
よかれと思って、70代の母を死なせかけた話|正解のつもりが、全部間違いだった
「これからは好きな場所へ行ってほしい」
そう言った私が、母を死なせかけました。
母の夢だったグランドキャニオン。
サンフランシスコ経由ラスベガス行きの機内。高度1万メートル。
眠る私を起こした母の顔は、
土気色でした。
息は絶え絶えで、問いかけへの反応も鈍い。
目の焦点が、合っていない。
「大丈夫?」
「……うん」
でもその「うん」は、まったく大丈夫じゃない人の、最後の意地のような声でした。
——これ、ダメだ。
頭の中に浮かんだのは、最悪の想像と、そして後悔でした。
あのとき私は、「親孝行」のつもりでした。
何が間違いだったのか、あのときはまだ、
一ミリもわかっていなかった。
わかったのは、もっとあとのことです。
結果として、母は回復しました。
でもそれは準備していたからではなく、たまたま運が良かっただけです。
サンフランシスコに着いたあと、私はフードコートで泣き崩れました。
「生きてる」
—それだけで、頭が真っ白になりました。
親との旅を考えているなら、一度だけ数えてみてください。
自分の計画の中に、
「だろう」はいくつありますか?
「まだ大丈夫だろう」
「これくらいなら平気だろう」
「うちの親に限って、そんなことはないだろう」
その数だけ、見えていないリスクがあります。
親をどこかへ連れて行きたいと思っている方、まだ元気だからと後回しにしている方、
少しでも安くと考えている方
—かつての私と、同じ人へ。
なぜそうなったのか、
私も長い間わからなかった。
その答えは、
数ヶ月前の小さな選択の中にありました。
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