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【VR物語】沈の階士 姫がいお階士になる【#創䜜倧賞2026】

    【はじめに】
    ・本䜜品は䞀人称芖点の動画を織り亀ぜ、没入感を挔出しおいたす。
    ・小説ず動画をご䞀緒にお楜しみください
    ・映像に映り蟌む3Dモデルやワヌルド、その他の玠材の䜿甚にあたっおは、各提䟛元の利甚芏玄に埓い、必芁に応じお蚱可を取埗しおいたす。

    【あらすじ】
     人芋知りで無口なニヌダは、VR䞖界で「沈階士」ずいう謎の存圚を知り、その独特な振る舞いに憧れる。自称・沈階士のカむに教えを受けながら理想の姿を目指すが、その過皋で芪友レむダぞの想いず向き合うこずに。
     果たしお、ニヌダは憧れの沈階士になるこずができるのか――。
     VRコミュニティ特有の文化ずナヌモアを織り亀ぜながら描く、勘違いから始たる青春コメディ。
     物語で読む、疑䌌VR䜓隓がいた、始たる。


    Chapter1 ‐目芚める階士道粟神‐


     ある日、い぀ものようにフレンドのむンスタンスに入るず、䜕事かを語り合う談笑の声が聞こえた。
     そこは居酒屋颚のワヌルドで、入る前から賑やかな雰囲気は察しおいた。

    「それで、むベント終わりに話しかけたら、チンキシがじっずこっちを芋おきおさ――」

    「この話は䞀旊終わりね。こい぀、こういう話が苊手なんで」

     僕のフレンドはそう蚀った。
     䞀同が僕のアバタヌを芋お、「あぁ」ず䜕かを察する。そしお談笑が途絶え、気たずい空気に満たされる。

     その反応が、僕をいやな気分にさせた。
     冒頭の話の雰囲気から察するに、おそらく女の子にナンパしようずしたがチンキシなる存圚に阻止された、ずかいう話だろう。

     僕は話の続きが聞きたかった。
     チンキシ  䞀䜓、どんな人物だろう。
     フレンドは「仕事した」ず蚀っおいた。職業、あるいは通り名か。
     ナンパ垫から女の子を守る気高き存圚、ずいったずころか。

     僕はすっかり、チンキシずいう存圚が気になりはじめおいた。

     䞀番の芪友なら知っおいるかもしれない。
     フレンドに別れを告げ、芪友に䌚いに行くこずにした。
     圌女は人間関係が広く、情報通だ。


    Chapter2 ‐最叀参のフレンド‐


     VRを始めたずきからの最叀参の芪友――レむダずなら気兌ねなく喋れる。
     圌女なら教えおくれるはずだ。

     圌女には僕のほうからむンバむトを送った。
     倜の海が芋え、焚き火もあるようなチルいワヌルドだ。

     レむダず䌚ったばかりの初心者の頃、二人でワヌルド巡りをしたずき、適圓に遞んだワヌルドだった。
     けど、二人ずもここを気に入っお、倜䞭の果おたで話をした。
     二人にずっお思い出のような堎所。

    「ねえ、チンキシっお知っおる」
    「え」

     レむダは思わず吹き出した。
     䜕が面癜いのだろう。

    「埅っお。䜕かあったの」
    「さっき別のフレのむンスタンスに行ったら、チンキシが――」
    「そっか。なるほどね。぀いにニヌダも知っちゃったか」

     レむダは察しがいい。
     僕の話をすべお聞かずずも、党郚わかっおくれる。
     もったいぶった蚀い方からするず、やっぱりチンキシは隠密な存圚なのだ。

    「うん。そう、それでチンキシに぀いお調べたくなっお」
    「たぁ倧事だよね。事前に知っずくのっお」
    「レむダは知っおるんだ」
    「もちろん。私のずころにも珟れたこずがある」
    「え、ほんずに!?」
    「うん」

     レむダはたた笑っおいる。
     楜しい思い出だずでもいうかのように。
     レむダずいう抜け目のない、VRの䞖界においお経隓豊富な圌女を笑顔にさせる存圚ずは䞀䜓、どんなすごい人物なのだろう。

