
このままでいいのかと思いながら、それでも続いていく
気づけば38歳になった。
第一話を書いた時と比べても、
状況はそれほど変わっていない。
相変わらず悩んでいる。
相変わらず将来のことを考えている。
市場価値のことも気になる。
管理職のことも気になる。
転職という選択肢が頭をよぎることもある。
このままでいいのだろうか。
そんなことを考える日もある。
きっと若い頃の私は、
どこかに答えがあると思っていた。
技術者になれば満足できると思っていた。
設計者になれば納得できると思っていた。
専門性を身につければ安心できると思っていた。
市場価値が高くなれば不安はなくなると思っていた。
しかし実際には違った。
一つ手に入れれば、
また別のものが気になる。
答えだと思っていたものが、
しばらくすると違って見える。
そんなことの繰り返しだった。
それでも、この連載を書きながら気づいたことがある。
私はずっと、
何者かになろうとしていた。
技術者らしい技術者。
専門性を持った人材。
市場から評価される人。
そういう姿を追いかけていた。
でも本当に求めていたものは、
少し違ったのかもしれない。
私は技術的なことで頼られる人になりたかった。
問題の本質を理解できる人になりたかった。
そして何より、
自分が携わった製品だと胸を張れる仕事がしたかった。
店頭で製品を見た時に、
「あれは自分も関わった製品だ」と胸を張って言いたい。
そんな仕事がしたい。
それが昔から変わらない気持ちだったのだと思う。
だから私は、
規格の根拠が気になる。
品質の考え方が気になる。
知見が失われることに違和感を覚える。
同じ問題を繰り返すことに納得できない。
それは品質保証だからではない。
自分が関わった製品に責任を持ちたいからだ。
少しでも良いものを世の中に送り出したいからだ。
もちろん答えはまだ出ていない。
管理職になるかもしれない。
転職するかもしれない。
今の会社で働き続けるかもしれない。
未来のことは分からない。
それでも昔より一つだけ分かることがある。
私は何を大切にしたいのか。
何に納得できて、
何に違和感を覚えるのか。
その輪郭は昔よりはっきりしてきた。
だから今は、
このままでいいのかと思いながらも、
昔ほど焦ってはいない。
答えはまだ見つかっていない。
けれど、
探してきたものが何だったのかは少し分かった気がする。
明日もまた、
品質について考える。
製品について考える。
ものづくりについて考える。
そしていつか、
「この製品は自分が携わった製品です」
と今よりもっと胸を張って言えるようになりたい。
そんな思いを持ちながら、これからも仕事を続けていくのだと思う。