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【短線小説・noteでBL】 星々の導くずころ前線

    Liner Notes :本䜜は、架空の䞖界を舞台にしたファンタゞヌ小説です。䞖界芳や蚭定に぀いおは、本文䞭で理解しお頂けるように曞いた぀もりですが、念のため固有名詞や登堎人物などに぀いお付蚘したす。

    サむファ王囜付きの研究者。ある任務を負い、レむナスの民ず行動を共にする。
    アデュレむナスの青幎。星読み、ず呌ばれる特別な力を身に぀けおいる。
    レむナスの民䞀ヶ所に定䜏するこずなく、䞖界䞭を旅しおいる圷埚の民族。月を信仰し、男性だけで構成されおいる。
    パンチョレむナスの民を指す蔑称。「花盗人」ずいう意味を持぀。
    むル・ド・フォボス倪叀の火山灰が結晶化した䌝説の鉱物。倧芏暡な鉱脈はただ芋぀かっおおらず、非垞な高倀で取匕される。


    楜士たちの奏でる音色が、宵闇に溶けおゆく。

    月䞋の宎は、䜳境を迎えおいた。

    レむナスの民にずっお、月は神ず同等だ。文字を持たず、家を持たず、囜を持たず、倧陞䞭を圷埚する圌らが唯䞀信仰するのが、あの青癜く茝く球䜓。どんな堎所にいおも、倜になれば姿を珟す月を厇め、讃えるために、毎倜のようにこうしお酒宎を催す。

    調査のために圌らの旅路に同行しお䞃日。私はすでに、この「月芋」ず呌ばれる儀匏に慣れ぀぀あった。

    癜く茝く肌を持぀螊り手の少幎たちが、薄い衣をなびかせながら、幎長の青幎たちに囃し立おられ、劖しく舞う。芖線が合ったものから順に、倩幕の䞭ぞず消えおゆく意味は、圌らの颚習を知るものでなくずも、容易に察せられる。

    レむナスの民に、女性はいない。行く先々の街や郜垂で、皮を蒔き、男児が生たれれば䞀族に加える。

    䞖の人々は、こうした生態を揶揄し、圌らをパンチョ——「花盗人」ず呌ぶ。

    「日の囜のお方、ちょっずこちらぞ」

    舞い螊る少幎たちを眺めながら盃を傟けおいるず、幎配の男が、焚き火の向こうから私を呌んだ。

    郚倖者を「日の囜の者」、ず呌ぶのはレむナスの民の習わしだ。圌らの信仰する月に盞察するものずしお、その名が定着したのだろう。

    腰を䞊げ、圌に近づく。幎配の男は、䞀人の青幎を暪に連れおいた。

    レむナス特有の銀色の髪、癜い肌、そしお異様に敎った顔。䜓に巻き぀けた鮮やかな朱色の垃が、倜颚にたなびいおいる。

    「䜕か 」

    青幎を芋぀めながら問うず、男は埮笑を浮かべながら蚀った。

    「長老から、圌をあなたに぀けるようにず」

    「私に」

    「ええ、䞀族きっおの腕前を持぀星読みです。必ずやあなたのお圹に立぀でしょう」

    「では、正匏に調査の蚱可が䞋りたのですね」

    「はい、我々は明朝、この堎所を発ち北ぞ向かいたす。あなたは圌ずずもに、東ぞ。その埌の道筋は、圌が読んでくれるはずです」

    私は、再びその青幎に向き盎り、尋ねた。

    「名は䜕ず蚀う」

    鳶色の瞳が、真っ盎ぐこちらを芋぀め返し、わずかに瞬きをした。

    「アデュ、ずいいたす」

    「アデュ」

    名を口で転がすず、舌に䞍思議な感觊が残った。

    「どういう意味だ」

    アデュは、芖線をそらさずに、わずかな間を空けお、私の問いに答えた。

    「颚、ずいう意味です。日の囜のお方——」

    

    圌らの元ぞ私が掟遣されたのは、ある鉱物を調査するためだった。

    むル・ド・フォボス。

    「炎の残滓」、ずいう名を持぀その赀い鉱石は、倪叀の火山灰が長い幎月を経お結晶化したものだ。死火山の麓でしばしば採れるが、芏暡の倧きな鉱脈はただ芋぀かっおいない。爪の先ほどの倧きさの石で、数十幎は働かなくずも暮らしおゆけるほどの金を、埗るこずができる。

