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居酒屋でダブルプレーに倒れた話

    野球の醍醐味のひとつが一度に2つのアウトを取ってしまう華麗なダブルプレーだ。好投手ともなると球種とコントロールによってバッターにわざと内野ゴロを打たせ、ダブルプレーを完成させることもある。しかし野球だけではなく、そんなダブルプレーは日常にも潜んでいる。

    先日、前から気になっていた居酒屋さんに初めて入った。すると、その日のおススメメニューに「エンドウ豆の玉子とじ」が載っていた。そういえば豆類の美味しい季節だ。ちょっと地味なメニューではあるが、旬を味わいながら一杯飲むのも悪くはない。ということで注文することにした。

    数分後に席に届く。豆と玉子を一緒に口に入れると、エンドウ豆の甘味とわずかな苦み、そこにトロトロの玉子がからみ、思いのほか絶品だった。カウンター越しに、仕事に励む大将の顔を見ながら心の中でつぶやいた。

    「大将、これめっちゃ美味いわぁ。やられた!」

    と、ここでこのワンプレーは終わるはずだった。ところが、二口目を食べようと箸を器に入れた瞬間、思わぬ物体がそこに現れ、私は自分の目を疑った。

    「エビやん!」

    そう。最初はまったく分からなかったが、中に小さなエビの切り身が数個、忍ばされていたのだ。

    エビも一緒に食べるともちろん絶品。思わぬ形で2度目の「やられた!」が発生した。すなわち、大将によるダブルプレーがここに完成したのである。

    普通に考えたら最初からメニュー表に「エンドウ豆とエビの玉子とじ」と書いても良さそうなものである。それは大将の頭にも浮かんだはずだ。そこをあえて「エンドウ豆の玉子とじ」にしておき、エビをサプライズにすることで客の心をグッと摑まえる。そんな大将の術中に見事にハマってしまった。

    それ以降、私はまんまとそのお店に常連になっている。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
    1976年生まれ。大阪で放送作家をしています。よろしくお願いします。

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