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【建設16社の決算まとめ】工事の採算はそろって改善、通期予想を上げたのは1社だけ

    この記事の時点: 2026年8月18日。各社の数字は2026年7月29日〜8月10日に開示された決算短信と決算説明資料によります。金額は開示の百万円単位を億円に丸めています。比率は開示の実数から計算しています。
    2026年8月10日、ショーボンドホールディングスの決算が出て、建設と設備工事の主な16社の発表が出そろいました。
    見出しの数字は、そろって強いものでした。西松建設の4〜6月期の営業利益は前年同期比+130.8%。きんでんは+89.0%、戸田建設は+82.9%、大林組は+107.0%。16社のうち14社が増益でした。
    「資材の値上がりがようやく一巡したのだろう」——そう説明すれば、筋は通ります。鉄骨も生コンも人件費も上がり続け、それを工事の値段に乗せきれなかった数年間があった。その反動が今、利益として出ている、と。
    ただ、その説明では合わないことが1つあります。
    これだけの増益を出しておきながら、今年1年の利益予想を引き上げた会社は、16社のうち1社しかありません。大林組は通期の営業利益を前期比7.5%の減益、鹿島建設にいたっては16.9%の減益と見込んだまま据え置きました。
    4〜6月に利益が2倍になった会社が、1年で見れば減益だと言い続けている。おかしな話です。
    この16社の決算には、見出しの数字だけでは説明のつかないことが3つあります。
    ① 4〜6月にこれだけ増えたのに、なぜ会社は今年の計画を上げないのか。「修正なし」という4文字には、正反対の2つの意味があります。
    ② 増えた利益は、そもそもどこから来たのか。株の売却益や会計上の利益を引いたら、何が残るのか。ここは会社によってまったく違います。
    ③ 業種も規模も違うこの16社に、共通して起きたことは何か。決算書のある1行を見ると、同じ物差しで比べられる13社が、そろって同じ方向へ動いていたことが分かります。
    先に、開示から分かった事実を言います。同じ物差しで比べられる13社のうち12社で、工事の採算——工事の売上から工事の原価を引いた利益の比率——が改善していました。減益だった2社まで含めて、です。これは決算短信の損益計算書を開けば、どなたでも確かめられます。
    ここから先が、私の読みです。4〜6月の増益は、資材高が終わったことよりも、資材高の時期に安く請けた工事が売上から抜け終わったことで説明できます。値段の安い工事が完成して消え、値上げした後に契約した工事に入れ替わった。それは1回きりの入れ替わりであって、ここから採算が上がり続けることを意味しません。会社が計画を動かさないのは、そのためだと見ています。
    そのうえで、この構図が次の決算でどう動くかを、記事の終わりに3つの予想として書きます。当たっても外れても、11月の中間決算で確かめられる形にしてあります。
    話の運びは、こうします。
    1. 「建設16社」には、決算書の作りが違う3種類が混ざっている — まず登場人物を押さえます
    2. 13日間で出そろった16社の成績 — 何が起きたかの全体像
    3. 増えた利益には、工事の外から来たものが混ざっている — 見出しの数字を引き算する
    4. 工事の採算という1行で見ると、13社中12社が同じ方向へ動いた — 共通点の正体
    5. なぜ採算が戻ったのか — 入れ替わりの仕組みと、その時間差
    6. 会社は、この好調を今年の計画に足していない — 会社が置いた前提を読む
    7. 次の決算は、この順で見る — 持ち帰っていただく手順と、私の予想

    「建設16社」には、決算書の作りが違う3種類が混ざっている

    数字に入る前に、16社が何をしている会社かを押さえます。ここを分けておかないと、後の比較がすべて狂います。


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    建設16社の3つのグループ(各社の決算短信・有価証券報告書の事業内容による)


