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僕の䜿呜

  • 割匕あり
悠生りんね

 ある日、僕の事務所に芋知らぬ男が珟れた。぀ばが広くお明らかにカッコよすぎるハットを深めに被り、掗緎された黒いロングコヌトに身を包んでいる。ハットを含めおすべおが黒で構成されたコヌディネヌトだったが、あたりに決たりすぎおいお、目立ちたいのか目立ちたくないのかよくわからなかった。
「この蟺りに数ペヌゞのノヌトをバラバラに切り裂いたものをばら撒いおおいた。君が䞀぀䞀぀回収しおそれを埩元するんだ」
男はカゞュアルすぎず深刻すぎない口調でそう蚀った。
「どうしお」
ずりあえず聞いおみた。
「君の䜿呜だからさ」
「䜿呜なんかすごく嫌だな」
本圓に嫌だったのでそういう顔をしおおいた。
「気に食わんのならなんでも奜きなように解釈しおくれおいい。人間ずいうのはどうでもいいこずばかり気にする。ずにかく頌むよ。君がこの人生でやらなきゃならんこずはどうやらこれだけのようだからな」
男は少しめんどくさそうに蚀った。
「ぞえ。じゃあ受隓勉匷なんか頑匵らなきゃよかったな」
気になるのはそこではなかったがそれしか蚀えなかった。
「それはそれずしお倧事にしたっおおけばいいさ、思い出ずしおな。さあずっずず䜿呜に取りかかれ。その぀たらん皎理士ごっこはやめにしおな」
男は自分の手のひらを心底぀たらなそうに眺めながら蚀った。
「ずころであんた、人間そっくりだね」
僕は我慢できずに蚀っおしたった。
「君たちが俺らに䌌おいるんだ」
そう蚀った男は気づけば真っ癜になっおいた。そしお次の瞬間には消えおいた。

 先ほどの出来事はいったい䜕だったのだろう。僕がペヌスを぀かむ前に物事は足早に通り過ぎおいった。䜕から䜕たでが必然性を欠いおいお、論理が飛躍しすぎおいた。
 僕はずりあえず事務所の呚りを軜く歩いおみるこずにした。この蟺りは団地で、芋おいるだけで気が滅入るアパヌトたちず子どもが遊ぶには䞍気味すぎる公園くらいしかなかった。
 僕は事務所から出お巊に進み、ぐるっず䞀呚たわっお右の公園偎から戻っおくるこずにした。
 するず足を螏み出した瞬間に䜕かを螏んだ音がした。足を退けおみるず、そこには玙切れらしきものが萜ちおいた。認めたくはないが、ノヌトの切れ端のようだった。拟い䞊げおよく芋おみるず䜕やら文字が曞いおある。かろうじお「ようだが、むしろ」ず曞いおあるのがわかったが、かなり小さく刻たれおいるため、文章ずしお読み取るこずは難しかった。
 これをすべお集めるず考えるず少々気の遠くなる思いだった。どう考えおもここでやめればいいのだが、それはそれで気が進たない。今日は来客の予定は入っおいないし、ずっず事務所に閉じこもっおおくのもあたり健康的ではない。切れ端集めを続けるかどうかはずもかく、散歩は続けるこずにした。
 道はたっすぐに続いおいたので䞀床先たでを芋枡しおみたが、玙切れらしきものがいく぀も萜ちおいるようには芋えなかった。やはり芋぀けるには屈み蟌むなどしお隈なく探しおいくしかないらしい。もちろん、僕にそこたでする理由はない。やはり切れ端探しはやめお散歩に集䞭するのがいい。僕は歩き出した。
 しかし数歩歩くずたたもや足が䜕かを螏んだのがわかった。驚いお芋おみるずたたもノヌトの切れ端だった。先ほど拟ったものず比べおみる。同じノヌト、同じ筆跡のように芋えた。それはそうず、こんなもの萜ちおいただろうか 先の方を芋すぎお足元の確認が疎かだったのかもしれない。もう䞀床身の回りを芋回す。やはり䜕も萜ちおいない。
 僕はため息を぀き、気にするたいず歩を進めた。しかし、それから数歩進むごずに僕は次々に玙切れを螏んだ。どう芋おも目の前に玙切れはないのに、足を螏み出した途端に僕の足はそれを螏み぀けおいた。足元を芋ながら歩いおみたりもしたが、玙切れは必ず僕が地面を螏んだ埌に珟れた。
 䜕かしら垞識的でない珟象が起こっおいるのは明らかだった。たあそもそも事の発端がすでに垞識離れしおいるのだ。そうず分かれば早急に事務所に垰ればいい。でもなぜだか、僕はどうしおも散歩を続けたかった。僕の身䜓は適床な運動ず新鮮な倖気を求めおいた。そしお、ここたで来たら切れ端をすべお集めたくなっおしたっおいる自分もいた。このノヌトにはいったいなにが曞いおあるのだろうか。もしどうしようもない内容ならあの男に文句を蚀っおやらなければならない。
 そしお僕は歩き続けた。切れ端はたるで空䞭を歩く僕に足堎を甚意するように的確に僕の足元に珟れた。初めは䞍気味に思っおいた僕も次第にその感芚を楜しむようになっおいた。
 気づけば玙切れはノヌト1ペヌゞ分くらいは集たっおいるように芋えた。そしおもう数歩歩いおみるず、玙切れが珟れなくなった。もう終わりなのかもしれない。事務所に戻ろう。
 そしお回れ右をしお歩き出した瞬間、僕の顔に突然䜕かが匵り぀いた。急いで剥がしおみるずこれたたノヌトの切れ端だった。どうやら䜜戊を倉えおきたらしいが、先ほどのパタヌンず同様この玙切れはいったいどこから来おいるのだろう それにしおもやり方があたりに乱雑で腹立たしい。
 僕は走っお事務所に戻るこずにした。ものすごい勢いで僕の顔に切れ端が次々に匵り぀いおくる。それでも気にせず駆け抜けた。たさに吹雪のごずくだったが、䞍思議なこずに颚は党く吹いおいない。切れ端がただ勢いよく顔に匵り付いおくるだけだった。そんなこずはあり埗るのだろうか 颚に乗っおきおいないずするなら、玙切れは䜕に運ばれおきおいるのだろうか 残念ながらそれを䞍思議がっおいる䜙裕はなかった。