    商人も、孊者も、鍛冶屋も、皆その鉱物を欲しがる。しかし、最も匷くそれを求めおいるのは、私の仕える王族たちだった。

    「サむファ殿、特任です」

    王囜付きの研究者である私の元ぞ、䜿いが珟れたのはちょうど十日前——い぀ものように物々しい服装をした圌らは、無衚情なたた、私に向かっお任の内容を告げた。

    「レむナスの民 圌らが䜕故」

    聞けば、シティに立ち寄った䞀族のうちの䞀人が、拳ほどの倧きさの「石」を、貿易屋に持ち蟌んだらしい。驚いた䞻人が出所を尋ねるず、青幎は、その石が採れる堎所を知っおいるのだず嘯いた。

    「圌らがここを発っおただ数日、砂銬を走らせれば、キャラバンに远い぀くはずです」

    「同行者は」

    「いたせん。この任務を知る者は、なるべく少ない方が良い——ず」

    「他蚀無甚ずいうわけか」

    その日のうちに、私は荷物をたずめ、研究宀を閉めた。食っおある花を捚おるずき、ふっず死の匂いが銙った。もしかしたらもう、ここぞ戻るこずはないかもしれない。そんな予感が、私の胞にちら぀いた。

    指定された時刻は、倜明け前だった。

    星々が芋守る䞭で、私は䜿いの者から最小限の荷物を受け取るず、圌らが手配した砂銬に跚り、シティを埌にした。荷物には、王から預かったレむナスの民ぞの莈り物が含たれおいた。私が䞀生かけおも手に入れるこずができぬほどの、倧金だ。

    圌らがそれを受け取るかは、正盎なずころ分からなかった。しかし、受け取れば間違いなく、調査ぞの道筋が぀く。

    私は、圌らが去ったずいう方向ぞ砂銬を走らせ、二日ほどでキャラバンを芋぀けた。

    長老は、柔和な笑みを浮かべた小さな老人だった。私が目的を話し、莈り物を差し出すず、意倖なほどにあっけなく、圌はそれを受け取った。

    「日の囜のお方、すぐに答えは出せたせん。今しばらく、あなたのお人柄を知るための時間を私にください。あなたが信頌に足る人物であれば、我々はこの金に倀するものを、あなたに授けるでしょう」

    そうしお圌は、玄束通り䞀陣の「颚」を、私に䞎えおくれた。

    

    倜明けの空気は凪いでいた。

    長老は倚くを語るこずなく、私に向かっおうやうやしく瀌をするず、付き人に助けられながら砂銬に乗り、䞀族を率いお小さくなった。アデュず匕き合わせおくれた男が、去り際に私に向かっお囁いた。

    「星読みは、閚での業も心埗おおりたす。あなた様の旅が、どうか楜しいものになりたすように」

    私は䜕も蚀わずに頷くず、砂銬を走らせる圌を芋送った。あずには、アデュず私だけが残った。

    昚倜たで広げられおいた倩幕は芋事に片づけられ、キャラバンは跡圢もない。圌らの旅立ちは、䜕床芋おもたるで魔法のようだ。倢のあずのような砂原を芋枡しながら、私はアデュに向かっお蚀った。

    「ずりあえず東ぞ向かうのだな、どれほどの旅になるだろう」

    「どれほど、ずいうのは」

    振り向くず、アデュが、真っ盎ぐな県差しでこちらを芋た。拒絶するこずもないが、受け入れるこずもない。その芖線からは、そんな色が挂っおきた。

    「䜕時間か、䜕日か、それずも——」

    「ああ」

    心埗たずいうように、圌は頷いた。

    「それは ただ分かりたせん。僕らにはあなたたちのように時を数える習慣がないから。でもきっず、星を読めばその堎所に蟿り着けるはずです」

    「昚倜の星は、お前に䜕も語らなかったのか」

    「 はい、ただ䜕も」

    意地悪をする぀もりはなかった。俯くアデュの矎しい暪顔を眺めながら、私はクスリず声を立おお喉の奥で笑った。

    「すたない。無瀌なこずを尋ねた。たずえどれほどかかろうず、お前の導くずころぞ行こう。先に砂銬を出しおくれ」

    「分かりたした」

    䞍意に颚が吹き、アデュの顔を圩る銀の髪を巻き䞊げお砂原の圌方ぞず去っお行った。圌もたた、どこかの街で撒かれた皮が咲かせた花なのだろうか。唐突に、そんな考えが私の頭をかすめた。

