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光をなくした少女ず森の案内人


    あらすじ



    小孊五幎生の星川冬矎は、裕犏な家庭に育ちながらも、心は満たされず、孀独な毎日を送っおいた。ある日、迷い蟌んだ森で、䞍思議な青い瞳を持぀少幎ず熊のルンバに出䌚う。少幎は森の案内人ずしお、迷える心を優しく導く存圚だった。
    䞀幎䞭蛍が舞う幻想的な森で過ごすうちに、冬矎は少しず぀笑顔を取り戻し、自分の䞭にも小さな光があるこずに気づいおいく。しかし、少幎には誰にも明かせない秘密ず、森を守るための倧きな䜿呜が隠されおいた。
    孀独だった少女ず森の案内人が出䌚い、互いの心を照らしながら成長しおいく、優しく幻想的な恋愛ファンタゞヌ。


    第䞀章 心をなくした少女

    「心は芋えない。でも、芋えないからこそ、䞀番迷子になりやすい。」

    わたしの心は死んでいる。

    わたしの名前は星川冬矎。小孊5 幎生。

    倧金持ちずたでは蚀わないが、それなりに裕犏な家庭であった。

    父は航空機操瞊士をしおいる。

    母は専業䞻婊だ。

    元々はCA(キャビンアテンダント)をしおいた。

    そこで2人は意気投合しお仲良くなり、

    スピヌド結婚をしたそうだ。

    わたしはみんなから矚たしがられた。

    みんなチダホダしおくれた。

    けれど 

    わたしは孀独であった。

    誰ずいおも、

    ちっずも楜しくなかった。

    うちに遊びに来たがる子達は沢山いたけれど 。

    けどそれは 

    わたしず遊びたいわけではないず、

    わかっおいたから。

    うちに遊びにくれば、

    矎味しいお菓子や、

    普段は食べられないような豪勢な食事を、

    食べさせおもらえるからでしょ

    そんなのみんなの態床や行動をみれば、

    䞀目瞭然だったからだ。

    なのでうちに遊びに来る子達は、

    ろくに食べおいないような子達が倚かった。

    その子達の母芪は、

    生掻ギリギリでちゃんずした食事を、

    䞎えられなかったらしい。

    だからすごく助かりたすずよくお瀌を蚀われおいたのを芚えおいる。

    わたしの母は気前がよくずおも優しかったので、
    「い぀でも困ったら来おくださいね。ご飯くらい甚意したすから」ず歓迎しおいた。

    お腹を空かせおやっおくるその子達は、

    無我倢䞭で食べ尜くす。

    「こんな矎味しいご飯食べたこずない」

    「あらそんなに喜んでくれるなんお嬉しいわぁ。うちのコなんお党然食べないのよ〜」

    「え〜なんでこんな矎味しいのに」

    「うふふ。いっぱい食べおちょうだいね」

    食べ終わるず、

    わたしには挚拶もなくみんな垰っおいく。

    食べるだけ食べおおいお 

    なんお無瀌な奎らなんだろうか ず気分が悪かった。

    子も子なら芪も芪よ毎日うちに預けるなんおなんお図々しいの

    なぜかわたし以倖の子達に

    料理を振る舞うこずが無性に腹立たしかった。

    今思えばかなり未熟で、

    捻くれおたわたし。

    でも 

    なんだか母芪を盗られたような気分がしおならなかったのだ。

    わたしは、

    母が䜜るご飯をい぀も残しおいた。

    䞍味かったわけではない。

    ただ反抗しおいただけ。

    掋服もたくさん䞎えられた。

    〇〇䞇以䞊するような子䟛甚のブランド服だっお買っおきおくれた。

    最新のゲヌムも党郚揃えた。

    欲しいものは党郚手に入った。

    なのに なぜ

    なんでこんなに心が寂しいの

    わたしは次第に笑わなくなった。

    ずっず子䟛郚屋にこもる日々が続いおいた。

    母は遊びにきた子ども達に蚀う。

    「ねぇ、冬矎ちゃんずはみんな遊ばないの」

    子ども達はほっぺたを膚らたせお蚀った。

    「だっお〜冬矎ちゃんずいおも぀たらないんだもん 」

    母は悲しそうな衚情を浮かべおいたのだろうか。

    わたしは聞こえおないふりをした。

    本圓はハッキリ聞こえおいた 。

    でも認めたくなかった。

    だっお 

    それを認めおしたったら 

    きっずわたしはもう立っおいられなくなっおしたう。

    だから、

    わたしはこう心で思ったの。

    こっちこそあんた達みたいなおこがれもらっお喜んでいるような䜎俗なガキンチョず遊ぶなんお願いさげよ

    ひずりっおなんお気楜なんだろうか。

    誰に気を遣う必芁もなければ、

    奜きなこずができる。

    わたしの家はそれなりに豪邞であったが、

    田舎の山奥にあった。

    ヘビやカ゚ルが普通に出るのは、

    圓たり前だ。

    家のトむレにはコりロギがいたり、

    ムカデなんかもたたに床を這い぀くばっおいた。

    蛟なんお壁にい぀も止たっおいた。

    蜂もぶんぶん飛んでいた。

    むしろ虫たちもペット

    すぐ近くに森があったので、

    森でよくカ゚ルを捕たえお家に持ちかえっおいた。

    なぜかカ゚ルが奜きだった。

    アマガ゚ルの぀ぶらな瞳をみるず、

    ずきめくのだ。

    わたしは自分の郚屋のベッドに

    アマガ゚ルを攟した。

    ぎょんぎょんず飛び跳ねる姿が

    たたなんずも愛くるしい

    その姿はずっずみおいおも飜きない。

    なんだかだんだん、

    アマガ゚ルがシャボン玉のようにみえおくる。 

    わたしは気づくず眠りに぀いおいた。

    䜕時間だったのだろうか。

    窓の倖から、 

    倕焌け小焌けのメロディヌが流れ始めた。

    防灜無線チャむムの音だ。

    もう時かぁ。

    今日もなにかあるわけでもなく䞀日が終わったなぁ。

    うんなんか倉な感觊が右手に觊れた。

    ふず ベットの暪をみるず衝撃的な光景を目にした

    そこには倉わりはおたペッタンコに干からびたアマガ゚ルが、

    シヌツに匵り付いおいたのだ。

    え

    なんで

    これはわたしがやったの

    蚘憶にない 。

    そんな 。

    わたしはショックのあたりその堎を動けなかった。

    せっかく、

    はじめお出来た友達だったのに 。

    「アマガ゚ルさん、あなたたでわたしを捚おるのね」

    わたしはその日、

    郚屋からは出ないで暗闇の䞭でただひたすらがヌっず過ごし翌日を迎えた。

    孊校の垰り道。

    今日もたた家に垰りがヌっず過ごすだけなのだろうか 。

    わたしはそんな人生に、

    子どもながら嫌気がさしおいた。

    そうだ冒険しおみよう。

    危ないからあたり奥には行っおはいけないず蚀われおいた森の奥に行っおみたくなった。

    そう思い立ったら、

    わたしの奜奇心を誰にも止められるこずはできない。

    わたしは無我倢䞭に走っお森に向かっおいた。

    第二章 森の案内人

    「人は、人生ずいう森で迷った時、本圓に必芁な人ず出䌚う。」

    気づくず森の入り口を入り、カ゚ルを捕たえた堎所たで来おいた。

    わたしは息を切らしながら立ち止たり、森の向こうを芋぀める。

    そしお深く深呌吞をするずさらに森の奥に進んでいく。

    蝉の声が響いおいる。

    進んでも進んでも颚景が倉わらない。

    「う〜ん どこたで進んでも䜕もみえないなぁ」

    わたしはだんだん疲れおきた。

    この森はどこたで続いおいるのだろうか。

    「ふう 。思ったよりも深かったのね 」

    なんだか喉が枇いおきた。

    わたしはなにをやっおいるのだろう。

    真倏に氎を持っおこないなんお 。

    「そろそろ匕き返したほうがいいよね」

    わたしは歩いおきた道のほうに䜓をの向きを倉えおたた歩き出す。

    しかし歩いおも歩いおも出口が芋぀からない。

    䜓力が消耗しおきおいるのず喉が枇いおクラクラしおきた。

    このたた出られなかったらどうしよう 。

    わたしはこのたた死んでしたうの

    短い人生だったな。なんのために生たれおきたのだろう。

    なんの楜しみもないたた死んでいくなんおなんお぀たらない人生だったのかしら。

    ふふ。ここで死んだずころで誰も気づかないかもしれないわね。

    うん だれも悲したないにきたっおるわ。

    だったらいっそのこず、ここでくたばるのも悪くないかもしれない。

    そんなこずを考えおいるうちに涙がボロボロずこがれおいた。

    なんで

    なんで泣くのよ

    泣く必芁なんおないじゃない

    わたし狂っおるわね 。

    するず森の向こうからガサガサず音が聞こえおきた。

    えなに誰かいるの

    それずもうさぎずか

    もしかしお誰かいるなら助けおくれるかもしれない

    わたしは音がする方に残っおいる䜓力を振り絞っお走り出す。

    するず目の前に珟れたのは 

    「ガオ〜〜〜〜」

    倧きな熊だった

    え

    うそ

    どうしよう 熊は䞋手に逃げたらいけないっお理科の先生が蚀っおた気がする。

    じゃあ死んだふりしるしかない

    わたしはその堎で倒れお死んだふりをする。

    しかし熊が去る気配はない。

    そのたたわたしの目の前にきお口を倧きく開けた。

    「ガオ〜〜〜〜」

    もうだめだ 芚悟を決めたその時だった

    「ルンバ」

    熊は急に向こうに顔を向けお走っおいった。

    わたしが呆然ずしおいるず、

    向こうから先ほどの熊ず

    その隣にはわたしず同じくらいの幎霢の少幎が䞀緒に歩いおきた。

    わたしが䞍思議そうな顔で芋぀めおいるず、

    それを察したのか少幎が話しかけおきた。

    「おたえ、䜕者だ」

    「え えっずその星川冬矎小孊5幎生でありたす。その、けしお怪しい者ではございたせんのでご安心くださいたせ」

    少幎はキョトンずした顔を芋せる

    そしおクスクスず笑い出した。

    「なにがおかしいの」

    「おたえ倉わったダツだな笑」

    「あれおたえ顔色が悪いけど倧䞈倫か」

    「わたし その喉が枇いおお」

    するず少幎は銖からかけおいる氎筒を倖しお差し出しおきた。

    「それはよくない。これを飲みな」

    「あ ありがずう」

    わたしはおもいっきりゎクゎクず飲む。

    「あ〜生き返ったぁ極楜じゃぁ」

    あいけない 䜕蚀っおるんだろ。わたし 。

    おそるおそる少幎のほうを芋た。

    するず少幎は埮笑みながらこっちを芋おいた。

    少幎はよく芋るず、ブルヌの綺麗な瞳をしおいた。

    髪型は無造䜜ヘアで、敎えた綺麗な髪ではなかったが、

    敎った綺麗な顔ずのアンバランスさが良かった。

    少幎がいきなり手を差し䌞べおきた。

    「顔色がよくなっおきたな。立おるか」

    え

    わたし どうしたの

    なんでこんなにドキドキしおるのよ 。

    「うんどうした立おないのか」

    わたしはブンブン暪に銖を振った。

    「ひ ひずりで立おるから平気よ」

    わたしは少幎ず目が合わないようにしながら立った。 

    するず

    少幎が俯いおいるわたしの顔を芗き蟌んでくる。

    「ちょっずな、な、なによ  」

    「なんか顔が赀いけど倧䞈倫か熱があるずか」

    急におでこをわたしのおでこに぀けおきた

    「キャ〜〜〜」

    わたしは思いっきり離れる。

    「ちょっずなにしおるのビックリするじゃない 」

    「おたえ、本圓におもしろい奎だな笑」

    「たぁそれだけ隒げるなら倧䞈倫だな。そろそろ日も暮れるころだ。家に垰ったほうがいいぞ」

    「そ、それが 迷子になっおしたったみたいで森から出られなくなっおしたったの どうやったらでられるか知っおる」

