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久保田利伸とたどるR&B史 #4|Contemporary R&Bは、もう「ジャンル」の外へ

    第1回のQUIET STORM、第2回のNEW JACK SWING、第3回のNEO SOUL。

    ここまで時代ごとのR&Bのムーブメントをたどってきた、FM COCOLO「TK40_Still_Groovin’〜Supreme〜」。

    第4回のキーワードは、Contemporary R&Bでした。

    直訳すれば「現代的なR&B」。

    でも久保田さんの話を聞いていると、単純に「今っぽいR&B」という意味ではないようです。

    ここまで取り上げてきたQUIET STORMも、NEW JACK SWINGも、NEO SOULも、それぞれその時代におけるContemporary R&Bの一部だった、と。

    つまり特定のサウンドを指すというより、その時代の音や流行を吸収しながら、現在進行形で姿を変えていくR&B。
    今回はそんなR&Bの広がりを、80年代から現在まで一気にたどる1時間でした。

    R&Bが「ポップス」になっていった時代


    最初はWhitney Houston。

    この曲が収録されたデビューアルバムを、当時21歳だった久保田さんは、馴染みのレコード店で勧められて買ったそうです。

    R&B好きの久保田さんに薦められた一方、そのアルバムはお店では「ポップスの一押し」として店頭に並べられていた。

    まさにR&Bが、R&Bファンだけのものではなくポップスの中心へ入っていった時代だったということなのでしょう。

    そして面白かったのが、日本盤ジャケットの話。

    海辺に立つWhitneyの、スタイルの良さがかなり目立つ写真。

    久保田さんも当時、

    「すげえな、スタイルいいな」

    と惹かれて買ったそうです。

    ところが数年後、アメリカで同じアルバムを見たらジャケットが違う。

    アメリカ盤は普通に服を着た、少しアフリカンな雰囲気の写真だったそう。

    つまり、あのスタイルの良さを前面に出した写真は日本盤独自。

    そこで久保田さん、

    「洋楽部、大成功ですね」。

    実際その写真に惹かれて買った人間がここにいるんだから、レコード会社の洋楽部の人、さすがだなという話でした。

    こういう当時のレコード会社の売り方まで含めたエピソードが出てくるのも、この番組の面白いところです。

    続いてMichael Jackson。

    Michael Jacksonについては、「King of R&B」ではなく「King of Pop」と呼ばれるようになったことにも触れていました。

    R&Bという枠を超えて、歴史的にはBeatlesと並べられるような存在になった。

    Whitney HoustonとMichael Jackson。

    この2人が、R&Bを「こっち系の音楽が好きな人」だけのものではなく、誰もが聴くポップスへ押し広げていった存在だったという流れです。

    “R&Bをポップにする天才” Babyface

    続いて話題に上がったのが、プロデューサーの存在。
    中でも久保田さんが、
    「R&Bを大ヒットさせるために生まれたような人」
    と評していたのがBabyface。

    もともとThe Deeleというファンクバンドの一員だっただけあって、ベースにはしっかりR&Bの匂いがある。
    でも一方で、R&Bをポップスへ持っていくことも、ポップスをR&Bへ仕上げることもできる。

    90年代はあまりに忙しく、曲を頼んでも「半年先にできるかな」というほどだったそうです。
    Madonnaの曲まで手がけるような人でありながら、根っこはしっかりR&B。
    90年代のヒット曲を振り返ると、改めてBabyfaceの存在の大きさを感じます。

    Mariah Careyの「黒い」こだわり


    そしてMariah Carey。

    久保田さんの言葉で印象に残ったのが、
    「この人の趣味は黒い」
    という話。
    曲も歌も、そしてトラックへのこだわりも、40年間ぶれない。
    さらに久保田さんが、自身のコンサートの開演前に新旧のR&Bヒット曲を流しているのは、Mariah CareyのコンサートをMadison Square Gardenで観たことがきっかけだったそうです。

    開演前からCameo、The S.O.S. Band、The Gap Bandなどがガンガン流れていて、お客さんが踊っている。
    でもそこにいるのは、いわゆるR&Bマニアだけではなく幅広いポップスファン。

    その光景を見て、
    「この黒い主張、いいな」
    と思ったのだとか。
    そして自分のライブでも、開演前にR&Bを流すようになった。
    この話をするとき、「これは言いたくなかったな〜!」と、ちょっと悔しそうに明かす久保田さんが印象的でした。

    こういう“今まであえて話してこなかったこと”がふっと出てくる瞬間に、こちらも「この番組、聴いててよかったー」と思わされます。

    久保田利伸自身も、ポップスの中でR&Bを貫いてきた


    続いて流れたのは、
    久保田利伸 / CANDY RAIN。
    Mariah Careyに負けず劣らず、自分もポップスフィールドで頑固にR&Bをやってきた、と久保田さん。
    この番組を4回聴いてくると、久保田利伸という人が日本のポップスの中でやってきたことも、だんだん立体的に見えてきます。
    アメリカのR&Bの変化をリアルタイムで追いながら、それを単なる模倣ではなく、日本語のポップスとして成立させてきた。
    40周年の今、自分自身の曲もそのR&B史の中へ並べながら語る。
    この番組ならではだと思います。

    そしてR&Bは、カントリーへ


    後半は一気に現在へ。

    今のR&Bシーンにおける大きなムーブメントといえば、明らかにAfrobeats。
    ただしこれは最終回でたっぷり扱うということで、今回はさらに広く「現在のポップス」を見渡します。
    そこで出てきたのが、なんとカントリー。

