
【note創作大賞2026 応募作品】 君からもらった光 第13話 千秋の過去編④ 2人の初デート
千秋と紗里が、付き合い始めて数ヶ月。いろんなことがあった。千秋は生徒会に入ることになり紗里もダンス部の副部長になりお互い多忙な日々を送っていた。
「彼氏」「彼女」という慣れない関係で初めの頃は、お互い物凄く緊張してしまっていた。
クラスメート達からは、
「ラブラブ~‼ 」
「ヒュ~ヒュ~‼ 」
とからかわれることも増えた。
それでも二人は、放課後に一緒に帰ったり、夜に電話したり、休日にメッセージを送りあったり少しずつ距離を縮めていった。
そして今は、4時間目の授業、体育の真っ最中だ。広い体育館を、半分に分けてバレーボールをやっている。千秋は、隣でバレーボールをやっている女子達の方を見る。
ジャージ姿で、ポニーテールの紗里がクラスの女の子達と笑いあっているのが目に入った。
「紗里、千秋君が見てるよ♬ 」
女子が、紗里の方を見てるのに気づき紗里も笑顔で千秋に手を振ると千秋も照れくさそうに振り返した。
授業が終わり、お昼休み。千秋と紗里は、廊下で二人きりでお喋りをしていた。クラスメートの男子が、廊下の角に隠れて聴いているとも気づかずに。
「ねぇ、千秋。その…今度の日曜日ってさ、空いてる? 」
「あぁ…。大丈夫だよ」
「その…私たち、付き合ったっていってもそれっぽいことしてないからさ...その…」
「…デートしない⁈ 」
声を思いっきり振り絞る紗里。
「デ…デート⁈ 」
声を上げる千秋。
「いいよ」
それを廊下で聞いたクラスの男子は、すぐさま教室に戻りクラスの仲間に報告。
「なぁなぁ‼ どうだった⁈ 」
「ヤバい‼ もうキュンキュンするわw 今度、デートするって。あの千秋が、デートか~」
「ここは、あの2人を見守ろうよ」
千秋と紗里が、デートするというのを聞いた麻衣は数日後、千秋を呼び出した。
「千秋、紗里から聞いたよ。今度の日曜日、デートするんでしょ? 」
「誰から聞いた⁈ 」
声が裏返る千秋。
「え、本人から聞いた。あとクラスメートみーんな知ってる。プランはあるの?」
「…ない」
「ハァ…。ちゃんとプラン考えなきゃ駄目‼ 好きな人との初デートって女の子にとって特別なんだから‼ 」
そして麻衣からのアドバイスで、千秋は紗里との初デートで行く予定の場所を事前にリサーチしておくことにした。
『いい? 当日、テンパらないように前日にちゃんと行く場所を見て回ること‼ でなきゃ初デートで「あ…この人ないわ...」ってなるから‼ 実際、私の友達も「アイツ、アタフタして冷めたわ...」ってなって別れたんだから‼ 」
初デートの場所は、最近新しくできたショッピングモールに。
千秋は、モール内を周り紗里が喜びそうなお店をリサーチし始めた。
「ここ、いいかも」
数件周り千秋は、今女子高生や中学生達に話題の喫茶店を当日紗里と行くことにした。
紗里とのデートプランを小さいメモにまとめた千秋は、それを見ながら夕方の帰り道を一人で歩く。千秋は帰り道、おしゃれな感じのを見かけ中に入った。
(こんなところにアクセサリーショップあったんだ。「本日開店」ってのぼり旗あったし、今日開店したのか…。しても可愛いのたくさんあるなぁ…。紗里、こういうの喜ぶかなぁ)
「何かお探しですか? 今ならオープン記念でアクセサリー作り体験もやっていますよ」
店の中を見て回っていると女性店員が声をかけてきた。
「手作りか…」
千秋は、店の柱に「オープン記念‼ アクセサリー、キーホルダー手作り体験教室開催中‼ 」と描かれた貼り紙が目に入る。
「中学生、高校生の方でしたら学生割引が使えますよ! 」
(買ってもいいけど、手作り物で紗里に、喜んでもらいたい…)
そう思って千秋は、手作り体験をすることにした。
「誰かにプレゼントするんですか? 」
女性店員の言葉。
「あ…」
千秋は、紗里と出会って今日までのことを思い出す。
ー初めていった映画館ー
ー夏祭りー
ー渋谷のハロウィンフェスー
ー文化祭での告白ー
「はい。初めてできた彼女と付き合って最初のデートでプレゼントしようと思ってて…。俺を、今の俺にしてくれた大切な人なんです」