    ①総合建設会社(ゼネコン)9社。大成建設(1801)、大林組(1802)、清水建設(1803)、鹿島建設(1812)、安藤ハザマ(正式名は安藤・間、1719)、西松建設(1820)、戸田建設(1860)、五洋建設(1893)、長谷工コーポレーション(1808)。
    工事を丸ごと請け負い、下請けの専門工事会社を束ねて建物や道路・トンネルを作る会社です。仕事は大きく土木(道路・トンネル・ダム・港)と建築(オフィス・工場・マンション)に分かれます。五洋建設は港や海の工事、長谷工はマンションと、得意分野が偏っている会社もあります。
    ②設備工事会社4社。関電工(1942)、きんでん(1944)、クラフティア(1959)、高砂熱学工業(1969)。
    建物の中の電気配線や空調をつける会社です。ゼネコンから工事を請ける立場になることが多く、名前のとおり関電工は東京電力グループ、きんでんは関西電力と関係が深い出自を持ちます。クラフティアは2025年10月に九電工から社名を変えた会社です。
    なお、きんでんはこの4〜6月に、関西電力が持っていた同社株を自分で買い取りました(自己株式の公開買い付け)。2,300億円を借り入れて33,500,000株を消却したため、自己資本比率は72.4%から49.9%へ下がっています。決算の中身とは別に、資本の形が大きく動いた四半期でした。
    ③その他3社。ショーボンドホールディングス(1414)、インフロニア・ホールディングス(5076)、ジャパンエレベーターサービスホールディングス(6544)。
    この3社は、上の13社と決算の比べ方が違います。理由はそれぞれ別です。

    • ショーボンドは決算期が違う。6月で1年を締めるため、8月に出たのは4〜6月期の決算ではなく、2025年7月〜2026年6月の1年ぶんの決算です。他社の四半期と横に並べられません。

    • インフロニアは会計のルールが違う。国際会計基準(IFRS)を使っているため、損益計算書に「完成工事総利益」の行がありません。営業利益は載っていますが、その1つ上に「事業利益」という段階を置き、会社が本業の指標として通期計画を語るのはこちらです。

    • ジャパンエレベーターサービスは、そもそも工事会社ではない。エレベーターの保守点検が主力で、工事の採算ではなく契約台数(2026年6月末で131,150台)で伸びが決まります。

    同じ「建設」の一覧に並んでいても、この3社を他の13社と同じ物差しで測ることはできません。株式の画面では隣り合っていても、決算書の作りが違うからです。この記事では、比較の中心を①②の13社に置き、③の3社は個別に触れます。
    3つのグループが分かれました。では、この16社が実際にどんな数字を出したのかを見ます。

    2. 13日間で出そろった16社の成績

    日本の会社の多くは3月で1年を締めます。今回の16社も、ショーボンド(6月決算)を除く15社が3月決算です。したがって、この15社の決算はどれも「2026年4月から6月までの3か月」の成績で、期間がそろっています。そのまま横に並べて比べられます。
    発表は2026年7月29日のきんでんから始まり、8月10日のショーボンドまで、13日間に集中しました。決算シーズンとはそういうもので、同じ業種の会社は同じ2週間に一斉に数字を出します。


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    建設16社の2026年4〜6月期決算(各社の決算短信より。金額は億円、カッコ内は前年同期比。ショーボンドは2026年6月期の通期実績、インフロニアは国際会計基準の事業利益)


    結果を、増減の向きで分けます。
    営業利益が増えた会社が14社。伸び率の大きい順に、西松建設(+130.8%)、大林組(+107.0%)、きんでん(+89.0%)、戸田建設(+82.9%)、長谷工(+46.0%)、安藤ハザマ(+22.3%)、ジャパンエレベーターサービス(+21.5%)、大成建設(+15.3%)、関電工(+12.8%)、清水建設(+11.8%)、五洋建設(+8.1%)、鹿島建設(+7.8%)。インフロニアは事業利益が+103.1%、ショーボンドは通期の営業利益が+0.2%でした。
    減った会社が2社。クラフティアの営業利益が△3.3%、高砂熱学工業が△16.2%です。
    ここで、表を読むときの注意を2つ。
    1つめ。この記事は「営業利益」を主な物差しにし、第4章からはそのもう一段上にある行を使います。建設会社の損益計算書には、工事の売上と工事の原価だけを取り出した行があり、他の業種より1段細かく本業を見られるからです。その行は第4章で開きます。
    利益にはいくつか段階があり、上から順に、本業の稼ぎを示す営業利益、そこに利息や為替や関係会社からの取り分を加減した経常利益、税金を引いて最後に残る純利益、と並びます。建設会社では、株式の売却益のような一度きりの要因が経常利益より下の段階に入ってきます。実際、清水建設の経常利益は+201.0%、純利益は+396.5%と跳ねていますが、営業利益は+11.8%です。同じ会社の同じ3か月が、見る段階によって「5倍」にも「1割増」にも見えます。
    2つめ。伸び率の大きさは、前年の低さの裏返しでもあります。西松建設の営業利益は+130.8%ですが、前年同期の同社は△35.2%の減益でした。低いところから戻れば、率は大きく出ます。増益率の順に会社を並べても、強い順にはなりません。
    では、増えた利益はどこから来たのか。まずは見出しの数字から、工事と関係のないものを引き算します。

