村上春樹『夏帆』と、それに付随する円環
朝方に高速バスを降り、第一旭で朝ラーメンを頂く。
ここ最近、京都旅行の鉄板にしている。
ラーメンを食べた後は河原町の漫画喫茶で仮眠をすると決めていた。
入眠剤代わりに朝から大瓶のビールを飲む。
右足が疼く。
昨晩、新宿の街をバスタに向かって駆けていたところ、階段につまずき、右足親指の腹の皮がズル剥けた。
サンダルも真っ赤に染まっている。
かなりの出血だった様だ。
漫画喫茶でアダルトビデオを垂れ流していると気づけば数時間仮眠していた。
梶井基次郎が手榴弾に見立て、レモンを置いた京都の丸善で『夏帆』を買う。
発売日に入手できた。
村上春樹の出生の地である京都でこの本を購入したというのも、何となくいい。
たまたまなのだが。
丸善のすぐ近くにある喫茶店へと向かう。
数年前に河原町のヘルス嬢に教えてもらった店だ。
気立てのいい娘で童顔な顔に見合わずスタイルも抜群だった。
あの娘は今どこでなにをしているのだろう。
何となしに読み進める。
メタファーの導入が段々と前倒しされてきているのが最近の村上春樹作品の傾向かもしれない。
その分、メタファー内での滞在時間が長くなる。
作家の技術の向上と見るか、ただ単に書く体力の減衰と見るか、もしくはそのどちらもか。
ネタバレチックになるが、前作の『壁』は『ハードボイルド』の焼き直しの様なストーリーだった。
同様にこの『夏帆』は『カフカ』の対になる作品と言えるかもしれない。
違いと言えば、カフカは動、夏帆は受。
時代錯誤な表現をすると、男性性と女性性の違いとも言えるかもしれない。
共通して言えることは同性の親へのコンプレックスが物語のベースにある。
村上春樹は高校三年生の頃から読み始めた。
読書を始めるきっかけになった作家でもある。
私は来週で31歳を迎えるので、愛読しはじめてから干支一周分経った。
30歳を締める作品としては十分すぎる。
並行して読み進めているオースターの作品がもしかしたら滑り込むかもしれないが、まぁどちらでもいい。
30歳を終えるにあたり、これまでの干支一周で、取り込み、執着した円環が閉じられつつあると感じる。
関西の飲み仲間、半年前に別れた彼女、前職のしがらみ、ベイスターズへの熱狂。
もしかしたら18歳の時にノルウェイの森で開かれた円環がこの作品により閉じられるのかもしれない。
村上春樹にこじ開けられ、12年の時を経て収束に向かう円環。
一方で31歳を迎えるにあたり新しい円環も開きつつあると感じる。
noteや文春野球への投稿、アマチュア野球への肩入れ、歌舞伎町でのバイト、干支一周振りに再会した高校の後輩。
ちょうど30歳から31歳にかけては還暦に向けての折り返し地点である。
中間点を示すコーンを折り返して走り出す31歳。
できるだけ谷も山も無いといいのだけど。