
北の大地で
さらば、夏の光よ
その頃も旅をしていた。
大学の夏、小樽。
レンガ倉庫。運河の冷たい水面。
カセットから流れる、T-SQUAREの
『Twilight in Upper West』。
都会の夜を鳴らすサックスが、不思議なほどに、この北の大地と空に染み込んでいく。
美瑛の、どこまでも続く直線道路。
夕暮れ、赤黒く沈む稚内の港。
押し寄せる孤独と、行き場のない焦り。
何者にもなれない自分が、ただそこにいた。
あの夏の乾いた風の匂い。
冷たくて、どこまでも続く、 広すぎる空と果てしない大地。
あの切ないメロディが、今も耳の奥に残っている。
いすみん