    3. 増えた利益には、工事の外から来たものが混ざっている

    決算の数字が増える理由は、工事が儲かったからとは限りません。今回の16社では、次の3つが混ざっていました。


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    4〜6月期に利益を押し上げた「工事の外」の要因(各社の決算短信・決算説明資料より)


    持っている株を売った利益

    建設会社は、取引先の株式を大量に持っています。取引の関係を保つために持ち合ってきたもので、これを「政策保有株式」と呼びます。近年は「資本の効率が悪い」という投資家からの指摘を受けて、各社がこれを売り進めています。
    売れば、買ったときとの差額が利益になります。大林組の投資有価証券売却益は前年同期の86億円から201億円へ、戸田建設は4億円から78億円へ増えました。戸田建設の純利益が+233.0%と跳ねたのは、主にこの1項目によるものです。
    この利益は損益計算書のいちばん下のほう(特別利益)に入るため、営業利益には影響しません。株を売った利益で増えたのは純利益であって、工事の稼ぎではない——ここを分けて読む必要があります。

    会計上だけで発生した利益

    清水建設の経常利益は185億円から557億円へ、+201.0%になりました。増えた372億円のほとんどは、1つの項目で説明できます。
    同社は2026年6月30日付で、清和綜合建物という会社を持分法適用関連会社にしました。持分法というのは、出資先の利益のうち自社の取り分にあたる金額を、自社の決算に取り込む会計の扱いです。このとき、買った値段より相手の純資産のほうが大きかったため、その差額355億円が「負ののれん」として一度に利益に計上されました。現金は1円も入ってきません。会社自身、この355億円は配当の計算(配当性向の目安40%)から除くと明記しています。
    インフロニアも似た構図です。同社の税引前利益は+851.1%になりましたが、その主因は2023年に東芝の非公開化に出資した投資組合の評価額が上がったことによる975億円の評価益でした。同じ3か月の事業利益(同社が本業の指標とする段階)は148億円ですから、本業の6倍を超える利益が、事業の外から入ってきたことになります。評価の元になっているのはキオクシアホールディングスの株価です。
    このノートでは以前、そのキオクシアの株価が判決をきっかけに急落した日のことを書きました。半導体メモリの会社の株価が、建設会社の四半期利益を動かしています。決算書のつながりは、業種の境目をあっさり越えます。しかも会社は、8月6日時点の株価で計算し直すと通期の評価益は474億円まで縮むと自ら開示しています。株価が動けば、この利益は次の四半期に取り消される可能性があると、会社が先に言っているわけです。

    不動産を売った利益

    3つめは、建設会社が自分で開発した不動産の売却です。これは本業に近いところ——営業利益の中——に入ります。
    鹿島建設の営業利益は+7.8%の増益でしたが、中身を開けると、工事から出た利益(完成工事総利益)は657億円から673億円へ+15億円だったのに対し、開発事業などから出た利益は100億円から181億円へ+81億円でした。増益の主役は工事ではなく不動産です。
    大林組も、不動産事業などの総利益が57億円から133億円へ増えています。ただし同社の場合は工事から出た利益も486億円から643億円へ+157億円伸びており、増益の主役はあくまで工事のほうでした。同じ「不動産が効いた」でも、比重がまるで違います。
    ここまでの引き算で、見出しの数字はかなり削れました。株の売却益も、負ののれんも、評価益も、工事の採算とは無関係です。それでも残るものがあります。次章がその話です。

    4. 工事の採算という1行で見ると、13社中12社が同じ方向へ動いた

    建設会社の損益計算書には、他の業種にはない行があります。完成工事高(その期に完成させた工事の売上)と、完成工事原価(その工事にかかった費用)、そして差額の完成工事総利益です。建設業法の規則で、この3行を分けて書くことが決まっているためです。
    この差額を売上で割ったものを、この記事では工事の採算と呼びます(会計の用語では完成工事総利益率と言います)。100億円の工事を請けて、材料費・人件費・下請けへの支払いを引いた後に12億円残れば12%です。
    この1行を13社で並べると、業種も規模も違う会社が、そろって同じ方向に動いていました。