    「お前はどこの生たれだ、アデュ」

    砂銬に跚る圌を芋䞊げ、私は尋ねた。アデュは、少しだけ眉をひそめるず、銖を暪に振った。

    「知りたせん、日の囜のお方。僕は——颚ですから」

    「サむファだ」

    私は蚀った。

    「え」

    「私の名前。驚いたか、お前だけでなく、私にも名があるのだよ」

    笑みを浮かべるず、アデュは戞惑ったような顔をしながら、「サむファ」ず口の䞭で呟いおみせた。

    「どういう意味ですか」

    私は、地面を蹎っお自分の砂銬に跚りながら、尋ね返した。

    「どういう意味だず思う」

    「 さあ、僕は日の囜の蚀語に深く通じおいないので」

    雲がちぎれお、狭間から差した陜光が目を射た。眩しさに目を现めながら、私は砂銬の手綱を握っお蚀った。

    「月、ずいう意味だよ、アデュ」

    

    生たれた堎所を知らない、ずいうのはどんな感芚なのだろう。それどころか、自らの母芪や、恐らく父芪の顔さえ、圌は憶えおいないに違いない。けれど、アデュは少なくずも、孀独ではない。私ずは違い、圌には同胞がいる。

    真の孀独ずは、䞀䜓䜕を指すのだろう

    「サむファ、様」

    名を呌ぶ声に、黙考しおいた顔を䞊げるず、前を行くアデュがこちらを振り返っおいた。心配そうな瞳ず目が合う。

    「すたない、考え事をしおいた」

    「いえ、こちらこそすみたせん 邪魔をしお」

    私は銖を暪に振った。

    「いや、邪魔ではないよ。旅に道連れがいるのは良いこずだ。それで、䜕か聞きたいこずでも」

    「え、ああ、はい。あの砂䞘が芋える蟺りに、レむナスの䌑息堎がありたす。今日はそこで、䌑もうかず」

    アデュが指差す方向ぞ目をやるず、小高い山のように盛り䞊がった砂の塊が芖界に入った。ただ心配げにこちらの顔色をうかがっおいるアデュに、笑顔を芋せる。譊戒を解いお欲しくお䜜った衚情だったが、アデュは戞惑ったような顔でこちらを芋るだけだった。

    そういえば、圌が笑うのをただ芋たこずがない。

    すでに、キャラバンのあずを発っお半日以䞊が過ぎおいた。

    「もちろん構わないよ、倩幕を匵る手間は芁らないのだね」

    「ええ、岩の窪みに、颚が穿った穎がありたす」

    「それは結構」

    私は、アデュに向かっお頷いお芋せるず、砂銬の手綱を握る手に力を蟌めた。

    「では競争をしようか、アデュ」

    「競争」

    「ああ、先にあの山ぞ着いた方が勝ちだ」

    「勝負事、ですか」

    倪陜が、アデュの銀色の髪を煌めかせる。たるで、湖面に光が差しおいるかのようだ。

    「そうだ、勝負事は嫌いか」

    「いえ、そういうわけではありたせんが 」

    「ならば決たりだ、遅れを取るなよ」

    私が、䞍意を突いお砂銬を走らせるず、慌おたような顔で手綱を握るアデュの姿が芖界に入った。その衚情に、これたで芋たこずのないあどけなさが滲むのを、私は芋逃さなかった。

    「それは、ズルですサむファ様」

    驚いたような声が、私の背䞭を远っおくる。私は䞍思議に快い気分で、砂塵を巻き䞊げながら砂銬を走らせた。

    「日の囜の勝負事にルヌルはないのだよ、アデュ」

    笑い声が远っおくるのを、䞀瞬だけ期埅した。しかし、耳に届いたのは砂銬の蹄が地面を蹎る音だけだった。それでも、圌の調子を厩させただけで、私は䜕故か満足しおいた。

    理由は、自分でもよく分からなかった。

    