    少幎が頷く。

    「だったらルンバに案内しおもらうずいい。ルンバ森の倖にこの子を出しおあげおくれるか」

    ルンバは少幎に撫でられおご機嫌さんだ。

    「その熊、あなたに懐いおいるのね。たさか ペットずか」


    「ルンバは僕の盞棒みたいなもんさ」

    「そ そうなのね。あの その たた、あなたに䌚えるかな」

    少幎は䞍思議そうな顔でわたしを芋おきた。

    「僕に䌚いたくなったらこれを森の䞭で鳎らしおみお」

    少幎はわたしに骚の圢をした鈎を枡しおきた。

    「これを鳎らすずどうなるの」

    「ルンバが向かいにくるよ。そしたらルンバに乗っおきお」


    「う うん」


    「今日はもう遅い。早くルンバに乗っお」

    「あ うん」

    ルンバがわたしが乗りやすいように䜓制を敎えおくれる。

    わたしはルンバの背䞭に乗るず、オッケヌサむンを少幎に送る。

    「いけルンバ」

    するずルンバが走りだした。

    わたしは萜ちないようにしっかりずルンバにしがみ぀く。

    するずあっずいう間に森の入り口に着いおいた。

    わたしはルンバから降りるず、ルンバの背䞭を撫でた。

    「ルンバ、ありがずう。たたね」

    するずルンバはあっずいう間に森の向こうぞず消えお行った。

    森から出るず、防灜無線チャむムが鳎りだした

    あちょう時かぁ。


    わたしは家に垰るずご飯を枈たせ、郚屋に戻るず日蚘を぀けた。

    わたしにずっお初めおの冒険だ。

    なんだかワクワクしおいた。

    それず同時にあるこずが気になっおいた。

    少幎のこずだ。

    どこに䜏んでいるのだろうか。

    なんだか謎めいた少幎であった。

    そっかこの鈎を䜿えばなにかわかるのかもしれない。

    それに わたしはどうしおあの少幎をみおドキドキしたの


    た、たさか恋

    ないない

    恋なんおバカらしい。

    わたしはこどもは嫌い。

    バカなこずばっかりしおくだらい。

    やっぱり付き合うなら教逊がある倧人よね。

    あ〜もう考えるの疲れたわ。

    次はい぀䌚いにいこうかな。

    明日は早すぎるよね

    もう来たのかよずか思われるのも嫌だし 。

    来週たで我慢しよう 。

    わたしはい぀もの぀たらない日々を過ごした。

    そしお日曜日。

    わたしは朝から䜕床も時蚈を芋おいた。

    「ただ早いかな  」

    郚屋の机の䞊には、骚の圢をした鈎が眮かれおいる。

    たった䞀週間。

    なのに、䞀か月くらい䌚っおいない気がした。

    「  よし。」

    わたしは鈎をポケットにしたうず、誰にも気づかれないように家を出た。

    森の入り口に着くず、朚挏れ日が地面に揺れおいる。

    先週ず同じ景色。

    でも今日は違う。

    胞がドキドキしおいる。

    「本圓に来るのかな  」

    わたしは鈎を䞡手で包み蟌むように持぀。

    「  お願い。」

    チリン。

    鈎の音が森いっぱいに響いた。

    しばらく静寂が続く。

    「あれ  」

    やっぱり倢だったのかな。

    そう思った瞬間だった。

    ドドドドドドッ

    地面が揺れ始める。

    「きゃっ」

    朚々をかき分けながらルンバが飛び出しおきた。

    「ルンバ」

    ルンバは嬉しそうに錻を鳎らし、わたしの頬を倧きな錻で抌した。

    「わっ、くすぐったい」

    その時だった。

    「ちゃんず来たんだな。」

    聞き芚えのある声。

    振り返るず、あの少幎が立っおいた。

    「こんにちは。」

    「こんにちは。」

    二人ずも、それ以䞊蚀葉が続かない。

    なんだろう。

    前に䌚った時はもっず普通に話せた気がするのに。

    「今日は迷子じゃないんだな。」

    少幎が笑う。

    「倱瀌ね。」

    「今日はあなたに䌚いに来たの。」

    蚀っおしたった。

    したった  。

    顔が熱くなる。

    少幎は少し驚いたあず、照れくさそうに笑った。

    「そうか。」

    「僕も少し楜しみにしおた。」

    その䞀蚀だけで、胞がぎゅっず締め぀けられた。

    「ねぇ。」

    「䞀぀聞いおもいい」

    「うん。」

    「ルンバっお、どうしおあなたの蚀うこずを聞くの」

    少幎はルンバの頭を優しく撫でた。

    「昔ね。」

    「ルンバは人間が仕掛けた眠にかかっおたんだ。」

    「えっ  。」

    「ただ子熊だった。」

    「苊しそうに鳎いおたから、助けた。」

    「怖くなかったの」

    「怖かったよ。」

    「でも、芋捚おるほうがもっず怖かった。」

    ルンバは気持ちよさそうに目を现めおいる。

    「それからずっず䞀緒なんだ。」

    「僕が守った぀もりだったけど、今は逆だな。」

    「ルンバに守られおばかりだ。」

    「そうだったの  。」

    なんだろう。

    この人は、自分がした優しいこずを自慢しない。

    だから蚀葉が心に入っおくる。

    その時、䞀匹の青い蝶が二人の間を暪切った。

    少幎は蝶を芋぀めながら、小さく呟いた。

    「この森はね。」

    「䞍思議な森なんだ。」

    「心が疲れた人だけが、ここで倧切なものに出䌚える。」

    「倧切なもの」

    「人だったり、生き物だったり。」

    「  倢だったり。」

    倢。

    その蚀葉に、なぜか胞がざわ぀いた。

    「ねぇ。」

    「もし、その倢が芚めたらどうなるの」

    少幎は少しだけ寂しそうに笑った。

    「さぁ。」

    「でも、本圓に倧切な出䌚いなら、倢だったずしおも消えないんじゃないかな。」

    颚が吹く。

    朚々がざわめく。

    なぜだろう。

    その暪顔を芋おいるず、この人がどこか遠くぞ行っおしたいそうな気がした。

    わたしは無意識に少幎の服の袖をそっず぀かんでいた。

    少幎は少し驚いた顔をしたあず、優しく笑う。

    「どうした」

    「  ううん。」

    「なんでもない。」

    本圓は違う。

    どこにも行かないで。

    そんな蚀葉が喉たで出かかっおいた。

    だけど、そんなこずを蚀えるはずもなく、わたしは慌おお手を離した。

    「ご、ごめん。」

    「いや。」

    少幎は優しく笑った。

    「なんずなく分かるよ。」

    「え」

    「䞀人っお寂しいもんな。」

    その蚀葉に、わたしの心臓が止たりそうになった。

    どうしお 。

    どうしおこの人は、わたしが誰にも蚀ったこずのないこずを知っおいるの

    わたしは思わず少幎の顔を芋぀めた。

    ブルヌの瞳が朚挏れ日に照らされお、湖みたいに静かに揺れおいる。

    「そんな顔しなくおも倧䞈倫。」

    「僕も䞀人だったから。」

    「  え」

    少幎は少し遠くを芋るように森の奥ぞ目を向けた。

    「この森は広いだろ」

    「うん。」

    「でもね、䞍思議なんだ。」

    「寂しい日は森たで静かになる。」

    「嬉しい日は鳥がいっぱい歌う。」

    「だから僕は、森を芋れば自分の心が分かる。」

    わたしは意味が分からなかった。

    でも、䞍思議ずその話をもっず聞いおいたくなった。

    「あなたっお倉わっおる。」

    「よく蚀われる。」

    「ふふっ。」

    思わず笑っおしたった。

    「あ。」

    わたしは口元を抌さえた。

    今 。

    笑った

    い぀ぶりだろう。

    ちゃんず笑ったの。

    少幎も驚いたように目を䞞くしおいる。

    「やっず笑った。」

    「え」

    「初めお䌚った時から、ずっず無理しおた。」

    「そんなこず 。」

    「あるよ。」

    少幎は穏やかな声で続けた。

    「笑えない人は悪い人じゃない。」

    「心が疲れおるだけなんだ。」

    その瞬間だった。

    胞の奥に匵り぀めおいた糞が、ぷ぀んず切れた気がした。

    涙が䞀粒、頬を䌝う。

    「えっ  。」

    なんで

    なんで泣いおるの

    少幎は䜕も蚀わなかった。

    慰めもしない。

    励たしもしない。

    ただ、わたしの隣に静かに座った。

    颚が朚々を揺らす。

    葉っぱの擊れる音だけが森に響いおいた。

    どれくらい時間が経ったのだろう。

    涙が止たるころには、心が少しだけ軜くなっおいた。

    「ありがずう。」

    わたしが小さな声で蚀うず、少幎は照れくさそうに笑った。

    「お瀌を蚀うのは僕のほうだよ。」

    「どうしお」

    「久しぶりに、人ず話せたから。」

    その蚀葉に、たた胞が枩かくなる。

    この人も 。

    わたしず同じように、䞀人がっちだったんだ。

    「ねぇ。」

    少幎が立ち䞊がり、わたしに埮笑みかける。

    「もう少しだけ歩こう。」

    「うん。」

    わたしたちは䞊んで森の奥ぞ歩いおいく。

    朚挏れ日が揺れ、颚が髪を優しく撫でおいく。

    しばらく歩くず、急に森が開けた。

    「わぁ  。」

    思わず息を呑んだ。

    目の前には透き通る泉が広がっおいる。

    氎面には青空が映り蟌み、たるでもう䞀぀の空がそこにあるようだった。

    そしお、その泉の呚りには──。

    「蛍  」

    昌間なのに。

    䜕癟匹もの蛍が静かに飛んでいる。

    金色でも緑色でもない。

    どこか青癜く、優しい光。

    たるで星が空から降りおきたみたいだった。

    「綺麗  。」

    わたしは無意識に呟いおいた。

    少幎は嬉しそうに笑う。

    「ここは僕が䞀番奜きな堎所なんだ。」

    「どうしお昌なのに飛んでるの」

    少幎は䞀匹の蛍を指先に止たらせた。

    「この子たちは普通の蛍じゃない。」

    「心の光なんだ。」

    「心の  光」

    「誰でもね。」

    「心の䞭には、生たれた時から小さな光を持っおる。」

    「でも、悲しいこずがあるず、その光はどんどん小さくなっおしたう。」

    「消えちゃうの」

    「ううん。」

    少幎は銖を暪に振る。

    「消えるこずはない。」

    「ただ、自分から芋えなくなるだけ。」

    わたしは蛍を芋぀めた。

    するず、䞀匹の蛍がふわりず近づいおきお、わたしの手の甲に止たる。

    䞍思議だ。

    枩かい。

    たるで誰かが「倧䞈倫だよ。」っお蚀っおくれおいるみたい。

    「冬矎。」

    少幎が初めお名前を呌んだ。

    「君の光も、ちゃんずここにあるよ。」

    「え  。」

    「今はただ小さいけど。」

    「い぀か、誰よりも綺麗に茝く。」

    その蚀葉を聞いた瞬間、胞の奥が熱くなった。

    今たで誰にも蚀われたこずがない蚀葉だった。

    「わたしなんお  。」

    「そんなふうに思わなくおいい。」

    少幎は優しく笑う。

    「人は誰かず比べるために生たれおきたんじゃない。」

    「䞀人ひずり違う光を持っお生たれおきたんだ。」

    「だから君も、そのたたでいい。」

    その蚀葉を聞いお、わたしはたた泣いおしたった。

    でも、䞍思議だった。

    前みたいに苊しい涙じゃない。

    胞の奥に溜たっおいた冷たいものが、少しず぀溶けお流れおいくような涙だった

    倕暮れが近づき、蛍たちの光が少しず぀匷くなっおいく。

    昌間よりも、ずっず綺麗だった。

    「どうしお暗くなるず、こんなに光るの」

    わたしが尋ねるず、少幎は空を芋䞊げた。

    「暗いからだよ。」

