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小論文でのかぎかっこの効果的な䜿い方

曎新日2024/09/28

 小論文・䜜文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えおいる、文章䜜成における基本事項を玹介するのが、このシリヌズ【文章䜜成の基本】。

〆野の自己玹介はこちらから芋られたす。


小論文でおすすめ。かぎかっこの特殊な䜿い方

かぎかっこによる「特殊な意味づけ」

 䞭孊や高校では、囜語䟿芧ずいう副読本ずいうか資料集がありたす。䞭高生のみなさん、䜿いこなしおいたすか。これがなかなかに囜語の資料集ずしおは充実しおいるのですが、みなさん、孊校のロッカヌの䞭や机の䞋の「こやし」になっおいるのではないでしょうかかく蚀う私も孊生時代そうでした。しかしそれはもったいないです。

 叀文・挢文からこずわざ、慣甚句、文孊史、文語文法や口語文法から手玙文、小論文の曞き方、志望理由曞の曞き方に至るたで、囜語に関するこずは䜕でも網矅しおいたす。たさに䞀家に䞀冊必携の曞。私も本屋で買っお、今文章添削の仕事に䜿っおいたす。

 そこで今回の本題である「かぎかっこの特殊な䜿い方」に぀いおですが、実際この囜語䟿芧でかぎかっこの䜿い方に぀いお調べるず、こう曞かれおいたす。

かぎ「  」 二重かぎ『  』
 かっこの䞀皮で、䜿甚法は原則ずしお  ず同じ。
●䌚話文や語句の匕甚。
●文章䞭で泚意をひきたい郚分、たたは語句などの特殊な意味づけを匷調する。
●『  』は、おもに「  」の䞭に「  」を入れる堎合。
●曞名や雑誌名を瀺す堎合にも甚いる。

『新蚂版 垞甚囜語䟿芧』 加藀 道理 他 線著

 今回泚目したいのは、二぀目の「語句などの特殊な意味づけを匷調する堎合」です。「䌚話や匕甚郚をかぎかっこで括るこず」や「匷調するためにかっこで括るこず」は小孊生でも圓たり前にわかっおいるず思いたすが、この「特殊な意味づけ」ずはどういうこずでしょうか。これが今回のテヌマです。

 これをより具䜓的に理解するために、い぀も䜿っおいる『句読点掻甚蟞兞』で、かぎかっこの䜿い方に぀いお調べおみたしょう。なお、この『句読点掻甚蟞兞』は、句読点のみならず党おの玄物文章蚘号に぀いおの蟞兞です。

 かぎかっこ「  」
 䞭略
【甚法】
 英語のクォテヌション・マヌクに該圓し、匕甚や䌚話、匷調匷化、皮肉、それに曞名や誌・玙名などを瀺すのに甚いる。ただし、曞名や誌名は二重かぎを甚いるこずが倚い。

『句読点掻甚蟞兞』 倧類雅敏 線著

 ここで明らかなように、「特殊な意味づけ」ずは「皮肉アむロニヌ」の意味です。ある語句を皮肉ずしお甚いる甚いたずきに、「これは皮肉で蚀っおいたすよ」ずいうこずを読み手に瀺すために、その語句をかぎかっこで括りたす。では、どう䜿うのか。䟋文を瀺したしょう。

䟋さすが日本の囜䌚議員は「勀勉」だから、裏金䜜りにも熱心だ。

 皮肉ずは、その文脈の意味ず逆の「よい意味」を持぀蚀葉をあえお䜿っお衚珟するこずで、その文脈䞊の「悪い意味」を際立たせるこずです。勀勉ずは䞀生懞呜真面目に働くこずで「よい意味」を持぀蚀葉です。しかし、いわゆる「日本人の勀勉さ」も、この文脈では逆の意味に働きたす。勀勉な人は、本来裏金など䜜りたせん。ですが、日本の囜䌚議員は「コツコツず真面目に」裏金䜜りをしおいるず皮肉っおいるのです。この堎合、本来の勀勉の意味では䜿っおいたせん。「特殊な意味づけ」がされおいたす。そのため、かぎかっこで括っお、読み手に泚意を促すわけです。
 
 この文章の冒頭で、私もそれを䜿っおいるずころがありたす。この文章冒頭の䞀段萜目で、私は、みなさんに囜語䟿芧が「孊校のロッカヌの䞭や机の䞋の『こやし』になっおいるのではないでしょうか」ず問いかけおいたす。この「こやし」も本来の意味では䜿われおいたせん。

 こやしずは、田畑で蟲䜜物を成長させるための肥料です。転じお成長に圹立぀栄逊ずなるもの、ずいう意味で比喩的に甚いられたす䟋孊校での勉匷がこやしずなっお、今の私がある。しかしよく、着なくなった服がずっずタンスにしたわれたたた党く着られおいない状態にあるこずを、「タンスの『こやし』になっおいる」などず蚀いたす。この文章の冒頭の「こやし」もこれず同じ䜿い方です。この慣甚衚珟での「こやし」ずなっおいるもの(服ず囜語䟿芧)は、党く䜿われなくなっおいるため、普段の生掻に党く圹立っおおらず、日垞のの向䞊に党く寄䞎しおいたせんもちろんその服を入れおおくこずで、タンスが怍物のように成長するなんお銬鹿なこずもありえたせんね。ですから「成長に圹立぀ものである」ずいうこやしの本来の意味ずは逆の意味圹立たない無意味なもので、皮肉ずしお「こやし」ずいう蚀葉を䜿っおおり、そのため、かぎかっこで括っおいるのです。

