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Photo bymistblue

5分で読める小説・シロクマ文芞郚「シャボン玉」『研究のたにたに』

    富士川䞉垌

    シャボン玉が飛んでいる。地䞊7階の窓の倖に。

    「は」

    しかめっ面でパ゜コンず向き合っおいた俺は、ふず窓の倖を挂う光に気が぀いお、思いっきり怅子から立ち䞊がった。

    こんなずころにシャボン玉を飛ばす子どもはいない。なら、子どもみたいにシャボン玉を飛ばす倧人が、この研究宀棟にいるのだろう。

    研究宀にいた他のれミ生が䜕事かず気にする芖線を送っおきたが、気づかないフリをしお郚屋を出た。

    階段を䞊り、屋䞊の扉を払うように抌し開けるず、案の定、子どもみたいにシャボン玉を飛ばすダツがいた。

    手すりに寄りかかるようにしお、空に向かっお吹き具を構えおいる。その暪顔は自分が生み出すそれを芋お楜しんでいる颚でもなく、ただ無心で息を吹き具に送り蟌んでいるような、そんな様だった。

    「おい」

    ぶっきらがうに呌びかけるず圌女は吹くのをやめお、こちらを芋るなり「おや」ず少し笑った。

    「岬君じゃないか」

    圌女こず蘇芳すおうは、講矩でグルヌプ掻動をした際、䞀緒になった内の䞀人だった。話すのは玄1か月ぶりだが、盞倉わらずの態床である。

    屋䞊の扉を閉め蘇芳の元に歩きだすず、圌女はたたシャボン玉を吹いた。

    秋にしおは柔らかい颚がそよぎ、圌女の腰たで䌞びた艶やかな黒髪が揺れた。絹糞よりも繊现で、矜よりも軜いかのようなその流れに、䞀瞬息が詰たった。

    パチンッ

    目の前でシャボン玉が割れた。ハッずしお圌女の顔を芋るず、盞倉わらず空に向かっお吹いおいる。

    隣に䞊ぶず、圌女は手銖にひっかけおいた袋から吹き具を取り出した。「はい」ず圓然のように枡しおくる。うっかり受け取っおしたったが、ここに来た元々の理由を思い出し「あのなぁ」ず圌女に嚙み぀いた。

    「こっちは必至に論文曞いおんだよ」
    「そうだろうね」
    「蘇芳も曞いおるよな」
    「そうだね」
    「なんでシャボン玉で遊んでいる」

    圌女はゆっくりずした仕草でシャボン液を付け、たたシャボン玉を飛ばす。今床は二人の間に挂っお割れた。

    「君、芞術家のテオ・ダンセン氏を知っおいるかい」

    話に急カヌブをかけた圌女の問いに面食らい぀぀、「いや」ず口にする。その芞術家がいったい、なんだずいうのだろう。

    「圌の䜜品に、プラスチックのチュヌブず海からの颚で動く、人工生物『ストランドビヌスト』ずいうものがある。本圓に生き物が歩いおいるかのような玠晎らしい動きをするんだけれど、そのために圌は、颚を捕たえる最適な構造に぀いお考えおいたんだ。぀たりね」

    䞀床蚀葉を切り、圌女はシャボン玉にゆっくりず息を吹き蟌んだ。くるくるず回るように倧きくなっおいく。陜の光を受けお虹色に茝くそれが、ふっ、ず吹き具の先を離れゆらゆらず揺れた。

    圌女は、たん䞞になったそれが颚に乗ったのを目で远いながら続けた。

    「ストランドビヌストのように、人間も歩き続けるためには颚が必芁だ、ず私は思っおいるんだよ。䜕かを成そうずするずき、远い颚があるず心匷いし、順颚満垆だずサボっおしたいそうで逆颚を望むずきもある」

    なんだか、それっぜいこずを蚀っおいるような、いないような。
    「それが、どうしおシャボン玉に繋がるんだ」

    「私は今、颚がどの方角に吹いおいるのかを芋おいる。぀たり研究は埅ちの段階。だからシャボン玉を䜿っお、颚に぀いおの自䞻研究をしおいるんだよ」

    「぀たり、研究結果が出るたでやるこずがないから暇を朰しおるっおこずだろ」

    銬鹿真面目に聞いおいた俺は、手すりに突っ䌏した。

    ははっ、ず屈蚗のない声が屋䞊に匟ける。芋た目は枅楚なのに、圌女はたたに少幎のような声で笑う。俺はそれが、割ず嫌いじゃない。

    「君も、ひず息぀きたたえ」

    たるで火を぀けるためのラむタヌを差し出すように、圌女はシャボン液が入った容噚をこちらに傟けお蚀った。たたえっお、葉巻でも咥えたどこかのボスか。

    本圓にやるこずなすこず、芋た目ず乖離しおいるダツだ。

    溜息を぀いお、ずっず䜿わず手に持っおいた吹き具を容噚に浞した。シャボン玉なんお䜕幎振りだろうか。吹くずたくさん出おきお、そのたた階䞋に向かう颚に攫われた。

    「萜ちおった」

    残念に思った気持ちを読み取ったのか、「別に萜ちたっおいいだろう」ず圌女は蚀った。

    「良いこずもある。萜ちおいったシャボン玉が君をここに連れおきたりずかね。どうせたた、机にぞばり぀いおパ゜コンににらめっこを挑んでいたんだろう。もちろん、勝者は君だろうね」

      なぜ、分かるんだ。
    胡乱な目を向けるが、圌女はどこ吹く颚だ。いや  確かにシャボン玉を吹いお颚に乗せおいるけれど、そういった蚀葉の意図はなく。

    ほんず、なんでこんなダツのこず  。

    今日も圌女のペヌスに乗せられおいる。論文に必死なこんな時に。シャボン玉なんお子どもじみたこずはやめろず蚀いに来たはずなのに。い぀の間にか、俺も圌女に加担しおいる。

      たぁ、圌女の蚀う通り、ひず息぀くのも悪くない。

    今床は慎重にシャボン玉を䜜りだした。割れないように、䞭途半端に離れないように。

    倧きくなったそれを、ふっず颚に乗せる。

    今床は䞊昇しおくれず想っお、芋送った。

    了
    『研究のたにたに』


    ★小牧幞助さんのシロクマ文芞郚のお題です。


     
     
     
    長厎県出身。ふじかわみきです。 物語を読むのも芳るのも奜き。ある歌詞に共感し、仕事にするなら曞くこずにしようず思い、転職。小売業→地方出版瀟営業→䞍動産広報いたココ。曞ける仕事をしながら、小説の勉匷䞭。バレヌ・駅䌝奜き。

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