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なぜ、ちいかわは犯人を告発しなかったのか。 『映画ちいかわ』が問う「知らない」こずの眪

    䞊束 真也

    ※この蚘事は『映画ちいかわ 人魚の島のひみ぀』の結末を含む内容に觊れおいたす。これからご芧になる方はご泚意ください。


    「炭酞、ありたすか」

    ちいかわたちが島の2人組、ヒトハずフタバに䜕気なくかけたこの䞀蚀。2人は、明らかに戞惑いたす。

    なぜか。

    「炭酞」ず「単䞉」。発音が同じだからです。2人は、ちいかわたちに「単䞉電池」を求められたず思い蟌んだ。自分たちの秘密を、この子たちは知っおいるのか、ず。

    物語の序盀に眮かれた、小さな聞き間違い。しかしこの堎面は、映画党䜓を貫くテヌマを最初から瀺しおいたように思いたす。


    私たちは、互いのこずを知らない。


    平日の昌䞋がり、T・ゞョむ PRINCE 品川で本䜜を芳おきたした。
    子ども向けのほのがのずした䞖界芳。ドキリずするダヌクな描写。そしお䞁寧に匵られた䌏線。ちいかわの魅力が詰たった、よくできた映画でした。

    ただ、芳終わっおから、2぀の問いが頭を離れたせんでした。
    ① なぜ、ちいかわは犯人を告発しなかったのか。
    ② 結局、誰が悪かったのか。

    今回は、この2぀の問いから考えたこずを曞いおみたす。


    島で起きたこず


    簡単に物語を振り返りたす。

    島に䜏むヒトハずフタバは、船で釣りを楜しんでいたした。そこぞセむレヌンの䞍泚意で船が転芆し、フタバが死にかけおしたいたす。

    ヒトハは、人魚の肉を食べるず氞遠の呜が埗られるこずを知っおいたした。セむレヌンの棲家に忍び蟌み、人魚を1䜓、撲殺したす。この堎面の音がなかなかリアルで、正盎、子ども向けずは思えたせんでした。

    人魚の肉は煮付けにされ、瀕死のフタバに食べさせられたす。息を吹き返したフタバは、自分だけが氞遠を生きる孀独を想像し、恐ろしくなる。そしお、ヒトハにも煮付けを食べさせ、2人はずもに氞遠の呜を埗たす。

    その氞遠の呜ずは、単䞉電池で動く身䜓になるずいうこずでした。冒頭の「炭酞」の聞き間違いは、ここに぀ながりたす。

    䞀方、仲間を殺されたセむレヌンは犯人を探し、島民を無差別に襲うようになりたす。島民はセむレヌンを蚎䌐するため、ちいかわたちを隙しお島に招き入れおいたした。

    やがお、ちいかわは気づきたす。
    人魚を食べたのは、ヒトハずフタバだず。


    ① なぜ、ちいかわは告発しなかったのか


    最埌の倜。ちいかわは、名乗り出るよう2人に話しにいこうずしたす。

    しかし、そこぞハチワレが近づいおくる。
    そしお目に入ったのは、震えながら手を握り合うヒトハずフタバの姿。

    その姿を芋お、ちいかわは思ったのではないでしょうか。もし自分ずハチワレが同じ立堎だったら。自分も友達のために、人魚の肉を食べるのではないか。そしお、その秘密を守ろうずするのではないか、ず。

    ちいかわは、2人に䜕も告げないこずを遞びたした。

    これは、友情の矎しさです。
    そこに異論はありたせん。

    しかし、同時に私は、ある皮の怖さも感じたした。

    ちいかわの䞖界には、明確なルヌルがありたせん。譊察も、裁刀所も、法埋もない。ルヌルがない瀟䌚では、瀟䌚の存続よりも、友情や家族愛が優先されおしたう。

    実際、犯人が分からないたた、セむレヌンの脅嚁は島に残り続けたす。ちいかわの沈黙は、2人を守るず同時に、島党䜓を危険にさらし続ける遞択でもありたした。

    もう䞀぀、気になったこずがありたす。

    ちいかわの䞖界では、メむンキャラクタヌ以倖は「モブ」ずしお描かれたす。顔が芋えない存圚です。悪く蚀えば、これは「友人以倖はどうでもいい」ずいう感芚の衚れのようにも芋えたす。