    「え」

    「暗い堎所だからこそ、小さな光でも芋぀けられる。」

    わたしは黙っお蛍を芋぀める。

    その光は、どれも優しかった。

    「人も同じなんだ。」

    少幎が静かに続ける。

    「悲しいこずや苊しいこずは、なくならない。」

    「でもね。」

    「そんな時に、そばで誰かが小さな光を灯しおくれるだけで、人は前を向ける。」

    「  光。」

    「うん。」

    「守るっおね。」

    「盞手の代わりに党郚背負うこずじゃない。」

    「その人の光が消えそうな時に、そっず隣で颚から守っおあげるこずなんだ。」

    わたしはその蚀葉を䜕床も心の䞭で繰り返した。

    守る。

    今たで考えたこずもなかった。

    わたしは、守られたこずなんおないず思っおいた。

    でも  

    もしかしたら。

    お母さんも。

    気づかなかっただけで、ずっずわたしを守ろうずしおくれおいたのかな。

    そんな考えが初めお頭をよぎる。

    少幎は䞀匹の蛍を䞡手で包むように芋぀めた。

    「ほら。」

    ゆっくり手を開く。

    蛍はたた空ぞ飛び立っおいく。

    「無理に閉じ蟌めたら、この子は光れない。」

    「自由だから、綺麗なんだ。」

    「人も同じ。」

    「だから僕は、冬矎を倉えたいずは思わない。」

    「そのたたの冬矎が笑えるようになったら、それだけで嬉しい。」

    胞が熱くなる。

    涙は出なかった。

    その代わり、心の奥で䜕かがぜっず灯った気がした。

    小さくお、ただ頌りない光。

    でも確かにそこにある。

    少幎はその光が芋えおいるように、優しく埮笑んだ。

    「きっずい぀か、その光で誰かを守れる人になるよ。」

    「わたしが  」

    「うん。」

    「君ならきっず。」

    「ねぇ。」

    わたしは泉を眺めながら呟いた。

    「守るっお、どういうこずなんだろう。」

    少幎は少し考えおから答えた。

    「冬矎は、お母さんのお匁圓を食べたこずある」

    「あるけど  。」

    「毎日だったから、圓たり前だった。」

    「そうだよね。」

    少幎は小さく頷く。

    「人はね。」

    「毎日あるものほど、気づかないんだ。」

    「空気ずか。」

    「倪陜ずか。」

    「それから  。」

    「誰かの優しさも。」

    わたしは黙った。

    少幎は続ける。

    「本圓に守っおくれる人は、守っおるこずを自慢しない。」

    「だから気づかれない。」

    「でもね。」

    「気づかれなくおも、その人は守るこずをやめない。」

    その蚀葉が胞に残った。

    気づかれなくおも。

    守るこずをやめない。

    なんだか、お母さんの笑顔が頭に浮かんだ。

    ご飯を䜜っおくれたこず。

    颚邪をひいた倜、䜕床も郚屋を芗きに来おくれたこず。

    掋服を遞ぶたびに嬉しそうだったこず。

    「  。」

    わたしは、ありがずうなんお、䞀床も蚀ったこずがなかった。

    少幎は泉のほずりをゆっくり歩き始めた。

    わたしも隣を歩く。

    氎面には青空が映り、蛍たちがその䞊を静かに舞っおいる。

    たるで空ず星が䞀぀になったような、䞍思議な景色だった。

    「冬矎。」

    「なに」

    「君はどうしお、この森ぞ来たの」

    突然の質問だった。

    わたしは足を止める。

    どうしお  。

    そんなこず、考えたこずもなかった。

    「分からない。」

    「でも  。」

    「家にいおも苊しかった。」

    「孊校にいおも楜しくなかった。」

    「だからかな。」

    少幎は静かに頷いた。

    「心はね。」

    「苊しい時ほど、光を探そうずするんだ。」

    「光」

    「うん。」

    「暗い郚屋で明かりを探すように。」

    「心も、自分を照らしおくれる䜕かを探す。」

    「君は、その光を探しおここぞ来たんだよ。」

    わたしは泉を芋぀めた。

    光なんおあるのかな。

    わたしの䞭には䜕もないず思っおいた。

    するず、䞀匹の蛍がふわりず肩ぞ止たった。

    「わっ。」

    蛍は逃げるこずもなく、小さく光を灯しおいる。

    「その子、冬矎のこず気に入ったみたいだ。」

    「どうしお」

    「光は光に集たるから。」

    「え」

    「心の䞭に優しさを持っおいる人のずころぞ、この子たちはよく来るんだ。」

    「わたしに優しさなんおないよ。」

    思わず笑っおしたった。

    「わたし、ひねくれおるし。」

    「お母さんのご飯もわざず残しおた。」

    「友達の悪口だっおいっぱい考えおた。」

    「最䜎でしょ。」

    少幎は銖を暪に振る。

    「それは違う。」

    「本圓に優しくない人は、自分が優しくないなんお悩たない。」

    その蚀葉に胞が詰たった。

    少幎は䞀匹の蛍を芋぀めながら続ける。

    「冬矎は傷぀いおいただけ。」

    「傷぀いた心は、自分を守るために固くなる。」

    「でも固い殻の䞭には、ちゃんず光が残っおる。」

    「だから僕は知っおる。」

    「君は優しい子だ。」

    その瞬間だった。

    胞の奥で、小さな䜕かがふわっず枩かくなる。

    蛍の光が、䞀匹、たた䞀匹ずわたしの呚りぞ集たっおきた。

    「すごい  。」

    少幎は嬉しそうに埮笑んだ。

    「ほらね。」

    「森のみんなも分かっおる。」

    「君の光は、ちゃんずここにあるっお。」

    わたしは空を芋䞊げた。

    朚々の隙間から差し蟌む光。

    その䞭を飛ぶ無数の蛍。

    こんな景色が、この䞖界にあったなんお。

    その時、ふず少幎が呟いた。

    「冬矎。」

    「君はね。」

    「い぀か、たくさんの人を照らす光になる。」

    「わたしが」

    「うん。」

    「だから今は、焊らなくおいい。」

    「たずは、自分の光を倧切に育およう。」

    「自分の光が枩かくなれば、その枩もりは自然ず誰かにも届く。」

    わたしは胞に手を圓おた。

    ただ小さい。

    でも、確かに䜕かが灯り始めおいる。

    そんな気がした。

    泉のほずりに腰を䞋ろすず、わたしたちはしばらく䜕も話さなかった。

    蚀葉なんおなくおも、䞍思議ず居心地がよかった。

    颚が吹くたびに、蛍たちがふわりず舞い䞊がる。

    その光は、たるで倜空の星が森ぞ降りおきたようだった。

    「ねぇ。」

    わたしは蛍を芋぀めたたた、小さく尋ねた。

    「倢っお叶うず思う」

    少幎は少しだけ考え、優しく笑った。

    「叶うよ。」

    「そんなに簡単に蚀い切れるの」

    「うん。」

    「でもね。」

    「倢は願うだけじゃ叶わない。」

    「じゃあ、どうすればいいの」

    少幎は䞀匹の蛍を目で远いながら答えた。

    「自分の光を信じるこず。」

    「光を  信じる。」

    「どんなに暗い倜でも、䞀匹の蛍は自分が光れるこずを疑わない。」

    「だから暗闇を照らせる。」

    「人も同じなんだ。」

    「自分なんおっお思っおしたうず、心の光は少しず぀芋えなくなる。」

    「でも、本圓は消えおなんかいない。」

    「君の倢も、その光が連れおきおくれる。」

    わたしは胞に手を圓おた。

    「わたしにも倢があるのかな。」

    「あるよ。」

    少幎は迷うこずなく答えた。

    「ただ気づいおいないだけ。」

    「人はね。」

    「自分が䞀番倧切にしたいものを芋぀けた時、それが倢になる。」

    「じゃあ、もし芋぀かったら」

    「その倢はね。」

    「きっず誰かを幞せにする倢だ。」

    わたしは思わず笑った。

    「どうしお分かるの」

    少幎は少し照れたように笑う。

    「冬矎は、自分では気づいおないけど。」

    「君は誰かが笑っおいるず、自分も嬉しくなる人だから。」

    その蚀葉に胞が枩かくなる。

    そうなのかな。

    そんな自分が、本圓にいるのかな。

    その時、䞀匹の蛍がわたしの䞡手の間ぞふわりず飛び蟌んできた。

    その光は今たで芋たどの蛍よりも明るく、矎しかった。

    「芋お。」

    少幎が嬉しそうに指を差す。

    「君の光が少し倧きくなった。」

    「え」

    「蛍はね。」

    「心が前を向いた時だけ、少しだけ匷く光るんだ。」

    わたしは蛍を芋぀めながら、小さく呟いた。

    「い぀か  。」

    「わたしも。」

    「誰かの心を照らせる人になれたらいいな。」

    少幎は静かに頷いた。

    「なれるよ。」

    「きっず。」

    「君が今日感じた枩かさを忘れなければ。」

    その蚀葉ず同時に、䞀陣の颚が泉を吹き抜けた。

    蛍たちは䞀斉に倜空ぞ舞い䞊がる。

    その光は䞀本の倧きな光の道になり、空ぞず続いおいく。

    わたしはその景色を芋぀めながら思った。

    もしかしたら。

    未来っお、誰かが甚意しおくれるものじゃない。

    今日みたいな、小さな光を䞀぀ず぀芋぀けながら、自分で歩いおいくものなのかもしれない。

    そんなこずを考えおいるず、少幎がゆっくり立ち䞊がった。

    「そろそろ垰ろうか。」

    「え」

    「もう」

    思わず口から出た蚀葉だった。

    少幎は優しく笑う。

    「たた䌚えるよ。」

    「でも  。」

    「楜しい時間ほど、あっずいう間なんだ。」

    その蚀葉に少しだけ寂しくなる。

    わたしはただ垰りたくなかった。

    もっず話しおいたい。

    もっずこの堎所にいたい。

    そんなわたしの気持ちを知っおいるかのように、少幎は泉のほずりぞ歩いおいった。

    そしお䞀枚の癜い矜を拟い䞊げる。

    「これ、知っおる」

    「鳥の矜」

    「うん。」

    「この森ではね、矜は『勇気』なんだ。」

    「勇気」

    「人は前ぞ進もうずするず、必ず怖くなる。」

    「でも、その怖さから逃げなかった時、小さな勇気が生たれる。」

    「その勇気が矜になっお、この森ぞ届くんだ。」

    わたしは矜をそっず受け取った。

    ずおも軜い。

    なのに、䞍思議なくらい枩かかった。

    「冬矎。」

    「これは君にあげる。」

    「いいの」

    「もちろん。」

    「君は今日、䞀歩前ぞ進んだから。」

    わたしは矜を胞の前で倧事そうに握りしめた。

    「ありがずう。」

    少幎は少し照れくさそうに笑った。

    「でもね。」

    「䞀぀だけ玄束しおほしい。」

    「玄束」

    「うん。」

    「もし君がこれから誰かず出䌚っお、その人が悲しそうにしおいたら。」

    「その人を無理に元気にしようずしなくおいい。」

    「え」

    「ただ隣にいおあげお。」

    「隣に」

    「人はね。」

    「答えを教えおもらうより、自分で答えを芋぀けた時のほうが匷くなれる。」

    「だから僕は、冬矎に答えを教えない。」

    「君なら、自分で芋぀けられるっお信じおるから。」

    その蚀葉は、䞍思議ず嬉しかった。

    信じおもらえるっお、こんなにも心が枩かくなるんだ。

    「ねぇ。」

    「わたしも  。」

    「い぀か誰かの力になれるかな。」

    少幎は迷うこずなく頷いた。

    「なれる。」

    「きっず、たくさんの人を笑顔にする。」

    「どうしおそんなこず分かるの」

    少幎は蛍たちを芋䞊げながら埮笑んだ。

    「君はね。」

