
居場所をくれた貴方へ #17
「助手席乗る?」
「えっ、いいの?」
「助手席嬉しいよねー。
俺も子供の頃助手席取り合いしてた」
若井さんの隣…!
「えへへ、」
助手席、結構広い…!
木目調で、よく見るとおしゃれ。
「邪魔しないように頑張ります…!」
視界に映るだけで、邪魔だから。
散々怒鳴られたなぁ。
車内はゴミまみれだったし、
怒声と舌打ちなんて当たり前。
ドライブなんて、ただの拷問でしかない。
「どうすれば邪魔になりませんか…?」
「どうすれば?普通に座ってれば大丈夫よ」
「でも視界に映っちゃいますよね…?」
「え?うん。」
「え?別に視界に映っても
全然邪魔じゃないよ?笑」
「逆に見惚れちゃうくらいかも。なーんて」
「見惚れるってなんですか?」
「えー、っと…ナンデモナイ、デス…」
すいません、と耳を赤くしている。
どういう意味なんだろうと、
サーチ欄に検索をかけてみる。
「目の前の人・物・景色の美しさや
魅力に心を奪われ、うっとりして…」
「ねぇ恥ずかしいから意味読まないで!?」
「何に魅力感じるんですか?」
「もう、さ?ね?そりゃあね。あの木だよね。」
「木?」
若井さんの指さした方向を見るも。
「木なんてないですよ?」
「もうっ、やめてくれぇー」
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「ん、ここのジェラート屋さん。どう?」
と看板を指す。
「おいしそう…」
コーンの上にピンクと
白のジェラートが乗っている。
「じゃあここにしよっか。」
あちこちを見回し、駐車した若井さんは、
「ちょっとまっててね?」
と言って降りたかと思えば、
「はい、どーぞ」
と私側のドアを開けてくれた。
「え?」
外の空気が流れ込み、
どこからか鳥の声も聞こえてきそう。
「ありがとう…ございます、」
「いいえー」
店のなかに入れば、
アイスのショーケースがお出迎えしてくれる。
「えっすごい種類ある」
若井さんも目を輝かせて
一つ一つを覗いている。
「莉央何にする?」
「え、このほうじ茶とか…?」
「いーね、俺はどーしよっかなー」
“ジェラート2種盛り 680円”
ろっぴゃく…
私いくら持ってきたっけ。
とポケットを漁るも、財布が、ない。
「あ、」
そうだ、出かける前に洗濯もの取り込むのに
リビングに置いてきちゃった…
「ん?決まった?」
「あ、私いらない…」
「え?いらないの?」
「…若井さんだけたべて、?」
「あ、そうなの?じゃあ先に車戻ってる?」
と鍵を渡される。
じゃらじゃらと、その質量が手に乗る。
「うん…」
店の外の真夏の日差し。
若井さんの黒の愛車。
鍵を開け、助手席に乗り込む。
残念だなぁ…
ジェラート食べたかった。
黒のシートが日差しを吸収して、かなり熱い。
「ん、おまたせー」
とドアが開き、若井さんが乗り込んでくる。
「はい、どーぞ」
と言われ目を向けると
両手にジェラートを持っている。
「え、」
「ほうじ茶と、みるくにしたよ」
確かに、乗っているジェラートは、
ほうじ茶色と、白色。
「え、私お金…!」
「大丈夫。俺の奢りだから」
「でも…!」
「ケーキと一緒だよ。
いつも家事してくれるお礼。」
「すごく助かってるの。本当だよ?」
「でも…私…、」
「いーの。何も気にしないで一緒に食べよ?」
ほうじ茶は、少しほろ苦くて。
すっきりしたみるくの甘さ。
コーヒーとバニラみたいに。
溶け合って。昇華していく。
「ん、俺のたべる?」
と差し出されたのは、
ほうじ茶よりも少し濃い焦げ茶のものと、
ピンクのもの。
「何味ですか?」
とスプーンで2種類すくい、口に入れる。
「コーヒーといちご」
「え?」
まって、すっごい変な味する。
苦いのか甘いのかはっきりしない。
揉めてるみたい。
「なにこれ…」
「ね?変な味でしょ?笑」
と、なぜか嬉しそうに言う。
コーヒーこそみるくだったのでは…
「いいんだよ、また来れば。ね?」
と、にひひと笑ってみせた。
「もう一口たべる?」
「え、いらない」
口直しをするように、
ほうじ茶とみるくを食べる。
うん。おいしい。
若井さんも負けじと
スプーンですくって食べている。
やがて、
「あ、バラバラに食べれば
普通においしいじゃん」
と当たり前の事を世紀の大発見のように言う。
「無理に仲良くさせるもんじゃないなぁ…」
「合わないのは合わないから
しょうがないよね。」
と教訓を言った。
私と、母親みたいに。
母親と、父親みたいに。
でも、ほうじ茶とみるくみたいに。
私にも合う環境があるんじゃないかって。
「そう、だよね。
無理に好きになる必要ないよね」
「両方さ、みるくと合いそうなのに
友達の友達同士を合わせたりすると、
合わなかったりする。不思議だね」
コーヒーといちごを同時に食べて、
「うん。やっぱり合わない」
と微笑んでいる。
私だったらそれぞれバラバラに食べるのに。
どうして合わなさを楽しめるのかわからない。
「合うか合わないかって、
試さないと分からないもんだね」
「それぞれさ、個性として輝けるのに、
混ぜると、両方失っちゃう。」
私も、私一人だったら、輝けるのかな。
お母さんと混ざらなければ。
歪むこともなかったのかな。
「次から、コーヒーとバナナにしてみる。」
と、コーヒーを一口食べている。
対して変わらない気が…
「いいんだよ。
莉央とまた来る口実、ってことで」
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「莉央ってさ、いつ買い物行ってるの?」
「いつって…、昼間、ですけど…」
昼時に、キッチンで料理をしていると、
ダイニングの若井さんに聞かれる。
買い物。食料の調達などだろうか。
今は夏休みだから、昼間、
一人の時間に買い物に行き、
若井さんが帰ってくる頃には夕飯を作っている。
「ぇ、それって明日行く?」
「行きます」
「あ、ほんと?」
「すみません、
なにか足りないものでもありましたか?
絶対に買ってくるので教えていただけますか」
とエプロンのポケットからメモをとりだす。
「あ、いや、▓▓▓▓▓▓って」
「え?」