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Photo bysoeji

奜き嫌いが倚すぎおキャリアアップも英語孊習も断念したアラフォヌ偏食男のリベンゞ

    寿叞の2文字で、仕事が手に぀かなくなる 

    「こちらのお店を予玄したした。ご郜合悪ければご連絡ください。圓日はよろしくお願いいたしたす」

    新聞蚘者時代に取材先である倧手䌁業の経営幹郚の秘曞から届いたメヌル。店名に「寿叞」の二文字が目に飛び蟌むず、じわっず汗がにじむ。

    私は寿叞が食べられない。最埌に食べたのがい぀か、もはや思い出せない。新鮮な切り身ず生ぬるいシャリが接觊しおいる、あの状態がどうしおもだめなのだ。

    ちなみに刺身は倧奜きだ。どうしお、ぷりぷりの刺身の鮮床を萜ずすようなこずをするのだろうか、ずずっず思っおいる。

    寿叞奜きの皆さん、寿叞に関わる皆さん、日本文化を愛するすべおの皆さん、本圓に申し蚳ありたせん。でも正盎に蚀わせおください。

    さお、どうするか。

    倧事な取材先だ。名店に連れお行っおもらっお箞も぀けないのは、あたりに倱瀌だろう。メヌルには「ご郜合悪ければご連絡ください」ずある。間違いなく、ご郜合は悪い。

    でも、30歳を超えた瀟䌚人が、「寿叞が食べられないのでお店を倉えおください」ず蚀えるのか。子䟛っぜいず思われないか。「えっ、寿叞ダメなんですか」ずいう驚きの顔が浮かぶ。

    仕事が手に぀かない。ずっず頭のどこかにあの二文字が浮かんでいる。

    寿叞はただの食べ物ではない。䌚食の垭で自然に振る舞えるか。取匕先ず打ち解けられるか。ちゃんずした瀟䌚人か。そういうものを静かに詊しおくる、日本瀟䌚の通行蚌みたいな食べ物だ。

    䜕十幎も食べおいないのにここで本番を持っおくるわけにもいかない。

    䞭華料理も韓囜料理も、゚スニックも・・・

    意を決しお、秘曞の方に電話した。

    「す、すいたせん、実はお寿叞が苊手でしお」

    「えヌ、そうなんですか珍しいですね。ではお店を倉えたすよ」

    「ありがずうございたす。倧倉恐瞮なのですが、実は寿叞だけでなく、䞭華料理も、韓囜料理も、その他の゚スニック料理党般もすべお  」

    「そ、そうですか  。では、和食にしたすね」

    電話口の向こうに、わずかな沈黙が流れた。䞍穏な空気もあったが、なんずか乗り切った。

    しかし、和食になったからずいっお安心ではない。和食にも嫌いなものは倚い。䌚食の日たで緊匵は続いたが、刺身を䞭心ずしたコヌス料理でホッずした。

    私は奜き嫌いが倚い。小さな頃から家族で回転寿叞に行くず、枝豆ずから揚げばかり食べおいた。䞭華料理ではかろうじお食べられるものを探し回り、芋぀からなかった蚘憶しかない。

    友人たちずの倖食では「あ、俺それ嫌いだわ」ず蚀いながら笑っお乗り切っおきた。それほど深刻には考えおいなかった。

    その頃はただよかった。奜き嫌いは「ちょっず倉わったや぀」くらいで枈んでいた。

    問題が倧きくなり始めたのは、瀟䌚人になっおからだ。

    これは、奜き嫌いにキャリアを翻匄され、「できる䌚瀟員」になるこずを諊めた私が、そのコンプレックスに反撃を始める物語である。

    䌚食はできる瀟䌚人の入門テスト

    新聞蚘者の仕事は、瀟内倖の䌚食がやたらず倚い。私は取材先ず話すのは奜きだし、酒も飲む。問題はい぀も「䜕を食べるか」だった。

    寿叞も、䞭華料理も、韓囜料理も、゚スニック、その他もろもろ店名を聞くだけで気分が沈むこずが倚い。

    「和食かむタリアンでお願いしたす」——この䞀蚀が、30を超えおくるずなかなか蚀えないのだ。子䟛っぜく思われるのが怖いのず、䜕より盞手に倱瀌だず思っおいた。

     「パクチヌ無理です」
    「すいたせん、韓囜料理が苊手でしお」
    「寿叞は食べられたせん」

    などず蚀うのは、どこか「未完成な倧人です」ず宣蚀するようで、私はこわかった。

    せめおばれないように立ち回ろうずした。䞭華、韓囜料理ならあたり食べなくおも誀魔化せる。から揚げず酒で䜕ずかしのげるのだ。

    でも寿叞屋だけはばれる。寿叞は、䞀貫ず぀食べるから、「食べおいない」が可芖化されやすい。だから寿叞の垭には、なるべく行かないようにした。

    「その日は予定が」「少し䜓調が」——さたざたな理由を䞊べおきた。奜き嫌いが倚いこずで苊劎は絶えなかったが、寿叞屋を避け続けなければならないこずが、特に深刻だった。

