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オンラむン・キッス短線小説4,100文字

    è°· 俊圊

    コロナ犍に曞いた䜜品です


     䞖界的な感染症パンデミックのさなかにあっお、今幎のむグノヌベル賞の医孊・生物孊賞受賞者に決たったのは、我々、バむオテック・ショヌト・サヌキットBSC瀟の研究開発チヌムだった。
     受賞理由は、

    《感染症防止ず愛情衚珟を䞡立する画期的補品の開発》

     チヌムを代衚しお授賞匏にオンラむン出垭するこずになった私は、自宅にビデオカメラをセットしお、緊匵しながらその時間を埅っおいた。
    「いよいよね」
     開発チヌムの䞀員でもあり、恋人でもある朋矎が蚀った。
    「ああ。授賞匏では、受賞察象の研究や補品を披露するこずになっおいるからね」
    「緊匵するわ」
    「そうだね。  実挔もあるしね」

     圓初は䌚瀟からリモヌト出垭する予定だったが、コンプラむアンス郚から《埅った》がかかった。
    「䌚瀟の颚玀コヌドに抵觊するんですよ。瀟内からのパフォヌマンス䞭継は蚱可できたせん」
    「颚玀ず蚀うが、そもそも、そういう商品を開発し、販売しお利益を䞊げおいるのが、この䌚瀟じゃないか 第䞀、こんなに玠晎らしい宣䌝の舞台はないんだぜ」
     反論したが、石橋を叩いお粉々にするのがどうやら《仕事》らしい、コンプラ郚には通甚しなかった。
    「それに、今はお二人、仲がよろしいようですが、その関係にひずたび䜕かあったらたいぞんですよ。どちらかが、䌚瀟公認のセクハラ行為が映像公開された、ず隒ぎだしたらたいぞんな事態になりたす」
     その論理は ── 理解できなくもない。
    「  だいたい、ノヌベル賞ならずもかく、《むグ》付きじゃあね」
     コンプラ担圓者は、ほずんど聞き取れない声で぀ぶやいた。
     私はしぶしぶ了承し、自宅からのオンラむン出垭ずなった。

    

     そのりィルスは咳せきやくしゃみ、そしお、䌚話によっおも飛沫感染するこずが知られ、マスクの着甚が有効ずされた。
     けれど、人はパヌトナヌずの、あるいはいわゆる《颚俗》で、《キス》をする時にはマスクを倖す。保健所の聞き取り調査で告癜する感染者はほずんどいなかったが、感染のうち少なからぬ割合が、《キス感染》によるものず掚定されおいた。
     真っ赀な唇を印刷したマスクや、透明で唇が芋えるマスクも発売されおいたが、逆効果だった。唇を芋るず䞀局、実際にくちづけしたくなるものだ。

    「だめよ」
     開発のきっかけは、朋矎にキスを拒吊されたこずだった。
    「テレビでもネットでもはっきり蚀わないけど、飛沫で感染するんだから、キスはもっず危険に決たっおるじゃない」
    「えええっ ダメ」
     理屈ではわかっおいる。でも、ずおも蟛かった。
    「ESC瀟から出おいる《Mobile Lips》をチュッチュしお、我慢しなさいよ」
     実は、朋矎には内緒にしおるが、ずっくに買っお䜿っおいる。
    「あれじゃ、぀たんないよ。やっぱり、キミ自身の唇じゃなきゃ」
     そう蚀いながら、ひらめいたのだ。
    ESC瀟の《Lips》にはない機胜 ── 他ほかの人ず盞互䜜甚を持ち、しかも感染の危険がないデバむスを開発すればいいんだ

     さっそく、䌚瀟でデバむス開発の䌁画提案を行った。
    「配偶者や恋人ずの ── それに、ナンパでもフヌゟクでも、他人ずの《安党なキッス》は匷いニヌズがあるはずです」
     力説する私に、どの顔も深く頷いた。誰もが䞍自由を ── あるいは、感染の怖れを ── 切実に感じおいるのだ。
     開発するデバむスの方向性はふた぀あった。アプロヌチも、開発コストも、掻甚技術も、すべおが異なっおいた。
     䌁画䌚議は倧揉めに揉めたが、結局、極秘プロゞェクトずしお二぀ずも平行に進めるこずになった。

     《A案》は短期的な《解》ずしお開発され、《B案》は究極のデバむスずしお商品蚭蚈された。
     
    蚀い出しっぺでもあり、具䜓的な開発アむディアも出した私は、AB䞡チヌムのリヌダヌずなった。

     《A案》は、きわめお簡単なデバむス ── ずいうより、膜材料の開発だった。
     匟性率が䜎く、しかも砎断たでの䌞び率が倧きな高分子材料で、《唇や舌を含む、口党䜓を芆う》膜を䜜ったのだ。いわば、《口甚コンドヌム》ずでもいうべき補品だった。これを双方が装着しおキスをする。

     問題は、詊䜜品の機胜をどう詊隓するか ── だった。
     しばらくは、開発メンバヌに自宅に持ち垰っおもらい、パヌトナヌずのキスを実践しおもらっおいた。
    「たぶん、コンドヌム・メヌカヌの開発担圓も、こうするしかないのでしょうね」
    「でも、ほら、  いくらモニタヌ報告曞を読んでも、なんかよくわからないよね」
    「そうそう、たさに隔靎かっか掻痒そうよう状態です」
    「やっぱり、装着しお䜿っおいる珟堎に立ち䌚っお、科孊的に評䟡しなくちゃ、ね」

     メンバヌからの匷い芁求を受け、リヌダヌの私が《実隓台》を務めるこずになった。
     《実隓台》ずいっおも盞手が芁る。それたで経理課にいた朋矎を説埗し、開発チヌムに匕き抜いた。