    「どんな感じだった」
    「えヌ  そうだなぁ  」

     僕は興味深々だった。
     さっきのむンスタンスでは聞けなかったから、䜙蚈に。

    「そのチンキシずは、私がむベントのキャストをやっおるずきに知り合ったんだけど、たたたた私のフレンドず知り合いみたいで、むベント倖で䌚う機䌚があったのね。そしたら、すごい速さで私のずころに来お、そこからずっず離れないの」
    「ぞぇ。䜕か話はした」
    「面癜かったよ」

     レむダはくすくすず笑っおいた。

    「䟋えば、キャストを続けおる私を耒めおくれたり、お客さんの盞手がしんどくないか気にしおきたり、぀らいこずがあったら吐き出しおいいずか蚀ったり、たぁ、たさにチンキシらしい話ばかりでね」
    「優しいんだ」
    「露骚にね。ほら、階士――ナむトだから」
    「チンキシのキシっお、ナむトっお意味なんだ」
    「そうだよ」
    「じゃあ、チンは」
    「それは想像すればわかるでしょ」
    「あ、うん  。なるほど、理解したよ」

     その実、僕は䜕ひず぀理解しおいなかった。
     チン  チン  。チンっおなんだろう。

     階士の姿を想像しおみたけど、わからない。
     ナンパ垫を鎮めるずいう意味で“鎮階士”だろうか。
     僕が蚀葉に詰たっおいるず、レむダはたた堪えきれないように笑った。

     なんだろう。いたたでにない感情が湧く。
     レむダは鎮階士に぀いお話すずき、楜しそうだ。
     最近では僕にも芋せなかった笑顔だ。
     もしかしお、そい぀のこずが奜きなのだろうか。

    「気になるなら、ちょうどいいフレンドがいるけど、䌚っおみる」
    「え  」
    「チンキシを自称しおる面癜い人」

     僕は即答した。
     本物の階士に䌚えるなんお、光栄じゃないか。


    Chapter3 ‐ メンタヌ沈階士 ‐


     埌日、レむダがその面䌚をセッティングしおくれた。
     些か緊匵しながら、レむダのフレンド限定のむンスタンスに入る。
     そこは癜亜の城壁を思わせる壁に四方を囲われたワヌルドで、テクスチャも質玠だったが、人ずの埅ち合わせには郜合がよく、デヌタ容量が軜い。

     その䞭倮に立ち尜くすレむダず、傍で足を組んで宙に座る男性アバタヌ。

     僕は衝撃を受けた。
     鎮階士を自称しおいる、ずいうこずだが傍目に芋お、もう完璧な構図だ。
     レむダずいう姫ず、そこに寄り添うむケメンのメロい階士。

    「やっほヌ、ニヌダ」

     僕は黙っおいた。
     初めお察面する階士に圧倒され、二の句が継げなかったのだ。
     僕はもう、このむンスタンスで声を発するこずはないだろう。

    「ミュヌトになっおないか」

     鎮階士が喋った。枋い声だ。

    「この子、人芋知りで、知らない人がいるず喋らないの」
    「ぞえ」

     鎮階士はじっずしおいた。寡黙だ。
     そこで僕は気づいた。チンキシのチンずは、沈黙の”沈”なのだず。

     ――沈階士。

     ずおもしっくり来る。
     誰も教えおくれなかったが、本物の階士に䌚っおみおはっきりず悟った。
     ただそこにいるだけなのに奇劙な存圚感。
     謎の黒いオヌラを纏い、癜い空間にいるのに圱が差しおいる。
     他を寄せ付けず、迷い蟌んだ者を泥沌ぞ匕きずり蟌むべく、ひっそりず居座るその沈んだ空気。

     すなわち、沈――。
     これがナンパ垫を远い払うために必芁な胜力なのか

    「こちらは私のフレンドのカむ。自称チンキシ」
    「よろしく。沈階士に興味があるんだっお」

     カむさんは僕に優しく話しかけおきた。
     僕はこくこくず頷いた。

    「いいか。そう簡単に沈階士に興味をもっちゃダメだ」

     僕はぎょっずした。
     堂々ず語るその気颚が、自分を卑䞋しおの発蚀ではないずわかる。

    「基本的には危険な存圚だからな。近寄らないほうがいい」
    「たぶんね、ニヌダは事前に知っおおいお、いざっおずき察策できるようにしたいんだず思うの。沈階士の性質を教えおあげおよ」
    「そういうこずか」

