【第6回】税の制度が、人を善くも悪くもする
制度×感情×立場が生む、人間のさが
税という制度は、
それ自体が善でも悪でもありません。
しかし、
その制度の中で生きる人間は、
迷い、
揺れ、
時に正当化をします。
『マルサの女』と
『おコメの休日』は、
制度を断罪せず、
人を単純化せず、
その「揺れ」を
丁寧に描いています。
目次
1. 制度は感情を持たない
2. 人は制度の中で揺れる
3. 立場が行動を変えていく
4. 善悪ではなく、さがを描く
5. 二つの作品に共通する視点
1. 制度は感情を持たない
税の制度は、
ルールの集合体です。
公平性。
徴収方法。
罰則。
そこに、
感情はありません。
※制度とは
人の行動を
一定の方向に
誘導するために
設計された仕組みです。
制度自体は、
静かに機能するだけです。
2. 人は制度の中で揺れる
制度の中に入るのは、
感情を持つ人間です。
不安。
恐れ。
保身。
制度が
厳しくなればなるほど、
人は理由を探します。
「仕方がなかった」
「みんなやっている」
こうした言葉は、
悪意よりも
揺れから生まれます。
3. 立場が行動を変えていく
人は、
立場によって
見える景色が変わります。
※立場とは
制度の中で
どの役割を担い、
どの責任を負っているか、
という位置づけです。
徴収する側。
調査する側。
支払う側。
同じ制度でも、
立場が変われば、
判断も変わります。
4. 善悪ではなく、さがを描く
伊丹十三 監督・脚本家は、
人を裁きません。
また、
『おコメの休日』も、
誰かを
悪者にしません。
描かれているのは、
人間の弱さや、
自分を守ろうとする
自然な反応です。
それは、
善悪ではなく、
人間のさがです。
5. 二つの作品に共通する視点
二つの作品は、
表現方法こそ違いますが、
同じ視点を持っています。
制度を
絶対化しない。
人を
単純化しない。
その間で揺れる
人間の姿を、
構造として捉える。
これが、
構造モデリングの
視点です。
次回予告
【第7回】
「無名」によって守られた、人間のリアリティ
作者性を消すことで、構造が歪まなかった理由
もし『おコメの休日』に
強い作家性が
前面に出ていたら、
私たちはもっと簡単に、
この物語を
理解した気になっていたかもしれません。
脚本g.O.A.Tという無名性は、
逃げではなく、
構造を守るための
装置だった。
私は、
そう考えています。
