
【事業再生#4】何を捨て、何を守るか。追い込まれた経営者の再生への覚悟|建設業者の再生プロジェクト vol.4
破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。
実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。
今回のクライアントは東北地方の建設業。
彼らの事業再生実録を5話に渡って綴ります。
夫婦で切り盛りして、年商3億。
再生スキームや、経理・総務体制の再構築といった実務も含め、"机上の空論ではない"企業再生の記録です。
経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。
▼第1話からご覧になりたい方はこちら▼
【第4話】:支払ストップとトラック確保のスキーム──守るべきものを守るために
「これは払わないと信用を失う」
「ここは付き合いが長いから……」
第二会社が少しずつ動き出すと、旧会社(第一会社)では、いよいよ債権者からの連絡が相次ぐようになってきた。
このタイミングで、私が社長にまず伝えたのは、一つの原則だった。
「すべてを守ろうとしてはいけません。選んで、守るしかないんです。」
事業、従業員、取引先、借入金、税金──
あらゆるものが大切に思える中で、
「何を残すか、何を捨てるか」という決断が、再生の第一歩となる。
ここから先は、以下のような具体的な再生スキームに踏み込みます。
・債務支払いの優先順位と「払わない」と決めることの意味
・全車両回収という危機と、信用がない会社の“次善策”
・別会社を活用したリース型スキームと、その設計の狙い
・再構築された組織の中で、社長が気づいた「破綻の本質」
・そして、第二会社の体制が整うまでに起きた“もう一つの決断”
「信用を守るために、何を捨てるのか」
「再生の正しさ」とは誰が決めるのか──
現場でしか見えない、企業再生の“リアル”を記録します。
第二会社を成功させる上で一番重要なこと
第二会社を成立させる上で最も重要なのは、「売上の範囲内でキャッシュが回る状態を早期に作ること」だ。
そのため、旧会社での支払いについては全てに優先順位をつけた。
税金、借入返済、買掛金、社会保険、リース料──払うべきものと、“あえて払わない”ものを明確に分けた。
「これは払わないとまずい」「ここは支払わないと信用を失う」──そうした感覚を、経営者には一度すべて捨ててもらった。
その上で以下を徹底してもらった。
①督促状が来たら、即座に写真で共有してもらう。
②税務署や金融機関が訪ねてきても、対応しない。
③今は“会話”をするフェーズではなく、“立て直す”ことが優先。
債権者と無理に話し合っても、支払い能力がなければ意味がない。
消耗するだけで、本業に集中する時間も気力も削られてしまう。
この局面では、「話すこと」よりも「黙って回すこと」のほうが、はるかに重要なのだ。
全車両リース会社に回収──次の一手。
そんな中、事態は急変する。
旧会社でリースしていたトラックの支払いを停止してから約半年──全車両がリース会社によって回収された。
クライアントから連絡が入り、その責任を私たちに向ける場面もあった。
建設業において、トラックは「血管」であり「命」だ。現場に人も資材も届けられなければ、仕事は止まる。
「このままでは、現場が止まります」
社長のその言葉に、緊張が走った。
が、相手もどうにか回収したい。
私たち同様に、あの手この手で回収に走ってくる。
その上で、私たちは“次の手”を用意していた。
設立から間もない新会社で車両を手配する。リースバック型スキーム。
第二会社はまだ設立したばかりで、信用がない。
したがって、通常のリース契約を結ぶことができない。
それを見越して、あらかじめ次善のスキームを準備していた。
それが「第三者による購入→リース型」だ。
・友人会社(第三会社)に中古トラックを購入してもらう
・第二会社はその会社とリース契約を締結する
・将来的に買い戻せる「特約付き契約」として設計する
過去の事業再生経験者など、プロジェクトメンバーの知人・友人の人脈をたどって、双方にとってメリットがあり、持続可能なスキームを組むことができた。
人間関係、会社の経営状況などを把握していたからこそ実現できたことだった。
この仕組みにより:
・第三会社は節税メリット(実際は繰り延べだが)を受けつつ投資が可能
・第二会社は低コストで車両を確保でき、資産化の道も残る
・双方にとってリスクヘッジされた構造ができあがる
中古車両は、知人企業を通じてオークションで5台分確保。
必要最低限の現場体制を整えることができた。
守るための“抜け道”は、先に用意する
車両の確保は、再生における“肝”だった。
信用がなければ、調達はできない。
でも、それを理由に立ち止まってしまえば、売上も組織も崩れてしまう。
再生とは、“信用を回復するまでの時間”をどう乗り切るか、に尽きる。
「正攻法が使えないなら、先に道を作っておく」それが、再生支援者としての準備だった。
振り返る──なぜ、旧会社は潰れかけたのか
第二会社の体制が整い、売上が安定してきたタイミングで、私は経営者にこう尋ねた。
「どうして、ここまで悪化したと思いますか?」
社長はしばらく黙ってから、こう答えた。
「何も見えてなかった。
収支も、人の評価も、将来像も……全部その場しのぎでした。」
旧会社には、経営指標もなければ人事制度もなかった。
資金繰りは“勘”で回され、人材評価も属人的だった。
だからこそ、私たちは再構築において:
・ミッション・ビジョンの明文化
・組織体制の再設計
・人事評価制度のゼロからの構築
をセットで実行した。
「何のために、誰をどう育てていくのか」という軸を、組織の中に通すためだ。
再生は、“何を捨て、何を守るか”の決断
このフェーズで、社長は明確に「再生の覚悟」を持てるようになった。
すべてを救おうとする幻想を捨て、守るべき本業と、人を選び、そこに集中する決断ができるようになった。
第二会社の土台は整った。
あとは、「決めたことを、ブレずに実行するだけ」だ。
▶次回予告|第5話(最終話):3年後、再生は本当に成功したのか?
支払いを止め、事業を引き継ぎ、車両も体制も再構築した──
あれから、3年。
次回は、第三会社を使った出口スキーム、債務整理の現実、そして経営者が“再び立ち上がる”過程を描きます。
債務を踏み倒すことが“再生”なのか?
それでも守れた人・事業があるとしたら──
あなたなら、どう考えますか?
第1弾、最終話。
再生支援の是非と本質を、あなた自身の視点で考えていただきたいと思います。
🙌終わりに
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