千秋は、恥ずかしそうに頬を紅く染める。
「素敵ですね‼ じゃあ今、青春真っ盛りなんですね‼ 」
そんな会話を女性店員とした後、女性店員にアクセサリーの作り方を教わりながらアクセサリー作りを始めた。
「すみません。なんか、変な形になっちゃったんですが…」
「大丈夫ですよ。新しい物、ご用意しますから」
それから店員さんに、手取り足取り教えてもらい無事、アクセサリーを完成させることができた。
同じ頃、紗里もお家でデートに着ていく服にあたふたと悩んでいた。部屋で麻衣が紗里の服選びに付き添いながら呆れたような様子で紗里を見る。
「麻衣〜。デートって、何着てったらいいのかな〜? 」
「紗里、緊張しすぎ。普通にいつもみたいな格好でいいと思うよ。気取りすぎないでさ」
「気取りすぎない…か。そっか」
麻衣の言葉に紗里は、普段のような服装で行くことにした。
「そうだ、紗里。髪型さ...」
麻衣は、紗里の髪型を少しだけアレンジすることを彼女に提案した。
そしていよいよデート当日、千秋は駅前で紗里を待っていた。千秋は、グレーのジャケットに、黒みを帯びたTシャツ、紺のジーンズを着て彼女を待つ。
「紗里…まだかな...」
そんな言葉を呟きながら待っていると、
「お待たせ~‼ 千秋~‼ 」
紗里が手を振りながら千秋の元に駆けてくる。今日の紗里は、ピンク色の小さな手提げバッグを片手に、ニットのパーカーに中には白のTシャツ。グレーの下地のチェック柄のスカートを履いていた。髪型は、いつもと違うポニーテールではなく編み込みだった。
「千秋、早いね‼ まだ30分前だよ? 」
「何あるか、わからないから…。それに紗里に会いたくて...」
千秋の言葉に紗里は、頬を紅く染め
「私も、千秋に早く会いたかった♪ 予定よりちょっと早いけど行こうか」
と言った。
「新しくできたショッピングモール行こう」
「いいよ‼ あそこ、気になってたんだ~」
こうして2人の、初めてのデートが始まった。
千秋は、事前にリサーチしておいたが紗里には初めての場所。パンフレットをもらい案内板を見ながらモール内を見て回り始めた。
「ねぇ、千秋。これとか可愛い‼ 」
「へぇ、千秋ってそういうのも読んだりするんだ~」
本屋さんや雑貨屋さんを見て回った後、紗里が初デートが楽しすぎたからか、疲れてしまいお互いベンチに座り一息ついた。
「なんか、疲れちゃったね。千秋」
「はしゃぎすぎだよ、紗里」
「だって…千秋との初デートが楽しいから」
疲れたような、嬉しそうな声で、頬を紅く染め笑顔の紗里。
「なんか、私、お腹空いちゃった」
「あ! じゃあさ、いいお店知ってるんだけど...」
そして千秋は、紗里を連れてモール内のとある喫茶店に向かうのだが…。
「あ…あれ? おかしいな…確か、この道を…」
マップを見ながらあたふたする千秋。
「ねぇ、千秋。ここ曲がればすぐじゃない? 」
「え? あ! ほんとだ‼ 」
紗里のフォローもありカフェに着いた2人。着くとかなりの行列ができており、中学生や高校生の女の子、男女のカップルが大勢並んでいた。
「すごい人並んでるね~」
紗里の反応に千秋は、心の中で「よし‼ 」と拳をギュッと握り締め声を上げる。
列に並ぶこと1時間弱。千秋と紗里は、テーブル席に座ることができた。そして千秋は、メロンの、紗里は、抹茶のパンケーキを注文した。
「ん~‼ 美味しい~‼ ここ一回来て見たかったんだ~‼ 」
美味しそうにパンケーキを小動物のように頬張る紗里。
ふわふわのパンケーキを前に、千秋がにやりと笑って言う。
「なぁ、紗里。“あーん”して」
「ふぇ……///」
一瞬ためらったが、紗里は、頬を紅く染め千秋のフォークについたパンケーキをはむっと小動物のように頬張った。
千秋はその仕草に目を奪われ、心臓が跳ねた。
(……やばい。可愛すぎだろ。こんな可愛い子が俺の彼女…)
「そうだ、紗里、これ」
千秋は、カバンから小さな紙袋を取り出し紗里に渡す。
「え? これ、駅前にできたあのアクセサリー屋さんのだよね⁈」
笑顔で興味津々な声の紗里は、千秋から紙袋を受け取る。