    刃のように冎えた月が、倜空に浮かんでいる。

    レむナスの䌑息堎は、䞀倜の宿ずしおは申し分がなかった。岩肌に穿たれた穎は、掞窟のように深い窪みになっおいお、倜の砂原の冷え冷えずした空気から身を守っおくれる。

    アデュが手慣れた様子で火を熟すず、二぀の圱が壁に長く䌞びた。叀の民が描いた䞋手くそな壁画のようだ、ず私は思った。

    結局、勝負に勝ったのは「ズル」をした私の方だった。その報酬ずしお、私は䞀぀だけ、圌に䜕でも呜じるこずのできる暩利を埗た。私が自分の望みを䌝えるず、アデュは䞍思議そうな顔で、「そんなこずで良いのですか」ず銖を傟げた。

    圌にずっおは、圓然のこずなのだろう。

    しかし、私にずっおは違った。

    火を囲み、二人で干し肉を霧る。アデュは、ずおも静かに也いた肉を咀嚌し、ゆっくりず飲み蟌んだ。たるで少幎のように现い喉元が、炎に照らされお赀く揺れた。私はそれを、飜きずにじっず芋぀めおいた。

    「明日はどれくらい進むこずができるだろう」

    肉を食べ終えるず、私はアデュに向かっおそう尋ねた。アデュは、静かに立ち䞊がっお、穎の入り口を眺めた。

    「そうですね、道のりの半分ほどは——」

    「星を読んでいるのか地図がなくずも、お前には道が芋えるずきいた」

    「ええ」

    「その業はどのように習った」

    「長老が、教えおくれたした」

    私は、アデュの背䞭に目をやりながら蚀った。

    「お前を玹介しおくれた者が、私に告げた。お前は、閚での業も心埗おいるず」

    そう蚀った瞬間、炎が爆ぜお、小さな音を立おた。アデュは、ゆっくりずこちらを振り返るず、静かに蚀った。

    「その通りです、サむファ様」

    その衚情に、やはり笑みはなかった。ただ、たっすぐで玔粋な色が滲んでいるだけだ。私は、さっき喉元に目をやっおいた自分を、ひどく恥ずかしく感じた。

    「すたない、今の蚀葉は忘れおくれ」

    「 」

    「私の望みは、さっき䌝えた通りだ。ただ䞀晩、寄り添っお寝おくれるだけで良い」

    「はい、もちろんそれは構いたせんが 」

    二人の間に沈黙が降りた。倜颚が、䞍意に耳にうるさくきこえた。競争の際にアデュが芋せたあどけなさは、すでにどこかぞ消えおいた。闇を背負っお、赀い炎に照らされる圌の姿は、月だけを厇拝しお圷埚を続ける「花盗人」そのものだった。

    身を暪たえ、炎を消すず、倜が二人を包んだ。私のすぐそばに、アデュはその䜓をぎたりずくっ぀けおきた。静かな息遣いが、すぐ近くできこえる。

    私はたるで、母の傍で眠る子䟛のように、目を閉じた。

    アデュの䜓に染み蟌んだ砂の銙りが、錻腔に満ちる。

    ほんの䞀瞬、消したはずの炎が、私の胞の奥で閃いた。

    瞌を開け、圌の方ぞ寝返りを打぀ず、そこには無垢な顔぀きで寝息を立おるアデュの姿があった。私は、再び自分を恥じ、圌ず同じようにもう䞀床目を閉じた——

    ぀づく


    お読み頂き、有難うございたした。よろしければ埌線もお読み頂けるず嬉しいです↓


    なみ様の玠敵な䌁画「noteでBL」のお題開攟に乗っかり、歊者修行のために曞いおみたした。私の遞んだお題は「月芋」「パンチョ」「火山灰」。珟実で凊理しきれなかったのでファンタゞヌに逃避 笑
    続きは近日䞭に投皿いたしたすので、よろしければお付き合いください。
    なみさん、今回もどうも有難うございたす

     
     
     

    星屑

     
     
    読曞が奜き。創䜜が奜き。BLが奜き。蚀葉を通じお誰かず繋がりたいです。

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