
セルフカットで救急車
いきなりだが、僕はアホであった。いや、今でもアホなのだが、だとすれば「どあほう」であった。
いつの頃からか覚えていないが、美容院に行くのはストレートパーマを当てるときだけで、カットは自分でしていた。
もうこの時点でアホであるが、おそらく金がなかったときの頃の話だろう。
新卒で入った会社を辞め、一人暮らしを始めて転職し、また会社員になり、また会社を辞め・・・と繰り返して、そのときはそこそこお金がもらえる会社員だったのに、それでも髪の毛は自分で切っていた。
基本的に髪は長めで、会社によってはそれを良く思われないこともあり、爽やかショートカットになろうと思った。セルフで。どうやって。セルフで。
ようし今夜こそやるぞ、と新聞紙(正しくは新聞は取っていなかったので地域で配布される地域新聞紙みたいなやつ)をユニットバスの洗面台の下に敷き詰め、おりゃああとジョキジョキ、それはもう勢いよく切っていく。ノープランであった。時間は23時くらいだっただろうか。
すると、だいぶ切ったところで、耳にちょっと痛みがあった。スキバサミで切っていたのだけれど、もしかすると耳にあたったのかも知れない。まあいいや。ということでおりゃああと調整をしていく。
ふとなんとなく下を見たら、血。
その血を「あなたはどこから?」を見ていたら、ボタボタと垂れてきた。どうやらさっきチクッとした耳から。血は止まらない。どんどん出てくる。
とりあえず止血っぽいことをしつつ様子を見たが、今度は過呼吸が始まった。その時僕は自律神経失調症と診断されたあとだったので、おそらくその関係(心理的なもの)だったと思う。
これはやーばいぞということで救急車を呼んだ。
寝間着だったのでジーパンに履き替えているところに救急隊が到着して「着替える元気あんのかよ」と言われた。さもありなんである。返す言葉もない。申し訳ない。
とにかく血が出てるし過呼吸を起こしているのでキツイはキツイ。エレベーターのないマンションの5階に住んでいたので、隊員に「歩けますか」と聞かれ「歩けます」と答え歩いて地上に降りた。そこから救急隊の中で横になり、病院に行くまでに様子を見てもらう。
隊員が何かを伝えていた。
「ジカイです」「ドウセイヒンミャクです」
僕が寝ている真上にランプのようなものがあった。それをボーッと見ていたら過呼吸は収まってきた。
病院に到着すると、まず心電図。看護師さんたちに「ゆっくり吸ってゆっくり吐いてください」と言われ、繰り返しているうちに過呼吸独特の心拍の早さが収まっていった。
それが終わると若い医師がいて、「どうしたの」と聞くので「髪を自分で切っていたらこうなりました」みたいなことを言うと「ダメだよ自分で切っちゃあ」などと言いつつ「耳が切れてるので縫いますね」とサクサクッとあっという間に縫ってくれた。よくあることなのかもしれない。4針だった。
スキバサミだったのが幸いしたのか、切ったのは耳の前側だけだったので、本当に不幸中の幸いだったと思う。
縫い終わったあとに軽く説明を受けた。「過呼吸は心臓から来るものではなかったです、あとは抜糸は近くの病院でやってもらってください」「次からはちゃんと美容院行ってね」そう言って彼は去っていった。深夜にありがとうございました先生。
とにかく僕が言いたいことは、「プロの仕事はプロに任せろ」それだけである。
なんじゃこの話。