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ルサンチマンはカルマとともに~マッドマックス人物録Vol.1~

    シン・東屋清酒本店

    先日、東京の友人S君がふらっと金沢に遊びに来たんですが、2軒目に寄ったスナックでママに愚痴をこぼしておられました。

    「去年、マセラティ(高級外車)を買った。しかも、麻布に住んでいる。こんな俺を見るとみんなは羨むかもしれない。でも、外から見えるほど俺は満たされていない。幸せじゃないんだ。何かが足りない。何が足りないんだ…」

    真剣に友達をやめようかと思いましたが、それでも縁を切れないのが友というもの。

    お察しのとおり、彼は未婚者です。
    マセラティという幾らか品のないくらいの高級外車(あくまで個人的な見解ですが)を都内で乗り回し、経営者と知り合うために最近始めたゴルフが唯一の趣味。

    彼の口癖は

    「俺は好きなことにしか興味がもてないんだ」

    これはちょうど「俺は食べれる食べ物しか食べないんだ」って言ってるのとクリソツなわけですが、こんな当たり前のことを、渡部陽一(戦場カメラマン)くらいたっぷりした間でプレゼンしてくる。
    友人の僕から見て彼に何が足りないかと聞かれると足りているものを見つける方が難しいと半ば本気で思うのですが、一応良いところはある。
    例えば、寂しがり屋なところ。
    金沢に来た経緯を聞くと色々理由をつけていたが、要は、僕に会いたくなって来たに違いない。数年かけて2周半くらいして、とうとうかわいく思えてきたのだから、優しすぎる自分の心が憎い。

    酒が進んでくるとキマりまくった目で

    「俺は君に憧れてるんだ。心地良い性格、愛らしい妻、かわいい子どもたち、魅力的な仕事。俺がやりたかった人生を送ってる…つまり、好きなんだ」

    と告白してくる。
    そんな風に言われればやはり悪い気はしないのですが

    『そんな良いもんでもないがね。ま、ありがとう…』

    と、僕は口を動かしながらも、年々黒ずんで形が歪んでいく彼の顔を注視して

    (3日後には死にます、みたいな顔してるな…)

    という思いを深めたのですが、だからこそ!彼の幸せというものを一度真面目に考えてみようということで、彼女はいないのか、と話を振ってみました。

    「今はいない…色々あって別れた。俺にとって彼女ってのは…うん、そう、みそ汁みたいなもんなんだ。毎日食べたい、その気持ちにウソはないけど…手放したくないけれど、でも、ボルシチも食べたい。男ってそうだろう?」

    「ボルシチの味を知ってこそ、みそ汁の味が際立つんじゃないかな」

    翌朝彼が過激派人権団体に拉致されて、ニュースを賑わせたとしても特に異論はないのですが、この下らなすぎる言葉の中に、妙な説得力とピュアさがあるのだから不思議なものです。

    『ボルシチ食べねえとみそ汁の良さが分かんないくらいだったら、一生食べるなよ!』

    と釘を差しておきましたが、この男が自滅の道を歩むなら、それはそれで救われる人があるかもしれんので、それもいいでしょう。

    ところで、皆様ご存知のように、人には様々な嗜好があります。
    場合によっては、カルマと言ってもいいかもしれない。
    期待に違わず、彼の嗜好というのは"女性の体毛"にまつわる気持ちの悪いものなので絶対に文字にしたくないのですが、
    よくよく聞いてみると、彼の背負ったカルマは想像以上に重いもののようです。

    「体毛の件は、二次試験だから。一次試験はおっぱいね。女性はDカップ以上か、それ以外か」

    『うるせーバカ!』

    善意あるサバンナのライオンたちのために、彼の内蔵を全て提供しましょう。そして亡骸は母なるテラ(地球)を一切汚さないよう大気圏外でスペースデブリと衝突させ宇宙の塵にしよう。

    ちなみに、会うたびに

    「奥さんに会わせてほしい。家に入れてほしい」

    と言ってきますが、かれこれ10年は煙に巻いています。
    今後も彼が家族と会うことはないでしょう。

    彼が彼の思う幸せを手にするのはいつになるのか、僕は非常に興味を持っています。散々ボロクソ言ってみましたが、既に、次に彼がいつ来るのか、楽しみにしている自分がいる。こうして話題にするって時点で、僕も心底嫌いではないのでしょう。

    そんな友人がいるのも、悪くないよ。



    「#エッセイしりとり(2026夏の陣)」のバトンを受け取って、書きました。

    バトンをくれたのはこの方!夏海さん!

    ありがとうございました!
    ただね夏海さん…「る」難しくなかったですか?難しかったですよね?なのになんでまた「る」なんですか!!もうね、僕の頭の中には、「ルビー」と「ルー大柴」しか思いつかなくて困りましたよ。挙句つけたのが「ルサンチマン」て…自分のことが嫌いになりそうです。
    (こんな感想の言いにくいエッセイをお返しして申し訳ありません)

    とても面白いので、是非、夏海さんのエッセイを読みに行っていただきたいのですが、毎日お子さんの太ももをハムハムしながら、「滑ってきた人間を止めるだけの仕事の求人」のこととか考えているなんて、、、かなりキテますよ。休んでください。笑

    そんな夏海さんのエッセイの中で、最近のおすすめはこれです。↓
    こんな甲斐甲斐しいことで悶々している妻が待っているなら、基本、旦那は帰ってくるはずなんです。旦那気づけ!!

    「#エッセイしりとり(2026夏の陣)」と主催者のマイキーさんについてはこちら。

    8月31日〆切なので、このバトンは空に放り投げます。
    皆さん、お疲れ様でした。

     
     
     
    ※固定記事が【創作大賞2026・エッセイ部門】の中間選考を通過しました。 酒屋ではありません。 三児の父です。古民家で子育てしてます。 妻子の生態観察に定評があります。 病気の母に向けてクセ強エッセイを届け続けた息子です。 家族の記憶を未来へつなぐ方法を研究・実践しています。

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