メインコンテンツへスキップ
見出し画像

堕ちる輪舞 - Angel & Devil -

    幻想戯曲詩

    天使と悪魔――
    交わるはずのなかった魂が交錯した時。
    終わりなき運命の調べが流れ出す。

    ✢ ✢ ✢

    【序曲(Overture):破滅の輪舞ロンド】

    出逢うはずのなかったふたりが堕おちたのは、
    赦ゆるされない愛だった。

    ── Narration ──
    <語り>

    白と黒
    決して交わらぬ
    宿命の
    ふたりは手を取る
    狂気の愛へ

    囁く、
    言葉の先は
    楽園か、
    それとも地獄か
    堕ちていこう

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅰ幕 墜落だらく:罪と罰

    ── Soliloquy:Angel(her) ──
    <独白/天使>

    あなたとなら
    堕おちていける
    何処どこまでも
    そこに希望が
    なかったとしても

    過ぎ去りし
    時の向こう側
    消え去らぬ
    私たちの罪
    拭ぬぐえない罰

    ── Narration ──
    <語り>

    相入れない
    天使と悪魔
    互いに
    背を向け否定す
    存在さえも

    堕ちてしまった
    出逢ってはいけない
    異種いしゅのふたり
    知ってはいけない
    赦ゆるされざる愛

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅱ幕 運命:破滅への序曲

    運命に抗あらがうが如く、悪魔の情念。
    天使を得られないなら全てを壊すことも厭わない。

    ── Narration ──
    <語り>

    重ならぬ
    生と死の条理じょうり
    交差せず
    すれ違うまま
    出逢うことなく

    理ことわりの
    流れ逆らい
    巡り合ったふたり
    理由なくとも
    見初みそめ惹ひかれゆく

    ── Soliloquy:Devil(him) ──
    <独白/悪魔>

    言い分いいぶんに
    聞く耳はない
    それならば
    失ってもいい
    別れさせるなら

    この世界
    壊してしまおう
    この想い
    認めらぬなら
    何もの残さず

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅲ幕 静寂:ふたりだけの世界(+間奏/Interlude)

    破滅の先の幸福。
    ただ、ふたりの世界。

    ── Narration:Angel(her) ──
    <語り/天使>

    崩れゆく 
    廃墟にあるは 
    白と黒 
    ふたりの空間
    終ついの世界

    何もない 
    何も聞こえない 
    あるのは 
    あなたとわたし 
    呼吸と心音しんおん

    ✢ ✢ ✢ (間奏/Interlude:世界は抱き合う二人を見遣る) ✢ ✢ ✢

    静寂と空虚。
    ふたりは互いに求め合うように、ただ抱き合う。

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅳ幕 判決:背負う覚悟

    罪と罰を背負ってでも得たかったもの。
    愛を確かめ合うふたり。

    ── Dialogue:Angel(her) & Devil(him) ──
    <対話/ふたりの対話>


    ── Angel(her)
    <天使>

    壊れゆく 
    世界で聞いた 
    罪と罰
    ふたり永遠《とわ》の
    幸せはないと

    ── Devil(him)
    <悪魔>

    罪を負っても 
    罰を受けても 
    望むは
    ふたりの世界
    誰もいない世界

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅴ幕 忘却:消えない記憶

    禁じられた愛の対価。
    忘却の先にあるもの。

    ── Dialogue:Angel(her) & Devil(him) ──
    <対話/ふたりの対話>


    ── Angel(her)
    