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    工事の採算(完成工事総利益率)は13社中12社で改善した(各社の決算短信の損益計算書より計算。高砂熱学工業のみ完成工事高の内訳開示がないため売上総利益率)


    改善の大きい順に並べます。長谷工コーポレーションが13.18%→17.72%(+4.54ポイント)、きんでんが19.69%→22.69%(+3.00)、関電工が15.17%→18.10%(+2.92)、西松建設が9.61%→12.18%(+2.58)、清水建設が9.22%→10.81%(+1.58)、大林組が9.78%→11.13%(+1.35)、高砂熱学工業が21.13%→22.47%(+1.34)、鹿島建設が10.94%→12.03%(+1.09)、戸田建設が12.19%→13.02%(+0.82)、大成建設が14.82%→15.53%(+0.71)、クラフティアが18.65%→19.12%(+0.47)、五洋建設が9.38%→9.81%(+0.43)。
    13社のうち12社で改善しました。例外は安藤ハザマの13.92%→13.84%(△0.08)ですが、これはほぼ横ばいで、しかも同社の水準は前年からすでにゼネコン9社の中で上位にあります。下がったのではなく、先に上がっていた会社が高いところで止まったと読むのが素直です。
    この並びから、2つのことが分かります。
    1つめ。売上が減った会社でも、採算は上がっていました。関電工の完成工事高は前年同期比4.5%減、鹿島建設は6.9%減、クラフティアは2.3%減、高砂熱学工業は9.9%減です。それでも4社とも採算は改善しました。売る量が減ったのに利益率が上がったのですから、値段と原価の関係そのものが変わったことになります。
    2つめ。減益だった2社も、採算は改善していました。クラフティアは18.65%から19.12%へ、高砂熱学工業は21.13%から22.47%へ上がっています。とくに高砂熱学工業の営業利益は△16.2%と16社で最も大きく減りましたが、工事の採算そのものは改善していました。同社の減益は、前年に工場の大型案件が集中した反動で売上が9.9%減ったことと、販売費・一般管理費が98億円から106億円へ増えたことで説明でき、工事が安く叩かれたからではありません。
    つまり、増益14社・減益2社という見出しの割れ方と、採算の動きは別物です。採算という物差しで見れば、13社はほとんど割れていませんでした。
    では、何がこの共通の改善を起こしたのか。

    5. なぜ採算が戻ったのか——3年前に取った工事が、売上から抜けたから

    答えの入口は、大林組が決算短信に自分で書いています。
    同社は、4〜6月期に利益が増えた理由の1つとして「国内建築事業で工事損失引当金を計上していた案件の多くが概ね竣工し、採算性の良い案件の寄与度が高まった」と説明しました。
    工事損失引当金というのは、「この工事は赤字で終わる」と分かった時点で、まだ工事の途中でも、見込まれる損失を先に費用として計上しておく仕組みです。赤字を後の期に持ち越さないための会計上のルールです。
    ここが、建設会社の決算を読むときのいちばん大事なところです。建設会社の売上は、いま契約した工事ではなく、何年も前に契約した工事から立ちます。
    大きなビルなら着工から完成まで2〜3年、トンネルやダムならもっとかかります。工事の売上は完成までの進み具合に応じて計上されるので、いま損益計算書に並んでいるのは、2023年から2024年ごろに値段が決まった工事です。
    その2023〜2024年に何があったか。鋼材もセメントも人件費も上がっていた時期です。契約時の見積もりを原価が追い越し、赤字になる工事が続出しました。会社はそれを工事損失引当金として先に計上し、決算は苦しくなりました。
    そして2026年のいま、その苦しい工事が次々に完成して、売上から消えていきます。代わりに売上に立つのは、資材高を織り込んで値上げした後に契約した工事です。


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    工事の値段が決まる時点と、売上・利益に出る時点は2〜3年ずれる(建設会社の工事の流れの模式図)


