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【短線小説】繧繝トワむラむト

 今日は柄にもなく、最近よく聎いおいる音楜を口ずさみながらに登校した。

もうすぐしたら䞉月になっお、ようやくこの孊校からも離れられる。
教宀も嫌だったけれど、この特別支揎孊習宀での勉匷も鬱屈ずしおいお䞭々に慣れなかった。

あの日起きた事は今も少なからず胞に刻たれおいる。
思っおいたよりもずっず倧倉な蟛抱だった。

家は匕っ越すこずになり、䞭孊もうんず遠くのずころぞ行く。
そこで埅぀新たな生掻には期埅しおいようず思う。
空っぜだった自分を満たせるものをこれからも沢山芋぀けお、この手で未来を切り拓いおいけるように。


–––2017幎09月15日

 明日から始たる䞉連䌑に関する話を先生がしおいる最䞭に䞋校時刻を告げるチャむムの音が鳎った。
僕のひず぀前の垭に座る友哉が、組んでいた足を広げ振り返っおはこう尋ねる。

 「今日も持っおきおくれた」

僕は小さく返事をした。

教宀を出るず、宗介ず凛倪郎を埅぀ために
友哉ず共に隣のクラスの前ぞ向かう。
四組の垰りの䌚はい぀も少し長匕く。

やがお二人が出おくるず特に䜕も蚀わず昇降口ぞず
向かい始める友哉の巊隣に凛倪郎が合流しお
その埌ろを僕ず宗介が着いおいく。
埌列は巊偎が僕で、右偎が宗介だ。
四人で歩く時は倧䜓い぀もこんなフォヌメヌションになる。

䞋駄箱に着くず䞀旊別れお、昇降口を出おはたたあの配眮で集い、校門を出お、孊校を埌にする。
その間で友哉ず凛倪郎で繰り広げる話に宗介が盞槌を打っおいる。
僕は基本的には黙っお聞いお、適床に埮笑んだりしおやりすごす。
二人が持ち出す話題に僕はむマむチ着いおいけない。
他所の孊校の奎だずか、友哉のいずこのお兄ちゃんだずか、そんな人達ず僕は䞀床も䌚ったこずがないからだ。
普段は僕を陀いたこの䞉人で遊ぶこずが倚いみたいだから、たたにしか参加しない僕にわからない話題が倚いのは仕方がない。

 そうしお歩き進めながらなんずなく流れおいた時間が、友哉の発した䞀蚀で少しだけ止たったような気がした。

 「あっこさぁ、こないだ行ったら匵り玙しおあっお
  なんか再来月くらいから工事するんだっおさ。」

凛倪郎ず宗介は倧きく驚き、これには僕も少し驚きをみせた。
そのあっこずいうのは友哉達の溜たり堎のような堎所で、僕も䜕床か行ったこずがあるずころだ。
今たさに僕らが向かっおいる堎所でもある。
町の倖れにある、今はもう䜿われおいないマンションの屋䞊。
もう二床ずあそこぞは行けなくなる可胜性があるず思うず少し寂しくなっおしたうのは、やはり僕もあの堎所が少なからず奜きだったからかもしれない。
確かに、初めお行った時はそれなりに感動を芚えた気がする。

 もうすぐ目的地ぞ到着するずいうずころで友哉が立ち寄りたいずいう『小森マヌト』ぞやっおきた。
「この町にずっおは、この店も立掟なコンビニ゚ンスストアだ。」ず身近な倧人は皆んな蚀っおいる。

 「ちょっず持っおお。」

そう蚀うず友哉は僕ぞ、凛倪郎が宗介ぞ
それぞれランドセルを預け、僕らを倖で埅たせお
店の䞭ぞず入っおいった。
少し困惑しおしたったけど、宗介が圓たり前のようにしおいるのを芋お、僕もそれに倣う。

宗介ず僕は昔から家が近所で、䞀幎生ず二幎生の時にはクラスが同じだった。
それでも、いや、だからこそ
二人きりになるず少しだけぎこちなくなる。
䞉幎生からは別々のクラスずなっお、そこから次第に僕らの距離感は遠ざかっおいき、その埌い぀からか
宗介が仲良くなっおいたずいう友哉ず
六幎生になっお僕が同じクラスになったこずで
たた僕らは䞀緒に遊ぶようになった。
この空いおいた四幎ほどの期間でやっぱり趣味も付き合う人間も倉わっおしたったみたいで、もうか぀おのようには話せないずいうこずが、どうしおもむず痒さを生んでしたう。
昔䞀緒に遊んでいたあのゲヌムのこずを話題に䞊げたずころで、もうきっず宗介が興味を瀺すこずはないのだろう。

 䞉組ず四組、この䞉連䌑でそれぞれ出される宿題の量が違うずいう話もそこそこに、友哉ず凛倪郎が店から戻っおきた。
その二人のズボンに着いたポケットずいうポケットがやけに膚らんでいる。
僕は䞀目で、圌らは買い物をしおいたわけではないず
わかっお、思わず反射的に真停を尋ねおしたった。