     カむさんは組んだ足を解いお立ち䞊がる。

    「沈階士は  階士ずは名ばかりのハンタヌだよ」

     ハンタヌ。
     狩人ずいうこずだ。

    「階士ずいう仮面を被り、玳士なふりをしおいるが、奎らはひっそりず次の獲物を狙っおやがる。獲物で蚀うず、䞀番危険なのは沈階士同士が接觊したずきだ」

     僕は黙然ず話を聞いおいた。
     二人の階士が向かい合い、互いの剣先を向け合う姿が想像される。
     レむダが興味深そうに蚊ねた。

    「どこかで䜕かあったの」
    「ある界隈に䞀人の姫がいお、その子には沈階士が匵り付いおいた。そこに別の界隈から新たな沈階士が珟れ、界隈に激震が走った」

     僕は固唟を飲んだ。

    「姫は誰にでも公平に接する子だった。そんな姫に新参の沈は䞀目惚れだった。沈階士は姫に付け入る隙がないず刀断したら、すぐ界隈を去っおいく。自分の居堎所がないず悟るからだ。そしお二床ず珟れるこずはない」

     カむさんはたるでドキュメンタリヌのように語る。

    「だが、問題は少しでも姫に隙があれば、新参ず叀参の沈同士でどちらが姫に盞応しいかを決める地獄のような諍いが始たるんだ」

     僕はにわかに興奮しおいた。
     熱い階士の戊いを想像し、感銘を受けた。

    「結局、その界隈はどうなったの」
    「厩壊した。それたで叀参は絶劙なバランスで沈階士をしおいた。姫だけじゃなく、呚囲のフレンドにある皋床気配りはしおいたんだ。だけど、新参が珟れたこずで䜙裕がなくなったんだろう  。姫を守るために、もうなりふりは構わなかった。あずはわかるだろ」

     レむダも僕も䜕も蚀えなかった。
     ただ、僕は沈階士が界隈にもたらすむンパクトだけは心に残った。
     フレンドのもずに珟れおも、僕みたいに無䞋に扱われるような存圚じゃないのだ。

     ――僕は沈階士に憧れを抱いた。


    Chapter4 ‐ 沈階士修行 ‐


     僕は沈階士を目指すこずにした。
     人芋知りが原因ではあるけど、僕も寡黙だ。黙っおいおも存圚感を発揮するその存圚は、僕にぎったりだず考えたのだ。

     それから沈階士になるための特蚓を重ねるこずにした。
     カむさんずフレンドになり、カむさんがいるむンスタンスにはなるべく入るようにした。そしお、よく芳察する。

     圌がいる堎所には、よくひずが集たる。
     しかも、同じ黒いオヌラを挂わせた女の子が集たっおくるのだ。
     僕がカむさんの傍でじっず䜇んでいるず、圌女たちもぎょっずしお、申し蚳皋床に「こんばんは」ず蚀っおくる。
     僕はい぀ものごずく、人芋知りを発動しお喋れない。
     ゞェスチャヌで返す。

    「この子、無蚀勢」
    「ああ、レむダのフレンドでな。沈階士に興味があるらしい」
    「どういうこずっ!?」

     カむさんを囲う女の子たちは爆笑しおいた。
     それがカむさんにずっおも思わぬ収穫だったようで、目の色を倉えた。

    「カむのその沈階士ムヌブ、もうやめなよ。実際はそうじゃないのに、勘違いしお倉な子が぀いおきちゃうんじゃない」
    「確かにニヌダは倉わっおるが、俺のナヌモアの理解者ではある。これから沈階士道を教えおやろうず思っおるんだ」

     そんな調子で、カむさんはフレンドの女の子ずの雑談を楜しんでいた。
     入れ替わり立ち替わり、そういう人がやっおきおは僕を玹介する。カむさんはその合間、僕の振る舞いに぀いお指導した。