    これが、私が16社の共通点をどう読んでいるかです。採算の改善は、いまの建設市場が急に良くなったから起きたのではなく、採算の悪い工事が売上から抜け終わり、採算の良い工事に入れ替わったから起きた——決算書に出ているのは、2〜3年前に決まったことの結果です。
    この読み方には、大事な含みが1つあります。入れ替わりは1回しか起きません。安い工事が全部抜けてしまえば、次の四半期に同じ改善はもう起きない。採算はそこで新しい水準に落ち着きます。伸び率としての改善は、そこで止まります。
    裏を返せば、いま値段が決まっている工事の採算が、2028年ごろの決算を決めます。その手がかりは損益計算書ではなく、後で見る受注のほうにあります。
    会社はこの構図を、当然ながら私たちより先に知っています。それが次章の数字に出ています。

    6. 会社は、この好調を今年の計画に足していない

    日本の会社は、1年ぶんの利益予想を自分で公表します。四半期ごとに実績が出るたびに、その予想を修正するかどうかを判断します。4〜6月が想定より良ければ上方修正する——これが素直な反応です。
    今回、16社はどうしたか。


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    4〜6月期の営業利益の伸びと、会社が置いた通期予想の伸び(各社の決算短信より。インフロニアは国際会計基準の事業利益)


    通期の本業の利益予想を引き上げた会社は、16社のうちインフロニア1社だけでした。同社は期初に事業利益800億円(前期比4.9%減)としていた計画を、867億円(同3.0%増)へ引き上げています。残る15社のうち14社は、4月・5月に公表した予想をそのまま据え置きました。ショーボンドだけは事情が違い、6月で1年を締めたため、8月10日に出したのは据え置きではなく2027年6月期の予想の新規公表です(営業利益210億円・前期比0.8%増)。
    清水建設だけは通期予想の修正を出していますが、内容は前章で見た負ののれん355億円の反映で、営業利益の予想は動かしていません。工事の好調を理由に今年の見通しを上げた会社は、実質ゼロです。
    ここで、据え置きには読み方が2つあることを押さえておきます。
    ひとつは、もともと予想を低めに置いていて、上振れを下期に温存しているという読み。日本の会社の業績予想は保守的に置かれることが多く、この読みが当たる場面はよくあります。もうひとつは、4〜6月の好調が続かないと会社が見ているという読みです。
    同じ「修正なし」でも、この2つは意味が正反対です。そして、どちらなのかは伸び率では分かりません。見分けるには、このあと出てくる別の数字が要ります。
    まず、据え置かれた計画の中身を見ます。

    • 大林組: 4〜6月の営業利益は+107.0%。それでも通期は1,800億円、前期比7.5%の減益計画のまま。

    • 鹿島建設: 4〜6月は+7.8%。通期は2,000億円、16.9%の減益計画のまま。

    • 大成建設: 4〜6月は+15.3%。通期は1,880億円、前期比横ばい(±0.0%)のまま。

    • 西松建設: 4〜6月は+130.8%。通期は285億円、+1.7%のまま。

    • きんでん: 4〜6月は+89.0%。通期は970億円、+7.5%のまま。

    • 戸田建設: 4〜6月は+82.9%。通期は390億円、+2.1%のまま。

    4〜6月に利益が2倍前後になった3社(大林・西松・きんでん)が、1年では横ばいか減益だと言っています。しかも大林組と鹿島建設の計画は、上振れを温存しているどころか前期を下回る水準です。低めに置いた予想を据え置いているのとは、置かれている高さが違います。

    進捗率で見ると、4〜6月は特別に良くはない

    もう1つ、伸び率とは別の見方があります。1年は4四半期なので、3か月で通期予想の25%まで来ていれば順調という目安です。これを進捗率と呼びます。
    営業利益が+89.0%だったきんでんの進捗率は14.0%。+107.0%の大林組は18.2%。伸び率が2桁どころか3桁だった2社が、1年の計画に対しては4分の1のペースにまるで乗っていません。+130.8%の西松建設は24.5%で、こちらはほぼ目安どおりです。
    一方、伸び率が+46.0%だった長谷工は27.1%、+15.3%だった大成建設は24.1%で、目安を満たしています。
    ここで、さきほどの2つの読み方が分かれます。長谷工や大成建設の据え置きは、計画どおりのペースで来ている会社の据え置き——上振れを下期に残している可能性があります。きんでんや大林組の据え置きは、伸び率ほどにはペースが出ていない会社の据え置きです。前年が低かったぶん率は大きく出ましたが、今年の計画を上回るペースではありません。
    伸び率の大きさと、1年の計画に対する進み具合は、別のことを語ります。同じ「修正なし」の4文字でも、進捗率と並べれば中身が読み分けられます。

