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【経理の不正 #4】預り金1億円が消えた。開業20年以上の士業─士業事務所、資金繰り破綻の正体 vol.1

    仕事は順調、でも資金繰りが回っていない。今回の相談は、20年以上の老舗士業。昔からのお客さんが多く、信頼も厚い先生だった。

    「預り金」がないーーこれは経理担当者の不正なのか?代表側の怠慢なのか?当然ながら、預り金は自分のものではありません。いつか返すお金です。でも口座にあるから預金残高に見えてしまった・・・とても単純な話でも、実は士業では預り金を使ってしまった、と言うのはしばしば聞きます。今回は実際に相談を受けた士業さんの例をとって、数字の見える化、実務の見直しの方法を3話に渡ってお届けします。

    「経理の現場から」では、経理による横領や不正がなぜ起こったのか事例を紹介しながら、どうしたら防ぐことができるのかを書かせていただきます。

    ▼過去の「数字は語る、経理の不正」シリーズは、マガジンからご覧ください。

    第1話:融資相談から見えた、違和感の正体(無料公開)


    「資金繰りが厳しいようで、銀行融資を検討しているんですが、
    申し込みの進め方が分からないそうで。一度話を聞いてもらえませんか?」

    知人経由で、そんな依頼が舞い込んできた。
    相談の相手は、関東にある士業事務所の代表。
    主に債務整理や民事再生などを取り扱い、開業から20年以上。
    一時は“グレーゾーン金利”の返還請求が急増した時期も経験しており、
    今でも新規案件が毎月コンスタントに入っているとのことだった。


    聞く限りでは、仕事の入りには困っていない。
    にもかかわらず、資金繰りが回らない。
    ──これは、どこかに大きな“ズレ”が生じている可能性がある。

    そこで、面談の場を設け、まずは財務の現状把握から始めることにした。


    提出された決算書を3期分確認。
    3期連続で1,000万円近い赤字。
    しかし、そのわりに資金の目減りは激しくない。
    同時に、ある項目に違和感を覚えた。

    それが「預り金」だった。


    士業の仕事には「預り金」がつきものだ。
    たとえば債務整理であれば、依頼者(債務者)から返済資金を預かり、
    それを事務所が管理して、和解した債権者へ毎月分割で返済していく。
    このお金は、売上でもなければ経費でもない。**あくまで“他人の資金”**だ。

    だから、帳簿上は「預り金」として処理されるし、
    本来ならその分だけ、銀行口座に預金が存在しているはずだ。


    だが、帳簿上の預り金は1億円超。
    一方で、預金残高は1,000万円未満──。

    これは、どういうことなのか?

    代表者に確認したところ、
    「そんなに預り金があるとは思っていなかった」とのこと。
    日々の会計や管理は経理に任せていたそうだ。


    決算書の中だけで見えてくることには限界がある。
    この時点では、あくまで「収支や管理に何らかの問題がある」というレベルだが、
    いずれにしても、このままでは銀行融資の申し込みどころではないことは明らかだった。

    数字が噛み合わない。
    預金が足りない。
    そもそも「何にいくら使って、どれだけ残っているのか」が把握されていない。

    経営の根幹が、ゆっくりと崩れているように見えた。


    このあと私は、経理担当者へのヒアリング、
    売上と経費の内訳分析、預り金の精査、
    そして実行可能な資金繰り再構築の検討に入ることになる。

    だが、この時点ではまだ──
    本当の問題の核心には、誰も触れていなかった。


    次回(第2話・有料)
    キャッシュが尽きた会社で、預り金を守るには?
    売上構造と経費を洗い直し、体制の脆さが浮かび上がる中で、
    初めて明らかになる「預かっていたはずの資金」の真相──
    実務で何を見直し、どう仕組みを変えたかを記録します。

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    弁護士に「破産しかない」と言われた経営者と最後まで戦う元銀行員。銀行員15年・再生屋10年、第二会社方式での再生100件超、累計300件の事業再生に伴走。諦めなかった社長と、共に進む。 X→https://x.com/shingeki_saisei

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