「緊張しないで」の前に。学芸会・音楽会の発表前、不安な子への声かけ
発表会の練習が近づくと、「失敗したらどうしよう」と不安を口にするようになる。
「緊張しないで」と背中を押しても、不安は消えない。
前日の夜になると、「お腹が痛い」と言い出すこともある。
私は、学芸会や音楽会の発表前に不安がる子には、まず不安をなくそうとする前に、その不安ごと受け止めることが大切だと考えています。
理由は3つあります。
1つ目は、「緊張しないで」という声かけは、緊張していること自体を否定されたように感じ、かえって不安を強めてしまうことがあるからです。
2つ目は、運動会のように体を動かす行事と違い、学芸会や音楽会は大勢の前で「見られる」時間が長く、失敗が目立ちやすいと感じやすい行事だからです。
3つ目は、不安を消そうとするより、不安を持ったまま動ける小さな成功体験を積み重ねるほうが、本番への自信につながりやすいからです。
なぜ、学芸会・音楽会は特に緊張しやすいのか
学芸会や音楽会は、セリフや演奏など「間違えたらすぐに分かってしまう」形の発表が多い行事です。
そのため、運動会以上に「失敗したらどうしよう」という気持ちが強く出やすいのではないかと思います。
とくに小学校高学年から中学生にかけては、周りの目を強く意識する時期にも重なります。
そう考えると、前日にお腹が痛くなったり、練習を嫌がったりするのは、さぼりたいからではなく、不安がそれだけ大きくなっているサインなのかもしれません。
つい言ってしまうけれど、不安を強めやすい対応
「緊張しないで」「大丈夫だから」と、安心させようとする言葉をかけたくなることがあると思います。
ですが、根拠のない安心材料を示されても、不安な気持ちそのものは消えないことが多いです。
「そんなに緊張しなくていいのに」と、不安な様子を軽く扱う言い方も、分かってもらえないと感じさせてしまいがちです。
「みんなも緊張してるから大丈夫」と、周りと同じであることを強調する対応も、本人の不安の理由には触れられないまま終わってしまうことがあります。
不安を認めてから備える、声かけの手順
ここで大事なのは、不安をなくそうとせず、不安を持ったままできる準備を一緒に進めることです。
手順は次のとおりです。
「緊張するよね」と、まず不安な気持ちをそのまま認める
「何が一番心配?」と、不安の中身を具体的に聞く
心配な部分だけを絞って、一緒に練習する
「練習でできたこと」を、本番前にもう一度確認する
本番当日は、結果ではなく「練習してきたこと」に触れて送り出す(例:「あれだけ練習したんだから、いつも通りで大丈夫だよ」)
2の「不安の中身を具体的に聞く」ことが、特に大事なところだと思います。
漠然とした不安を、「セリフを忘れそう」「音を外しそう」など具体的な形にできると、対策も立てやすくなるのではないかと思います。
会話例:発表会前日の夜
実際には、こんな流れが考えられます。
子「明日、セリフ忘れたらどうしよう……」
親「緊張するよね。何が一番心配?」
子「最初のセリフ、噛みそうで」
親「じゃあ、最初のところだけもう一回言ってみる?」
子「……うん」
(一緒に最初のセリフだけ練習する)
子「あ、言えた」
親「今のさっきよりスムーズだったよ」
子「……でも、本番でまた噛んだらどうしよう」
親「噛んでもいいよ。そのときはまた続きを言えばいいだけだから」
子「そっか……それなら、なんとかなるかも」
ここでのポイントは、不安を消そうとするのではなく、不安の中身を具体的にしてから、そこだけをピンポイントで練習している点です。
それでも当日、動けないほど不安が強いときは
多くの場合は、不安の中身を具体的にして少し練習するだけで、本番に向かえるようになるのではないかと思います。
ただ、当日に体調不良を強く訴える、発表そのものを頑なに拒否する、こうした状態が学校行事のたびに繰り返されるといった場合は、行事全般への強い不安が背景にあることもあるようです。
その場合は、無理に舞台に立たせようとせず、担任の先生に相談し、役割の調整や見学という選択肢も含めて一緒に考えてみることをおすすめします。
まとめ
最後に、今日お伝えしたことを整理します。
学芸会や音楽会の発表前に不安がっているときは、不安をなくそうとする前に、その不安を認めて、中身を具体的にすることが大切です。
「緊張しないで」ではなく、「何が一番心配?」。その一言だけ、変えてみてください。