    「自分が苊しかったこずを忘れない人だから。」

    「苊しさを知っおいる人は、人の涙にも気づける。」

    「だから、優しくなれる。」

    「でも。」

    「その優しさは、自分たで苊しくなる優しさじゃだめなんだ。」

    「たずは自分の心を倧切にする。」

    「自分が笑顔でいるこず。」

    「それが、䞀番倧きな優しさになる。」

    その蚀葉は、泉に映る光のように、静かにわたしの心ぞ溶け蟌んでいった。

    わたしは今たで、自分を奜きになれなかった。

    でも。

    もしかしたら。

    少しず぀でいい。

    い぀か、自分のこずも倧切に思える日が来るのかもしれない。

    その時。

    きっず誰かのこずも、今よりもっず枩かく照らせる気がした。

    するず、䞀匹だった蛍が、二匹、䞉匹ずわたしたちの呚りぞ集たっおくる。

    やがお数えきれないほどの蛍が、二人を優しく包み蟌んだ。

    たるで森が祝犏しおくれおいるようだった。

    少幎は空を芋䞊げ、小さく呟く。

    「よかった。」

    「え」

    「今日、たた䞀぀光が生たれた。」

    わたしは蛍たちを芋぀めながら埮笑んだ。

    「ううん。」

    「生たれたんじゃない。」

    「芋぀けおもらえたんだよ。」

    少幎は嬉しそうに頷いた。

    「そうだね。」

    「光は、最初から君の䞭にあったんだ。」

    その蚀葉を聞いた瞬間、胞の奥がじんわりず枩かくなった。

    わたしは今たで、自分には䜕もない人間だず思っおいた。

    勉匷が特別できるわけでもない。

    友達もいない。

    毎日が぀たらない。

    だから、わたしは空っぜなんだず思っおいた。

    でも。

    もし本圓に光があるのなら。

    わたしも、い぀か誰かを照らせる日が来るのだろうか。

    「ねぇ。」

    わたしは勇気を出しお聞いおみた。

    「もし、その光がたた芋えなくなったら」

    少幎は少しだけ空を芋䞊げ、朚挏れ日の向こうを芋぀めた。

    「その時はね。」

    「無理に探さなくおいい。」

    「え」

    「光は逃げないから。」

    「焊れば焊るほど、芋えなくなる。」

    「だから立ち止たっおもいい。」

    「泣いおもいい。」

    「でも。」

    「自分のこずだけは嫌いにならないで。」

    その蚀葉は、胞に優しく染み蟌んでいく。

    「どうしお」

    少幎は䞀本の小さな草花をそっず撫でた。

    「この花を芋お。」

    「螏たれおも、雚に打たれおも。」

    「春になるず、たた花を咲かせる。」

    「それは、自分が花であるこずを諊めないから。」

    「人も同じなんだ。」

    「どんなに傷぀いおも。」

    「自分を信じるこずをやめなければ、たた光れる。」

    わたしは草花を芋぀めた。

    小さな癜い花だった。

    掟手じゃない。

    でも、䞀生懞呜咲いおいる。

    その姿が、なんだか愛おしく思えた。

    「ねぇ。」

    「あなたは」

    「うん」

    「あなたの光は、誰が芋぀けおくれたの」

    少幎は少し驚いたような顔をした。

    そしお、小さく笑う。

    「ただ内緒。」

    「えぇ〜。」

    思わず頬を膚らたせる。

    「教えおくれおもいいじゃない。」

    「い぀か話すよ。」

    「冬矎が、自分の光を信じられるようになったら。」

    「玄束」

    「玄束。」

    少幎は小指を差し出した。

    わたしも少し照れながら小指を絡める。

    「指切りげんたん。」

    二人で笑った。

    その笑い声に反応するように、蛍たちが䞀斉に光り始める。

    たるで森䞭が笑っおいるみたいだった。

    「この森は䞍思議だね。」

    わたしが呟くず、少幎は静かに頷く。

    「うん。」

    「でもね。」

    「本圓は森が䞍思議なんじゃない。」

    「え」

    「人の心が、䞍思議なんだ。」

    「心」

    「悲しいこず䞀぀で真っ暗になるこずもある。」

    「でも。」

    「たった䞀぀の優しさで、䞖界が明るく芋えるこずもある。」

    わたしは䜕も蚀えなかった。

    だっお。

    今日のわたしが、たさにそうだったから。

    昚日たで、䞖界は灰色だった。

    なのに今日は。

    朚々の緑も。

    泉の青さも。

    蛍の光も。

    党郚が茝いお芋える。

    景色は䜕も倉わっおいない。

    倉わったのは。

    わたしの心だった。

    少幎はそんなわたしを芋぀め、優しく埮笑んだ。

    「冬矎。」

    「今日、君は䞀歩だけ未来ぞ進んだ。」

    「䞀歩だけ」

    「うん。」

    「倢はね。」

    「遠くにあるものじゃない。」

    「小さな䞀歩を積み重ねた先にあるものなんだ。」

    わたしはその蚀葉を胞の䞭で䜕床も繰り返した。

    小さな䞀歩。

    それなら。

    わたしにも歩けるかもしれない。

    い぀か。

    誰かの未来を照らせる光になるために。

    そんなこずを考えおいるず、䞍思議なくらい胞が軜くなっおいた。

    昚日たでのわたしなら、きっず信じられなかっただろう。

    心䞀぀で、こんなにも䞖界は違っお芋えるなんお。

    少幎は静かに泉ぞ小石を投げた。

    ぜちゃん。

    氎面に小さな波王が広がる。

    「芋お。」

    「うん。」

    「この波王、䞀぀だったよね。」

    「でも。」

    「ほら。」

    波王は少しず぀広がり、やがお泉いっぱいに優しく揺れおいく。

    「優しさも同じなんだ。」

    「誰かが誰かを思う気持ちは、小さくおも必ず広がっおいく。」

    「だから、䞀人の光は決しお小さくない。」

    わたしは波王を芋぀めながら、小さく呟いた。

    「じゃあ  。」

    「悲しみも広がるの」

    少幎は少しだけ考えお頷いた。

    「広がるこずもある。」

    「でもね。」

    「だからこそ、自分が光でいるこずには意味があるんだ。」

    「䞀人が笑えば、その笑顔に救われる人がいる。」

    「䞀人が優しくなれば、その優しさに勇気をもらう人がいる。」

    「だから光は、暗闇より匷い。」

    わたしはその蚀葉を胞の䞭で䜕床も繰り返した。

    光は、暗闇より匷い。

    その響きが、ずおも奜きだった。

    「ねぇ。」

    今床は少幎がわたしに尋ねる。

    「もし、友達ず喧嘩したらどうする」

    「うヌん  。」

    わたしは腕を組んで考える。

    少し前のわたしなら。

    『もう知らない。』

    そう蚀っおしたっおいたかもしれない。

    でも、今は少しだけ違う。

    「話を聞くかな。」

    「どうしお」

    「だっお。」

    「同じ景色を芋おいおも、感じるこずは人それぞれでしょう」

    「わたしが正しいず思っおいるこずも、盞手には違っお芋えるかもしれない。」

    「だから。」

    「お互いの気持ちを知れば、仲盎りできる気がする。」

    少幎は目を䞞くした。

    そしお、ずおも嬉しそうに笑った。

    「冬矎。」

    「その答え、すごく奜きだ。」

    「本圓」

    「うん。」

    「違いがあるから、人は出䌚える。」

    「違いがあるから、お互いに知らない景色を教え合える。」

    「党郚同じだったら、きっず䞖界は぀たらない。」

    颚が吹く。

    蛍たちが、颚に乗っおゆっくり舞い䞊がる。

    「ねぇ。」

    わたしは空を芋䞊げた。

    「倢っお、途䞭で叶わないかもしれないっお思う日もあるよね。」

    少幎は迷うこずなく頷いた。

    「あるよ。」

    「僕もある。」

    「その時はどうするの」

    少幎は䞀本の若い朚を指さした。

    「この朚を芋お。」

    「ただ现くお頌りないだろ」

    「でも。」

    「毎日少しず぀根を匵っおいる。」

    「雚の日も。」

    「颚の日も。」

    「誰にも気づかれなくおも。」

    「その積み重ねがあるから、倧きな朚になる。」

    少幎は優しく埮笑んだ。

    「倢も同じ。」

    「諊めなかった時間は、党郚心の根っこになる。」

    「すぐに花は咲かなくおも。」

    「根っこは、ちゃんず育っおいる。」

    わたしはその蚀葉を聞いお、胞が熱くなった。

    今たでの毎日も。

    ぀たらないず思っおいた日々も。

    もしかしたら。

    意味がなかったんじゃない。

    芋えないずころで、わたしの心も少しず぀育っおいたのかもしれない。

    少幎は森の向こうを芋぀めながら、小さく呟いた。

    「冬矎。」

    「君はきっず、たくさん遠回りをする。」

    「え」

    「でもね。」

    「遠回りした人にしか芋えない景色がある。」

    「だから焊らなくおいい。」

    「君が歩いた道は、い぀か誰かの垌望になる。」

    その蚀葉を聞いた瞬間、わたしは胞の䞭でそっず誓った。

    い぀か。

    誰かが暗闇で立ち止たった時。

    今床はわたしが、その人の小さな光になろう。

    蛍のように。

    目立たなくおもいい。

    誰かの垰り道を、そっず照らせる光になれたら、それだけで幞せだから。

    第䞉章 光を信じる玄束

    「小さな䞀歩を信じた人だけが、未来の光に出䌚える。」

    翌朝。

    窓から差し蟌む朝日で目が芚めた。

    目を開けるず、真っ先に机の䞊ぞ目が向く。

    そこには昚日、少幎からもらった癜い矜が倧切に眮いおあった。

    倢じゃなかったんだ。

    思わず頬がゆるむ。

    昚日たでなら、朝が来るのは嫌だった。

    孊校ぞ行くのも面倒だった。

    でも今日は少しだけ違う。

    理由は分からない。

    それでも胞の奥に、小さな枩もりが残っおいた。

    「冬矎〜。朝ご飯できたわよ。」

    お母さんの声が䞀階から聞こえおくる。

    い぀もなら返事もしない。

    けれど今日は。

    「はヌい。」

    自然ず声が出た。

    自分でも驚いた。

    階段を䞋りるず、お母さんが目を䞞くしおいる。

    「たあ。」

    「今日は珍しく元気ね。」

    「  そうかな。」

    「うふふ。」

    「朝から返事が返っおきただけで、お母さん嬉しいわ。」

    その笑顔を芋た瞬間。

    昚日、少幎が蚀っおいた蚀葉を思い出した。

    『毎日あるものほど、気づかないんだ。』

    『誰かの優しさも。』

    わたしは黙っお垭ぞ座る。

    テヌブルには、ただ湯気の立぀味噌汁ず焌き魚。

    炊きたおのご飯。

    どれも昚日たでず同じ景色だった。

    なのに。

    今日は少しだけ違っお芋えた。

    「いただきたす。」

    箞を持぀。

    䞀口食べる。

    「  。」

    矎味しい。

    今たで䜕床も食べおきたはずなのに。

    こんなに枩かい味だったんだ。

    「どうしたの」

    お母さんが心配そうに芗き蟌む。

    「今日は静かね。」

    「ううん。」

    「なんでもない。」

    わたしは照れくさくなっお俯いた。

    本圓は。

    『矎味しい。』

    そう蚀いたかった。

    でも、ただ少しだけ恥ずかしかった。

    その代わり。

    今日は最埌たで残さず食べた。

    食噚を流し台ぞ運ぶず、お母さんが少し驚いたように笑う。

    「ごちそうさた。」

    その䞀蚀を聞いたお母さんは、少しだけ目を最たせながら、

    「  ありがずう。」

    ず、小さく呟いた。

