
【企画参加・怪談掌編】 蝶
都内のデザイン事務所に勤めるMさんの話。
ある日の昼休み、Mさんがオフィス近くの道を歩いていると、目の前を蝶が飛んでいくのが見えた。
それが、見たこともないほど美しい翅をしている。青と緑色が混ざったような色で、太陽の光を受けると宝石のように輝く。
あまり詳しくはないが、きっと珍しい種類なのだろう。
蝶は、ちょうどMさんの顔くらいの高さで、ふわりふわりと飛んでいる。
綺麗だな、と思いながら、Mさんは何となくその蝶を追っていくかたちになった。たまたま、自分と向かう方向が一緒だったのだ。
初夏の午後で、風と日差しが心地良かった。
Mさんは、とても気分よく、蝶に導かれるようにして歩いていた。
それから数分の記憶はない。
やがて、ハッと気がつくと、知らないビルの屋上の縁に立っていた。
眼下に、地上が小さく見える。
もう一歩踏み出せば落ちてしまう。
思わず悲鳴を上げ、後ずさると、耳元で小さく音がした。
それは、確かに人間のする舌打ちのような音だったという。
本作は、毎度恒例、なみさんによる以下の素敵な企画に参加するために書いたものです。久しぶりにBLでないものを書きました。怪談というか…不思議な話になりました笑