
【事業再生#1】「破産したくても、破産費用が出せない」債務2億円超|建設会社の再生プロジェクトvol.1
破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。
実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。
今回のクライアントは東北地方の建設業。
彼らの事業再生実録を5話に渡って綴ります。
夫婦で切り盛りして、年商3億。
再生スキームや、経理・総務体制の再構築といった実務も含め、"机上の空論ではない"企業再生の記録です。
経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。
『破産しかない』──憔悴した夫婦との最初のミーティング
「東北の建設会社なんだけど、破産費用すら出せない状況でね。再生の方向で検討できるか、一度相談に乗ってもらえないか」
弁護士の先生から、そんな一本の連絡を受けた。
地方中堅規模の建設会社、代表は50代半ばの男性。
妻が資金管理を担っており、家族経営に近い形態で20年近く事業を続けてきたという。
聞けば、ここ数年で税金・社保の滞納が膨らみ、金融機関との関係も悪化しているらしい。
私はまず、社長と奥様とのWebミーティングをセッティングした。
画面に映ったのは、やつれた顔つきの夫婦だった。
表情には明らかな疲弊があり、声には張りがなかった。
「正直、もう限界です。破産するしかないと思ってました……」
社長は、そう切り出した。
弁護士から事前に聞いていた通り、「破産」という言葉が、最初の相談から何度も口にされる。
だがその一方で、「本当はやれるなら、続けたかった」という言葉も、ぽつりと漏れた。
本人たちが語る、破産に至る経緯
▪️会社のプロフィール
地域:東北地方
業種:建設業(現場施工支援)
設立:20年超
従業員:25名年商:約3億円
主に戸建て住宅の新築やリフォームに付随する現場施工業務を請け負っており、地域の工務店や建設会社との取引を通じて、安定した実績を積み重ねてきた中小企業だった。
コロナ禍では一時的に売上が落ち込んだが、制度融資を活用して何とか持ちこたえ、その後は緩やかに回復傾向にあったという。
一見すれば、再生支援が必要なほどの深刻さは感じない。だが、社長の説明はこうだった。
「売上は回復しつつあったんですが、2年前に営業担当が独立してしまって……取引先を何社か引き連れていって。それで売上が元に戻らなかったんです」
固定費はそのまま。売上は減少。
資金繰りは、徐々に首が回らなくなっていた。
加えて、もともと膨らんでいた借入に加え、税・社保の滞納が重なり、資金の流れは完全に詰まり始めていた。
社内では、毎月「あと何日で現金が尽きるか」が話題になっていたという。
まずは“数字の地図”を作る
私はどんな再生相談でも、現地に入る前にまず「数字の地図」を作ることにしている。
・決算書3期分を横並びにし、時系列で財務の変化を見る
・売上・粗利・販管費・営業利益の推移を分析
・総勘定元帳があれば資金の流れも確認し、「何が詰まっているのか」を特定する
帳簿が揃っていれば、売上や利益よりも「資金が止まったポイント」が見えてくる。現場に行く前に、“勘”ではなく“根拠”を持って仮説を立てるのが肝だ。
債務の全体像(事前分析)
金融機関からの借入:約8,500万円
税金(消費税・源泉・住民税):約6,000万円
社会保険・労働保険:9,000万円近く
クレジットカード会社:800万円
合計で2億円を超える債務。とくに税・社保の滞納額が突出していた。状況としては「破産寸前」と言って差し支えない。
だが、私はこの時点ではまだ「破産ありき」で話を進めようとは思っていなかった。
現場で感じたこと
現地訪問では、会社の中で打ち合わせを行うようにしている。その理由は単純で、「言葉にならない情報」が空間から感じ取れるからだ。
・机の上に書類が山積みになっていないか
・書類はすぐ出てくるか
・壁の掲示物やホワイトボードの内容に更新の気配があるか
・従業員の表情に緊張感があるか、もしくはあきらめているか
この会社の場合、資料は比較的整理されており、スムーズに提出してもらえた。ただ、会計入力が長期間行われていなかったり、資金繰りを管理するような管理表も存在しなかった。
現場の雰囲気であるが、従業員たちは現状を知らないため、また若い従業員が多いことから、社内には活気がある印象を受けた。
経理と資金が分断された経営体制
社内には経理担当者が1名在籍していた。
しかし、帳簿は複雑なExcelファイルで案件単位に管理されており、他の人間では把握しきれない構造だった。
試算表の作成もままならず、収支の“見える化”はほぼ皆無だった。
一方で、資金の出入り──銀行口座の管理や支払いの判断──は社長の奥様が担っていた。
だがその情報は、社長に十分には共有されていなかった。
実際、資金繰りが破綻しかけていると社長が初めて認識したのは、月末に「給与が支払えない」と奥様に告げられた直前のことだった。
それまでは、「ギリギリだが回っている」と思っていたのだ。
債務よりも大事なもの
債務や滞納があり、支払いが苦しい──ということは十分に理解できた。この段階でまず確認すべきなのは、
・債務や滞納額の総額
・債権者の種類
・借入の出どころが適切かどうか
つまり、「どこから、いくら、何のために借りたのか」が明確になれば、それ以上深追いはしない。
借入先が、いわゆる怪しい業者でないことがわかれば、ファーストステップとしてはそれで十分だ。
それよりも大事なのは、
・取引先との関係は今どうなっているか
・従業員は会社に残っているか
・仕事の受注は継続できているか
資金繰りが苦しくなると、どうしても“借金”のことばかりが頭を占拠する。
しかし本当に重要なのは、「売上の源泉が今も機能しているか」という視点だ。
私は、再生の可否を判断するとき、「債務の大きさ」ではなく、「人(従業員)」「仕事(受注)」「信用(取引先)」の状態にこそ注目するようにしている。
現実を直視するところから始める
✅ 取引先はまだ離れていなかった
✅ 従業員も全員残っていた
✅ 仕事の受注も止まっていなかった
つまり──再生の余地は、まだ残されていた。
ただし、そのためには**「現実を直視する」**ところから始めなければならない。ここまでの状況に陥っている以上、再生とはいえ無傷ではいられない。再生には、覚悟が必要だ。
再生の第一歩とは、いつだって“見るべきものを、見る勇気”から始まる。
▶️【第2話】売上に見合わない借入過多。利益が出ているのに資金が足りないのはなぜ?
🙌終わりに
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もし、
今まさに資金繰りが苦しい
税や社保の滞納がある
経理が属人化していて、現金の流れが不透明
社内に不正の可能性がある
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