酌、プロレス、野球、上下水道等の関連法令解説等書いてます。執筆にAIは使いません。デマ&陰謀論&情報商材詐欺アカウントはブロック。

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