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『遞ばれる人』第十䞉話党十六話


    第十䞉章 遞ばれない人


     「たかが䞀勝、されど、この䞀勝は、新たな歎史のはじたりを告げる偉業である」ずメディアが速報した。
       これは芪善詊合ではない。本番䞭の本番の舞台で倧きな実力差がある察戊に「たぐれ」はない。䞍正もアクシデントもなかった。
     ぀たり、最倧の勝因は「䞖界ランキング䜍の優勝垞連囜より、われらが代衚チヌムのほうが匷かった」ずいうこずである。敗戊囜の囜民は、圌らの代衚を「囜賊」ず眵るこずはないだろう。圌らの代衚を砎ったわれらが代衚を「英雄を砎った英雄」ず讃えるこずはあっおも  、ず。

     詊合盎埌の共同䌚芋では、代衚監督の藀堂が晎れ晎れず代衚チヌムの偉業を振り返った。
    「遞手たちを誉めおあげおください。私は䜕もしおいたせん。
     これは謙遜でも䜕でもない本音です。詊合をご芧になったみなさんず同じように私も驚いおいたす。
     みなさたからの熱い声揎のおかげであるこずは蚀うたでもありたせんが、あずは戊略云々ではなく、個々の遞手たちの本圓に芋違えるようなプレヌで぀かんだ勝利です。
     特に怎名のプレヌずその存圚感には驚かされたした。チヌムスポヌツですから、勝敗はチヌムワヌクによっお決たるわけですが、あらためお個の力が党䜓に䞎える圱響の倧きさを知らされた思いです」
     キャプテンずしお䌚芋に同垭しおいた怎名は、すでに萜ち着きを取り戻しおいた。
    「自分がチヌムを匕っ匵ったずいう実感はありたせん。
     気が぀いたら、メンバヌたちに䞊手く乗せられおいたずいう思いのほうが匷いです。みんなが集䞭しお、質の高いプレヌでお互いを刺激し合えたこずが勝因なんだず思いたす。
     もちろん、局面に応じお監督からは的確な指瀺がいただけたした」
     ぀け足された蚀葉が堎内の笑いを誘った。
     隣に座っおいる怎名を肘で小突くような振りをしながら、藀堂も嬉しそうに笑った。

     倜のニュヌス番組では、柏朚が感嘆しながらコメントした。
    「ここ数幎、最埌は倚岐川頌みずいう単調さは吊めたせんでした。
     そこに埩掻した怎名が入り、絶察的な゚ヌスがふたりできたこずでチヌムが䞀倉したしたね。攻撃的なチヌムになりたした。
     守備においおも遞手たちの可動範囲が拡がった気がしたす。
     状況に応じお、怎名や倚岐川も積極的に守りに転じたすから、新田たちの倧胆な攻撃参加も効果的に機胜したすよね。
     もう遞手党員の動きが矎しかったです。
     圹者が揃うず、こういう詊合運びができるんですねえ  」


    数日埌。
    「いやあ、困りたした」
     宿舎の食堂で、花井が倧袈裟に困惑しお芋せる。
     同垭する安郚、怎名、倚岐川は、花井の様子から気軜に耳を傟けた。
    「自分は斜蚭の子どもたちを招埅しおるじゃないですか。䞀生懞呜戊う姿を芋おもらおうず思っお。
     その子どもたちが、自分のこずをスヌパヌスタヌずしお厇めはじめおいるらしいんです」
    「光栄なこずじゃないの」
     安郚が蚀う。
    「同じ斜蚭出身の先茩ずしお誇りに思っおくれるのは嬉しいです。
     でも、雲の䞊の人にしおは駄目なんですよ。雲の䞊に奉っちゃったら真䌌しようずも思わないし、远い぀き远い越せの目暙にならないでしょ。
     もっず身近な存圚でないず」
     口䞋手ながら花井が蚀わんずする真意は汲み取れるので、聞いおいる䞉人が癜けるこずはなかった。
    「逆境だっお諊めない闘志を身をもっお瀺す぀もりが、この䞉連勝。
     それも二戊目、䞉戊目は圧勝ですからね。
     子どもたちが、やっぱり花井さんは違うんだ、特別なんだっお思っちゃうんですよ  」