「開けてみて」
紗里の喜ぶ顔が楽しみな千秋。
「え? 可愛い‼ どうしたの⁈これ 」
ゆっくりと紙袋を開けると中には紺色のケースが。さらにそのケースの中身を開けると真ん中にピンクの宝石が埋め込まれた花のキーホルダーが顔を見せた。
「付き合い始めた記念。その…アクセサリー手作り体験やってたんだ。紗里に喜んでもらいたくて自分で作ったんだ…」
照れくさそうに嬉しそうな笑顔で話す千秋。
「可愛い‼ 大切にするね‼ 」
それから食べ終わって会計を済ませてお店を出て、いろいろ観た後にショッピングモールを出ようとする千秋と紗里。しかし、トラブルが起きた。
「あれ? 千秋がくれたアクセサリーがない‼ 」
あたふたとカバンの周りやポケットを見る紗里。
「え⁈ さっきのとこかな?」
「わからない。カフェ出るまでは、あったのに…‼ どうしよう…千秋がくれた大切な物...」
悲しそうな声を上げる紗里。
「行ったとこ手分けして探そう‼ 」
それから手分けしてカフェを出てから向かった雑貨屋さんや本屋を探し回る2人。案内所の人にも落し物が来てないか探す。そして紗里は、見つからないまま、最初に入った入口の近くに戻る。
(どうしよう…。千秋から貰った大切な物…なくしちゃった。千秋、怒るかな…。きっと嫌われちゃうかな…私…)
そんなことを思っていた時だった。
「お~い‼ 紗里‼ あったよ‼ 」
という千秋の明るく元気な声が聞こえて紗里は、振り返る。
「え⁈ どこにあったの⁈ 」
「カフェの店員さんが、椅子に忘れてったの、拾ってくれてたんだ」
そう言い千秋は、「はい」とピンク色の宝石が埋め込まれた花のキーホルダーを彼女に渡す。
「良かった‼…本当に良かった‼ なくしたって思った瞬間、大好きな人との大切な思い出までなくしちゃった気がして……」
紗里は、千秋から貰ったキーホルダーをギュッと両手で大事そうに握り締めながら泣きそうな声を出す。
「泣くなよ、紗里」
「……だって‼ 好きな人からの初めてのプレゼントなんだもん‼ 」
涙を堪えながらそう言い紗里は、ギュッと握り締めた後、再びカバンに付けなおした。
そしてモールを出た帰り道、紗里が小さい子供を連れて歩く親子連れを見かけて
「なんか、いいなぁ…。ああいうの」
と呟いた。
「そうだな」
千秋も紗里と同じ方向を向く。
「ねぇ…私達も、いつかあんな風になれるかな? 」
紗里が呟く。
「え? 」
「私さ、将来デザイナーになってさ…それでいつか千秋と結婚して家族になりたいな…。子供作って…一緒に暮らしてさ…。千秋は? 」
「え? 」
「千秋は、将来何になりたい? 」
「俺の将来か…」
今まで千秋は、両親や兄姉の言われた通りに生きてきた。だから自分が、何になりたいかなんて考えたこともなかった。
「あ‼︎ 綾瀬グループの跡取りになるとか、一流企業に就職して高給取りになる‼︎ とかはNGだよ‼︎ 」
人差し指で千秋の唇に触れる紗里。
「まだ考えたこともなかった」
「じゃあさ、いつか、千秋のなりたい物、聞かせて」
「うん」
そして他愛もない話をしながら歩く千秋と紗里。デートも終わり別れ際。
「今日、楽しかった」
「良かった。俺も楽しかった」
照れくさそうに笑い合う二人。そして自然と互いに抱きしめあい互いの身体の温もりを感じあう二人。
「またね。」
「うん。また。」
別れ道で何度も手を振る紗里。
千秋も姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
(この幸せが、永遠に続いてくれたらいいな…)
そう、この時の千秋は本気で思っていた。
そんな二人を車の窓越しから見る二人がいた。千秋の父親と母親だった。
「おい、あれ、千秋じゃないか? 」
運転席の千秋の父親。
「本当だわ。誰かしら、あの子は」
紗里を、我が子に近づいた危険人物のような目で見る千秋の母親。
「調べておけ」
父親の冷徹な言葉。
「そうね」
父親に賛同する母親。そこには、我が子の恋を喜ぶ両親はいなくまるで取引先の相手を調べるかのようだった。
ーー千秋と紗里。二人の愛は、今、試されようとしていた。