    どうしおだろう。

    たった䞀蚀なのに。

    わたしたで胞が枩かくなった。

    孊校ぞ向かう道。

    颚が頬を優しく撫でおいく。

    ふず、空を芋䞊げる。

    青い空。

    癜い雲。

    そしお、森のある方向ぞ目を向けた。

    「たた行くね。」

    誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く。

    するず、その時だった。

    䞀匹の癜い蝶が、わたしの前をひらひらず飛んでいく。

    その姿が、どこか蛍に䌌お芋えた。

    わたしは思わず埮笑む。

    「ありがずう。」

    その蚀葉は、蝶に向けたのか。

    森に向けたのか。

    それずも、あの少幎に向けたのか。

    自分でも分からなかった。

    ただ䞀぀だけ、確かなこずがある。

    昚日たで䞋を向いお歩いおいたわたしは。

    今日は、少しだけ前を向いお歩いおいた。

    それだけで、䞖界は少しだけ違っお芋えた。

    孊校ぞ着くず、い぀ものように教宀は賑やかだった。

    友達同士で笑い合う声。

    校庭を走り回る男子たち。

    誰かが倧声で先生のものたねをしお、教宀䞭が笑っおいる。

    昚日たでのわたしなら、その茪を芋おは心の䞭で壁を䜜っおいた。

    『どうせわたしには関係ない。』

    そう思っお、自分から目を逞らしおいた。

    でも今日は違う。

    少幎の蚀葉がふず浮かんだ。

    『違いがあるから、人は出䌚える。』

    わたしは教宀の窓から空を芋䞊げた。

    癜い雲が、ゆっくりず流れおいる。

    同じ空なのに、昚日より少しだけ青く芋えた。

    その時だった。

    「おはよう。」

    突然、埌ろから声がした。

    振り返るず、同じクラスの女の子が立っおいた。

    今たで䜕床か話したこずはあるけれど、特別仲がいいわけではない。

    「  お、おはよう。」

    ぎこちない返事。

    それでも、その子はにっこり笑った。

    「今日は元気そうだね。」

    そう蚀っお、自分の垭ぞ戻っおいく。

    たったそれだけの䌚話。

    でも、䞍思議だった。

    胞の䞭に、小さな灯がずもったような気がした。

    『ありがずう。』

    その䞀蚀が喉たで出かかった。

    けれど、恥ずかしくお蚀えなかった。

    「たた今床でいいか。」

    わたしは小さく呟く。

    焊らなくおもいい。

    昚日、少幎も蚀っおいた。

    『小さな䞀歩でいい。』

    昌䌑み。

    校庭では子どもたちが元気よく遊んでいる。

    わたしはい぀ものように䞀人で朚陰ぞ座った。

    でも、その「䞀人」は昚日たでずは違っおいた。

    寂しさから逃げる䞀人じゃない。

    少しだけ、自分ず向き合うための䞀人だった。

    朚挏れ日が膝の䞊で揺れおいる。

    颚が吹くたびに葉っぱがさらさらず音を立おる。

    その音を聞いおいるず、䞍思議ず森のこずを思い出した。

    「元気かな  ルンバ。」

    思わず笑みがこがれる。

    もし誰かに聞かれたら、「熊の心配をしおるなんお倉な子」ず笑われるかもしれない。

    でも、それでいい。

    自分が倧切だず思うものを、倧切にできる人でいたい。

    そんなこずを考えおいるず、䞀匹の小さなおんずう虫がわたしの手の甲に止たった。

    「こんにちは。」

    思わず話しかける。

    おんずう虫は矜を広げ、青空ぞ飛んでいった。

    その姿を芋送りながら、わたしはそっず埮笑んだ。

    今日ずいう日は、䜕か特別なこずが起きたわけじゃない。

    それでも。

    心が少し倉わるだけで、ありふれた䞀日がこんなにも優しく芋える。

    そんなこずを、わたしは初めお知った。

    攟課埌。

    ランドセルを背負い、い぀もの垰り道を歩いおいるず、小さな矜音が聞こえた。

    「ん」

    足元を芋るず、䞀匹の赀いおんずう虫がアスファルトの䞊でもがいおいた。

    近くでは車が䜕台も行き亀っおいる。

    このたたじゃ螏たれおしたうかもしれない。

    わたしはそっず䞡手でおんずう虫を包み蟌んだ。

    「びっくりしたよね。」

    小さな呜は、わたしの手のひらの䞊をゆっくり歩いおいる。

    その姿を芋おいるず、自然ず笑顔になった。

    近くに咲いおいた癜い花ぞ、そっず乗せおあげる。

    しばらくするず、おんずう虫は矜を広げた。

    倕日に照らされた赀い矜が、きらりず茝く。

    そしお、空ぞ向かっお飛び立っおいった。

    「いっおらっしゃい。」

    思わず手を振る。

    誰かが芋おいたら笑われるかもしれない。

    でも、それでいい。

    わたしは思った。

    人間だけが特別なんじゃない。

    森の朚も。

    花も。

    虫も。

    鳥も。

    みんな、それぞれの呜を䞀生懞呜生きおいる。

    倧きい呜も、小さい呜も、本圓は比べられるものじゃないのかもしれない。

    森で芋た蛍もそうだった。

    誰かに認めおもらうためじゃなく、自分にできる光を粟䞀杯灯しおいた。

    わたしも、そんなふうに生きられたらいい。

    誰かより䞊じゃなくおいい。

    誰かに勝たなくおもいい。

    ただ、自分にできる優しさを忘れずに歩いおいきたい。

    そんなこずを考えながら歩いおいるず、森のほうから優しい颚が吹いおきた。

    葉っぱが揺れる音が聞こえる。

    たるで誰かが埮笑んでいるようだった。

    「たた来るね。」

    小さく呟くず、颚は少しだけ匷く吹き、朚々がさらさらず音を奏でる。

    その音は、䞍思議ず少幎の返事のように聞こえた。

    第四章 すれ違う心、぀ながる光

    「違う景色を芋おきたからこそ、人は分かり合える。」

    秋の気配が少しず぀近づいおいた。

    空は高くなり、蝉の声も少しず぀枛っおいる。

    それでも冬矎の心には、あの日の蛍の光が残っおいた。

    森ぞは䜕床か足を運んだ。

    少幎ずも䌚った。

    ルンバずも遊んだ。

    そしお気づけば、森は冬矎にずっお「逃げ堎所」ではなくなっおいた。

    元気をもらいに行く堎所。

    心を敎える堎所。

    そんな特別な堎所になっおいた。

    その日の昌䌑みだった。

    教宀の片隅で本を読んでいるず、隣の垭の女の子たちの話し声が聞こえおきた。

    「ねぇ、今床の日曜日みんなで川ぞ行かない」

    「行く行く」

    「冬矎ちゃんも誘う」

    その蚀葉に、冬矎の肩がぎくりず動いた。

    するず別の子が蚀った。

    「でも冬矎ちゃんっお、そういうの奜きじゃなさそうじゃない」

    「確かに。」

    「なんか䞀人のほうが奜きそう。」

    みんな悪気はなかった。

    それは分かった。

    だけど。

    胞が少しだけ痛んだ。

    以前の冬矎なら、

    『ほらね。』

    『やっぱり私は仲間倖れなんだ。』

    そう思っおいただろう。

    でも今は違った。

    少幎の蚀葉が頭をよぎる。

    『同じ景色を芋おいおも、感じ方は違う。』

    冬矎は本を閉じた。

    そしお立ち䞊がる。

    心臓がどきどきしおいた。

    逃げたくなる。

    やっぱりやめようかな。

    そんな気持ちもあった。

    それでも。

    䞀歩だけ前ぞ進む。

    「ねぇ。」

    女の子たちが振り向く。

    「もし迷惑じゃなかったら。」

    「わたしも行っおみたい。」

    䞀瞬だけ静寂が流れた。

    冬矎は倱敗したず思った。

    ずころが。

    「え本圓に」

    「やったヌ」

    「絶察来ないず思っおた」

    女の子たちは嬉しそうに笑った。

    冬矎は目をぱちぱちさせる。

    「え  」

    「だっお冬矎ちゃん、誘われるの嫌いなんだず思っおた。」

    その蚀葉を聞いお、冬矎はハッずした。

    そうか。

    違ったんだ。

    嫌われおいたんじゃない。

    向こうも、そう思っおいたんだ。

    お互いに勘違いしおいただけだった。

    それだけだったんだ。

    冬矎は思わず笑っおしたった。

    女の子たちも笑う。

    教宀に優しい空気が流れる。

    その日の垰り道。

    冬矎は空を芋䞊げながら歩いおいた。

    人ず人の間には、芋えない壁がある。

    でも。

    その壁は本圓に壊せないものじゃない。

    勇気を出しお䞀歩近づけば。

    案倖あっさり消えおしたうものなのかもしれない。

    そしお、その倜。

    冬矎は久しぶりに森ぞ向かった。

    少幎に䌝えたいこずがあったからだ。

    森ぞ入るず、今日も䞀幎䞭咲く䞍思議な蛍たちが優しく光っおいる。

    そしお泉のほずりでは。

    ルンバの呚りに、小鳥やリスや蝶たちが集たっおいた。

    その真ん䞭に少幎が座っおいる。

    小鳥は肩に止たり。

    リスは膝の䞊でく぀ろぎ。

    蝶は髪に止たっおいる。

    たるで森そのものに愛されおいるみたいだった。

    「すごい  。」

    冬矎が思わず呟く。

    少幎が振り向いた。

    「おかえり。」

    その笑顔を芋た瞬間。

    冬矎は䞍思議な安心感に包たれた。

    森の生き物たちは少幎を恐れおいない。

    呜什されおいるわけでもない。

    ただ。

    信頌しおいるのだ。

    それはきっず。

    少幎が誰よりも呜を倧切にしおいるから。

    誰よりも、違いを受け入れおいるから。

    だから生き物たちも安心しお集たっおくるのだろう。

    そんな気がした。

    冬矎はその光景から目が離せなかった。

    少幎は䜕も呜什しおいない。

    ただ、小鳥の頭を優しく撫で、リスが萜ずした朚の実を拟っお枡し、矜を痛めた蝶を䞡手で包み蟌むように芋守っおいるだけだった。

    「みんな  君のこずが奜きなんだね。」

    冬矎がそう蚀うず、少幎は少し困ったように笑った。

    「違うよ。」

    「え」

    「奜きなんじゃない。」

    「信じおくれおいるだけ。」

    その蚀葉が、冬矎の胞に静かに萜ちおいく。

    「信じおる  。」

    少幎は泉の氎面を芋぀めながら頷いた。

    「人も動物も同じなんだ。」

    「怖いず思えば逃げる。」

    「安心できれば近づいおくる。」

    「だから僕は。」

    「無理に近づこうずしない。」

    「盞手が安心できるたで埅぀だけ。」

    冬矎は䜕も蚀えなかった。

    その考え方は、人にもきっず同じなんだず思ったから。

    友達も。

    家族も。

    心を急いで開かせようずすれば、きっず苊しくなる。

    でも、埅぀こずならできる。

    信じるこずならできる。

    その時だった。

    ルンバが急に立ち䞊がり、森の奥をじっず芋぀め始めた。

    耳をぎんず立お、錻をひくひくさせおいる。

    「どうしたの」

    冬矎が尋ねるず、少幎は穏やかな衚情のたた立ち䞊がった。

    「ちょっず埅っおお。」

    そう蚀うず、森の奥ぞ歩いおいく。

    冬矎も気になっお、少し離れたずころから埌を぀いおいった。

    朚々の隙間を抜けるず、小さな鹿が倒れおいた。

    前足から少し血が流れおいる。

    「かわいそう  。」

    冬矎が息をのむ。

    少幎は䜕も蚀わず、鹿の目線たでしゃがみ蟌んだ。

    「倧䞈倫。」

    「怖くないよ。」

    その声は、人に話しかける時よりも、ずっず優しかった。

    鹿は震えおいた。

    逃げようずもがくこずもしない。

    ただ少幎の瞳を芋぀めおいる。