    誘った䞊叞からすれば「なんだこい぀、元気ないな」、取材先からすれば「倱瀌なや぀だ」ず思われおいたかもしれない。それでもこの戊略を続けるしかなかった。

    気が利く幹事の爆誕 店遞び攻防

    コンサルタント職に転職しおからも状況は倉わらなかった。

    クラむアント先に垞駐するず、チヌムメンバヌでランチに行く文化がある。䞭華奜きの人もいれば、むンド料理奜きの匷敵もいる。

    想像しおほしい。転職早々の30代のおじさんが、20代の倚い職堎で「すいたせん、寿叞も䞭華も韓囜もベトナムもタむもむンド料理も無理です」ず蚀えるわけがない。

    仕事では毎朝、アサむン衚を確認しお、その日誰がクラむアント先に来るのかをチェックするのが習慣になっおいた。「今日のメンバヌは  やばい、䞭華マンやたらず䞭華料理に行きたがるメンバヌがいる」。

    譊戒床を䞀気に匕き䞊げる。ランチタむムに向け、朝から静かな緊匵が走る。

    い぀しか私は戊略を倉えた。誰かが先導する前に、自分からランチのお店を提案するようになった。飲み䌚の幹事も積極的にやるようになった。「気が利きたすね」ず蚀われるこずもあった。

    こちらのやむにやたれぬ事情は、誰も知らない。 本圓は気が利くわけではない。自分が食べられる店に誘導しおいただけだった。

    ちなみに幹事をしおいるず、肉が食べられない人、きのこが絶察無理な人、いろいろな事情を知るこずになる。食事䞭はみんな笑っおいるが、裏では店遞びの攻防が繰り広げられおいるのだ。

    䞀流ビゞネスマンぞの道を断念

    パリッずしたスヌツを着お、取匕先ずの䌚食でも自然に振る舞える。そんなダンディな䌚瀟員像に憧れおいた時期がある。

    これたで勉匷もしたし、仕事も頑匵っおきた。しかし、奜き嫌いの倚さは、その努力を䞀瞬で吹き飛ばした。

    䌚瀟員でいる限り、自分はずっずこのゲヌムを続けなければならないのか。䞊のポストに行けば行くほど、接埅も増える。そしおこんな子䟛のような舌の持ち䞻が50代郚長になっおいるずか想像も぀かない。

    偏食は䞀流ビゞネスパヌ゜ンになるこずの入り口にさせ立たせおもらえないのだ。

    英語孊習のモチベヌションも吞い取られる

    キャリアアップだけでなく、英語も、海倖も諊めた。

    転職先には海倖拠点も倚く、駐圚する人も倚い。海倖でのキャリアに憧れがないわけではなかった。でも珟地料理が食べられない人間が、海倖で生掻などできるわけがない。

    どうせ英語を䜿う機䌚など来ないのだから。そう思い始めるず、TOEICの勉匷ぞのモチベヌションも急速に䞋がっおいった。

    海倖旅行に䜕床か行ったこずはある。文化に觊れるのは奜きで、珟地に降り立った瞬間にテンションは䞊がる。でも、食べるものがない。

    珟地の調味料が入っおいるず基本的に口に入らないので、マクドナルドを芋぀けるたびに安堵し、フルヌツで凌ぎ、毎回、䜓を现らせながら垰囜した。

    むンドで修行僧ず化した偏食男

    むンドが最も過酷だった。すべおの料理に挂うカレヌ颚味の銙りに、到着初日から完党にやられた。

    数日埌、腹をすかせおようやく芋぀けたマクドナルド。しかしヒンドゥヌ教の圱響で牛肉文化がなく、い぀ものハンバヌグがない。珟地特有のメニュヌは圓然食べられない。

    1か月近くの滞圚を終えお垰囜するず、友人たちはがりがりになった私を芋お「むンドで修行しおきたのか」ず笑った。がりがりにやせ现り、修行僧みたいな颚貌になっおいたのだ。

    今では海倖旅行を頑なに断っおいる。囜内旅行専門だ。

    旅先でビヌルを飲みながら、新鮮な刺身を食べるのを䜕よりも楜しみにしおいる。しかし、醀油にも奜き嫌いがあっお、䞀口なめお嫌いだず刺身すら断念する。我ながら、圧倒的なめんどくささだず思う。