     開幕戊埌もチヌムは奜調を維持しおいた。
     倧䌚前の時点で、代衚チヌムの䞖界ランキングは䜍。第二戊の盞手は、決勝トヌナメント進出が確実芖されおいた䜍の囜だった。
    「ランキングに圱響する囜際詊合の消化数などの違いもありたすから、数字で芋るほどの実力差はないず思いたす。開幕戊のこずを思えば勝おない盞手ではありたせん。
     ただし、倧いに栌䞊であるこずに倉わりはありたせんし、トップレベルの詊合の堎数を倚く螏んでいるずいう経隓の差は、接戊になったずきにものをいいたすから  」
     詊合前に解説した柏朚の期埅に応え、䞍安を払拭しお、チヌムは開幕戊のずき以䞊に攻撃的な詊合運びで盞手を圧倒した。

     䞉戊目の盞手の䞖界ランキングは䜍。
     すでに二連敗を喫しおおり、グルヌプリヌグ敗退が確定しおいたために、若干芇気に欠けた。
     チヌムは危なげなく勝利を収め、結果、䞉連勝でグルヌプリヌグをトップ通過、決勝トヌナメント進出ずいう快挙を圓たり前のように成し遂げた。

    「確かに。結果が良すぎたしたからね」
     倚岐川が蚀う。
     花井は頷き、倚岐川に向っお続ける。
    「この際だから蚀うけどさ、誰も䞉連勝するなんお思っおなかったでしょ。
     そんなこずを思うのは玠人だけだよ。
     だから、詊合がはじたるず、目を芆いたくなるような詊合展開になる。
     いくら応揎しおも願いが届かないずいう珟実を知る。
     そのずきに、どんなにみっずもない詊合になっおも、最埌たで投げ出さずに必死で戊う姿を芋おもらうこずで䌝えられるものがあるはずでしょ。
     倱望したした、では終わらないものが残るでしょ。
     泣けるでしょ。それなのに圧倒的な䞉連勝じゃあさ、倧笑いはできおも、泣けはしないからねえ  」
    「泣かせりゃあいいっおもんでもないでしょ」
     安郚が笑いながら蚀った。
     ずはいえ、もし倧䌚前の倧方の予想どおりの惚敗だったら、花井はきっず力説する蚀葉に恥じない「最埌たで諊めずに必死に戊う壮絶な姿」を芋せおくれたこずだろうず思い、その想像䞊の勇姿に胞を打たれおもいた。
    「そりゃそうですが、あたりに予想倖の展開なんで  」
     花井が挏らした懞念は、ほかの䞉人にもあった。
     怎名が、花井に応じながら、安郚に蚀った。
    「確かに。開幕戊でチヌムは䞀気にレベルアップしたず思うけど、その状態に自分たちが慣れおいないずいう䞍安はあるなあ  。
     だから堎合によっおは、悪い意味で自分たちの力を信じおしたうずいうか、いい気になっちゃうかもずいう危険はありたすよね」
    「いい気になっお負けるなんお最悪です」
     倚岐川が顔を歪める。
     安郚も困惑しおいた。チヌムは倧化けした。それ故に今のチヌムの身の皋を知るのは難しい。
     䜕かがきっかけずなり、絶奜調の均衡を保぀チヌムの歯車に狂いが生じたずき、それを短時間で修正する術を誰も知らないのだ。

     この䞉詊合をチヌムは「ベストメンバヌ」だけで戊い、遞手亀代は䞀床も行われなかった。
     自らの地䜍、そしおプラむドを守るために枇望したグルヌプリヌグ突砎ずいう目暙を成し遂げお、欣喜雀躍しおいたはずの藀堂は、すぐさたスポヌツマンらしく頭を切り替えるず、今床は負けた時点で終わる決勝トヌナメントを生き抜くための戊術に腐心しおいた。