<天使>

    罪ならば 
    忘れてもいい 
    いつまでも 
    あなたと一緒なら  
    記憶はいらない

    ── Devil(him)
    <悪魔>

    罰ならば 
    忘れてもいい
    再び、 
    おまえを愛す 
    喜び得られるなら

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅵ幕 決意:背徳の愛

    すべてを犠牲にしても、手に入れたもの。
    何人なんびととも侵すことのできない、ふたりの不可侵領域ふかしんりょういき。

    ── Resonance:Angel(her) & Devil(him) ──
    <共鳴/ふたりの共鳴>

    貫けば
    全てを失う
    おまえとなら
    あなたがいるなら、
    それでもいい

    消え去るは
    互いの記憶
    侵させない 
    ふたりだけの 
    不可侵領域ふかしんりょういき

    記憶が
    消失しても
    出逢い、そして 
    恋に堕おちたこと 
    それは真実

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅶ幕 幸福:刹那の永遠

    消えゆく記憶。
    悪魔が最後に見たのは、甘美なる愛の始まりだった。

    ── Soliloquy:Devil(him) ──
    <独白/悪魔>

    甘美なる 
    刹那の幸福 
    永遠とわよりも 
    それは濃厚な
    愛の時間

    消えゆく 
    時の向こう 
    最後に見た
    ふたり出逢いの日
    忘れ得ぬ瞬間

    ✢ ✢ ✢


    第Ⅷ幕 深淵:愛を語る

    ふたりしか分からない愛。
    それは、愛という名の“狂気”。

    ── Soliloquy:Angel(her) & Devil(him) ──
    <独白/ふたりの独白>

    ── Angel(her)
    <天使>

    希望を
    そこに見つけた
    未知なるもの
    誘惑に触れる
    戻りはしない

    ── Devil(him)
    <悪魔>

    持たぬから 
    憧れ続けた
    わかっていた 
    触れてしまえば 
    離せはしないと

    ── Angel(her)
    <天使>

    受け止める
    あなたの全て
    視線さえ
    私を捉えて
    縛って欲しい

    ── Devil(him)
    <悪魔>

    だからこそ
    おまえの全てを
    塗り潰したかった
    おれの色に
    染め替えたかった

    ── Angel(her)
    <天使>

    赦ゆるされない 
    知っていても尚 
    添い遂とげたい
    対価を払っても 
    あなたと共に

    ── Devil(him)
    <悪魔>

    赦ゆるされない 
    分かっていても尚
    共にいたい
    代償を払っても
    おまえと共に

    ✢ ✢ ✢


    終幕(Finale):狂気の果てに

    甘美かんびなる輪舞ロンド。
    時空を超え、ふたりは何度でも堕ちてゆく。
    記憶を失っても尚、愛は幾度も巡る、狂気の調べ。

    ── Narration ──
    <語り>

    運命の
    禁忌きんきの愛 
    辿たどり着くは
    破滅の道
    堕おちる終末しゅうまつ 

    動き出す 
    ふたりの定め 
    失っても
    幾度いくども再演す
    破滅の輪舞ロンド

    囁きは、
    終末しゅうまつに誘いざなう 
    白と黒、
    ふたりの愛
    その名は「狂気」

    繰り返す
    狂気の輪舞ロンド
    堕おちて行く
    ふたり何処どこまでも
    何度でも、何度でも

    ✢ ✢ ✢


    End Credits & Curtain Call:狂気の輪舞

    ✢ ✢ ✢ (End Credits/エンドロール) ✢ ✢ ✢

    ── 幕が降り、言葉が囁かれる。

    あなたに問う、
    ふたりにとっての 
    真実は 
    永遠とわか刹那か 
    ふたりの幸さいわいは?

    【Curtain Call/カーテンコール:ふたりの愛】

    ── 静寂。
    流れ始める輪舞《ロンド》、狂気の愛が始まる。

    ── Narration ──
    <語り>

    白と黒
    交わる宿命
    堕ちていく
    ふたり手を取り
    狂気の愛へ

    壊れゆく
    世界に身を置き
    貫くは
    狂気を孕はらんだ
    歪ゆがんだ愛

    ── 狂気の輪舞《ロンド》は……始まったばかり。

    — Fin —

    ✢ ✢ ✢ 

    狂気の愛の終わりの始まり。


    Next Act Prologue/次幕予告:終わりの始まり

    ✢ ✢ ✢ Next Act Prologue/次幕予告:終わりの始まり ✢ ✢ ✢

    狂気の愛の終わりの始まり
    すべてはここにある。

    幕が上がり、輪舞は回り始める。

    ✢ ✢ ✢

    理ことわりの
    流れ逆らい
    巡り合ったふたり
    理由などなく
    見初め惹ひかれゆく

    希望を
    そこに見つけた
    未知なるもの
    誘惑に触れる
    戻りはしない

    甘美なる
    刹那せつなの幸福
    永遠とわよりも
    それは濃厚な
    愛の時間

    罪ならば
    忘れてもいい
    いつまでも
    あなたと一緒なら
    記憶はいらない

    消え去るは
    互いの記憶
    侵させない
    ふたりだけの
    不可侵領域ふかしんりょういき

    白と黒
    決して交わらぬ
    宿命の
    ふたりは手を取る
    狂気の愛へ

    記憶が
    消失しても
    出逢い、そして
    恋に堕おちたこと
    それは真実

    幕を開けるのは
    ‥‥あなた。

    ── To Be Continued...

    ✢ ✢ ✢


    あとがき
    — 断章と輪舞について —

    本作は、各幕の断章を組み替えても物語が成立するように構成しています。出逢い、誘惑、幸福、罪、忘却、不可侵領域、そして真実。

    どの記憶から始めても、
    ふたりは巡り合い、
    同じ愛へと堕ちていく。

    その反復と再演の構造を、
    輪舞《ロンド》として描きました。

    「Next Act Prologue/次幕予告」は、
    本編の断章を再構成した、もうひとつの幕です。

    終わりのあとに始まりがあり、
    始まりの中にすでに終わりがある。

    幕を開けるのは、
    読者であるあなたです。



    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門


     
     

    suzu

     
     
    書くことと描くことで、世界の気配をすくい上げています。 掌編や詩を中心に、自然や動植物を擬人化した物語、オノマトペのみの作品などを書いています。 目に見えるものと見えないもののあいだにある気配を、短い言葉や絵に閉じ込めています。 「アートは自由で楽しいもの」 どうぞごゆるりと。

    あなたへのおすすめ