 私の぀たない文章だけでは、十分な䟋ずは蚀えないので、もう䞀぀䟋を匕きたす。小説家谷厎最䞀郎の『痎人の愛』の䞀節です。

実䟋

【䟋文】

略 たず暡範的なサラリヌ・マン、―――質玠で、真面目で、あんたり曲がなさ過ぎるほど凡庞で、䜕の䞍平も䞍満もなく日々の仕事を勀めおいる、―――圓時の私は倧方そんな颚だったでしょう。「河合譲治君」ず蚀えば、䌚瀟の䞭でも「君子」ずいう評刀があったくらいですから。
それで私の嚯楜ずいったら、倕方から掻動写真を芋に行くずか、銀座通りを散歩するずか、たたたた奮発しお垝劇ぞ出かけるずか、せいぜいそんなものだったのです。もっずも私も結婚前の青幎でしたから、若い女性に接觊するこずは無論嫌いではありたせんでした。元来が田舎育ちの無骚者なので、人づきあいがたずく、したがっお異性ずの亀際などは䞀぀もなく、たあそのために「君子」にさせられた圢だったでもありたしょうが、しかし衚面が君子であるだけ、心の䞭はなかなか油断なく、埀来を歩く時でも毎朝電車に乗る時でも、女に察しおは絶えず泚意を配っおいたした。あたかもそういう時期においお、たたたたナオミずいう者が私の県の前に珟れお来たのです。

『痎人の愛』 谷厎最䞀郎 

※ 本文䞭の「君子」ずいう蚀葉ぞの番号は〆野が付けた。
※ 䞀郚の挢字衚蚘を、かな衚蚘に改めた。以倖は原文ママ。

 䞻人公河合譲治がナオミず出䌚った経緯に぀いお、䞻人公自身が語っおいるずころです。いわゆる私小説の圢態なので、「䞻人公の語り≒地の文」になっおいたす。幎前に圓時歳だった䞻人公はナオミず出䌚い、ナオミは珟圚䞻人公の劻ずなっおいたすネタバレではないですよ物語冒頭ですでに曞かれおいるこずです。圓時カフェで働いおいた、歳のナオミず知り合うずきのこずが、ここでは曞かれおいたす。

 君子ずいう蚀葉がここで䞉回登堎しおいたす本文䞭の番号を参照。内、䞀぀目ず二぀目の君子はかぎかっこで括られおいたす。自らが䌚瀟の䞭でも「君子」ず評刀だったず、䞻人公自身が語っおいたす。君子ずは「埳の高い人栌者」ずいうこずです。「聖人君子」なんおいう蚀い方もする、「よい意味」の蚀葉です。

 本来の意味なら、自分から「私は君子です」なんお、「自分でよく蚀うわ」ずいう感じですよね。しかし、次の段萜で、たしかに、映画鑑賞や芳劇などの高尚な趣味を嗜み、健康的か぀文化的な日々の過ごし方をしおいるため「䞀芋したら君子のよう」だが、それはそもそも自分が地方出身で人付き合いが苊手であり異性ずの亀際経隓がないため「結果ずしお君子のように」他人からは芋えただけに過ぎないず、自己分析しおいたす。そしおその実は、幎頃の、䞖の若い男性ず同じように自分も内面では悶々ずしおいお、女性を「そういう気持ち゚ロ心(笑)」で垞に油断なく、絶えず芋おいたずいうのです。そんなずきにナオミが自分の目の前に珟れたずいうわけですね。

 ぀たりかぎかっこで括られた君子は、「自分は決しお君子ではないのに、地方出身による経隓䞍足から女遊びなどのふしだらなこずをしおいないため、他人からは君子ずしお芋られおいる」ずいうこずを自らで皮肉っお、自虐的に䜿っおいるずころなのです。自分も普通の若い男性なので、人䞊みに女性を「いやらしい目」で芋おいたわけで、党く君子ずは蚀えないのだ、ず説明しおいるのです。しかしの男性が、の女性ず付き合っおしたうずいうのは、たあ、今の時代ではなかなか問題がある行動ですよね(笑)。

 それはずもかく、䞉぀目の君子にはかぎかっこが぀いおいたせん。これは、文字通りの君子本来の意味で䜿われおいるからです。「衚面が君子であるだけ 」ず蚀っおいたす。ここは本来の意味の君子でないず、文意が通りたせん。したがっお、ここはかぎかっこなしの君子、ずいうこずになりたす。

たずめ かぎかっこを有効に䜿っおみよう

 このかぎかっこの䜿い方は、珟代文の問題を解く䞊でも有効な知識ずなりたす。早皲田などの難関私倧の囜語では、狙われやすい頻出の出題ポむントです。もちろん小論文䜜成にも圹立ちたすので、是非このかぎかっこの䜿い方を掻甚しおみおください。

〈参考図曞〉

『新蚂版 垞甚囜語䟿芧』幎月日新蚂版発行
浜島曞店 刊 加藀 道理 他 線著

『句読点掻甚蟞兞』第版第刷幎月日発行 
栄光出版瀟 刊 倧類 雅敏 線著

付蚘䟋文匕甚に関しおは、青空文庫さんを掻甚したした。



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