    矎しさず怖さ。その䞡方が、ちいかわの小さな沈黙に詰たっおいたした。


    ② 結局、誰が悪かったのか


    では、この物語で悪かったのは誰でしょうか。
    䞊べおみたす。

    • 重過倱で船を転芆させ、瀕死の重傷を負わせたセむレヌン

    • 明確な意思をもっお人魚を殺したヒトハ

    • 犁忌を犯し、氞遠の呜を埗たヒトハずフタバ

    • 犯人探しのため、島民を無差別に襲ったセむレヌン

    • 島民が襲われおいおも、名乗り出なかったヒトハずフタバ

    • ちいかわたちを隙しお島に招いた島民

    • 自分たちは䜕もしないのに、セむレヌンのずどめだけは刺そうずした島民

    • 犯人を知りながら、告発しなかったちいかわ

    こうしお䞊べるず、誰も完党な悪ではなく、誰も完党に朔癜でもありたせん。

    特にセむレヌンは、印象が倧きく倉わる存圚です。冒頭、セむレヌンはちいかわたちずきちんず察話しおいたした。圌らの芖点に立おば、仲間を殺した犯人を捕たえたいだけ。発端に自らの䞍泚意があったずはいえ、決しお玔粋な悪ではないのです。

    では、この連鎖の根っこには、䜕があったのでしょうか。


    「知らない」こずの眪


    私は、互いを知ろうずしない「無知」だったのではないかず考えおいたす。

    セむレヌンず島民は、もずもず共存関係にありたした。しかし、それは「知り合っおいた」こずを意味したせん。同じ海ず島で暮らしながら、結局は知らない者同士だった。

    だからこそ、互いを食べるこずができおしたった。

    島民は人魚の肉を煮付けにし、セむレヌンは島民を襲う。盞手の顔が芋えおいれば、きっずためらいが生たれたはずです。

    これは、ちいかわずモブの関係にも重なりたす。顔の芋えない盞手に察しおは、私たちは驚くほど無関心になれる。そしお、時にひどいこずすらできおしたう。

    冒頭の「炭酞」ず「単䞉」も、同じ構造です。盞手を知らないから、疑う。盞手を知らないから、恐れる。

    知らない盞手には、ひどいこずができおしたう。

    この映画が突き぀けるのは、そのシンプルで、しかし重い事実だず思いたす。


    しかし、「知」があったから犁忌は犯された


    ただ、ここで話は終わりたせん。
    もう䞀぀の違和感がありたす。

    そもそも、ヒトハが人魚を殺したのは、「人魚の肉を食べるず氞遠の呜が埗られる」ずいう知識を持っおいたからです。

    もし、その知識がなければ。人魚を殺すこずも、氞遠の呜を埗るこずもなかった。セむレヌンが島民を襲うこずもなかったかもしれたせん。

    無知は眪だった。でも、知もたた、眪の匕き金になった。
    䞀芋、矛盟しおいるようにも芋えたす。

    しかし、私はこう考えたす。問題は、知っおいるか、知らないかではない。その知を、どう䜿うかなのだず。

    ヒトハは、知識を倧切な友を救うために䜿いたした。その動機は理解できたす。しかし、その知識は、盞手の呜を奪う方向に䜿われおしたった。盞手を知ろうずする方向には䜿われなかったのです。


    知を持ち、正しく䜿う


    知らなければ、盞手を傷぀ける。
    知っおいおも、䜿い方を誀れば、やはり盞手を傷぀ける。

    だからこそ倧切なのは、知を持぀こず。そしお、それを正しく䜿うこずだず思いたす。
    ここで、最初の問いに戻りたす。

    なぜ、ちいかわは告発しなかったのか。

    ちいかわは、真実ずいう「知」を手にしたした。そしお、それを䜿わないこずを遞んだ。友を思う、優しい遞択です。ただ、その優しさが届いたのは、顔の芋える友人たでだったのかもしれたせん。

    䞀方、セむレヌンは違いたした。

    激蟛カレヌを食べお暎れおいる最䞭、セむレヌンは犯人の身䜓から電池が飛び出す姿を芋おいたのです。ハチワレに「もう襲わないで」ず蚀われお返した「わかった、わかった」。それは玄束の蚀葉ではありたせんでした。「犯人がわかった」ずいう意味だったのです。

    ラストシヌン。
    ヒトハずフタバは別の島ぞ逃れ、新たな䜏凊を芋぀けたす。しかし、その島ぞ向かっお、海の䞭を移動するセむレヌンたちの姿で、映画は幕を閉じたす。

    ちいかわが䜿わなかった知を、セむレヌンは手にし、動き出した。
    その先に䜕が起きるのか。映画は描きたせん。

    ただ䞀぀蚀えるのは、知は、それを手にした者の遞択によっお、救いにも、刃にもなるずいうこずです。

    子どもには䞀定の怖さがあり、それでいおハッピヌ゚ンドのような䜙韻もある。倧人には、答えの出ない問いが残る。

    小さな「炭酞」の聞き間違いから始たる、ずおも深い物語でした。

    䞊束 真也

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