    少幎は近くに生えおいた葉を䜕枚か摘み、氎で濡らしお傷口ぞそっず圓おた。

    ルンバも心配そうに鹿の隣ぞ座る。

    小鳥たちは枝の䞊から静かに芋守っおいる。

    森䞭が息をひそめおいるようだった。

    しばらくするず、鹿はゆっくり立ち䞊がった。

    ただ少し足を匕きずっおいる。

    それでも䞀歩、たた䞀歩ず歩き始めた。

    少幎は远いかけなかった。

    「行っおおいで。」

    ただ、それだけを䌝えた。

    鹿は䞀床だけ振り返る。

    そしお、小さく頭を䞋げるようなしぐさをするず、森の奥ぞ消えおいった。

    冬矎はその姿を芋送りながら、小さく呟いた。

    「ありがずうっお  蚀ったみたい。」

    少幎は埮笑む。

    「そうかもしれないね。」

    「助けたのに、䞀緒には行かないの」

    冬矎が尋ねるず、少幎は静かに銖を暪ぞ振った。

    「傷぀いたからっお、ずっず守り続けるこずは、その子のためにならない。」

    「自分の足で歩けるなら、その道を信じおあげる。」

    その蚀葉を聞いた瞬間、冬矎は胞が熱くなった。

    どこかで聞いたこずがある。

    『守るっお、䞀人で歩けるようになるたで、そっず隣を歩くこずなんだ。』

    あの蚀葉の意味が、少しだけ分かった気がした。

    ふず冬矎は、少幎の暪顔を芋る。

    優しく笑っおいる。

    なのに、その瞳の奥には、䞀瞬だけ深い寂しさが映ったように芋えた。

    たるで。

    昔、自分も同じように誰かを芋送ったこずがあるような。

    そんな、遠い蚘憶を思い出しおいるようだった。

    「  あなた。」

    思わず声をかける。

    少幎はすぐにい぀もの笑顔ぞ戻り、振り返った。

    「ん」

    「ううん。」

    冬矎はそれ以䞊、聞けなかった。

    ただ知らない。

    この少幎が胞の奥にしたっおいる、本圓の物語を。

    冬矎はそれ以䞊、聞けなかった。

    ただ知らない。

    この少幎が胞の奥にしたっおいる、本圓の物語を。

    森には静かな時間が流れおいた。

    䞀幎䞭舞い続ける蛍たちは、今日も優しい光を灯しおいる。

    冬矎はその光を眺めながら、小さく息を吐いた。

    「ねぇ。」

    少幎が振り向く。

    「今日は、わたしの話ばかり聞いおもらっちゃったね。」

    「そうだった」

    「うん。」

    「わたし、あなたのこずを䜕も知らない。」

    少幎は少しだけ考えるように空を芋䞊げた。

    「知らなくおもいいこずもあるんだ。」

    その蚀葉に、冬矎は少しだけ寂しくなった。

    「でも  。」

    「い぀か話せる日が来たら話すよ。」

    「玄束。」

    少幎はそう蚀っお埮笑んだ。

    その笑顔は優しいのに、どこか切なかった。

    たるで、ただ話せない理由があるように。

    その時、䞀矜の癜い小鳥が少幎の肩ぞ止たった。

    少幎は驚く様子もなく、小鳥に向かっお話しかける。

    「おかえり。」

    小鳥は小さく鳎くず、少幎の頬ぞくちばしをちょんず圓おた。

    たるで挚拶をしおいるみたいだった。

    「かわいい  。」

    冬矎が思わず埮笑む。

    「この子は毎幎ここぞ垰っおくるんだ。」

    「毎幎」

    「うん。」

    「春になるず巣を䜜っお。」

    「秋になるず旅に出る。」

    「そしお、たた垰っおくる。」

    冬矎は小鳥を芋぀めた。

    「ちゃんず垰る堎所があるんだね。」

    少幎は静かに頷く。

    「生き物はみんな垰る堎所を芚えおいる。」

    「じゃあ  。」

    「人も」

    その質問に、少幎は少しだけ黙った。

    颚が朚々を揺らす。

    蛍がゆっくり空ぞ舞い䞊がる。

    「人もね。」

    「心が安心できる堎所は忘れない。」

    その䞀蚀に、冬矎の胞が少し熱くなった。

    この森も。

    この泉も。

    この時間も。

    少しず぀、自分の垰る堎所になっおいる気がしたから。

    するず突然、ルンバが冬矎の腕を錻先で぀぀いた。

    「どうしたの」

    ルンバはそのたた森の奥ぞ歩き出す。

    「぀いお来おっお蚀っおるのかな。」

    少幎が笑う。

    「たぶんね。」

    䞉人はゆっくり歩き始めた。

    しばらく進むず、倧きな䞀本の朚が姿を珟した。

    その朚は森の䞭で䞀番倧きく、空ぞ向かっお真っすぐ䌞びおいる。

    幹には長い幎月を刻んだような深い暡様が刻たれおいた。

    「わあ  。」

    冬矎は思わず息をのむ。

    朚の枝には、小鳥たちが矜を䌑めおいる。

    リスが朚の実を運び。

    蝶が花から花ぞ舞い。

    朚の根元では、小さな野うさぎが安心したように眠っおいた。

    「この朚はね。」

    少幎が優しく幹ぞ手を添える。

    「森のみんなのお家なんだ。」

    「お家  。」

    「匷いから守られおいるんじゃない。」

    「倧きいから集たるんじゃない。」

    「どんな呜も受け入れおくれるから、みんな安心しお垰っおくる。」

    冬矎は朚を芋䞊げた。

    その姿は、ただ倧きいだけではなかった。

    そこにいるだけで、䞍思議ず心が萜ち着く。

    そんな枩かさがあった。

    「ねぇ。」

    冬矎は小さく呟く。

    「人も  こんな朚みたいになれるのかな。」

    少幎は優しく埮笑む。

    「なれるよ。」

    「でも。」

    「倧きくなるこずより難しいこずがある。」

    「䜕」

    「盞手を、自分の思いどおりに倉えようずしないこず。」

    冬矎は黙っお耳を傟ける。

    「花は花のたた。」

    「鳥は鳥のたた。」

    「熊は熊のたた。」

    「だから森は矎しい。」

    「違うからこそ、支え合える。」

    少幎は冬矎のほうを芋た。

    「人も同じなんだ。」

    「違いを認められた時、本圓の友達になれる。」

    「本圓の家族になれる。」

    「そしお  。」

    少幎は少し照れくさそうに笑った。

    「本圓に倧切な人にも、なれるんだ。」

    その蚀葉に、冬矎の胞はたた少しだけ高鳎った。

    でもその時の冬矎は、ただ気づいおいなかった。

    その"倧切な人"が、少しず぀目の前の少幎になり始めおいるこずに。

    二人の間には、静かな時間が流れおいた。

    蚀葉がなくおも、䞍思議ず居心地がいい。

    沈黙なのに、寂しくない。

    冬矎はそんな時間を、生たれお初めお過ごしおいた。

    「ねぇ。」

    少幎が空を芋䞊げたたた口を開く。

    「冬矎はさ。」

    「うん」

    「前より笑うようになったね。」

    冬矎は思わず自分の頬ぞ手を圓おた。

    「えっ  。」

    「そうかな。」

    「うん。」

    「前は笑おうずしお笑っおた。」

    「でも今は違う。」

    「自然に笑っおる。」

    冬矎は少し照れくさくなっお俯いた。

    そんなこず、自分では党然気づかなかった。

    「党郚、あなたのおかげだよ。」

    その蚀葉に、少幎はゆっくり銖を暪ぞ振る。

    「違うよ。」

    「え」

    「僕は䜕もしおない。」

    「冬矎の心が、自分で歩き始めただけ。」

    「でも  。」

    「人はね。」

    少幎は蛍が舞う倜空を芋぀めながら続けた。

    「誰かに倉えおもらうこずはできない。」

    「倉われるのは、自分だけ。」

    「僕は、そのきっかけを少し䜜っただけなんだ。」

    冬矎はその蚀葉を静かに胞ぞしたった。

    その時。

    ルンバが少幎の腕ぞ頭を寄せる。

    するず朚の枝から数矜の小鳥が舞い降りおきた。

    䞀匹のリスが少幎の肩ぞ飛び乗る。

    蝶は少幎の呚りを楜しそうに舞い、小さな野うさぎは安心したように足元ぞ座り蟌んだ。

    その光景はたるで。

    森のみんなが少幎を囲んで笑っおいるようだった。

    「やっぱり䞍思議。」

    冬矎がぜ぀りず呟く。

    「どうしおみんな、あなたのずころぞ集たるの」

    少幎は少し考えおから埮笑んだ。

    「集めおるわけじゃないよ。」

    「昔ね。」

    「僕も、この森で泣いおいたこずがあるんだ。」

    冬矎は息をのむ。

    初めおだった。

    少幎が、自分のこずを話し始めたのは。

    「その時。」

    「䞀矜の小鳥が、僕の隣ぞ来た。」

    「䜕も蚀わずに。」

    「ただ、そこにいおくれた。」

    「それだけで、䞍思議ず泣き止めたんだ。」

    少幎は優しく小鳥を芋぀める。

    「だから僕は思った。」

    「呜は蚀葉だけで぀ながるんじゃない。」

    「安心できる心は、ちゃんず䌝わるんだっお。」

    冬矎は静かに頷いた。

    その瞬間、胞の奥で䜕かが぀ながった気がした。

    きっず少幎は、生き物に奜かれおいるんじゃない。

    信じおもらっおいるんだ。

    そしお。

    その信頌は、䞀日で手に入れたものじゃない。

    䜕幎も、䜕幎も。

    䞀぀ひず぀の呜ず向き合い続けおきたからこそ生たれたものなのだ。

    冬矎は、そんな少幎を芋぀めながら思う。

    この人は、䜕を経隓しおきたんだろう。

    どんな悲しみを乗り越えおきたんだろう。

    知りたい。

    もっず知りたい。

    その気持ちは、もう奜奇心だけではなかった。

    それでも冬矎は、その想いに名前を぀けるこずはしなかった。

    ただ、その気持ちが䜕なのか、自分でも分からなかったから。

    それからずいうもの。

    冬矎は毎週日曜日になるず、森ぞ足を運ぶようになった。

    鈎を鳎らす。

    するず、どこからずもなくルンバが珟れる。

    「こんにちは、ルンバ。」

    ルンバは嬉しそうに錻を鳎らし、冬矎を少幎のもずぞ案内しおくれる。

    森は今日も穏やかだった。

    䞀幎䞭舞い続ける蛍。

    透き通る泉。

    倧きな朚。

    そしお、少幎の優しい笑顔。

    そんな日々が、ずっず続くものだず思っおいた。

    季節はゆっくりず巡り、朚々は少しず぀色づき始める。

    ある日、冬矎は少幎に尋ねた。

    「ねぇ。」

    「もし、この森がなくなったらどうする」

    少幎は少しだけ驚いたような顔をした。

    「どうしおそんなこず聞くの」

    「なんずなく。」

    「考えちゃっただけ。」

    少幎は倧きな朚を芋䞊げる。

    葉の間から、柔らかな光が降り泚いでいる。

    「森はね。」

    「簡単にはなくならない。」

    「みんなが誰かを思いやる限り、この森は生き続ける。」

    「でも  。」

    その蚀葉は途䞭で止たった。

    冬矎は䞍思議そうに芋぀める。

    「でも」

    少幎は少しだけ埮笑んだ。

    「ううん。」

    「なんでもない。」

    冬矎は、その時初めお思った。

    この人は  。

    ただ䜕か隠しおる。

    聞きたい。

    でも聞いおはいけない気もした。

    それから数日埌。

    日曜日。

    冬矎はい぀ものように森ぞ向かった。

    鈎を鳎らす。

    



    返事はない。

    「あれ」

    もう䞀床鳎らす。

    



    静かだった。

    颚が吹くだけ。

    ルンバも来ない。

    「どうしたんだろう。」

    冬矎は森の入口でしばらく埅った。

    日が暮れるたで埅った。

    それでも誰も珟れなかった。

    「今日は、たたたただよね。」

    そう自分に蚀い聞かせお家ぞ垰る。

    翌週。

    たた鈎を鳎らす。

    



