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【企業再生#15】自宅を手放さず、再起を支援するリースバック|印刷・看板制作会社の再生プロジェクトVol.2

    破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。

    実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。

    今回のクライアントは印刷・看板制作会社の事例です。

    その事業再生事例を5話に渡って綴ります。"机上の空論ではない"事業再生の記録です。

    経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。

    ▼過去の事業再生事例はマガジンからご覧ください▼

    ▼印刷・看板制作会社の再生プロジェクトVol.1はこちらです▼


    第2話:矢のような督促と「住まいを守る」ためのリースバック

    ■ 債権者対応は“全件ストップ”から始める

    金融機関との取引、そして累積1.5億円の借入残──。

    すべての返済を止めたことで、債権者からの督促は矢のように届くようになった。電話、訪問、書面。

    代表者はその全てに精神的な消耗を見せていた。

    だが、こちらが選んだ初手は、「一旦すべて無視」する、という方針だった。

    もちろん、これは無責任な放置ではない。

    金融機関の感情的な対応に引きずられないよう、すべての交渉を「書面ベース」に切り替えるための時間稼ぎだった。

    代表者が対面でやり取りを重ねれば、どうしても情にほだされたり、強く言われてその場で条件を飲んでしまうことがある。

    そうなれば、戦略的な再建は不可能になる。

    そこで徹底したのは以下の4点:

    • 金融機関との窓口はすべてこちらが担当
    • 対応は電話・面談を一切排し、書面のみに統一
    • 代表者には「来訪者から名刺を受け取るだけ。それ以上は何も答えない」と指導
    • 税・社保の督促には、誠実な納付計画を提出し、信頼を損なわないよう対応

    このようにして、現場に混乱を起こさせずに、再建のための“静かな時間”を確保する。

    一方で、代表者のプライベート面にも差し迫った問題があった。


    ■ 住まいを手放さず、再起を支える「リースバック」の舞台裏


    代表者の自宅には、すでに住宅ローンの抵当権が設定されていた。

    ローン返済は数ヶ月遅れており、金融機関からの督促も届いていた。

    郵便物は代表がすべて回収し、家族にはまだ伝えていなかった。

    「家族には絶対にバレたくないんです…」

    そんな彼の言葉を聞いたとき、最初に考えたのが「リースバック」という選択肢だった。

    だが、誰にでも、どの物件でも適用できるわけではない。

    まず我々は、その物件の近隣の売買相場を調査。

    見込売買額が住宅ローン残高を上回ることが、第一条件だった。

    加えて、リースバック後に設定する賃料が、周辺の家賃相場と大きく乖離しないことも重要だ。

    なぜなら、リースバックの買い手となる事業者は、その物件を「中長期的な投資物件」として保有する。

    賃料から得られる利回りが成立しなければ、購入には至らない。

    さらに注意すべきは、“悪質な仕入れ目的”の不動産業者の存在だ。

    最近では、リースバックを持ちかけた後、相場よりもはるかに安価で物件を仕入れ、短期で再転売する業者も少なくない。

    結果として、家を追い出されたり、過剰な家賃に苦しむケースも起きている。

    そうした事例を避けるためにも、我々は“長期保有前提の協力先”に限定して交渉を進める。

    幸い、これまで再建支援を通じて関係構築してきた企業があり、再生案件専用のリースバック法人を設立してもらっていた。

    今回も事情を伝えたところ、早期に内諾を得ることができた。


    ■ 誰にも言えなかった「生活」と「経営」の接点


    再建において、「会社の再建」と「生活の再建」は切っても切り離せない。

    代表者は、住宅を守る手段が見えたことでようやく顔色が戻り、再起への意志を口にするようになった。

    「もう、二度と、家族に嘘はつきたくないんです」

    その言葉に、我々の対応方針が間違っていなかったと確信できた。

    経営の再建とは、数字の調整ではない。

    人生そのものをもう一度立て直す営みだ。

    リースバックという“道具”を正しく使えば、
    生活を守りながら、もう一度やり直すことができる。

    そんなリアルを、次回は「再起の実務」にフォーカスしてお届けします。


    🙌終わりに


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    弁護士に「破産しかない」と言われた経営者と最後まで戦う元銀行員。銀行員15年・再生屋10年、第二会社方式での再生100件超、累計300件の事業再生に伴走。諦めなかった社長と、共に進む。 X→https://x.com/shingeki_saisei

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