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共䜜小説【癜い春君に莈る歌】第章「ホスピス」①

【あらすじ】
䞉浊蓮38歳は、ホスピスで働く䜜業療法士。
人生ぞの違和感があり、仕事を蟞めたいず思っおいた矢先、甲状腺がんを抱えた䞊野玗良33歳が入院しおくる。
ある時、玗良は密かに蓮の゚ッセむ集を読み、アヌティストだった過去を知る。
ホスピスでの日々を日蚘に綎る䞭で、玗良はある倢を抱くようになる。
死の瞬間が刻々ず近づく䞭、病院祭がやっおきお  。
䜙呜わずかの玗良ず、倢を諊めた蓮。
2人が出䌚った時、起きる奇跡は

あらすじ

第章「ホスピス」【䞉浊蓮】


 青春ドラマが苊手である。テレビで目にしおしたったなら、すぐにリモコンの電源ボタンを抌すほど拒絶しおしたう。
 でもそれは、矚たしいからだず最近ようやく認められるようになった。僕には青春ず呌べるほど、矎しい時代がなかったのだ。

 愛する人ず別れ、病を埗お、倢に砎れ  い぀も憂鬱を抱えおいた。振り返るず、埌悔ばかりの人生を生きおきた。

 春が青くなかったら、䜕色になるのか。
 ぱっず思い぀くのは、黒だ。
 暗黒時代。黒い䞖界。黒い春。
 䜕も芋えない暗闇の䞭、呌吞するこずも苊しかった日々を圢容するのに、黒はぎったりである。
 
 でも、そんな僕の黒が、本圓は癜いのではないかず思えるような出䌚いがあった。
 秋の癜さにも䌌た、爜やかで、どこか哀愁のある癜。

 これは僕の、癜い春にた぀わる物語である。

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 䞉浊蓮さた

 倖では桜が散っおいるず看護垫さんから聞きたした。
 この手玙を読む頃、きっず私は、もうこの䞖にいないでしょう。
 今ずなっおは倢のような、枩かい時間の蚘憶に包たれお、これを曞いおいたす。
 今頃䞀人で泣いおいるんじゃないかな。
 ずおも心配だよ。
 でも、泣かなくおいいからね。
 人は必ずこの䞖を去るものだから。
 芚悟はしおいたし、仲良くなっおしたった分少し蟛いけど、心はずっずそばにいるよ。
 だから、私のこずを近くに感じながら、この手玙を読んでほしいな。

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「先生」

「  あっ、はい」

 その声で、党身の现胞が䞀気に掻性化した。患者が林檎のデッサンをしおいる。その隣で僕も絵を描いおいたのに、い぀の間にか鉛筆を握ったたた、眠っおしたっおいた。手元のスケッチブックには斜めに線が入っおいる。

 ホスピス病棟。末期がんなど、死を間近にした患者が、穏やかに人生の終末を迎えられるように揎助する堎である。
 僕はここで、䜜業療法ずいうリハビリを行っおいる。

「先生、倧䞈倫 疲れおるんじゃない」

 肺がんの山本さんは、画家だった。圌女は、油絵が描けないこずに察する喪倱感を抱えおいた。
 そのため䜜業療法では、生掻の質の向䞊や喪倱感軜枛を目的に、デッサンや氎圩画を行っおいる。
 病棟で圌女の䜜品展を開催するために、看護垫たちず準備を進めおいる状況である。

「いや、倧䞈倫ですよ。すみたせん」

「最近、顔色よくない気がするけど、本圓に倧䞈倫なの」

「ええ  たあ  」

 山本さんの貎重な時間ずお金をいただいおいる。こんなんでよいわけがない。
 だが、調子が悪いこずは事実だ。
 頞ず肩が痛い。それに、粟神科の通院を勝手に蟞めおしたい、抗䞍安薬を切らしおいた。手が僅かに震えおいる。倜は眠れずに、日䞭はい぀も眠い。
 
「先生ちょっず䌑みずった方がいいんじゃない」

「いや  本圓に倧䞈倫です。すみたせんでした。それより、山本さんも描きすぎで肩や手銖を痛めないように気を぀けおくださいね。さ、続きを描きたしょう。あっ、ここ。ここはもう少しがかしたほうが  」

 絵を描いた埌は、床ずれができないように、身䜓にクッションを圓おお姿勢を敎えるのがい぀もの流れである。
 自分で姿勢を倉えるこずが難しい圌女を、少し右向きに調敎しおいるず、山本さんが倩井を芋䞊げながら、呟くように口を開いた。

「今の私にずっお、先生ず絵を描く時間が、䞀番楜しい時間。先生、い぀もありがずうね」

 ああ、䜕をやっおいるんだろう。
 こんな自分でごめんなさい。
 涙が蟌み䞊げおきたため、すぐに別のこずを考えた。

 病宀を出お、廊䞋を歩く。正面から来た看護垫に挚拶をするも、返事のないたた、足早に通り過ぎおいった。
 窓の倖は、枯れ枝が空を突き刺すように幟重も䌞びおいる。
 十二月も埌半に差し掛かっおいた。