    次の利益の種である受注は、会社ごとに真逆を向いた

    工事の採算は、ほぼそろって改善しました。ところが、これから売上になる工事の入り(受注)は、まったくそろっていません。


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    4〜6月期の受注高は会社ごとに真逆へ動いた(各社の決算短信の補足情報より。断りのないものは個別ベース、大林組のみ連結)


    • 鹿島建設: 3,482億円→4,689億円(+34.7%)。国内の民間建築が+63.1%。

    • 安藤ハザマ: 建築が+203.0%、土木が+135.1%。

    • 西松建設: 土木が+135.8%。国内官公庁向けが+375.1%。

    • 大成建設: 4,847億円→2,812億円(△42.0%)。建築が△59.0%。

    • 清水建設: 6,226億円→4,048億円(△35.0%)。国内の民間建築が△47.4%。

    • 大林組(連結): 建設事業が△5.6%。うち海外建築が△83.4%。

    同じ3か月に、鹿島は受注を35%増やし、大成は42%減らしました。採算の改善が16社に共通していたのとは対照的に、受注はきれいに割れています。
    ただし、ここは慎重に読む必要があります。受注は四半期ごとに大きく振れます。1本の大型契約が入るかどうかで数字が倍にも半分にもなるからです。大成建設の建築受注が△59.0%なのは前年同期に大型案件があった反動という可能性が高く、清水建設も国内民間建築の減少が事務所・庁舎向け(△75.3%)に集中しています。1四半期の増減だけで、会社の受注力を測ることはできません。
    見るべきは水準ではなく、会社自身が置いた年間の受注計画に対して、どれだけのペースで来ているかです。清水建設の場合、通期の受注計画は前期比18.3%減。4〜6月の△35.0%はその計画より速い減り方で、残りの9か月を前年比10%減程度で踏みとどまらないと計画に届かない逆算になります。会社は決算短信の本文でこの受注減に触れておらず、数字は後ろの補足資料にだけ載っていました。
    大林組の海外建築は、さらに極端です。通期の受注計画5,750億円に対し、4〜6月の受注は390億円で進捗率6.8%。同社は2025年12月に米国でAI向けデータセンターや半導体工場を建てる会社(GCON社)を買収しており、その売上は連結に乗り始めていますが、新しい受注としてはまだ数字に出ていません。
    工事の採算は2〜3年前に決まったことの結果で、受注はこれから2〜3年後の採算を決めるもの。いま同じ決算短信の中に、過去の答えと未来の問いが並んで載っています。

    7. 次の決算は、この順で見る

    7つの章で見てきたことを、1つにまとめます。
    建設・設備の16社の4〜6月期は、14社が営業増益、2社が減益でした。ただし増益の中身は、株の売却益・負ののれん・投資の評価益・不動産売却といった工事の外の要因が混ざっており、見出しの伸び率をそのまま実力と読むことはできません。
    それでも、工事の採算という1行だけは、比べられる13社のうち12社で改善していました。減益だった2社まで含めてです。これは資材高の時期に安く請けた工事が完成して売上から抜け、値上げ後の工事に入れ替わったことの結果だと私は読んでいます。1回きりの入れ替わりなので、多くの会社はそれを今年の計画に足していません。工事の好調を理由に通期予想を上げた会社は、16社に1社もありませんでした。

    次に建設会社の決算を開いたら

    次の中間決算(2026年11月ごろ)で、この16社の数字を自分で読むときの手順を書きます。


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    次の決算で、建設会社の数字をこの順に見る(本文の手順を1枚にまとめたもの)