    『COWBOY CARTER』は「カントリーのテイストを取り入れたR&B」どころではなく、真正面から作ったカントリーアルバム。
    そして結果的にグラミー賞のAlbum of the Yearまで獲得しました。
    久保田さんは、Beyoncéが以前カントリー系のアーティストと共演した際、かなりブーイングを浴びたことにも触れていました。
    そして、
    「あの時のことを逆手に取って、カントリーアルバム作ったろ、みたいなことだったんじゃないかな」
    と、あくまで自身の想像としながら話していました。

    R&Bとカントリーは一見かなり離れたところにあるように見える。
    でもヒップホップの要素を取り入れたカントリーは以前からあったし、その逆方向の動きも出てきている。
    ミクスチャーが当たり前になった今、ジャンルの境界自体がどんどん曖昧になっているということなのでしょう。

    Ne-Yoまでカントリーをやる時代

    これも、かなりカントリー。
    Ne-Yoといえば明確にR&Bアーティストですが、もともとポップなメロディーも、ダンスヒットも自在に行き来する人。
    久保田さんも、Ne-Yoならではだからこそカントリーまでできてしまうのではないか、と話していました。

    興味深かったのが、最近のR&Bについての話。
    放っておくと、アンビエントで少しモヤっとした「今どきのR&B」的な方向ばかりになってしまう。
    BeyoncéやNe-Yoには、むしろそこへ従いたくなかった部分もあるのではないか、と。
    「今流行っているR&Bの音」をやることだけがContemporary R&Bではない。
    その定型から飛び出すこともまた、Contemporaryなのかもしれません。

    現在の音と、オールドスクールがまた混ざり始める

    CM後は、再び現在のR&Bへ。

    デビューから約20年。
    いろいろな局面がありながらも、ずっと「Today’s R&B」をやり続けているChris Brown。
    久保田さん曰く、とにかく時代の音に敏感。
    そしてフィーチャリングされているWizkidは、次回取り上げるAfrobeatsの重要人物。
    「来週ちゃんとやりますから、今日のところは名前を覚えておきましょう」
    という流れで、最終回への予告にもなっていました。
    続いて、

    今の時代には逆に珍しい、深いベルベットボイス。
    これまでのGiveonは、少しモヤっとしたToday’s R&Bのトラックに、あの甘く深い声をたゆたうように乗せるスタイルが基本だった。
    ところが今回は、ファンク/パーティーブギー的なトラック。
    久保田さんはそこにCharlie Wilson、The Gap Band的な匂いを感じていました。
    今の時代にレトロソウルが出てくる。
    それが逆に新しく聞こえるというのも楽しいところ。

    Chaka Khan × Snoop Dogg

    ここで久保田さん、Chaka Khanを
    「Queen of Funk Soul」
    と紹介。
    そのあとに、

    「そんな言い方あるかな。まあ僕が言うんだから許してください」

    みたいな感じで続けていて、ここはかなり好きでした。
    40年ずっとR&Bを追い続け、自分自身もその歴史の中で音楽を作り続けてきた人が、

    「僕が言うんだから」
    とさらっと言う。

    これ、私としては大変萌えました。
    自分のことを、過大にも過小にもせず、正しい目線と分量でさらっと自負できる人には強さを感じます。
    こういう人、好きなんです。

    本人が大仰に「自分は生きる伝説だ」と言っているわけではない。
    でも、自分がその歴史の中にいることはちゃんと分かっている。
    その感じがカッコよかったです。

    そしてSnoop Doggについては、長いキャリアの中でずっとオールドスクールとヒップホップを繋いできた人として紹介。
    久保田さんも、Snoopは本当にこういう音楽が好きなのだろうと話していました。
    今のサウンドにも、こうしたオールドスクールなファンク/ブギーにも違和感なくラップを乗せられる。
    Chaka Khanへのリスペクトも感じられる、今回のテーマにぴったりの組み合わせでした。

    Contemporary R&Bは、もうひとつの形では語れない


    今回の選曲を並べるだけでも、
    Whitney Houston
    Michael Jackson
    Babyface
    Mariah Carey
    Beyoncé
    Ne-Yo
    Chris Brown
    Giveon
    Chaka Khan
    Snoop Dogg
    と、とにかく幅が広い。

    ついにはカントリーまで登場しました。
    それでも1時間通して聴くと、不思議とバラバラには聞こえない。
    歌、グルーヴ、ソウル、ブラックミュージックの感覚。
    その核のようなものを残しながら、時代の音や別ジャンルの要素をどんどん取り込んでいく。
    だからContemporary R&Bとは、ひとつの「型」ではなく、
    R&Bという軸を持ったまま、現在進行形で変化し続けることそのもの
    なのかもしれません。

    最後は久保田さん自身の、比較的新しい曲。

    新しい曲なのに、堂々とオールドスクール遊びも入っている。
    今回の1時間を締めくくるには、とても象徴的な1曲でした。

    8月26日 オンエアリスト
    ♪ Saving All My Love for You / Whitney Houston
    ♪ Rock with You / Michael Jackson
    ♪ For the Cool in You / Babyface
    ♪ Vision of Love / Mariah Carey
    ♪ CANDY RAIN / 久保田利伸
    ♪ TEXAS HOLD ’EM / Beyoncé
    ♪ Dance Right Now / Ne-Yo
    ♪ Man On A Mission feat. Wizkid / Chris Brown
    ♪ Jezebel / Giveon
    ♪ Boogie’s In My Soul / Chaka Khan & Snoop Dogg
    ♪ Left & Right / 久保田利伸

    そして、いよいよ次回は最終回。
    キーワードはAfrobeats/Alternative R&B。

    QUIET STORM、NEW JACK SWING、NEO SOUL、Contemporary R&Bとたどってきて、最後はいよいよ現在進行形のR&Bへ。

    5週間の締めくくり、楽しみです。

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