
【事業再生#17】信頼の再構築──再起に向けた「攻め」の一手|印刷・看板制作会社の再生プロジェクトVol.4
破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。
今回のクライアントは印刷・看板制作会社の事例です。
その事業再生事例を5話に渡って綴ります。"机上の空論ではない"事業再生の記録です。
経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。
▼印刷・看板制作会社の再生プロジェクトの第1話~はこちらから▼
▼過去の事業再生事例はマガジンからご覧ください▼
第4話|信頼の再構築──再起に向けた「攻め」の一手
■「ようやく、自分の足で立てた気がする」
第二会社で初めて、月次黒字を達成した日。
代表は静かに、そう口にした。
実際の黒字額はわずか数十万円。
だが、この一歩には、単なる数字以上の意味があった。
売上が第二会社に移り、人材も切り替わり、設備スキームも整った。
リースバックによって代表の住まいも確保され、ようやく“暮らし”と“仕事”の両輪が安定し始めた頃だった。
この数ヶ月、ずっと「守る」ことに必死だった私たちは、いよいよ「攻め」に転じる時を迎えていた。
■消えていた“営業機能”を立て直す
そもそもこの会社が窮地に陥った原因の一つは、営業機能の形骸化だった。
職人肌の社風により、代表や現場責任者が「受け仕事」をこなすことに注力する一方で、新規開拓や顧客との関係深化はほぼ手つかずだった。
売上の7割近くは、古くからの看板案件や、地元建築業者との付き合いに頼っていた。
言い換えれば、「紹介がなければ売上は立たない」状態にあった。
再起にあたって、まず着手したのはこの営業体制の再設計だった。
■第二会社の“顔”を、社長ではなく営業担当に
今回は、代表自身ではなく、若手の社員を第二会社の営業フロントに立てる方針を取った。
これは意図的な判断だった。
再生過程では、どうしても「代表=旧会社の責任者=過去の延滞の張本人」という印象が残る。
代表が前面に立つことで、取引先に過去の経緯を蒸し返されるリスクがあった。
そこで、第二会社の名刺を持ち、初回の打ち合わせや提案には若手の営業担当を送り出す。
「新会社としての再出発」という空気感を、言葉ではなく“顔ぶれ”で伝える戦略だ。
代表自身は、クレーム対応や技術的な相談には裏方として登場するが、営業活動の初手からは外れた。
結果として、これが功を奏した。
取引先からも「最近、若い人が動いてくれてるね」「新しい会社はちゃんと営業するようになったね」という声が上がるようになった。
■信頼は“実績”で取り戻すしかない
一方で、第二会社への切り替えに難色を示していた取引先もあった。
特に金額が大きく、発注頻度の高いクライアントほど慎重になるのは当然だ。
ある中堅の不動産会社では、担当者からこんな言葉があった。
「正直、今まで通りお願いしていいのか、不安だったんですよ。
でも、最近の仕事ぶり見てたら…ちゃんと変わったなって思えてきました」
このような信頼の回復に、近道はない。
一件一件の案件を丁寧に、確実に仕上げていくしかない。
納期遵守、施工品質の安定化、現場での対応──
いずれも「当たり前のこと」だが、再生局面では“当たり前”が一番の武器になる。
■「代表の変化」が、会社全体に伝播する
正直なところ、再生支援の初期フェーズでは、代表は半ば放心状態だった。
資金繰りの不安、妻への説明責任、従業員への申し訳なさ…
目の前の現実に向き合うだけで精一杯だった。
だが、再建が一歩ずつ形になり、周囲からの信頼がわずかに戻ってくる中で、代表にも明らかな変化が現れ始めた。
• 「営業資料のブラッシュアップを自分で始めた」
• 「週一の現場ミーティングに必ず顔を出すようになった」
• 「新しい業務提携のアイデアを持ち込んできた」
これらはすべて、“自分の意思”で行った行動だ。