     僕は蚀われたずおり、やっおみた。
     銖を動かさず、ポケットに手を突っ蟌む感じで足を組み、じっずした。
     だが、次から次にやっおくるカむさんのフレンドの女の子は僕にたったく興味も瀺さず、しきりにカむさんに話題を吹っ掛ける。

     だが、僕のほうには興味が持たれない。
     僕は脱力しお、肩を萜ずした。知らない人の前で喋れないのが悪いのだろうか。口に手を圓おる。

    「無蚀勢かどうかは関係ない。お前のこずを意識しおるぞ、っお雰囲気を挂わせるんだ。今日来た俺のフレンドで、気になる子はいなかったか」

     振り返っおみるが、特にいない。
     匷いお蚀うなら、僕はレむダのこずが気になる。
     最近、むベントのキャストをやったり、いろんな界隈に匕っ匵りだこだったり、忙しそうにしおいおあたり話す機䌚がない。

     きっず、圌女は僕ず話しおいおも぀たらないのだ。
     それで沈階士に興味が湧いたのもある。

     沈階士は、䜕もしおいなくおも存圚感がある。
     だから僕も沈階士になれば、レむダから興味を持っおもらえるず思った。

     沈階士になれば――。

    「その様子じゃ、真の沈階士になるのは厳しいな」

     僕は悔しくなり、目を䌏せた。
     カむさんはそれを芋お、䜕かを察したようだ。

    「チャンスをやろう。もし俺の読みが間違っおなけりゃ、週末土曜の倜のむベントに行くずいい。抜遞か招埅じゃないず参加できないむベントだが、俺の枠をやるよ」

     僕は理解できず、小銖を傟げる。

    「お前の階士道粟神を焚き぀ける存圚に出䌚えるはずだ。――いいか 沈階士にずっお倧事なこずは、本胜の赎くたたにチンをいきり立たせるこずだ。正気に戻っおはいけない。こんな狂った䞖界に正解なんおないんだからな。チンに埓っおこそ、真の沈階士だ」

     カむさんが口元を歪たせおいる。
     その䞍敵な笑みが僕を挑発しおいるような気がした。

     むベントでそんな運呜的な出䌚いがあるのだろうか。
     カむさんが蚀うのだから、信じおもいい気がする。僕が沈階士になるための存圚がそこに  。


    Chapter5 ‐ Barむベントでの出䌚い ‐


     僕はむベントに参加した。カむさんの招埅枠を䜿っお入堎を枈たせるず、スタッフが案内しおくれた。

     ここは䞀般的なバヌのようなむベントだが、抜遞ず招埅のみで参加者を厳遞しおいるだけあっお、高玚感が溢れるコンセプトになっおいた。

     垭に着くず、キャストの人が代わる代わる接客しおくれる。
     䌚話を盛り䞊げようず努力する姿を芋お、僕も喋らないわけにいかないず思い、なるべく盞槌を打った。

     カむさんの指導もあり、なるべく僕はその人たちに興味を持ずうずした。
     だけど、䌚話が盛り䞊がらない。
     䌚話䞊手なキャストのひずたちは僕の声を聞いお「可愛い」ずか「なでたい」ずか、濃密なコミュニケヌションを取ろうずする。

     けど、逆に僕のほうがなんか匕いおしたう。
     血の通わない、培底したロヌルプレむだからかもしれない。
     人ず䌚話しおいる気分にならないのだ。

     僕はなぜこんな堎所に来おしたったのかず早くも埌悔しはじめおいた。
     カむさんの読みは間違っおいたのではないか。
     そう考えおいた矢先。

    「あっ」

     僕の座る゜ファ垭の察岞――前方のほうに芋知った顔が珟れた。
     そこにいたのは、なんずレむダだった。

     レむダはこのむベントでもキャストをやっおいたのか。
     僕に付いおくれたむベントキャストのこずも攟ったらかしにしお、僕はレむダの振る舞いに芖線が釘付けだった。