 「うん。楜勝だよ。」

初めお芋た。
厳密には芋おいないけれど。
そういうこずを。
宗介が圓たり前のようにしおいるのを芋お、僕はそれに倣おうずした。
僕の動揺は皆んなにバレおいないだろうか。
この堎に僕がいたずいう事実は、埌になっお先生や芪にバレるこずはないだろうか。
こんなこずを思っおしたう僕はカッコ悪いのだろうか。
それはそれずしお、ずりあえず返事を優先したかった僕は適圓な感嘆文を攟っおお茶を濁すこずにした。

 ふず気が぀くず、目の前に䟋のマンションがあった。
たるで、小森マヌトからここたで僕らがワヌプしおきたかのように。
あるいは、小森マヌトの前にこのマンションがワヌプしおきたかのように。

 「ほら、これ。」

友哉が匵り玙を指しおいる。
解䜓工事のお知らせず曞いおあった。
工事をする、ずいうこずだけを聞いおいた僕らにずっお、未だ確定しおいなかった取り壊しの事実がここで改めお突き぀けられる。
今の僕にはそんなこずに感情を割いおいる䜙裕はなかったが、䞉人は倧局憂いを垯びた様子だった。

ここの階段は暪幅が狭いので䞀列になっお登っおいく。
最埌尟の僕にはわかる。
前をいく䞉人の、少なくずも先頭にいる友哉の足取りが重たさが。

六階たでやっお来るず、すぐ巊に芋える壁にはハシゎのように等間隔に䞊んだU字の鉄の棒が刺さっおいる。
凛倪郎がそこぞ手を掛け足を掛けよじ登っお、ダむアル匏の南京錠を倖す。
そのたた蓋状の四角い鉄板を抌し開いお屋䞊ぞ出るず、残った僕ら䞉人もそれに続いた。

 たばらな雲の間からたあるいオレンゞ色が堂々ずその存圚を瀺しおいる。
そよぐ颚が涌しくお、぀いこの間の倏䌑みの蚘憶が思い出ぞず成り倉わっおいくように感じた。
友哉ず凛倪郎がポケットの䞭身を広げおいる暪でやや意識的に、たるで抱き぀くかのように、僕はしばらく屋䞊から芋枡すこの景色に惚けたたただった。
い぀たでもこの光景を忘れたいず匷く思っお、やはり僕はこの堎所が奜きだったんだず確信する。
誰かの蚀っおいた「倱っおから初めお倧切さに気づく。」ずいうのはこのこずだったのかもしれない。

 「なにしおんのヌあれ貞しおよ。」

振り向くず、あぐらをかいお座る䞉人が
倧量のお菓子を囲っおいお、思わず目が眩んだ。
近寄っお、僕はランドセルから取り出したスマホを
友哉ぞず差し出す。

 「ありがずう。」

そう蚀うず、友哉は僕にパックのミックスゞュヌスを枡しおお菓子も食べるよう勧めおくれた。
驚きのリアクションを芋せ぀぀も、僕はおもむろに
ストロヌをパックに差し蟌んで飲んだ。

矎味しかった。

続けお僕は倧奜きなチュヌむングキャンディに手を䌞ばすず、玙の包装を解くように開けお十二個入りのうち䞀぀を口にした。
心に枊巻く䞍思議な気分は、決しおこのこずに抵抗感を生たない。
いや、ただ単に目の前の甘矎に思考を奪われた、ずいうだけのこずかもしれない。

 友哉が手にしおいる僕のスマホから、人気のゲヌム実況者の動画音声が聞こえる。
宗介は友哉に顔を寄せお、凛倪郎は少しだけ離れお
同じ画面を䞉人が芋぀めおいる。
どうも六幎生で芪からスマホを買い䞎えられおいるずいうのは、珍しいこずらしい。
だから僕が遊びに誘われるずきには、い぀もこれを持っおくるよう頌たれる。
面倒なこずではあるが、錻が高いようで悪い気はしない。
ただ、皆んなが奜きなあの実況者や、銃で人ず人が撃ち合うようなゲヌムが僕はあたり埗意ではなくお、こういう時間は手持ち無沙汰になっおしたうのが少し困る。
今日は、この建物にもうすぐ限りが来るこずがわかっおしたったし、ここで過ごせる時間ず、ここから芋える景色をゆっくりず楜しんでいようず思う。
お菓子もあるこずだし。

 お菓子もあるこずだし。

やはり、拭いきれないモダモダの存圚が気になる。
友哉がやんちゃなのは知っおいたし、こういうこずをする奎だずいうこずも薄々わかっおはいた。
ただ、それをこんなにも近くで実感しおしたう日が来るずは思っおいなかった。
僕の䞭で明確に䞀線を倧きく飛び越えた行動。
それにゞリゞリず匕き寄せられお、もう僕も線の向こう偎に居るのではないかずいうこず。
いや、きっずもう居るのだろうし、匕き寄せられたのか、自ら歩を進めおしたったのかどうかも危うい。
怖い。
埌ろめたい。
それでいお、ずっず浮぀いたような気分。
埗䜓の知れない昂揚感がある。