    ①損益計算書のいちばん上、完成工事高と完成工事総利益の2行を見る。この2つを割り算すれば、その会社の工事の採算が出ます。全社の営業利益より先に、ここを見ます。前年同期の欄が隣に並んでいるので、引き算するだけで改善したかどうかが分かります。
    ②営業利益と経常利益の差を見る。差が大きい会社は、本業以外——株の売却益、関係会社からの取り分、為替——が効いています。清水建設のように、営業利益+11.8%が経常利益+201.0%になる会社もあります。差が開いているときは、必ずその内訳を探しに行きます。損益計算書の営業外収益と特別利益の欄に、名前つきで書いてあります。
    ③通期予想が動いたかどうかを見る。決算短信の1ページ目に「業績予想の修正の有無」という欄があります。「無」なら、会社は4〜6月の結果を1年の見通しに反映させていません。好決算の直後に「無」と書いてある会社は、その好調が続かないと自分で言っています。
    ④伸び率ではなく進捗率で測る。通期予想に対して、4〜6月の実績が何%まで来ているか。25%が目安です。前年が低かった会社は伸び率が大きく出るので、伸び率だけを見ると強さを取り違えます。
    ⑤受注のページを開く。決算短信の後ろのほう、補足情報に「受注高」の表があります。ここは今期の利益ではなく、2〜3年後の利益の種です。会社が本文で触れていないときほど、開く価値があります。
    この5つは、どれも決算短信1本で確かめられます。有料の情報も、特別な計算も要りません。

    私はこの先を、こう見ています

    ここから先は予想です。次の中間決算(2026年11月ごろ)で確かめられる形で、3つ書きます。
    予想1: 大手4社の工事の採算は、中間期でも前年同期を上回ります。大成建設・大林組・清水建設・鹿島建設の4〜9月累計の完成工事総利益率が、4社とも前年同期を超えると見ています。入れ替わりは4〜6月の1四半期で終わるものではなく、手持ちの工事が入れ替わるには数四半期かかるからです。
    *外れるとしたら*——4社のうち1社でも採算が前年同期を下回ったときです。そのときは、入れ替わりがすでに一巡していたか、値上げして受注した工事にも新しい原価の上昇が食い込んでいることになります。後者だとすれば、この業種の採算改善は4〜6月期が上限で、ここから先は伸びないという話になります。
    予想2: 中間決算で通期の営業利益予想を引き上げる会社は、13社のうち5社以下にとどまります。対象は、3月決算で営業利益の予想を出している①②の13社です(第1章の③の3社は外します。ショーボンドは6月決算で11月に中間決算が来ないこと、インフロニアは通期の計画を営業利益ではなく事業利益で語ること、ジャパンエレベーターサービスは工事会社ではないことが理由です)。4〜6月に2桁の増益を出した会社が多いにもかかわらず、会社は計画を動かしませんでした。中間期でも、この慎重さは大きくは崩れないと見ています。
    半導体の会社については、下期にもう一度上振れが出ると見ています。建設で逆に見るのは、こちらの改善が需要の伸びではなく、1回きりの入れ替わりだからです。同じ「11月の中間決算」でも、業種によって読みの向きが変わります。
    *外れるとしたら*——13社のうち6社以上が上方修正したときです。その場合、会社は下期の採算に私が思うより自信を持っていたことになり、「1回きりの入れ替わり」という私の読みそのものを修正する必要があります。採算の改善が入れ替わりではなく、値付けの力そのものの変化だったことになるからです。
    予想3: 大成建設の中間期の受注高(個別)は、前年同期を下回ります。4〜6月の個別——連結ではなく大成建設1社の——受注は△42.0%でした。前年同期に大型案件があった反動という説明は成り立ちますが、その反動が3か月で完全に戻るとは見ていません。4〜9月累計の個別受注高でも、前年割れが続くと考えています。
    *外れるとしたら*——7〜9月の受注が反動減を埋めて累計で前年を超えたときです。そのときは4〜6月の落ち込みが純粋に前年の高さの裏返しであり、同社の受注環境は変わっていなかったことになります。受注の1四半期の振れをどこまで真に受けるべきか、私の側の基準を直す材料になります。

    最後に

    冒頭に、西松建設+130.8%、大林組+107.0%、きんでん+89.0%という数字を並べました。そして、それを出した会社が、1年の見通しを上げなかったと。
    建設会社の決算は、いまの建設市場の成績表ではありません。2〜3年前に値段が決まった工事の、答え合わせです。いま出ている利益は過去の契約の結果であり、いま取っている受注が次の答えを作ります。
    だから、この業種の決算で最初に確かめるべきは、利益がいくら増えたかではなく、その利益を生んだ工事の値段が、いつ決まったのかです。それを教えてくれるのが、完成工事高と完成工事総利益の2行と、いちばん後ろにある受注の表でした。
    ※本記事は開示資料に基づく分析・教育目的の情報提供であり、投資助言ではありません。売買の推奨は行いません。

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