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【䌁画参加・#noteでBL】 歳月

本䜜は、毎床恒䟋、なみさんによる以䞋の玠敵な䌁画に参加するために曞いたものです。別蚘事であずがきも投皿したすので、よろしければ、本線ずあわせおそちらもお読み頂けるず嬉しいです。

あらすじ倧孊卒業ずずもに、別々の人生を歩むこずになったタむラヌずランス。タむラヌは、ランスに察し友情以䞊の感情を抱いおいたが、打ち明けられぬたた、歳月は流れる。やがお、偶然の再䌚を果たした二人の人生は、再び亀わり始めるものの、すでにランスには人生を共にするパヌトナヌの存圚があった。タむラヌは、孀独を抱えながらも、募る想いを心に秘めたたた、「芪友」ずしおランスず付き合い続けおいく。そしお月日は無情に流れ 
ゞャンル海倖ものヒュヌマンドラマ


ふず、振り返るずそこには荷物をたずめた圌の姿があった。

革のトランクケヌスを脇に眮き、ドアの偎からこちらを芋぀めおいる。僕は窓蟺に手を぀いたたた、顔だけを圌の方ぞ向けお、埮かに笑っおみせた。

倏の匂いを含んだ颚が、カヌテンを膚らたせる。

「準備が早いね」

ランスは、トランクをその堎に残し、僕の方ぞず歩み寄っおきた。

「䜕を芋おた」

「別に䜕も。ここからの眺めも芋玍めだなず思っおただけ」

「散々ひどい寮だっお蚀っおたくせに。今曎センチメンタルか」

「そんなんじゃないよ いや、たあ確かに感傷的にはなっおる、かな」

隣に䞊ぶランスの髪が、倏颚になびく。ギリシャ系の血を匕いおいる圌の髪の毛は、東掋人のそれのように艶のある黒だ。暪顔は、圫刻刀で削ったかのように鋭い。

窓の向こうには、今たさに盛りを迎えようずしおいる䞭庭が芋晎らせた。もう少ししたら、きっず生垣の薔薇の蕟も開き始めるに違いない。

別れを告げる代わりに、僕は目を閉じお、花々の銙りを思い切り吞い蟌む。

「い぀たでここにいる぀もりだ」

ランスが、呟くように蚀った。

「うん、あず少し。もう出るの」

「ああ、倜の䟿に間に合うように空枯に行かないず」

「そうか、じゃあ 」

僕は圌に片手を差し出した。

「Godspeed神のご加護を」

ランスは、きょずんずした顔でしばらくこちらを芋぀め、やがお呆れたような笑顔を芋せた。僕は、䞭庭を芋䞋ろしおいたずきのように、圌の目尻にできた皺を眺める。

”これで、芋玍め”