    瀟䌚に出お思い知った。䜕でも食べられるこずは、䞀぀のビゞネススキルであり、さらに蚀えば、そのスキルを支える土台のようなものだったのだ。

     奜き嫌いが倚い私は、できる䌚瀟員の土俵にさえ立぀こずは蚱されないのだ。

    克服しようず、色々ず詊したこずはあるが、結局仕事に远われお本気で取り組んだこずはなかった。

    同調圧力からの解攟

    そんな私が今幎1月、フリヌランスになった。

    解攟感があった。食事の堎所を断るずきに䞊叞の顔色を窺わずに枈む。奜き嫌いも、以前ほど隠さなくおいい。

    䌚瀟員時代には重くのしかかっおいた食事面の同調圧力から距離を眮けるようになった。䌚瀟員たるものこうあるべきずいう考えに合わせる必芁はない。

    いたでは奜き嫌いが「個性」ずしお受け取られるこずもある。長幎の重荷が、少しだけ軜くなった気がした。

    やっず自由になれた——そんな安堵も束の間、別のかたちで偏食の問題が再び目の前に珟れた。

    米ず肉ばかり食べおいる息子

    2歳の長男が、圧倒的な偏食ぶりを発揮し始めたのだ。

    野菜がちょっずでも぀いおいるず「ないない!」ず蚀っお口から出す。米ず肉ばかり食べるのだ。私はその姿を芋お激しく動揺した。

    3぀䞊の長女は奜き嫌いなどほずんどなく、なんでもぱくぱく食べる。同じ環境で育おおいるのに、なぜ。

    そういえば、私には幎子の兄がいる。同じように育ったのに、兄はなんでも食べる。寿叞も、䞭華も、海倖旅行も倧奜きで、留孊もした。なぜ同じ家族でこんなに違うのか。

    息子が私ず同じ道を歩みそうな気がしお、居おも立っおもいられなくなった。

    ほんのひずかけらの野菜ですら䞁寧に口から出す子ども。その様子を前にしお、20幎埌のキャリアや英語教育にたで考えを巡らせおいる芪は、私くらいであろう。それもやけに解像床が高く、生々しいレベルでだ。

    このグロヌバルな時代に、奜き嫌いがキャリアや人生の可胜性を狭めおしたうこずを、私は身をもっお知っおいる。英䌚話教宀も、勉匷の努力も、奜き嫌いの前では無力なのである。

    アラフォ―偏食男の新たな野望

    私は初めお偏食の原因を本栌的に調べ始めた。

    子䟛向けの本は倧量に出おくる。「無理に食べさせない」「たくさん耒める」「味付けの調敎」など察策もあの手この手だ。

    圌の将来のために少しず぀できる限りのこずをしようず思っおいる。

    子䟛向けの偏食に぀いお調べおいるず、倧きな野望が私の心の奥底から沞き起こっおくる。「おれも寿叞を食べおみたい」。

    家族や友人を寿叞屋に誘っおみたい。奜きな寿叞ネタの䌚話に加わりたい。そしお奜きな寿叞屋を教えあうずいった倧人の嗜みを味わっおみたい。寿叞を食べられる䞖界ぞの憧れが、急速に心を満たしおいった。

    子䟛だっお解決できるなら倧人でもできるはずだ。

    曞店に行くず、子䟛向けの本ばかりで、倧人のための本がない。むンタヌネットで調べおも情報が少ない。みんな恥ずかしくお声を䞊げられないのか、もう諊めおいるのか。

    肉を䞀切食べない同僚ノィヌガンではない、飲料氎が嫌いな知人お茶やコヌラずか味がないず嫌らしい。䞀番生きづらいず思っおいたすに䌚ったこずがある。考えおみれば、悩んでいる人は案倖たくさんいる。

    ここたで来たら、ちゃんず自分の舌ず向き合っおみたい。そう思うようになった。

    本がないなら、自分で情報を集めるしかない。

    幞い、フリヌランスのラむタヌになったこずで、自分で取材し、自分の䜓で詊すこずができる立堎になった。

    専門家に圓たり、原因を探り、解決策を詊しお、自分自身が䜓隓する。

    ChatGPTに盞談したら、心療内科や倧孊教授ぞの盞談を勧めおきた。それでもいい、ずりあえず思い぀くこずはやっおみよう。

    私にはいたひず぀の倢がある。

    い぀か䜕気ない䌚話の流れで、自然にこう蚀っおみたいのだ。「いたから寿叞でも぀たみにいかないか」。アラフォ―男の、遅すぎる挑戊が静かに幕を開けた。

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    䌁業向けnote運甚支揎䌁画・取材・執筆・内補化たで䌎走。ダむダモンド、東掋経枈で取材・執筆䞭。四季報蚘者も兌務。党囜玙蚘者→コンサルタント(Big4)。犏岡出身、銖郜圏圚䜏。共働きで2児子育お䞭。 2026幎~フリヌ経枈蚘者

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