
実験人生 第10章第2話 「毎日、同じ写真を撮る理由」
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「毎日同じような写真を撮って、何が楽しいの?」
そんな感じに思われているのかも。
確かに、他人から見ればそう見えるかもしれない。
夕飯の写真。
子どもの笑顔。
妻の様子。
食卓に並ぶ料理。
昨日とほとんど変わらない一枚。
でも、私にとっては違う。
その一枚は、その日しか存在しない。
明日にはもう撮れない景色だ。
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私は昔の記憶は比較的残っている。
子どもの頃。
学生時代。
若い頃の出来事。
意外と細かいところまで思い出せる。
しかし、ここ十年くらいは違う。
「さっき食べた夕飯は何だっけ?」
そう聞かれても、自信を持って答えられない日がある。
電話で約束した日時も同じだ。
だから私は、電話中にGoogleカレンダーへ予定を書き込む。
相手と最後に確認してから電話を切る。
そうしなければ、完全に忘れる。
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私の頭は、よく2TBのハードディスクみたいだと思う。
昔のデータは残っている。
でも、新しいデータを書き込む空き容量がほとんどない。
だから忘れる。
忘れる前に残す。
それが、今の私の生き方になった。
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毎日の夕飯。
家族の表情。
体調。
何を食べたのか。
今日は笑っていたのか。
少し疲れていたのか。
それらを私は、ほぼ毎日写真に残している。
誰かに見せるためではない。
SNSに投稿するためでもない。
未来の自分へ残すためだ。
「あの日は、こんな一日だった。」
そう思い出せるように。
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その頃はまだ気付いていなかった。
この「残したい」という気持ちが、
数年後、私を大きな悩みへ導くことになる。
「iCloudの容量がいっぱいです。」
その通知を見る日が来るなんて、
この時は想像もしていなかった。