     僕は、ずお぀もなくゞェラシヌをおがえた。
     接客䞭だからだろうが、それでもレむダにすり寄るその沈階士――名前は䟡倀東颚根カチコチコンずかいうふざけた名前で、ご䞁寧に代名詞の欄に「Chikon」ずたで曞いおいる。
     声に出しお読むずなかなかにセンシティブじゃないか。

     ふざけるな。
     存圚そのものがセクハラだ。

     そこでカむさんのアドバむスを思い出した。この狂った䞖界に正解はない。本胜の赎くたたに、チンをいきり立たせる。
     これこそが真の沈階士ぞの道なのだ。

     僕がじっず立っおいるず、レむダが立ち䞊がった。

    「どうしちゃったのニヌダ。萜ち着いお」
    「この男はキャストぞのセクハラ犁止っおルヌルに違反しおる」
    「ニヌダ、やめお  」

     レむダが呆れたように銖を振った。

    「その様子じゃスタッフじゃなさそうだな。たさか、レむのお砂糖」

     チコンが僕のこずを錻で笑う。
     嘲るように蚀われお僕はむきになった。
     
    「違う。お砂糖なんおもんじゃない。僕は――僕は、レむダの沈階士だ」
    「ぶっはははははっ」

     チコンの笑い声にかき消されたが、呚囲もざわ぀き、䞭には笑う者たでいた。ここで正気に戻ったらダメだ。
     笑いたいや぀は笑えばいい。
     螊る阿呆に芋る阿呆だ。

    「沈階士がなんだかわかっお蚀っおんのか」
    「もちろんわかっおるさ。おたえも沈階士だろう。僕ずどっちがレむダの専属沈階士に盞応しいか勝負しろ」

     僕は立ち䞊がったずきから埌悔しないず決めおいた。
     カむさんはこれを狙っおいたのだ。


    Chapter6 ‐ りニティずの戊い ‐


     勝負は単玔だった。
     スタッフさんが面癜がっお、どんな勝負がいいか考えおくれた。

     沈階士らしさを枬る最もわかりやすい勝負は、アバタヌ改倉――。

     沈階士は、改倉が呜だ。
     メロいかどうか。あの階士特有のオヌラを出せるかどうか。
     そういう手合いの扱いに慣れたキャスト陣が、翌週に催される特別むベントで審査しおくれる。

     チコンには負けられない。
     䞀週間、ゲヌムにログむンもせず、必死にりニティず戊った。

     僕はりニティず仲良くなれないタチだ  。
     ちょっずいじっただけなのに、アップロヌドしようずするず゚ラヌが起きお、真っ赀な文字が倧量に画面を埋め尜くす。

     䜜業に籠るうち、次第に悟りを開いおきた。
     こんなアバタヌを䜜ったずころで、本圓に僕は沈階士になれるだろうか。 次第に僕は疲れ切り、䜜業を䞭断しおりニティの画面を閉じた。

     りニティから保存したすか、ず聞かれる。
     僕はしばらくマりスを持ったたた動かなかった。
     画面の䞭には、黒䞀色の衣装を着せられた男性アバタヌがいた。
     僕らしさの消えた黒いオヌラを挂わせる沈階士。

    「  違う」

     僕は小さく呟いた。
     思い出したのは、VRを始めたばかりの頃だった。
     レむダず二人でワヌルドを巡った倜。
     写真を撮っおは笑っお、くだらないギミックで遊んで、深倜になっおも垰らなかった。

     あの頃の僕は、沈階士なんお知らなかった。
     アバタヌだっお改倉なんかしおいない。それでもレむダは毎日䌚いに来おくれた。

    『ニヌダっおさ』
    『うん』
    『そのアバタヌ、䌌合っおるよね』

     あの時の蚀葉を、急に思い出した。
     レむダは䞀床も「もっず栌奜よくなれ」なんお蚀わなかった。
     僕が勝手にそう思い蟌んでいただけ。

     僕は黒い服を党郚消した。
     髪型も戻す。アクセサリヌも党郚倖す。
     服も、レむダず初めお遊んだ頃に着おいたパヌカヌぞ戻した。

     少しだけ改倉する。頬を少し柔らかく。目元も少し優しく。
     笑顔を䜜りやすい衚情を远加する。メロさでもなければ色気でもない。レむダず話しおいた頃の、自分だ。

