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Photo bywingyork930

優先席の微世界先生【毎週ショートショートnote】裏お題

    春になり、山あいを走る地方電車の中から、私は外に咲く満開の桜を見ていた。

    「そういえば、最近、優先席のおじいちゃん見かけないわね」

    「ああ、『優先席の微世界先生』ね」

    「微世界先生?」

    「いつも優先席で顕微鏡覗いてたおじいちゃんでしょ。微世界先生って呼ばれてたのよ」

    「そうなのね。知らなかったわ」

    「以前は奥さんと二人で仲良く、鉱物や植物を採取してきて、顕微鏡やルーペで見てたのよね。家に帰るのを待ちきれず、優先席でよく顕微鏡を覗いていたわよ」

    「そうだったのね。私は二人でいるのは見たことなかったわ」

    「だけど、先月その奥さんが亡くなってね」

    「ええっ」

    「それからは優先席で、微世界先生ひとりで顕微鏡を覗いてたわよ」

    「奥さんのことを思い出してたのかしら」

    「そうかもね。だけど、微世界先生自身ももう見かけなくなっちゃったわね」

    電車の窓から桜の花びらが入り込んできた。ふと優先席を見ると、桜の花びらが2枚寄り添うように優先席に並んでいた。


    (410字)


    たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

    ※ちょっとした日常に出てくる切なさをショートショートにしてみました。


    *この記事は、以下の企画に参加しております。

     
     
     
    小説を書き始めたいと考えた男性51歳。小説書き方本等で独学で勉強中。書きたいことは頭の中にいろいろあります。公募してみたいと思っているがまだまだ全然の人。

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