「お前っお、やっぱおかしな奎だな。タむラヌ」

「そうか」

銖を傟げるず、ランスがサッず片手を差し出しお、僕の手を力匷く握った。暖かい枩もりが、手の平から心臓に䌝わる。

僕の胞が、ずくん、ず音を立おる。

䞀瞬、心の声が聞こえおしたうんじゃないかず思い、焊った。

「Godspeed神のご加護を」

圌特有の、倪い䜎音が、耳に心地良い。

「向こうに着いお、萜ち着いたら手玙を曞くよ。実家宛おで出せば良いんだろ」

「ああ、ロンドンであたりはしゃぎすぎるなよ」

「田舎者扱いするなよ」

「田舎者じゃないか」

思わず顔を芋合わせるず、お互いに笑顔になった。その瞬間、䞀際匷い颚が窓から吹き蟌み、机の䞊に眮かれおいた日蚘のペヌゞがめくられた。

最埌のペヌゞに曞かれた蚀葉を、僕が口にするこずはなかった——



ふず、振り返るずそこには黒いコヌトを身に぀けた懐かしい顔があった。

ロンドンの雑螏の䞭に、玛れるようにひっそりず建っおいるパブである。面積は小さいが、客の入りはたずたずで、冬だずいうのに人いきれで暑いくらいだ。

ビヌルを泚文する声で分かった。驚いお䜕も蚀えずに芋぀めおいるず、芖線を感じたのか、圌もこちらを振り返った。その瞬間、時間が䞀気に巻き戻される。

「タむラヌか」

「ランスだよな」

互いに確認し合うず、ランスはカりンタヌでグラスを受け取り、僕のテヌブルぞず歩いお来た。その迷いのない動きに、孊生時代の面圱が滲む。

「い぀ロンドンぞ来た」

「 今日だよ」

「マゞかよ、こんな偶然あるのか初めお入った店だぜ」

「僕もびっくりしたよ」

目の前の垭に、ランスが腰掛ける。コヌトの隙間から芗くネクタむずスヌツから、過ぎ去った歳月の銙りが挂っおきた。倧孊を卒業しお、もう五幎が経぀のだ。

手玙のやり取りは、はじめの䞀幎だけ。埌は、どちらからずもなく無沙汰になった。やがお音信䞍通になり、僕らの関係は途絶えおいた。

「しばらくいるのか」

「ああ、ずいうかこっちで暮らすこずになった。転職するんだ」

「そうか、じゃあたた䌚えるな」

グラス越しに芗く無邪気な笑顔が、僕の胞を甘く締め付ける。五幎の月日が流れおも、ただこんな気持ちが残っおいたなんお。

話題を探すふりをしお、圌から目をそらす。するず、その瞬間ランスがテヌブルの䞊に片手を差し出した。

「Godspeed神のご加護を」

「え」

「忘れたのか、お前が蚀ったんだぜ」

窓の向こうには雪が降っおいるのに、その瞬間だけ、倏颚が吹き抜けおいった気がした。

僕は、わずかに躊躇った埌、ランスの手を握り返した。

頭の䞭で、日蚘のペヌゞがパラパラずめくれる音がする。薔薇の匂いが、錻腔をくすぐる。

そう、あのずき蚀えなかった蚀葉を、僕は未だに、胞の䞭に抱えおいる。しかし、それを口にするチャンスは、きっずこれからもないだろうず思えた。

握り締めたランスの手の薬指には、指茪がはめられおいた——



ふず、振り返るずそこにはこちらを芋䞊げる少幎の姿があった。

䞀瞬、自分がどこにいるのかが分からなくなり、混乱する。少幎は、窓蟺に立぀僕を䞍思議そうに芋぀めたたた、おずおずず口を開いた。

「倕飯の支床ができたっお」

その声は、父芪ずは異なり、ハスキヌなハむトヌンだ。顔も、どちらかず蚀えば母芪の方に䌌おいる。僕は、圌を安心させるために、その蚀葉にゆっくり頷いおみせた。

「ありがずう、じゃあ䞀緒に行こうか」

腰を屈め、圌の目線に顔を持っおいくず、少幎が銖を傟げお蚀った。

「おじさん、䜕芋おたの」

ふっずデゞャブのような感芚に襲われる。䜕だっけこれず同じ状況を、昔にも経隓したこずがあるような 

「䜕も ええず、倜の庭を芋おたんだ」

「ふヌん、䜕かいたリスずか」

「 いや、䜕もいないよ。ただ、良い庭だなず思っおいただけさ」

少幎は僕の蚀葉を聞き、よく分からないずいうような衚情で肩をすくめるず、くるりず螵を返し、歩き始めた。僕も、圌の埌を远い階段を降りおゆく。

リビングルヌムぞ向かうず、枩かな食事の匂いが、錻腔に満ちるのを感じた。いや、食事の匂いじゃない。これは、家庭の匂いだ。

「タむラヌ、早く垭に぀け。スヌプを冷たすのは子䟛のするこずだぞ」

笑いながら、怅子に腰掛けたランスがこちらに向かっお蚀葉を投げおくる。その隣では、テレサが同じように埮笑み、僕の方を芋぀めおいる。

「ああ、悪い。すごいな、こんなご銳走久しぶりだ」

「テレサの料理は、控えめに蚀っおも最高だな」

「圌の芪友がロンドンから遥々やっお来るっおいうから、腕によりをかけお䜜ったのよ。さあどうぞ、奜きなだけ食べおね。ああ、ワむンも開けるわ」

結婚しお五幎埌、ランスは郜䌚を離れ、郊倖ぞ移り䜏んだ。やはり田舎の方が萜ち着くず芋え、圌の顔はすっかりく぀ろいだものになっおいる。

時間を経お、少しだけ䜓にも肉が぀いた。

たあ、それはお互い様ではあるが。

劻ず、子䟛ず、小さいけれども自分の奜きにできる庭。ランスは、今や平凡で埗難い幞犏を、すっかり手に入れおいた。

僕は、倉わらず窓の倖の庭を眺めおいるたただ。

ランスずテレサの䌚話に盞槌を打ちながら、僕はふっず、倏の匂いのする颚が吹き抜けおいくのを感じた。

芖線を感じお顔を向けるず、じっずこちらを芋぀める少幎ず目が合った——



ふず、振り返るずそこにはベッドの䞊で䞊半身を起こしたランスの姿があった。

い぀の間に目を芚たしたのだろう。僕は、窓蟺を離れお、圌のベッドに近づいおゆく。枅朔な真っ癜いシヌツから、ほんのりず薬品の銙りが挂っおきた。

パゞャマの䞋のランスの䜓は、少しだけ薄くなったように芋えた。

「起きお倧䞈倫か」

僕が尋ねるず、ランスは「ああ」ず䜎い声を出しお頷いた。

「今日は少し調子が良い。 悪い、少し肩を貞しおくれるか」

「了解」

ベッドの真暪で、腰を屈める。ランスは僕の䞡肩に手を぀いお、䜓を浮かせた埌、ゆっくりず䞋半身をずらし、瞁に腰掛けた。寝おいるうちに染み぀いたのだろう。圌の䜓からも、シヌツず同じ匂いがした。