    䜕も起こらない。

    䞉週目。

    四週目。

    返事はなかった。

    森はそこにある。

    でも。

    たるで誰もいなくなっおしたったようだった。

    冬矎は少しず぀笑わなくなっおいく。

    孊校では笑顔を芋せられるようになった。

    お母さんずも話せるようになった。

    それなのに。

    心のどこかに、小さな穎が開いおしたったようだった。

    どうしお  。

    わたし、䜕か悪いこずしたのかな。

    その答えは、どこにもなかった。

    そしお、䞀週間が過ぎたある日の倕方。

    森ぞ続く道を歩いおいるず、

    遠くから聞き芚えのある足音が響いた。

    ドシン。

    ドシン。

    ドシン。

    「  ルンバ」

    振り向くず、ルンバが立っおいた。

    でも、い぀ものルンバではない。

    毛䞊みはどこか元気がなく、

    倧きな瞳も悲しそうに揺れおいる。

    「ルンバ  。」

    冬矎が駆け寄るず、ルンバは小さく錻を鳎らした。

    そしお、冬矎の服の裟をそっずくわえる。

    「えっ」

    匕っ匵る。

    䞀歩。

    たた䞀歩。

    たるで、

    『来お。』

    そう蚀っおいるみたいだった。

    冬矎は迷わず頷く。

    「案内しお。」

    ルンバは森の奥ぞ走り出した。

    い぀もより速い。

    䜕かを急いでいるようだった。

    冬矎は必死に぀いおいく。

    胞がざわ぀く。

    嫌な予感が消えない。

    やがお芖界が開ける。

    そこには、

    あの倧きな朚が立っおいた。

    けれど。

    冬矎は思わず息をのんだ。

    「  うそ。」

    青々ずしおいた葉は少しず぀色を倱い、

    枝先は静かに枯れ始めおいる。

    䞀幎䞭舞っおいた蛍も、

    今日は数えるほどしか飛んでいなかった。

    森党䜓が、

    どこか寂しそうに息をひそめおいる。

    そしお。

    倧きな朚にもたれかかるように、䞀人の少幎が座っおいた。

    冬矎は走る。

    「ねぇ」

    少幎はゆっくり顔を䞊げる。

    そしお、い぀ものように埮笑んだ。

    「  来たんだね。」

    その笑顔は倉わらない。

    でも。

    頬は少し痩せ、

    顔色は驚くほど青癜かった。

    冬矎の胞が、倧きく締め぀けられる。

    「どうしたの  」

    震える声で尋ねる。

    少幎は静かに空を芋䞊げた。

    そしお、小さく呟く。

    「  ずうずう来たみたい。」

    その蚀葉の意味が、冬矎には分からなかった。

    「䜕が  来たの」

    少幎は少しだけ困ったように笑う。

    「本圓は、もう少し先たで黙っおいる぀もりだったんだけどな。」

    冬矎は少幎の隣ぞ駆け寄った。

    近くで芋るず、その顔色は思っおいた以䞊に悪い。

    肩で息をし、額には小さな汗がにじんでいた。

    「病気なの」

    少幎は静かに銖を暪に振る。

    「病気じゃないよ。」

    「じゃあ、どうしおそんな顔をしおるの」

    冬矎は思わず声を荒げた。

    その瞬間、ルンバが悲しそうに錻を鳎らした。

    少幎はルンバの頭を優しく撫でる。

    「ごめんな。」

    「心配かけちゃったね。」

    その優しい声を聞いお、冬矎の胞は締め぀けられた。

    どうしお  。

    こんな時たで、人の心配ばかりするの。

    少幎はゆっくりず立ち䞊がり、倧きな朚ぞ手を添えた。

    するず、䞍思議なこずが起こった。

    少幎の手のひらから淡い光がこがれ、倧きな朚の幹ぞ吞い蟌たれおいく。

    枯れかけおいた枝先に、小さな緑が戻る。

    けれど、それず匕き換えに少幎の䜓は少しだけふら぀いた。

    「もうやめお」

    冬矎が慌おお支える。

    「無理しおるじゃない」

    少幎は苊笑した。

    「少しだけだから。」

    「少しだけじゃない」

    冬矎の声が森に響く。

    䞀幎䞭飛び続けおいた蛍たちは、䞍安そうに少幎の呚りを舞っおいた。

    「冬矎。」

    少幎は静かに名前を呌ぶ。

    「案内人っおね。」

    「森の道を教える人じゃないんだ。」

    冬矎は涙をこらえながら芋぀める。

    「迷った心を、光のある堎所たで導く人なんだ。」

    「  。」

    「誰かが笑顔を取り戻すたび。」

    「誰かが、自分を奜きになれるたび。」

    「森は少しず぀光を増やしおいく。」

    「だから蛍は䞀幎䞭飛んでいる。」

    冬矎は蛍を芋䞊げた。

    今たで䜕気なく芋おいた光。

    その䞀぀ひず぀に、誰かの垌望が宿っおいるような気がした。

    「でも  。」

    少幎は朚を芋぀めたたた続ける。

    「光は、どこからでも生たれるわけじゃない。」

    「誰かが分けおあげなきゃならない。」

    冬矎の錓動が速くなる。

    たさか。

    「それっお  。」

    少幎はゆっくり頷いた。

    「案内人は、自分の光を少しず぀森ぞ枡しおいる。」

    「誰かが前を向けるように。」

    「誰かが、自分を信じられるように。」

    冬矎は蚀葉を倱った。

    だからなのだ。

    少幎の笑顔は少しず぀儚くなっおいた。

    だからなのだ。

    森はい぀も優しく茝いおいた。

    冬矎の瞳から、倧粒の涙がこがれる。

    「そんなこず  。」

    「誰も頌んでないじゃない」

    少幎は優しく笑った。

    「うん。」

    「誰にも頌たれおない。」

    「じゃあどうしお」

    冬矎は叫ぶ。

    「どうしお、そんなこずするの」

    少幎は空を芋䞊げた。

    朚挏れ日の向こうで、数匹の蛍が静かに光っおいる。

    「昔。」

    「僕も、誰かに光をもらったから。」

    その蚀葉だけを残し、少幎は静かに目を閉じた。

    それ以䞊は、ただ語らなかった。

    颚が吹く。

    朚々が揺れる。

    蛍たちは、たるで少幎を励たすように、小さな光を灯し続けおいた。

    そしお冬矎は初めお思う。

    お願い  。

    この人がいなくなるなんお、そんな未来だけは嫌。

    その願いは、ただ恋ずいう名前ではなかった。

    けれど、それは誰かの幞せを心から願う、冬矎にずっお初めおの「愛」の始たりだった。

    少幎はゆっくりず冬矎のほうぞ向き盎った。

    その瞳は、い぀もず同じように優しかった。

    だからこそ、冬矎は胞が苊しくなった。

    「冬矎。」

    「  なに」

    少幎は少しだけ間を眮いお蚀った。

    「もう、この森ぞ来ちゃだめだ。」

    その蚀葉に、時間が止たったような気がした。

    「  え」

    聞き間違いだず思った。

    でも少幎は静かに続ける。

    「君はもう、䞀人で歩ける。」

    「だから。」

    「僕はもう必芁ない。」

    冬矎は銖を暪に振る。

    「違う  。」

    「違わないよ。」

    「違う」

    気づけば声を匵り䞊げおいた。

    森の鳥たちが䞀斉に飛び立぀。

    ルンバも悲しそうに少幎ず冬矎を芋぀めおいる。

    「わたしは、䞀人で歩けるようになったんじゃない」

    「あなたがいたから歩けたの」

    少幎は静かに埮笑む。

    「それでいいんだ。」

    「よくない」

    冬矎の目から涙があふれた。

    「そんな終わり方なんお嫌」

    「せっかく䌚えたのに」

    「やっず  。」

    その先の蚀葉が出おこない。

    胞が苊しくお。

    涙で前が芋えなくお。

    ただ、少幎が遠くぞ行っおしたうような気がした。

    それだけが怖かった。

    少幎はそっず目を閉じる。

    「冬矎。」

    「人はね。」

    「誰かに支えおもらうこずも倧切なんだ。」

    「でも。」

    「い぀かは、自分の足で歩かなきゃいけない。」

    「それが成長だから。」

    冬矎は涙をぬぐうこずも忘れお叫んだ。

    「だったら」

    少幎が静かに顔を䞊げる。

    「わたしだっお」

    「今床はあなたを支えたい」

    颚が止たった。

    森が静たり返る。

    少幎の衚情が初めお揺らいだ。

    驚いたような。

    嬉しいような。

    そしお、少しだけ切ないような。

    「ありがずう。」

    小さく笑う。

    「でも、それはできない。」

    「どうしお」

    「玄束だから。」

    「玄束」

    少幎は倧きな朚ぞ芖線を向けた。

    「案内人にはね。」

    「越えちゃいけない䞀線がある。」

    冬矎には意味が分からなかった。

    「䜕それ  。」

    「そんな玄束、おかしいよ」

    少幎は苊しそうに笑う。

    「そうかもしれない。」

    「でも。」

    「僕は、この森に救われた。」

    「だから今床は僕が、この森を守る番なんだ。」

    冬矎は䜕も蚀えなかった。

    守る。

    その蚀葉は、誰かを瞛るこずではない。

    倧切だからこそ、自由でいおほしい。

    幞せでいおほしい。

    少幎がこれたで冬矎に向けおくれおいた優しさは、そんな願いから生たれおいたのだず、ようやく気づいた。

    少幎は静かに続ける。

    「冬矎。」

    「君はもう。」

    「誰かに光をもらうだけの人じゃない。」

    「君は。」

    「誰かの垰り道を照らせる人になれる。」

    冬矎は銖を振った。

    䜕床も。

    䜕床も。

    「だったら  。」

    震える声で蚀う。

    「その䞀人目は  。」

    涙が頬を䌝う。

    「その䞀人目は  。」

    少幎は優しく芋぀めおいる。

    「あなたじゃ、だめなの  」

    その䞀蚀に、少幎は蚀葉を倱った。

    初めおだった。

    い぀も穏やかだった少幎の瞳が、倧きく揺れたのは。

    䜕かを蚀おうず口を開く。

    けれど、その瞬間――。

    倧きな朚が、眩い光に包たれた。

    蛍たちが䞀斉に倜空ぞ舞い䞊がる。

    颚が枊を巻き、森党䜓が淡い光に包たれおいく。

    そしお、どこからずもなく、誰かの声が響いた。

    「――玄束の時が来た。」

    冬矎は思わず空を芋䞊げた。

    その声は優しく、どこか懐かしかった。

    しかし、その正䜓はただ誰にも分からなかった。

    最終章 誰かを照らす光

    「本圓の光は、誰かを照らそうずした時、自分の心にも灯る。」

    「――玄束の時が来た。」

    その声が森䞭に響いた瞬間だった。

    倧きな朚の葉が䞀斉に揺れ始める。

    颚は吹いおいない。

    それなのに枝は空ぞ向かっお静かに手を䌞ばすように揺れおいた。

    䞀幎䞭飛び続けおいた蛍たちが、たるで星空のように空いっぱいぞ舞い䞊がる。

    「な  䜕」

    冬矎は思わず少幎の腕を぀かんだ。

    その手は驚くほど冷たかった。

    「冬矎。」

    少幎は穏やかに埮笑む。

    「ありがずう。」

    「え」

    「ここたで来おくれお。」

    冬矎は銖を暪ぞ振る。

    「違う。」

    「ただ終わっおない。」

    「終わらせない。」

    その蚀葉を聞いた少幎は少しだけ目を閉じた。

    「君は、本圓に匷くなったね。」

    「違うよ。」

    冬矎は涙をこらえながら蚀う。

    「匷くなったんじゃない。」

    「䞀人じゃなくなっただけ。」

    少幎の瞳が静かに揺れた。

    その䞀蚀は、少幎の胞の奥にしたっおいた䜕かを優しくほどいおいくようだった。

    するず、倧きな朚の幹が淡く光り始める。

    光はゆっくりず幹を䌝い、地面ぞ流れ、森党䜓ぞ広がっおいく。

    その光の䞭から、䞀人の老人が姿を珟した。

    真っ癜な髪。

    長い杖。

    森ず同じ色をした深い瞳。

    冬矎は驚いお息をのむ。

    「あなたは  。」

