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肩の䞊に短線小説1,900文字

    è°· 俊圊

     どうも朝から肩が凝る ── 䜕か乗っかっおるみたいに。

      たさかね
     そう思いながらも掗面台に行っお、腰が抜けそうになった。
     鏡の䞭のアタシは、芋たこずもない婆さんを肩車しおいた。いや、癜装束の小柄な婆さんが、勝手に肩に乗っかっおる。
    「だ、誰  ── あんた」
     アタシは幎前から、このアパヌトでひずり暮らしのはずだ。でも、婆さんの顔はどこかで芋たこずがあるような気がした。
     もちろん、アタシのお婆ちゃんじゃない。お婆ちゃんは故郷クニにいる。
    「  成人匏には行かないのか」
     婆さんの顔には氎平方向に無数の皺が走っおいたけど、その䞭で䞀番長くお深い皺が䞊䞋に開いた ── 口ずしお。
    「  そんなの、行かねえよ」
     鏡から顔をそむけたら、ちょうど窓越しに振袖姿が連れだっお歩くのが芋えた。
    「── っおいうか、誰だよ、あんた 降りろよ」
     䞊半身を揺さぶっお振り萜ずそうずしたが、
    「おっずっず、こら、危ないだろ」
     埮劙にバランスをずっおしがみ぀いおくる。
    「わしはな、  ◎✖÷△◆」
     䜕か蚀ったが、意味がわからん。知らない蚀葉だった。
    「── うぶすながみ ── 産む、土、神、ず曞く、産土神うぶすながみだ」
    「は 䜕それ」
    「お前が生たれた土地の守護神だ。お前が生たれる前から死んだ埌たで、䞀応、お前を守るこずになっおおる」
    「䞀応 なんかいい加枛そうだな。  たあいいや、その産土神うぶすながみがなんで『おんぶオバケ』か『子泣きゞゞむ』みたいなこずになっおんのよ」
    「サマ、サマ」
    「は」
    「サマだ、神様には『様』を付けんか」
    「ああ、面倒くさ じゃあ、その、産土神うぶすながみサマが、なんで『子泣きゞゞむ』状態になっおんのよ」
     もう䞀床激しく揺さぶったが、敵も必死にしがみ぀いおくる。
    「䞀応、お前の担圓っおこずになっおるからな、成人になった顔぀きを芋に来たんだ」
     婆さん神様はアタシの顔を䞡手で挟むず、鏡の方に向き盎させた。
    「うん、䞀応、《䞀人前》の顔をしおおる」
    「どうでもいいけど、その《䞀応》っおいうの、癖なの ── 感じ悪いから、やめた方がいいよ。  それに」
     アタシは婆さん神様を睚み぀けた。
    「  䞀人前に決たっおんだろ 高校出おから、ずっずひずりで生きおんだ   ひずりで皌かせいで、ひずりで食っおる。それどころか、故郷クニのお婆ちゃんに仕送りたでしおいる」
     睚み぀けるず、なぜか婆さんは笑った。぀たり、䞡目ずもが皺の䞭に埋もれた。
    「けっこう、けっこう。── これでよし、ずお前の故郷に䞀旊垰っおもいいんだが  」
    「垰れよ」
    「ひず぀聎こう。成人匏にはなぜ行かん」
     アタシはたた婆さんを睚み぀けた。
    「あんなの、茶番だからさ」
    「  なるほど」
    「芪に金出しおもらっおチャラチャラした栌奜した連䞭が集たっおワむワむやっおるずころなんか、行きたかねえよ」
    「  ぀たり、晎れ着を着おいないのが、恥ずかしいのか」
    「恥ずかしいわけ、ねえだろ」
     アタシは憑ずり぀いおいるババアを殎ろうずしお、手を止めた。
    ── こい぀も《䞀応》神様だ、バチが圓たっおも぀たらん
    「わしは産土神うぶすながみだ。これたでずっず、土地で生たれた子䟛たちが成人になる様さたを芋守っおきた。戊埌間もない頃の成人匏は、男は囜民服、女はモンペ姿だった」
    「  ぞえ、そうなの」
    「ああ、こんな颚に掟手になったのは、昭和30幎代に癟貚店や和服業界がひず儲けしようず画策かくさくしたからだ。それに、化粧品業界、矎容業界も加えた、《成人匏ビゞネス》に皆、䞊客ずしお絡め取られおるわけだ。みんなず同じじゃないず䞍安だから、みんな同じ栌奜をする」
    「だろ   だから、アタシゃ行かないのさ。そんなバカの仲間になりたかないよ」
    「── 本圓か」
    「ああ」
    「── 本圓か」
    「なんだよ」
    「お前も、みんなず同じじゃないこずを気にしおいるなら、バカの仲間じゃないのか」
    「  うっ」
    「行くも良し、行かぬも良し ── 倧事なのはそこではない」
     婆さん神様はアタシの耳もずに皺 ── じゃなくお唇くちびるを寄せた。海底に沈んでいたようなその色が、鏡の䞭で䞀瞬、玅あかく茝いたように芋えた。
    「この埌あずの人生は長い。  䜕床もこういう堎面に出くわす」
     婆さんはもう䞀床、ニッず笑った。

     ── 瞬たばたきしたらもう、鏡の䞭はアタシひずりきりだった。肩は嘘みたいに軜くなっおいた。

     結局、成人匏には行った ── ゞヌンズずセヌタヌにお気に入りのコヌトをはおっお。


    〈初出2022幎1月11日〉

     
     
     
    小説家執筆掻動再開したした。 「朚村家の人びず小説新朮新人賞⇒映画化」「東京郜倧孊の人びず映画化」など。 有料蚘事も無料領域がかなり長めですので気軜に芗いおやっおください。 たずは江戞期にいた、ずお぀もなく匱い力士の物語から  。

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