
【CHM】JAL破綻からわずか2.5年で再上場―V字回復をChange Managementの6条件で検証する💡 0556 Case
💡この記事は、こんな方に向けて書いています
企業に勤める中堅社員で、管理職・リーダーを目指している方
デジタル技術を使って業務上の問題を解決したい方
複数部門を巻き込む業務改革プロジェクトを推進している方
「良い改革案を作ったのに、なぜ現場が動かないのか?」と悩んでいる方
会社を本気で変えたい方
CHM(Change Management)は、PLS体系の中の、改革を成功させる6条件を見出した手法です。
PLS(Project Leading Skill)は、私が30年以上の企業改革の経験から体系化した、Projectを成功へ導くためのKnowledge体系です。
■ この記事は 2024/5/15に初稿・2026/2/17 AIで読みやすく更新
■ 2026/8/21 JAL事例の他の2記事を統合(CHM0156, CHM0045)
💡2010年、JALは経営破綻しました
2010年1月、日本航空(JAL)は会社更生法の適用を受け、経営破綻しました。
ところがJALは、そこからわずか2.5年で再上場を果たします。
2010年当時、一部上場企業で破綻し「会社を再生する」と宣言した企業は138社。その中で再上場できたのは9社、6.5%でした。
その中で、JALは2.5年という短期間で再上場したのです。
私はこの事例に強い関心を持ちました。
なぜ、これほど大きな会社を短期間で変えることができたのでしょうか?
単なる人員削減やコスト削減だけだったのでしょうか?
調べてみると、そうではありませんでした。
仕事の仕組みだけでなく、「人の意識」と「会社の文化」を変えていたのです。
💡JALは、いったい何を変えたのか?
大西賢 日本航空株式会社 取締役会長(当時)がJAL再生について説明された動画を見て、改革前の問題と、再生のために実行したことを整理しました。
ここが、この事例で最も面白いところです。
① 過去と決別する
5200億円の債権放棄を株主にお願いしました。
「新しいJALをつくり、確実に過去と決別しなければ再上場できない」
という厳しい出発点でした。
② 「自由な会社」の問題を直す
昔のJALには、
「公共交通機関として安全運航する」
という使命がありました。
政府出資の国策航空会社であり、右肩上がりを前提とした拡大主義経営。参入障壁も高い業界でした。
そして、
「JALは自由な会社。好きなことが言える」
という文化がありました。
しかし、その「自由」が、全社で一つのことをやらなければならない時には、部門間の軋轢につながっていました。
過去にも職場風土改革として教育プロジェクトを実施しました。
ところが、研修を受けた社員が職場に戻っても、上司が変わっていない。
せっかく研修を受けた社員が落胆するという問題が起きていました。
③ 「赤字でも平気」という採算意識を変える
昔のJALには採算意識が不足していました。
赤字が複数年続いても、無配でも、それほど大きな危機感を持たない。
JALとANAだけで市場の約80%を占める限定的な競争環境もあり、世間から乖離した競争意識がありました。
例えば、
「相手が給与を上げたから、自社も上げる」
という考え方です。
💡ここから、稲盛改革が始まります
④ 「人は大義で動く」―企業理念を作り直す
稲盛和夫氏が重視したのは、
人は大義で動く。だから企業理念が重要である
という考え方でした。
さらに、
「企業は従業員のため」「全員参加」
という人本主義を打ち出します。
稲盛氏は就任すると、
「現場に連れて行ってくれ」
と言いました。
そして社員に接する。
社員の心に触れ、寄り添う。
「ありがとう」と思える社員がいっぱいになれば、会社は再生できる。
単に制度を変えるのではなく、
人がどういう気持ちで働けるか?
10人で仕事をした時に、どうすれば10人以上の力を発揮できるか?