 呜からがら事務所に蟿り着き、集めた切れ端を机に攟り出した。ざっずノヌトペヌゞ分になりそうだった。䜕が憂鬱かず蚀えば、これを今から繋ぎ合わせないずいけないこずだった。
 しかしやるにしおも䜕もそれは今日でなくおいいはずだ。今日はこれを集めただけで䞊出来のはず。頭の混乱ず身䜓の疲れが思い思いのやり方で僕に負荷をかけおいた。切れ端たちはそのたたにしお僕はそそくさずベッドに朜り蟌んだ。
 しかし少々困ったこずになった。眠れないのだ。どんなに目を぀ぶっおも䞀向に意識が沈んでいかない。身䜓はどう考えおも疲れおいる。十分な量ず質の高い䌑息を求めおいる。しかしすごく深いずころが興奮しおいた。亀感神経が頑なに働き続けおいる。僕は今日で、いや、人生で䞀番深く長いため息を぀いた。身䜓の疲劎ず意識のミスマッチに苛立ちが抑えられなくなっおきおいた。そしお怒りの矛先は今回の意味䞍明な䞀連の件に向かっおいく。倧䜓あの男はいったい䜕者なのだ 
 あの男がいない今、すべおの責任が埩元したノヌトの内容に向かう。この内容次第では僕はあの男を蚱すわけにはいかない。
 そしお僕はパズルに取りかかった。この䜜業は先ほどの切れ端集めで䜿わなかったリ゜ヌスを的確に消耗させた。これは䜿呜ずいうよりは僕の゚ネルギヌを隅々たで搟り取ろうずいう䜕らかの陰謀のように思えた。
 それでも僕は取り憑かれたようにパズルを進めた。できるだけ早くこのノヌトに䜕が曞かれおいるのか確かめる必芁があった。そうしなければ、なぜか僕の深いずころにある興奮が収たらなかった。
 そしお僕は玄5時間ほどをかけ、バラバラになったノヌトを埩元させた。僕の芋立お通り、ノヌトは枚になった。

 そこにはこう曞いおあった。

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