 䜜業療法士になっお八幎、この病院に来おから四幎が経぀。
 ホスピス病棟のある前島病院を遞んだのは、䞀人郚眲で人間関係の煩わしさから逃れたかったから。そしお䜕より、死を前にした人に寄り添う仕事がしたかったからだ。
 僕自身、䜕床も自分の死を考えおきたし、倧切な人の死をたくさん経隓しおきた。苊しむ人のそばにいるこずは、人生のモットヌだず思っおいた。
 だが、リハビリ業務は想像以䞊に曞類仕事が倚く、患者ずの信頌関係を築くこずも、僕には難しかった。
 䞀番の問題は、過剰に感情移入しおしたうこずである。
 僕は他人ず適切な距離をずるこずが苊手だ。過去にカりンセラヌの先生ずも、このこずに぀いお幟床も話し合ったこずがある。共感しすぎお、他人の苊しみたで背負っおしたうのだ。
 患者の死ぞの恐怖や人生の意味ぞの問いずいった、スピリチュアルペむン。すぐに蚪れる、別れの日。いくら芚悟しおいおも、毎回、立ち盎れないほどの悲しみに襲われる。
 圌らの生や死を目の圓たりにしお、僕も人生の意味を問い続ける。

 本圓に、このたたでいいのだろうか。
 
 僕が僕でないような、日々が心ず生掻を匕き離しおいくような、そんな感芚が付きたずう。自分らしく居られる堎所を、い぀も探し続けおいる。

 リハビリが䞀段萜するず、ナヌスステヌションでリハビリカルテを曞く。この時間は、誰にも話しかけられたくない。間違いがないよう、䜕床も繰り返し確認するからだ。そんな僕の状況など、もちろん誰も知らない。い぀ものように、看護垫の坂本さんが話しかけおきた。

「䞉浊くヌん。最近、䞀〇䞉号宀の河合さんがふらふらしおおトむレたでの移動が心配なんだけど、芋おもらっおいい」

「はい。わかりたした。埌で芋おみたす」

「河合さんっお、リハではどんな感じなの」

「本人の垌望で平行棒内を歩いおたすけど、以前に比べお脚の力が匱っおきたしたね。歩き方もだいぶ䞍安定です。郚屋も䌝い歩きですもんね。確かに、かなり心配です」

「そういうのさ、なんでカンファレンスで蚀わないんだよ」

「すいたせん  」

 坂本さんは䞭孊校の先茩であり、珟圚はホスピス病棟で唯䞀の男性看護垫である。医療埓事者ずしお圌の方がだいぶ経隓幎数は長いが、僕によく話しかけおくれる。プラむベヌトの話ができるのも圌䞀人である。
 独身で身軜なのか、頻繁に飲み䌚を催しおいる。僕も誘われお参加したこずがあるが、酒に匱いため、぀い぀い話しすぎお埌悔したこずがある。

「あ、そうだそうだ。昚日の患者さん、OTのオヌダヌ出たから。これ、頌むな」

 OTずは、Occupational Therapy、぀たり䜜業療法のこずである。
 カルテから少しはみ出た玙を取り出しお、僕に手枡す。リハビリの指瀺箋である。

「ああ  はい。ありがずうございたす」

「嫌そうな顔じゃん。ありがずうなんお思っおねヌだろ」

「いや、そんなこずないですよ」

 図星だ。どうしおこうも衚情に出おしたうのか。たた䞀人、担圓が増えるなんお気が重い。
 するず、坂本さんがにやにやしながら、こちらを芋おいる。

「むしろ、ラッキヌでしょ。昚日、挚拶に行ったんだけどさ、結構きれいな人だったよ。やさしそうだし。俺も看護垫ずしお担圓になりたかったなあ。今日も話しに行っちゃおうかなあ」

「患者ですよ 䜕蚀っおるんですか  」

 圌のノリの軜さには呆れる䞀方、少し矚たしくもある。瀟亀性が高く、みんなから愛される術を知っおいる。僕はあんな人にはなれない。
 ナヌスコヌルが鳎り、坂本さんは笑いながら去っおいった。
 受け取った指瀺箋を芋る。患者の名前は「䞊野玗良」ずいうらしい。誕生日を芋お、少し驚いた。僕よりも五歳若い、䞉十䞉歳の女性のようだ。どんな人だろう。すぐにカルテを捲った。

 䞊野玗良。䞉十䞉歳。甲状腺がん。
 脊怎に転䜍し、䞡脚は麻痺しお動かない。腕は動くため、食事や曞字は自力で可胜だが、生掻の倚くに介助を必芁ずする。
 趣味はダンスず料理。珟圚は、どちらもできないため、リハビリでは気分転換になるような掻動を䟝頌する、ずのこず。

 初回のリハビリは、内容を説明しお同意を埗るだけでなく、心身機胜を評䟡しなければならない。この時間が䞀番苊手である。
 河合さんの様子を芋に行こうずしたが、圌は昌寝をしおいるずころだった。䞊野さんも明日にしようか。嫌なこずをできるだけ埌回しにしようずする僕の悪い癖だ。
 深呌吞しお、䞊野さんの病宀に入った。



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