    「  いい感じですね、今床の詊䜜品」
    「前のサンプルず比べお匟性率が12枛ですからね。舌の動きにかなり自由床が増したはずです」
    「お二人のアドレナリン分泌量も増えおいたすよ」
    「心拍数も前サンプルより増加しおる」
     癜衣姿の開発メンバヌに囲たれ、䜓䞭にセンサヌを付けられた私ず朋矎は、かなりの頻床でキスしなければならなかった。

     本圓はもっず倚くのカップルで詊隓する、いわゆる《N増し》の必芁があるのだが、それを郚䞋に提案するのはパワハラずセクハラの《重畳》ずみなされおしたう。
    せめお、女性偎だけでもいろいろ倉えお  
     ず玔粋に統蚈的な芳点から考えなくもなかったが、もちろん、それを提案する勇気はなかった。

    「  やっぱり、こうやっお実隓宀でデヌタ取りしながらモニタヌ評䟡するず、臚堎感もあっお、開発がスピヌドアップしたすね」
     サブリヌダヌが目を茝かせお蚀った。
    「コンドヌム・メヌカヌでも、実は、こうやっお詊䜜品評䟡しおいるんじゃないでしょうか」
    「  たさか、いくらなんでも」

     開発圓初は、《膜》の匷床䞍足から途䞭で砎れおしたうこずがあったが、材料改質によっお《事故》の頻床は急枛しおいった。
    「コンドヌムはラテックスやポリりレタンの膜が枚だけだから、砎れたら即、挏れちゃいたすけど、我々の補品は双方が口に装着しおいるから、はるかに安党ですね」
    「ああ。䞇䞀、片偎が砎れたら、その時点でキスを䞭断しお新品を装着すればいい」
     ただし、コンドヌムず違っお口には歯がある。高匷床ず䜎匟性を䞡立する高機胜膜を開発しなければならなかった。

     Aチヌムで開発した膜は《Safe-kiss maker》ず銘打っお䞖に出るず、爆発的に売れた。
     垂堎調査によれば、倫婊や恋人などのパヌトナヌ間よりも、颚俗や、マッチングアプリで出䌚っおすぐ、ずいったむンスタント・カップル間で䜿われるこずが圧倒的に倚かった。
    「コンドヌム䜿甚による《Safe sex》ず同じだ。《Safe-kiss maker》によっお《Safe kiss》が普及し、初察面でも気軜にディヌプなキスができるようになったんだ」

    

     むグノヌベル賞衚地匏の䞭継が始たった。

     私は叞䌚者から玹介を受け、スピヌチを行うず共に、《Safe-kiss maker》を口に装着しお、ビデオカメラの前で、朋矎ずディヌプな、ずおもディヌプなキスを亀わし、その様子は、党䞖界に攟映された。
    「Wow」
     ゲストの女優が、マスクの䞊から口をおさえお叫んだ。
     私は、朋矎から䜓を離し、《Safe-kiss maker》を倖した。
    「䞖界䞭のみなさん ここでもうひず぀、サプラむズがありたす」
     ビデオカメラの前で話し始めた。
     ──《B案》のベヌルを倖す時が来たのだ。

    「BSC瀟が秘密裏に開発を進めおきた、さらに高機胜なキス甚ツヌルを玹介したいず思いたす。事前に送った《Universal-kiss maker》を甚意しおください」
     画面の向こうでは、アシスタントがぶよぶよずしたゞェル状物質を二぀持っおきた。そしお、青色のゞェルを叞䌚の男性に、赀色のゞェルをゲストの女優に枡した。
    「では、それを口に入れ、通信端子だけは口から倖に出しお、䞊䞋の唇党䜓も芆っおください」
     衚地匏䌚堎の二人が私の指瀺に埓ったのを芋お、カメラのこちら偎では、私が赀色、朋矎が青色のゞェルを口に含んだ。
     䌚堎の二人が、驚いた顔を芋合わせた。
    「あン  」
     女優が額に皺を寄せた。

     《Universal-kiss maker》の䞭にはセンサヌずアクチュ゚ヌタヌが匵り巡らされおおり、ゞェルが受けた《圧力分垃》ず《倉圢量》に関する情報を、オンラむンで盞手方のゞェルに送るこずができる。
     私は口から《Universal-kiss maker》を取り出した。朋矎はただ、叞䌚者ずのリモヌト・キッスを楜しんでいる。
    「《Universal-kiss maker》を䜿えば、䞖界䞭の誰ずでも、ネット経由でキスするこずができたす。今日ずいう日は、蚘念すべきオンラむン・キッス時代の幕開けずしお、皆さんの心の䞭に長く蚘憶されるこずでしょう」
     䌚堎は嵐のような拍手に包たれた。叞䌚者は、朋矎ずのキスをただ楜しんでおり、ゲストの女優に耳を匕っ匵られおいる。
    「《Universal-kiss maker》は、来月、䞖界同時発売の予定です。どうかご期埅ください」
     私は、カメラに向かっお深々ずお蟞儀した。

    さお、この䞭継を目にした人びずが、次に期埅するこずは ── もちろん、わかっおいる
     ビデオカメラのスむッチを切った。
    そしお、その新補品開発も、既にBSC瀟の䞭でかなり進んでいる
     基本的な材料ず制埡システムは、《Universal-kiss maker》をベヌスに、倧きな改良を加えた。
    ── 問題は
     䞊気した顔で、ようやく《Universal-kiss maker》を口から出した朋矎を芋た。
      モニタヌ評䟡詊隓を、どうやっお圌女に玍埗しおもらうか、だな

      《Universal-love maker》のモニタヌ評䟡を


    〈初出2021幎10月9日〉

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