     チヌムの党䜓緎習を芋ながら藀堂は思う。
    『ここたでひず぀ずしお䜙裕のある詊合などなかった。
     結果的にはどの詊合にも圧勝しおいるが、それはベストメンバヌで戊えたからこその結果だったに違いない。
     ベストメンバヌには、単にスキルの高い個人の集たりずいうに留たらない特別の䟡倀がある。そろい螏みした姿が「絵になる」のが、ベストメンバヌなのだ。
     遞考の段階では甲乙぀けがたく芋える遞手たちでも、正匏にレギュラヌずサブに分れたずき、そこに自他ずもに認められる「決定的な差」があるようなベストメンバヌを組むこずが、監督である自分の仕事だ』
     寺田や䞖良、倉橋の姿が藀堂の目に入った。
    『自分の圹割を承知しおいる倉橋などは別ずしおも、寺田や䞖良は忞怩たる思いがあるだろう。チヌムが勝ち進んでも、自分が勝利に盎接貢献できおいなければ、プレヌダヌは心から喜べない。
     無論、出堎したら貢献できるずいう自信もないだろうが、サブである立堎が぀らいこずに倉わりはない。本人に自信があったにせよ、それは人ずなりの問題で、信甚できるかどうかはたた別の話だ』
     珟圹時代にはレギュラヌを倖された経隓のない藀堂だが、監督ずしお䜕が起きるかわからない本番を指揮する今になっおはじめお、サブのメンバヌの䟡倀を痛感する。
    『でも、レギュラヌが突然の䞍調に陥るこずも、アクシデントに芋舞われるこずだっおある。そんなずき、ベストの䞀郚が欠けたからず詊合を投げ出すわけにはいかない』
     八幎前、衝撃的な負傷で退いた梶に替わっお送り出され、笹本監督の期埅に応えた倚岐川のこずが思い出された。
    『あのずきの倚岐川のようなサブメンバヌがいお欲しい。
     ずはいえ八幎前は、いざずいうずきが蚪れる前から、倚岐川は詊合に出おいた。倚かれ少なかれ、その実戊感芚が圹立ったこずは確かだ。
     今倧䌚ではそれができおいない。怠っおいたのではない。
     そんな䜙裕がなかったのだ。第䞉戊の埌半ならできたか。
     いや、チヌムの勢いを維持するだけでなく、決勝トヌナメントを芋据えたグルヌプ䜍通過ずいうアドバンテヌゞを手にするためには、サブの遞手の起甚は無理だった。  いや、できたかもしれない。
     でも、負傷などアクシデントもないのに遞手を亀代するには、盞圓の䜙裕もしくは勇気が必芁なのだ。先発遞手の肉䜓的な疲劎を考慮したり、戊術のバリ゚ヌションを詊したりするための遞手亀代は、裏目に出れば思った以䞊の戊力䜎䞋を招き、呜取りずなっおしたうこずさえある。
     そんな䜙裕や勇気はもおなかったし、今埌も、もおないだろう。
     サブメンバヌのモチベヌションを含めた実戊準備は心もずないが、もはや決勝トヌナメントでは、ひず぀も負けられない  』

     党䜓緎習を終えるず、藀堂は自宀にコヌチ陣を集め、決勝トヌナメントにおける具䜓的な戊略の怜蚎をはじめた。
     その冒頭、藀堂は戊略の前提ずしおの方針を瀺した。
    「開幕戊もそうでしたが、決勝トヌナメントでは、ずっず仰ぎ芋おきたような匷豪囜ずの連戊になりたす。そしお負ければ、そこで終わりです。
     圓然ですが、負けおもいいず思っお詊合に臚むこずなどあり埗たせん。
     勝぀ために最善を尜くすこずが、囜を代衚する者たちの責務です」
     藀堂の思い詰めたような匷い口調に、曞類に目を萜ずしおいた安郚ず宮本の芖線が䞊向いた。
    「珟圚の怎名を䞭心ずしたレギュラヌは心身ずもに充実しおいたす。
     よっお先発メンバヌは今埌も固定し、よほどのこずがないかぎり遞手亀代は行いたせん。぀たり、最埌たでサブメンバヌの出堎機䌚はたずないだろうずいうこずです。
     そこで、コヌチのみなさんにお願いがありたす。サブメンバヌたちの倉化や動向を芋守っおください。
     囜のため、チヌムのためずいっおも、遞手は人間です。
     こちらの起甚法を知ったずき、遞手たちはみな動揺するでしょう。圓然、よりネガティブになるのはサブの遞手でしょう。しかたのないこずですが、それでは困りたす。チヌム党䜓の士気にかかわりたす」
     コヌチ党員が顔を䞊げた。
     藀堂監督の今しか芋おいない非情さを確かめよう数人のコヌチの挙動に気づき、それを遮っお、宮本が蚀った。
    「勝ち負けの䞖界ですから、誰にも、匕き受け、受け入れなければならない圹割があるものです。グルヌプリヌグ䞉詊合で、起甚法に぀いおは遞手たちもそれなりに察しは぀いおいるでしょう。
     サブの遞手たちの気持ちを萎えさせないように、われわれコヌチ陣が泚意深く芋守りたいず思いたす」
     最叀参で、ヘッドコヌチから昇栌どころか降栌しおも代衚チヌムを支える宮本の発蚀はある意味で監督の藀堂の発蚀よりも重く、玍埗のいかないコヌチたちも沈黙せざるを埗なくなった。


    第十四話に぀づくhttps://note.com/sin_sen/n/n28a9c7af4722
    第十二話はこちらhttps://note.com/sin_sen/n/nfb85ad27751c

     
     

    新泉

     
     
    䞍慣れですがよろしくお願いしたす。

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