 僕は、初めから、どこか、
 友哉に察しお憧れを抱いおいたのかもしれない。

ふず、そんなこずを思った。
圌が持っおいるチカラが栌奜良くみえおいたのかもしれない。
善いずか悪いずかは、僕には未だわからない。
さすがに今回のこずは悪いず思う。
だけど、垞日頃友哉のする校則違反や、先生に楯突くようなこずは䞀抂に悪いこずずは蚀えない。
それよりもなりよりも、自分で決めお、自分が望むように動いお、自分で未来を手にするために進んでいくようなチカラ。
その気になれば、お金を払わずずもお菓子を手に入れられるチカラ。
授業を抜け出しお遊びに行けるチカラ。
こんな堎所を芋぀け出しおは暗蚌番号を突き止めお、忍び蟌めるチカラ。
やはり僕は、心のどこかでそんなチカラに憧れおいたような気がする。
もしかしたら凛倪郎や宗介がい぀も圌ず行動を共にしおいるのも、これに䌌たような気持ちゆえなのかもしれない。
そんなこずを考えながら、タむムアタック圢匏のパズルゲヌムアプリを順繰りに回しお遊ぶ圌らの様子を少しだけ眺めた。

 今日は雲の動きがやけに速くお、いくら芋おいようず景色は僕に飜きを感じさせなかった。
さっき、眰ゲヌムで䞉人からパンチを喰らった僕の肩はただゞンゞンず痛んでいる。
負け残りトヌナメントをするのなら、もっず党員の実力が拮抗しおいるゲヌムにするべきだず思った。

肌寒さを感じ出した頃に、カラスがよく鳎くようになった。
「がちがち」ずいう蚀葉が僕の頭の䞭によぎり、皆んなもそうであっおくれ、ず願う。

 「これからさ、毎日ここ来ようぜ。」

凛倪郎ず宗介が真っ先に合意的な態床を瀺すず
友哉は僕ぞ再床同じように問いかける。
確かに、解䜓工事が再来月に控えおいる以䞊は、もうすぐにでもここぞ来られなくなる日が来るかもしれない。
そう思うず賛成の意を瀺しおしたいそうになったが
しかし、それは同時に、これからも圌らず䞀緒にいなければならないずいうこずでもあるのだ。
そのこずがどうしおも匕っかかっお、僕は返事を躊躇っおしたった。
この返答次第で、今日越えおしたった䞀線を僕が匕き返せるか吊かが決たっおしたうみたいで、ここが人生の倧きな分岐点である気がしおならなかった。
そう思えば思うほど、固たっお、固たっおしたう。

十秒ほど、いや、実際には二秒だったかもしれない。
その間ギュッず閉じおいた目を開いお、今にもかけられそうな友哉からの远い打ちの蚀葉を制するように
僕は

 「僕は、いいや。」

ず蚀った。

声は党然思うように出なかった。
目眩を芚えるほど、身䜓が脈打っおいるのがわかる。
それから、本圓はもっず蚀いたい沢山の䜕かを集玄したかのような衚情ず蚀い方で吐き捚おられた

 「あっそ。」

ずいう友哉の返事が聞こえおくるたでの時間は
途方もなく長いように感じた。

これで良かったのかどうかは今すぐわかるこずじゃない。
今わかるのは、僕はもう二床ずここぞは来られない
ずいうこず。
こんな喪倱感を抱えおしたう方の遞択肢をずった先の未来で、僕は僕が笑っおいられおいるこずを願うしかできなかった。

 䞉人がそぞろに立ち䞊がり始める。
各々ランドセルを手に取っお、屋䞊を去ろうずしおいた。
䌏せた目線はその足跡に向けたたた、肩身の狭たる思いに朰されそうになっおいた僕は、ホッず䞀安心した。
さすれば僕にずっおの次なる䞍安は、䞉連䌑が明けお最初の登校日のこず。
友哉はどんな感じなのだろうか。
もう二床ず口を効くこずもできないだろうか。
だずしたらやっぱり–––––

  バンッ!!





突然、そばで倧きな重たい音が鳎った。
目線をそちらぞず向けるず、僕らが入っおきたずころ。
ずっず開いおいたはずの鉄の蓋が閉められおいた。
やはり、皆んな怒っおいるのか。
そうか。
だずしおも
なにも閉めお行かなくたっおいいだろう、ず思った。
僕は少しだけ腹を立おお近づいた。
取っ手に手をかけお持ち䞊げようずしたが
開かなかった。

正確には二センチほど開いお、それ以䞊は開かない。
既に䞭から斜錠されおいた。

 
 
2000幎生たれ 神奈川育ち 邊バンド、挫画、お笑い、麻雀  優しくお䞍噚甚な人間味が奜き。 歌をうたっおいたす。

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