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月の裏側 【詩/現代詩】

    汐田大輝

    Yさんの詩は
    油断も隙もない

    言葉のところどころに
    落とし穴があって
    うっかりハマったら月の裏側に出る

      今日もまた
      バス停前が数珠つながりである
      熱中症患者の鉱山ができるだろう
      (タフでなけりゃやってられない)

    琵琶が鳴り響いている
    鎌倉の夏が始まる
    ピラニアの餌になるサネトモ
    ボス猿のデザートはヨシトキ
    (歴史は血の倍数である)
    割れて 砕けて 裂けて 喰われて
    琵琶が鳴り響いている

      ちゃんこ鍋に草履が入っていた
      (この店では何でもありだからね)
      痛めた右脚にワカメを巻いている
      (横綱になれなかった理由がわかるな)
      顔を般若にして笑う元関脇
      (神に会いたければ愚に徹することだ)
      臆面もなく褌をひろげて馬に乗る
      (見てごらん 本当の横綱がここにいるよ)

    午前1時30分発
    銀河鉄道最終便がこの駅を出るという
    この星を脱出する最後のチャンス
    (サンボはどこだ サンボはどこだ)
    顔のない車掌が慌てふためいている
    (サンボはどこだ サンボはどこだ)
    虎に乗っておもむろに姿を現したサンボ

      あの狂った二人組には
      思わずにんまりしてしまう
      文殊と普賢の生まれ変わりだそうだ
      ものさびしい廃駅に取り残されて
      (列車に乗り遅れたのだろうか)
      永遠に暮れない夕暮れの中にいる
      車掌のいない列車は夢遊病者のよう


    (神に会いたければ愚に徹することだ)
    と Yさんはいった
    (さあ 入口を教えてあげよう)


     
     
     
    ネット文芸家。主に現代詩と現代川柳。シュールな叙情と不条理なユーモアを好む。『現代川柳 満天の星』参加。電子版詩集『方位のない街』『あやかし』『カンデララ詩集』を公開。→ https://romancer.voyager.co.jp/author/309251/

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