というところまで踏み込んだ改革でした。
💡採用する人まで変えた
昔のJALは「優秀な人」を採用していました。
改革後は、
「JAL Philosophyを理解し、共鳴してくれる人」
を採用するようになります。
昔の企業理念はA4で3ページあり、新入社員研修の時に学ぶ程度でした。
それを「JAL Philosophy手帳」にして、社員がいつも持つようにしました。
しかも抽象的な理念だけではありません。
実際に起きた具体的な出来事を使って発信する。
社員が、
「そうか! こういうことなのか」
と理解できるようにしたのです。
💡「社員よ変われ」ではなく、トップから変わる
ここは、私が特に重要だと思った点です。
昔は、
トップが社員に「変われ!」と言う。
改革後は、
トップ自身が「変わる」。
組織風土改革を、まずトップから始めました。
社員はトップをよく見ています。
大西会長の講演では、
「社員の前に出る時、右の足から出るのか、左の足から出るのか」
というほど、トップの一挙手一投足を社員は見ている、と説明されています。
だからトップ自身が準備し、できる配慮を惜しまない。
社員が稲盛氏を見て、
「この人と一緒に働こう!」
と思う。
改革を進めるうえで、これは非常に大きな力だったと思います。
💡自分たちの仕事の結果を、自分たちで分かるようにした
JALは部門別採算制度、いわゆるアメーバ経営を導入しました。
自分たちが行った仕事の結果が、自分たちで分かる仕組みです。
稲盛氏は、
「誰がProfitを見ているの? 社長だけ?」
と問いかけました。
これは非常に重要です。
例えば「コスト削減」が全社方針になったとします。
機内食担当者が自部門のコストだけを考えて、どんどん安い機内食に変える。
すると機内食がおいしくなくなり、お客様が離れる。
これでは、部分的にはコスト削減に成功しても、会社全体では失敗です。
自分の仕事が、会社全体の利益やお客様にどうつながっているのか。
それを現場が理解できる仕組みに変えました。
💡「結果が分かるのは2か月後」では遅い
決算も早期化しました。
昔は、8月の売上結果が分かるのが10月末。
これでは結果が分かった時には、現場の人はすでに関心を失っています。
改革後は、今月の結果がすぐ分かる。
だから、
「やった!」
「残念だった!」
と、自分たちの行動と結果を結びつけて考えられる。
結果を早く見せることで、人が次にどう変わればよいのか分かるようになったのです。
💡利益を出しながら、お客様に還元する
航空産業では3~5%程度の利益率が一般的な中で、JALは10%の利益を出す差別化を考えました。
しかし、単に座席を増やして利益を取るのではありません。
機内のSpaceをお客様に還元する。
多くの航空会社がエコノミー席を増やそうとする中で、JALはお客様に訴求できる差別化を行いました。
さらに、整備員が搭乗口に並び、
「ありがとうございます」
とお客様を見送る。
すると乗客から、
「頑張って。応援していますよ」
と声をかけられ、整備員が涙ぐむ。
数字だけではない変化が、現場で起こっていたのです。
💡全員参加型の改革へ
JALはサービス業です。
一度良いサービスを提供すれば、お客様にとって、それが次から「当たり前」になります。
だから、一部の人だけが改善しても続きません。
全員がお客様のことを考え、Challengeし続ける。
それが必要になります。
稲盛氏は、
「誰にもできない努力をしたか?」
と問いかけました。
頭で理解することと、実践することは違う。
JAL再生では、その「実践するところ」まで改革を進めていました。
💡では、なぜJAL改革は成功したのか?
ここから私は、JALの改革を別の角度から検証してみました。
私はIBMのコンサルタント時代から、さまざまな企業の業務改革の成功・失敗事例を調べ、
業務改革を成功させるには6つの条件が必要である
と考えています。

H1~6で示したものです
JAL再生をこの6条件に当てはめると、どうなるでしょうか?