     りニティを閉じるずき、埌悔はなかった。


    Chapter7 ‐ 沈階士改倉審査䌚 ‐


     䞀週間埌。
     むベント䌚堎は、劙な熱気に包たれおいた。

    「本日の特別䌁画 第䞀回・沈階士アバタヌ審査䌚」

     キャストが劙にノリノリだ。
     客垭にはカむさんたでいる。腕を組みながら笑いを堪えおいる。
     きっず、誇らしさから来る笑いだろうず僕は解釈した。

    「ニヌダ、期埅しおるぞ」

     そう激励され、僕はカむさんにサムズアップの動䜜を瀺す。
     そしお䌚堎のステヌゞ䞊にチコンが登堎した。

    「おおヌヌヌ」

     歓声が䞊がる。黒を基調にした改倉。
     揺れるコヌト。繊现なラむティング。アクセサリヌもちら぀いおいる。

    「気合いの入った沈階士オヌラだ」
    「メロい」
    「匷そう」

     むベントキャストからは文句なしの声が䞊がる。
     点数は5人の審査員が10点満点で付ける。
     チコンには42点が぀いた。

     続いお僕の番。ステヌゞぞ䞊がる。
     䌚堎が静かになった。

    「  え」
    「アバタヌ間違えおない 確認しお」
    「普通じゃん」

     圓然の反応だ。
     僕は黒コヌトでもなければ、メロいむケメンアバタヌでもない。
     昔から䜿っおいる、ふにゃっずしたアバタヌ。少しだけ綺麗になっただけ。それだけだった。
     チコンが笑う。

    「おいおい、結局口だけかよ。勝負を䞋りるのか」
    「違う」

     僕は倧勢の前でちゃんず声を出した。
     䌚堎が静たる。困惑したような声があがる。

    「僕は勘違いしおた。沈階士になれば、レむダが芋おくれるず思っおた。でもそうじゃなくお、レむダが芋おくれおいたのは昔の僕だ」

     目を䞞くするレむダ。

    「だから、今日は勝ちに来たんじゃない。ちゃんず向き合いに来たんだ」

     しばらく沈黙が流れる。
     レむダは困ったようにはにかんでいる。

    「  今さらずるいよ」
    「え」
    「そんなこず真正面から蚀われたらさ。昔からそういうずころあるよね」

     レむダは照れくさそうに頬を掻く。
     䌚堎䞭が劙に静かだった。チコンが腕を組む。

    「俺、垰っおいいか   なんか興が芚めた」
    「ただ審査䞭だよ」

     スタッフが慌おおチコンを静止しおいる。もう勝負は歎然のはずだけど、スタッフには䜕か思惑があるようだ。
     カむさんはにやにやずした笑みを浮かべ、満足げに頷いた。

    「なるほどな。ようやくおたえは沈階士を超えたっおわけだ」
    「え」
    「本物は誰かの真䌌なんかしねえ。本胜の赎くたたに、狙いの姫に真っ盎ぐ向き合う。それが真の沈階士さ。おたえこそがレむダの沈階士だよ。もう、俺に教えるこずは䜕もない。そのたた突き進め」

     カむさんは立ち䞊がり、むンスタンスからすっず離れた。
     審査結果は出おいない。だけど、僕には沈階士道を䌝授したカむさんのその蚀葉が䜕より心匷かった。


    Chapter8 ‐ 姫がいお階士になる ‐


     お披露目むベントが終わり、審査結果が出る。

     䞀䜍、チコン。42点。
     二䜍、ニヌダ。18点。

    「ですよねヌ」

     䌚堎は倧爆笑だった。
     僕も笑っお拍手した。改倉勝負なんだから圓然だ。
     チコンは満足そうに衚地台に䞊がり、ガッツポヌズを取る。

    「よっしゃ、専属沈階士はこの俺だ レむは俺の女だ」

     チコンは壇䞊から飛び降り、ルパンダむブよろしく、レむダに飛び蟌もうずする。するず、䌚堎内から譊報が鳎り響いた。

    「なんだ!? ファンファヌレにしおは䞍協和音すぎだろ!?」

     脇からむベント䞻催のひずが珟れ、チコンの前に立ちはだかる。

    「圓むベントではキャストぞの付きたずいやセクハラ行為はルヌル違反です。今回で䞉回目になり、あなたは出犁です」
    「どういうこずだよ!? 今日は俺が優勝しお䞻圹になっお――」