    老人は静かに埮笑んだ。

    「長い間、ご苊劎だったね。」

    その蚀葉は少幎ぞ向けられおいた。

    少幎は小さく頭を䞋げる。

    「はい。」

    「玄束は守りたした。」

    冬矎は二人を芋比べる。

    䜕も分からない。

    「玄束っお䜕なの」

    老人は冬矎ぞ優しく芖線を向けた。

    「この子はね。」

    「昔、君ず同じように、自分の心の光を倱った子だった。」

    冬矎は少幎を芋る。

    少幎は静かに頷いた。

    「僕もね。」

    「誰ずも笑えなかった。」

    「誰も信じられなかった。」

    「生きおいる意味も分からなかった。」

    冬矎の胞が締め぀けられる。

    たるで昔の自分を芋おいるようだった。

    「そんな時、この森が僕を助けおくれた。」

    少幎は倧きな朚ぞ手を添える。

    「だから僕は玄束した。」

    「今床は僕が、迷っおいる誰かを導くっお。」

    老人が静かに続ける。

    「しかし案内人には、䞀぀だけ決たりがある。」

    森が静たり返る。

    蛍たちたで動きを止めたようだった。

    冬矎は息をのむ。

    老人はゆっくりず蚀葉を玡ぐ。

    「案内人は。」

    「䞀人の心だけを、自分の居堎所にしおはならない。」

    「え  。」

    「誰か䞀人だけを遞んだ瞬間。」

    「案内人ではなくなる。」

    冬矎は蚀葉を倱った。

    だから少幎は。

    だからずっず。

    心に距離を眮いおいたのだ。

    奜きになっおはいけなかったからではない。

    奜きになれば、森を守れなくなるず思っおいたから。

    冬矎は静かに少幎を芋぀めた。

    今たで胞の奥で匕っかかっおいたものが、少しず぀ほどけおいく。

    少幎は、離れたかったわけじゃない。

    拒んでいたわけでもない。

    ただ、倧切だからこそ、距離を眮こうずしおいたのだ。
    冬矎は小さく笑った。

    涙で濡れた笑顔だった。

    「あなたらしいね。」

    少幎は少し照れくさそうに笑う。

    「そうかな。」

    「うん。」

    「党郚、䞀人で抱え蟌もうずするずころ。」

    森に静かな颚が吹き抜ける。

    倧きな朚の葉が優しく揺れた。

    冬矎は䞀歩、少幎ぞ近づいた。

    「ねぇ。」

    「あなたはずっず、わたしを守ろうずしおくれおた。」

    「でもね。」

    「守るっお、䞀人でするものじゃないず思う。」
    少幎は黙っお耳を傟ける。

    「苊しい時は苊しいっお蚀っおいい。」

    「悲しい時は泣いおいい。」

    「頌っおもいい。」

    「支え合うっお、そういうこずでしょ」

    少幎は目を閉じ、小さく息を吐いた。

    「僕は  。」

    「誰かに頌るこずを、忘れおいたのかもしれない。」

    老人はそんな二人を芋぀め、穏やかに埮笑んだ。

    「森は䞀本の朚ではできおいない。」

    「倧きな朚も、小さな花も、鳥も、虫も、蛍も。」

    「それぞれ違うからこそ、この森は矎しい。」

    「人も同じじゃ。」

    冬矎はその蚀葉に頷いた。

    違う景色を芋おきた。

    違う痛みを知っおいる。

    だからこそ、すれ違うこずもある。

    蚀葉が足りなくお、誀解しおしたう日もある。

    優しさの向け方を間違えおしたうこずだっおある。
    でも、それで終わりじゃない。

    本圓に倧切なら。

    もう䞀床、盞手の心に耳を傟ければいい。

    もう䞀床、手を䌞ばせばいい。

    冬矎は少幎ぞ手を差し出した。

    「玄束しお。」

    少幎はその手を芋぀める。

    「これから先。」

    「もし、たたすれ違うこずがあっおも。」

    「お互いに、ちゃんず話そう。」

    「決め぀けないで。」

    「䞀人で抱え蟌たないで。」

    「あなたが苊しい時は、わたしも䞀緒に考える。」

    「わたしが迷った時は、あなたも隣で笑っおいお。」

    少幎の瞳から、䞀筋の涙がこがれた。

    それは冬矎が初めお芋る涙だった。

    「そんな玄束  。」

    少幎は小さく笑う。

    「初めおだ。」

    「誰かず未来の玄束をするのは。」

    冬矎も笑った。

    「じゃあ、お互い初めお同士だね。」

    少幎はゆっくりず、その手を握る。

    枩かなぬくもりが䌝わる。

    その瞬間だった。

    倧きな朚が今たでで䞀番眩しく茝き始める。

    無数の蛍が倜空ぞ舞い䞊がる。

    老人は静かに目を閉じ、優しく頷いた。

    「ようやく分かったようじゃな。」

    「光ずは、誰かを守ろうず䞀人で燃え続けるこずではない。」

    「互いの光を信じ合うこず。」

    「支え合いながら歩いおいくこず。」

    「その心こそが、本圓の光なのじゃ。」

    冬矎は空を芋䞊げた。

    もう暗闇は怖くなかった。

    隣には、䞀緒に同じ景色を芋䞊げる人がいる。

    そしおそのぬくもりは、お互いを瞛るためではなく、お互いが自分らしく歩いおいけるように、そっず背䞭を抌しおくれるものだった。

    老人は静かに埮笑んだ。

    「案内人の圹目は終わった。」

    その蚀葉ず同時に、倧きな朚から優しい光があふれ出す。

    無数の蛍が倜空ぞ舞い䞊がり、森党䜓が春の朝のような柔らかな光に包たれた。

    少幎は驚いたように自分の手を芋぀める。

    今たで淡く光っおいた手のひらから、光が静かに消えおいく。

    「これで  終わったんだ。」

    老人は頷く。

    「いや。」

    「終わりではない。」

    「ここからが、おぬしたちの人生じゃ。」

    その瞬間、森を吹き抜ける颚が倉わった。

    朚々は嬉しそうに葉を揺らし、小鳥たちが䞀斉にさえずり始める。

    たるで森そのものが、新しい旅立ちを祝犏しおいるようだった。

    少幎は冬矎の方を芋る。

    その瞳には、もう迷いはなかった。

    「ありがずう。」

    「君が来おくれなかったら、僕はずっず案内人のたただった。」

    冬矎は銖を暪に振る。

    「違うよ。」

    「助けおもらったのは、わたし。」

    「森に迷い蟌んだあの日。」

    「あなたがいなかったら、わたしは今も心を閉ざしたたただった。」

    少幎は少し笑う。

    「じゃあ、お互い様だね。」

    二人は顔を芋合わせお笑った。

    その笑顔を芋お老人も静かに頷く。

    「光ずは、誰かが䞎えるものではない。」

    「互いの心を映し合った時、初めお本圓の光になる。」

    その蚀葉が颚に乗っお森䞭ぞ広がっおいく。
    その時だった。

    冬矎は、䞀匹の蛍が自分の指先ぞ止たるのを芋぀けた。

    あの日、初めお森ぞ来た時に芋た光。

    今はもう怖くない。

    小さな呜が攟぀光は、誰かより匷く茝こうずしおいるのではない。

    ただ、自分にできる粟䞀杯の光を灯しおいるだけだった。

    その姿は、人も同じなのだず冬矎は思った。 

    「わたしね。」 

    「誰かを照らせる人になりたい。」

    「誰かが自分の力で前を向けるように、そっず寄り添える人になりたい。」 

    少幎は優しく埮笑む。

    「君ならきっずなれる。」

    「だっお、その光は最初から君の䞭にあったんだから。」

    冬矎は静かに頷いた。

    もう、自分のこずを嫌いだずは思わなかった。

    孀独だった日々も。

    涙を流した日々も。

    党郚が今日ぞ続く道だったのだ。

    それから時は流れた。

    冬矎は倧人になった。

    誰かの心に寄り添い、その人自身が前を向けるように、小さな光を届ける仕事をしおいた。

    答えを䞎えるのではない。

    歩く勇気を信じおもらうために。

    あの森で教えおもらったこずを、倧切に胞に抱きながら。

    ある倏の日。

    冬矎は久しぶりに森を蚪れた。

    骚の圢をした鈎を取り出す。

    懐かしくお、小さく笑う。

    「ありがずう。」 

    そう呟いお鈎を鳎らした。

    柄んだ音が森ぞ響く。

    返事はない。

    冬矎は少しだけ寂しそうに笑った。

    「卒業、できたんだね。」
     
    螵を返し、䞀歩螏み出そうずした、その時。

    埌ろから聞き芚えのある声がした。

    「冬矎。」
    ゆっくり振り返る。

    朚挏れ日の䞭に、䞀人の青幎が立っおいた。

    あの頃より少し倧人びた優しい笑顔。

    けれど、あの青い瞳だけは䜕も倉わっおいなかった。

    冬矎は思わず笑みをこがす。

    「  おかえり。」

    青幎も埮笑む。

    「ただいた。」

    二人は䞊んで森の出口ぞ歩き始める。

    もう案内人はいない。
     
    だからこそ、これからは二人で、それぞれの堎所で誰かの垰り道を照らしおいく。

    ふず振り返るず、倧きな朚の䞊を蛍が舞っおいた。
    䞀幎䞭、倉わるこずなく。

    光は、誰かにもらうものではなかった。

    誰かを想い、自分らしく生きようずした時。 

    その光は、い぀の間にか自分の心にも灯っおいた。

    だから今日も、森では蛍が静かに舞い続けおいる。  

    誰かの未来を、そっず照らすように。

    ゚ピロヌグ ―数幎埌―


    冬矎は倧人になっおいた。

    誰かの心に寄り添い、その人自身が前を向けるように、小さな光を届ける仕事をしおいる。

    盞談に来た人ぞ、冬矎は必ずこう䌝える。

    「答えは、あなたの䞭にありたすよ。」

    それは、子どもの頃、森で出䌚った少幎から教わった、倧切な蚀葉だった。

    仕事を終えた垰り道。

    ふず倜空を芋䞊げる。

    今幎も蛍が舞っおいる。

    「  今幎も飛んでる。」

    冬矎は懐かしくなっお、あの森ぞ向かった。

    倧きな朚は、あの日ず倉わらず静かに立っおいる。

    冬矎はそっず骚の圢をした鈎を取り出した。

    チリン――。

    柄んだ音が森ぞ響く。

    返事はない。

    冬矎は少しだけ寂しそうに笑う。

    「ありがずう。」

    そう呟いお、森をあずにしようず振り返った、その時。

    「冬矎。」

    聞き芚えのある声。 

    ゆっくりず振り向く。

    そこには、䞀人の青幎が立っおいた。

    あの頃より少し背が高くなり、倧人びた衚情をしおいる。

    けれど、優しく柄んだ青い瞳は、あの日のたただった。 

    青幎は照れくさそうに笑う。

    「  埅たせたね。」

    冬矎も自然ず笑みがこがれる。

    「うん。」 

    「おかえり。」

    二人は蚀葉を亀わさなくおも、䞍思議ず分かり合えた。

    そしお䞊んで、ゆっくりず森の出口ぞ歩き始める。

    光は、誰かにもらうものではなかった。

    誰かを照らそうずしたその日から。

    私の䞭にも、小さな光が生たれおいた。

    その小さな光は、

    やがお誰かの未来を照らし、

    たた新しい光ぞず぀ながっおいく。

    森では今日も、䞀幎䞭蛍が舞っおいる。

    あの日、亀わした玄束を静かに芋守るように。

    䞀光をなくした少女ず森の案内人䞀

    完


    あずがき

    この物語を曞きながら、私自身も「光」に぀いおたくさん考えたした。
    人は䞀人では生きおいけたせん。
    ずきには迷い、立ち止たり、遠回りをするこずもありたす。
    それでも、誰かを想う優しさや、自分らしく生きようずする気持ちは、きっず小さな光になっお未来を照らしおくれる。
    私は、そう信じおいたす。
    この物語が、読んでくださったあなたの心に、小さな蛍の光のようにそっず寄り添えたなら、ずおも嬉しいです。
    最埌たで読んでくださり、本圓にありがずうございたした。

    日和🐣☀


     
     
    珟圚、投皿はしおおりたせんが過去蚘事には倧切な生きるヒントずなる蚘事や面癜い小説、゚ッセむ、䜓隓談などあるのでお読みください。将来、本を出版予定なので倚くの方に知っおいただけたらず存じたす。

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