私の結論は、下の図の通り、
私の6条件に当てはめて検証すると、JAL再生では6条件すべてに該当する取り組みを確認できました。
です。

💡H1 トップの強力なリーダーシップ
私が考える条件は、
トップが週4時間以上を投資するくらい、重要なプロジェクトとして自ら関与すること。
JALでは「社員が変われ」ではなく、トップ自身が変わる姿勢を示しました。
稲盛氏自身が現場へ行き、社員に接しています。
JAL:○
💡H2 改革推進部隊
私が考える条件は、
現場をよく知る各部門の課長クラスなど、スキルと熱意のあるエースを改革に投入すること。
JALではアメーバ経営・小集団活動によって、乗務員、空港職員、整備部門など、現場を含めた改革を進めました。
一部の経営幹部だけの改革ではありません。
JAL:○
💡H3 改革の目標
私が考える条件は、
何年後に会社をどんな姿にするのかを明確にし、市場・お客様の声や期待を反映すること。
JALでは企業理念とJAL Philosophyを明確にし、全員がお客様を考える方向へ変えました。
JAL:○
💡H4 早く改革の成果を見せる
改革には数年かかることがあります。
だから私は、
半年以内に、一部でもよいので目に見える成果を関係者に示すこと
が重要だと考えています。
JALでは部門別採算制度と決算早期化により、現場が自分たちの行動の結果を早く把握できるようにしました。
「やった!」「残念だった!」
と評価でき、次の行動につなげられるようになったのです。
JAL:○
💡H5 現場の抵抗・危機感
改革には現場の抵抗がつきものです。
だから、
「なぜ今、改革しなければならないのか?」
を具体的に示す必要があります。
JALの場合、会社そのものが経営破綻しました。
5200億円の債権放棄をお願いし、過去と決別しなければ再上場できない。
これほど明確な危機感はありません。
JAL:○
💡H6 企業文化を変えるCommunication
会社には、長年続いてきた仕事のやり方があります。
それを変えるには、
「なぜ今までのやり方ではいけないのか?」
を一度説明するだけでは不十分です。
JALではJAL Philosophyを手帳として持たせ、具体的な実例を使って繰り返し伝えました。
そしてトップ自身も行動を変えました。
JAL:○
💡JAL再生から私が学んだ4つのこと
今回の事例から、私は6条件とは別に4つの重要なことに気づきました。
① 改革は、その業界の専門家でなくてもできる
京セラ創業者の稲盛和夫氏には、航空業界の経営経験がありませんでした。
それでもJALを改革しました。
つまり、業種や環境が違っても、改革を進める基本的な考え方には共通点があるということです。

② 「社員を変える」のではなく、トップから変わる
「現場が抵抗するから改革できない」
ではありません。
まずトップが変わる。
社員は、それを見ています。
③ 数字の仕組みだけでなく、人の気持ちを変える
アメーバ経営や決算早期化は重要です。
しかし、それだけではありません。
「企業は従業員のため」
「全員参加」
「ありがとうと思える社員がいっぱいになれば再生できる」
という、人の心に踏み込んだ改革でした。
④ Change Managementは「制度変更」ではない
業務改革を進めると、一時的に生産性が落ちます。
新しい仕事に不慣れでミスが出る。
教育や研修が必要になる。
マニュアルを変える。
システムを開発・移行する。
そして、
「なぜ今変える必要があるのか?」
という現場の抵抗も起きます。
こうした変化を前提として、人と組織をどう動かすか。
それがChange Managementです。
💡あなたのプロジェクトも6条件で診断してみてください
もし今、あなたがDX・AI・業務改革を担当しているなら、次の6つを確認してみてください。
H1:トップは本気で時間を使っていますか?
H2:現場を知るエースを改革チームに入れていますか?
H3:何年後にどんな会社・業務にするのか明確ですか?
H4:半年以内に見せられる成果を決めていますか?
H5:「なぜ今変えるのか」を現場が理解していますか?
H6:仕事のやり方を変える理由を何度もCommunicationしていますか?
一つでも「いいえ」があれば、
そこが、あなたの改革プロジェクトが止まる原因になるかもしれません。
私自身、これまで50以上の企業の業務改革プロジェクトに関わり、同じような課題に直面するケースを数多く見てきました。
その中で、成功した事例・失敗した事例を分析することで、
私は、業務改革を成功させるための条件は6つあると提唱しています。
JAL再生の価値は、
「JALだからできた」
で終わらせることではありません。
自分たちの改革では、6条件のどこが足りないのか?
そこまで考えて初めて、JALの成功事例を自分の仕事に使えるのではないでしょうか。
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