私たち支援者にとって何より嬉しいのは、こうした自発的な動きが見えたときだ。
支援とは、最終的には「本人の主体性を取り戻してもらう」ことに他ならない。
■地場産業に「戦略」が必要な理由
地方都市における印刷・看板業界は、縮小産業とされがちだ。
デジタルサイネージの普及、建築需要の鈍化、材料費の高騰…。
確かに厳しい要素は多い。
だが、そんな中でも“生き残っている会社”には、共通点がある。
• ニッチに強い
• スピード対応ができる
• 営業を諦めていない
今回、第二会社では「地域密着型+小ロット対応」というニーズに絞り、ターゲットを建築現場・店舗開業支援に限定した。
さらに、社内で施工まで完結できることを強みに、単価ではなく「手離れの良さ」で勝負する方針を立てた。
■第二会社の“理念”と、旧会社からの独立性
もうひとつ、大事にしたのが、旧会社とは違う文化を持たせることだ。
旧会社では、職人気質と「言わなくても分かるだろう」の空気感が支配的だった。
第二会社ではそれを捨て、明文化・マニュアル化・可視化を徹底するようにした。
• 納期の共有はSlackで自動通知
• 受注後の工程はGoogleスプレッドシートで管理
• 現場写真もクラウドで蓄積し、全社で閲覧できるように
小さなことだが、こうした仕組みが「自分たちは変わった」という実感を支える。
■そして、「次の山」が見えてきた
こうして、再生の第1フェーズは終わろうとしている。
売上の安定、信用の回復、社内体制の立て直し──
いずれも一定の成果が見えた。
だが、これはゴールではない。
次に待っているのは、「債務整理」との向き合いである。
• 第一会社の破産なのか
• 私的整理で終えるのか
• 代表個人の債務をどう処理するのか
それらをどう判断するかは、経営状態だけでなく、代表や家族の意向も踏まえて慎重に検討する必要がある。
次回、第5話では、この出口戦略と債務処理の全貌について描いていく。
🙌終わりに
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
この記事が少しでもあなたのお役に立てたらうれしいです!
スキ・コメント・フォローなどいただけますと嬉しいです。
今後とも有益な情報を発信していきますのでよろしくお願いいたします。
もし、
今まさに資金繰りが苦しい
税や社保の滞納がある
経理が属人化していて、現金の流れが不透明
社内に不正の可能性がある
といった悩みを抱えている方がいれば、ぜひ一度ご相談ください。匿名でも構いません。まずは、無料の個別相談であなたの状況を整理し、次の一手を共に考えませんか?
~進撃の事業再生屋 プロフィール~
~以下掲載中のマガジン・有料記事です~
①事業再生事例
事業が失敗した、破産・倒産したい、弁護士に相談しても断られてしまった・・・そんな方に読んでいただきたい、事業再生の事例をまとめました。
【有料記事:第二会社方式”完全ガイド”】
上記の事業再生事例は第二会社方式を活用した再生事例が大半です。その第二会社方式を使った事業再生方法のガイドを作成しました。
このガイドを読むことで、破産せずに、会社を守り抜くための現実的な方法を知っていただくことができます(有料記事になります)
②数字は語る、経理の不正
実際の経理の現場で起こった不正から考える、管理体制のあり方とは?
一人経理の多い中小企業、信頼関係だけで決済できる体制になっていませんか?
私が実際に行ってきた横領調査や相談内容をもとに、バックオフィスをどのように構築すればいいのかを書いていきます。
③「倒産寸前からの逆転劇」——経営者のための再生ノート
「会社が潰れそう」「差押え通知が届いた」「銀行から電話が鳴り止まない」――。
そんな経営者にこそ読んでほしい、リアルな再生の知恵と選択肢をまとめました。
自己破産、第二会社方式、競売、任意売却、リースバック…実務経験をもとに、現場で使える情報をお届けします。