病院䞭に挂う匂い。その䞍吉さを、蚀葉にするのは躊躇われた。

僕は、䜕か蚀おうか迷ったが、結局口を開くこずなく、無蚀で圌の隣に座った。䞊ぶず、䜙蚈にその䜓の薄さが際立った。

いや、䜓だけじゃない。存圚の垌薄さだ。

しばらく䜕も蚀わずに窓を芋぀める。晩秋の日差しが、庭に怍えられたプラタナスの葉を照らしおいる。

「テレサずマヌクはどうしおる」

やがお、僕がそう問いかけるず、ランスはゆっくりず頷いた。

「元気にしおるよ、昚日は二人で芋舞いに来た」

「もうしばらく䌚っおないな」

「マヌクの結婚匏のずき以来だから、10幎になるか。倏が来るたびに招埅しおたのに、お前が忙しかったからな」

「そうだな、忙しかった」

嘘だった。ただ、家庭の匂いを、圌の「庭」を感じるのが、蟛かっただけだ。悟られないようにランスの暪顔を盗み芋るず、孊生時代ず倉わらない鋭角的なシル゚ットに、深い皺が刻み蟌たれおいるのが分かった。

圌の顔を芋るのは、鏡を芗き蟌むのず同じだ。

倚分、自分の皮膚にも、同じだけの皺が刻たれおいるに違いない。

「手術は、い぀だっお」

「来週だよ。信じられるかこの俺がビビっおるんだぜ」

「䞍安になるのは圓然だよ、倧きい手術なんお、滅倚に経隓するものじゃない」

「できれば、経隓したくなかったな」

溜め息を぀く圌に向かっお、僕は迷いながらも片手を差し出した。

「Godspeed神のご加護を」

䞀瞬、ランスは驚いたような顔をしおこちらを芋぀めおいたが、やがおはにかむような笑顔になり、自分も手を差し出しお僕の手の平を握りしめた。

その力は、か぀お握手を亀わしたずきずは比べ物にならないくらいに匱く感じられた——



ふず、振り返るずそこには黒いスヌツに身を包んだマヌクの姿があった。

䞀瞬、ランスが蘇ったのかず思い息を飲んだ。子䟛の頃にはそれほど䌌おいるずは思えなかったのに、人間の遺䌝子ずは䞍思議なものだ。マヌクは、僕の芖線に驚いたような顔をしながら、「あの 」ず小さく口を開いた。

その䜎音も、圌にそっくりだった。

「もうすぐ匏が始たりたす」

「あ、ああ 有難う。すたないね、歳を取るずがヌっずするこずが増えお」

「いえ 倱瀌ですが、タむラヌさんですよね結婚匏にいらしおくれた」

ランスの曞斎は、圌の朔い性栌をそのたた写し取ったかのように殺颚景だった。芋映えのするものずいえば、壁に食られた家族の写真ず、窓から臚むこずのできる小さな庭だけだ。

「そうだったね、あのずきはただこんなに老いおはいなかったが」

二十幎の月日は、残酷だ。心に倉化がなくおも、䜓は確実に倉容しおゆく。歳月は、どのような人間の足元にも平等に流れる、川のようなものだ。

「父がい぀も話しおいたした。孊生時代の思い出話ずか」

「ろくな話じゃなかっただろう」

僕が笑うず、マヌクは少し困ったような顔をしお、それでも口元に笑みを浮かべた。その衚情に、再びハッずする。

季節は奇しくも、倏だった。

開け攟たれたカヌテンから、庭に怍えられたささやかな花々の銙りが挂っおくる。

「それじゃあ、䞋でお埅ちしおたす。母も、あなたず話したがっおいたした」

「ああ、すぐ行くずテレサに䌝えおくれ」

マヌクは埮かに䌚釈し、郚屋を出お行った。その背䞭に向かっお、僕は叫びたい気持ちになった。

僕は、再び窓蟺に立぀ず、圌の造った「庭」を芋぀めた。そしお、鞄から䞀冊のノヌトブックを取り出しお、静かにペヌゞを開いた。

そこには、若く血気盛んな文字で、ただひたすらに率盎な感情のみが綎られおいた。

颚が、ペヌゞをパラパラずめくる。

やがお、最埌のペヌゞを開くず、僕はそれを根本からビリビリず砎り、シャツのポケットぞず入れた。

棺ぞ手向ける花の代わりに。

぀いに蚀えなかった蚀葉を、圌に䌝えるために——

いいなず思ったら応揎しよう