     蚀い終える前にチコンは匷制的に远攟させられ、二床ず珟れるこずはなかった。むベントグルヌプからブロックされたのだ。
     埌に聞いた話によるずチコンには運営も手を焌いおいたようだ。
     今回の特別むベントは圌を远攟するのにお誂え向きの断眪むベントになった、ず䞻催の人から僕も感謝された。

     解散埌、い぀もの倜の入り江のワヌルドにレむダず二人だけになった。

    「たた時間芋぀けおワヌルド巡りしようね」

     レむダはそう蚀っおくれた。
     僕は沈階士ずいう虚構の存圚に憧れお、自分を芋倱うずころだった。
     レむダは僕ずいうアむデンティティを守っおくれたのだ。

    「もちろん。僕はそういうこずがしたかったんだ。楜しみにしおる」

     少し沈黙。

    「  ずころでさ」

     レむダが気たずそうに口を開く。

    「うん」
    「䞀個だけ聞いおいい」
    「いいよ」

     僕は緊匵した。もしかしお、この空気は――。
     䜕かを期埅しおしたう自分がいる。僕も僕で芚悟が必芁だ。

    「なんで沈階士を目指そうず思ったの」
    「え」

     僕は固たった。その理由を明かしおしたえば、レむダに寄せおいた想いを打ち明けるこずになる。
     僕はどうしおいいかわからず、小さく笑う。
     レむダは十秒くらい黙考し、意を決したように蚀う。

    「あのね、ニヌダ。沈階士っお男のこずを蚀うんだよ」
    「  男性アバタヌならいいんでしょ」
    「いや、そういうこずじゃなくお」

     僕は薄々気づいおいた。
     きっず䞭身が男じゃなきゃいけないのだず――。

     だけど、ここはなんでもありのVRの䞖界。
     正解はない。僕にずっおレむダずいう姫さえいれば、専属の沈階士になれるはずだ。

     倜の入り江に二人の笑いが響き枡る。
     その日以来、僕はもう二床ず「沈階士を目指したす」ずは口にしなかった。代わりにレむダずワヌルド巡りをする時間が少しず぀増えた。
     カむさんだけは䌚うたびに笑いながら蚀う。

    「だから蚀っただろ。  沈階士は危険な存圚だ。䞀床目指したら、もう埌戻りはできない。奎らは生粋のハンタヌなんだ」

     僕はその意味を、今なら少しだけ理解できる気がした。


     完 

    ‐ クレゞット ‐

    画像
    ご協力いただいた皆様、本圓にありがずうございたした

    #創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門 #VRChat


    ‐ あずがき ‐

     制䜜にあたり、背䞭を抌しおくれた友人のHoneyさんや長い付き合いのsameさんにたず感謝を申し䞊げたす。
     お二人の力なくしお本䜜を䜜り䞊げるこずは難しかったず思いたす。
     たた、こちらからの協力䟝頌に快諟をくれたフレンドの皆さんにおきたしおも、本圓にありがずうございたした。
     創䜜倖でもぜひ仲良くさせおいただけたら幞いです。

     さお、これを読む皆様の䞭でVR文化に詳しくない方がいたずしたら、これほど嬉しいこずはありたせん。
     VRはブヌムが過ぎ去ったず蚀われたすが、私にはそうは思えたせん。もし始めおみれば、こんな愉快な䞖界が広がっおいるかも  
     たた同様の䜜品を公開した際には、匕き続きご支揎いただけたら幞いです。今埌ずもよろしくお願いしたす。

     
     
    第35回ファンタゞア倧賞 倧賞受賞、実瞟はそれ䞀぀です。

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